カテゴリー別アーカイブ: AH Formatter

[XSL-FO] Formatter サポートが語る orphans と widows プロパティの話

こんにちは。
AH Formatterのサポート担当です。

今日はうっかり忘れがちなorphansとwidowsプロパティのお話です。
(….うっかり忘れるのは私だけかもしれませんが)

CSSやXSLで定義されているorphansとwidowsプロパティは次のように説明があります。
The “orphans” property specifies the minimum number of lines of a paragraph that must be left at the bottom of a page. The “widows” property specifies the minimum number of lines of a paragraph that must be left at the top of a page.

orphansプロパティはページ下に残される段落の最低の行数、widowsはページの1番上に残される段落の最低の行数を指定するということになります。
図1 を見ると解りやすいかと思います。

【図1 orphansとwidows】
【図1 orphansとwidows】

このorphans/widowsというプロパティの値は規定値が”2″に決められています。
これは、段落の始まりの1行だけがページ下にあったり、段落の最後の1行だけがページ上部にあるのは組版ルール上好ましくないとされているためです。
そのため、orphans=”2″の状態で組版すると図2 のような結果になります。

【図2 orphans=
【図2 orphans=”2″での組版結果】

Page1の下には1行分の空きがありますが、orphans=”2″なのでここに入るはずだった行(文字列)は次ページの先頭に移動します。その結果Page1の下には空きが発生します。
この段落でorphans=”1″を指定すると、図3 のようになります。

【図3 orphans=
【図3 orphans=”1″での組版結果】

widowsも同じです。

【図4 widows=
【図4 widows=”2″での組版結果】

図4 で最後の段落は4行分のデータです。普通に並べるとPage1に3行、Page2に1行と入るはずですが、widows=”2″にしたがってPage2のtopに1行だけ配置することはできないのでPage1の最後の行はPage2に移動します。結果的にPage1の下には1行分の空きが発生することになります。
これも、widows=”1″を指定すると図5 のようになります。

【図5 widows=
【図5 widows=”1″での組版結果】

※ここからうっかりポイント

このプロパティは段落の中に画像を埋め込んだ場合も適用されます。
例えば次のようなXSL-FOの記述があったします。
<fo:block>
<fo:external-graphic src=”1.jpg”/>
<fo:external-graphic src=”2.jpg”/>
</fo:block>

fo:external-graphicで埋め込まれた画像はインラインオブジェクトなので文字列と同様に行エリアを生成します。画像の大きさにもよりますが、これを組版したとき、次のような結果になる場合があります。

【図6 画像を2つ埋め込んだケース】
【図6 画像を2つ埋め込んだケース】

この例では1つの画像が1行分になります。
orphans=”2″,widows=”2″のままだと1行だけの配置はできないので最低の2行を同じページに配置しなくてはなりません。したがってこのように画像2つ(2行)が並んだ結果、ページからオーバーフローしてしまうことがあります。
こういう場合もorphans=”1″,widows=”1″を指定することで図7 のように解決します。

【図7 orphans=
【図7 orphans=”1″ widows=”1″ を指定して解決】

他にも、
<fo:external-graphic src=”embedded.pdf#page=3-5″/>
AH Formatterの拡張機能を使ってこのようなPDFの連続ページ埋め込みを行った場合も同じです。

先日、お客様からこういったお問い合わせを受けて
orphans/widowsの仕業だということを思い出すのに3時間ほどかかってしまったのでした。
 
 


AH Formatter の運用事例:オライリー様の電子出版物(PDF)

コンピュータ技術書籍の出版で有名な「O’Reilly Media, Inc.(オライリー)」様の電子書籍(PDF)には弊社の『Formatter(XSL Formatter、AH Formatter)』が使用されているものが多数あります。以下の電子書籍は無料で入手できますので、『Formatter』の組版の実例としてもご覧いただけたら幸いです。

HTML5 for Publishers (By Sanders Kleinfeld)
使用されている Formatter:XSL Formatter V4.3 R1 (4,3,2008,0424) for Linux

Accessible EPUB 3 (By Matt Garrish)
使用されている Formatter:XSL Formatter V4.3 R1 (4,3,2008,0424) for Linux

Open Government (By Daniel Lathrop, Laurel Ruma)
使用されている Formatter:AH CSS Formatter V6.0 MR2 for Linux64 : 6.0.2.5372 (2012/05/16 18:26JST)
この書籍は https://github.com/oreillymedia/open_government で無償提供されています。

関連記事:
けっこう世界で使われている AH Formatter(その2)オライリーの書籍の 75%(2013/3/28)


AH Formatter V6.2 製品発表会のお知らせ

アンテナハウス株式会社は、XML/HTML 自動組版ソフトのベストセラー『AH Formatter』をバージョンアップした『AH Formatter V6.2』を 2014年2月28日に出荷開始いたしました。これにともない、3月7日(金)に製品発表会を開催いたします。どなたでも無料で参加できますので、是非、『AH Formatter』の進化を知っていただきたく存じます。

製品発表会の詳細は次のページでご覧いただけます。
Formatter Club「AH Formatter V6.2 発表会」

今回のバージョンでは、MathML 描画エンジンが完全に書き換えられ、数式の組版がより一層強化されました。このとき、MathML の対応バージョンも AH Formatter V6.1 までの MathML 2.0 から 3.0 へ更新しました。
MathML 3.0 を含む MathML のサンプル(zip)出力結果 PDF

MathML 組版結果例
– MathML 組版例 –

また、ご要望の多かった次の機能などに対応いたしました。

  • フォント構築ファイルの設定でフォントフォルダのサブフォルダ内のフォントも検索が可能になりました。
  • font-variant に指定できる値が追加されました。
  • ボックスシャドウに対応しました。
  • テキストシャドウに対応しました。
  • 行グリッドに対応しました。
  • 複数ページに渡る脚注が可能になりました。
  • 表の各段に独立に行番号を振ることが可能になりました。
  • ページ分割されたセルでの表示内容が指定可能になりました。
  • tab-size プロパティに対応しました。
  • rgba() 関数が利用可能になりました。
  • トンボに見開きの背表紙の幅を指定可能になりました。
  • GUI 上に表示されるページサイズの単位が指定が可能になりました。
  • GUI で使用する表示上の言語の切り替えが可能になりました。
  • CSS で評価される @media の種別を指定できるようになりました。
  • PDF レイヤの指定が可能になりました。
  • PDF の埋め込み時に埋め込まれる PDF 内にあるリンクなどの注釈が保持可能になりました。
  • PDF へ埋め込むマルチメディアのプロパティが追加されました。
  • 組版の設定の既定値の見直しを行いました。
  • PDF 出力の設定の既定値の見直しを行いました。

行グリッドを使った組版例
– 行グリッドを使った組版例 –

既に『AH Formatter』をご利用の方も、自動組版にご興味をお持ちの方も、是非この機会に製品誕生から 14年目を迎えた『AH Formatter』の性能に触れていただきたく存じます。

・追記(2014年3月10日):
「AH Formatter V6.2 発表会」で配布した資料を公開します。『AH Formatter』の機能をご理解いただくのにお薦めです。是非、ご覧ください。
『AH Formatter V6.2』の数式組版と多言語組版の解説(PDF)
『AH Formatter』従来の機能と V6.2 で追加された新機能の紹介(PDF)


多言語索引ライブラリ I18n Index Library

アンテナハウスは2月6日 I18n Index LibraryV2.2をリリースしました。

DITA DocBookのコンテンツから多言語索引を作成するための多言語索引で海外では人気商品です。国内でもDITAの普及に伴い、主にグローバル企業より問い合わせが多く、ご利用いただくお客様が増えてまいりました。このライブラリをDITA OT (Open Toolkit)に組み込んで、PDF, HTML, EPUB プラグインと共にご利用いただけます。PDF5を使ってDITAからXSL-FOへの変換処理を行いAH Formatterで最終的にPDF出力を行います。

PDF5はアンテナハウスが DITA-OT用に開発したプラグインです。DITA 1.2のindex 機能をほとんど実装しており、こちら(http://dita-ot.github.io/)から入手可能です。

DITA-OTはDITAのパブリッシングで、トピックをマップに従って組み合わせたり、間接参照を解決したりなど大量の事前処理をするためのツールキットです。こちら(https://github.com/AntennaHouse/pdf5)から入手可能です。

pdf5

今回のV2.2では次の強化を行っています。

1. 10言語を正式にサポート

Arabic, Bulgarian, Greek, Hebrew, Indonesian, Malay, Romanian, Slovak,
Thai Vietnameseの言語を新たにサポートしました。これによって現在次の31
言語をサポートしています。

Arabic, Bulgarian, Catalan, Czech, Danish, German, Greek, English, Spanish, Finnish,
French, Hebrew, Hungarian, Indonesian, Italian, Japanese, Korean, Malay, Dutch, Norwegian,
Polish, Portuguese, Romanian, Russian, Slovak, Swedish, Thai, Turkish, Vietnamese,
Simplified Chinese, Traditional Chinese

2. 派生言語コードの定義が可能

例えば ポルトガルなら pt, pt-BR, pt-PTをインデックス構成ファイルに定義することができます。

3.I18n Index LibraryをDITA OTのプラグインとしてリリース

アンテナハウス(海外サイト)
http://www.antennahouse.com/

http://rainbowpdf.com/


『Web Interface V5.0』のフォルダ監視サービスについて

Web Interface V5.0』は、サーバ上で動作する『AH Formatter』を
通常サーバを介しての利用で必要となるサーバ側での
新規アプリケーション開発をせずに運用可能となるのが特長ですが、
本製品の便利な機能についての紹介となります。

「フォルダ監視サービス」

こちらは、特定のフォルダにコピーされた文書を自動的に検出し、
変換結果を指定されたフォルダへ出力するサービスです。
指定したフォルダへ変換対象ファイルをZIPアーカイブして設置することで
サービスが自動的にファイルを処理し、変換結果を出力フォルダへ格納します。

変換が正常に終了したかどうかを指定したメールアドレスにメールで通知することもできます。

ご興味を持たれて方はぜひ、評価版で実際に試してみてください。

『Web Interface V5.0』に関する詳しい情報は、次のページをご覧ください。
インターネットでプログラムレスの組版を実現!Web Interface V5.0 for AH Formatter

「フォルダ監視サービス」の詳細は、次のページとなります。
Web Interface V5.0 for AH Formatter 機能紹介:フォルダ監視サービス

評価版は次のページよりお申し込みいただけます。
Web Interface V5.0 for AH Formatter 評価版のお申し込み


Formatter 販売開始から 13年

こんにちは。『AH Formatter』のサポート担当です。

弊社が『XSL Formatter V1』を販売開始してからこの春で 13年になります。
当時小学生だった息子が今は就職活動真っ最中です。
時の流れは早いものですね。
販売当初から関わってきた私の皺も増えました(笑)

今では電化製品などのマニュアルを見るとつい、
“Formatter で組めるかな”
“何のフォントを使ってるんだろう”
“禁則処理や均等割り付け出来てないとなんか気持ち悪い”
などと考えてしまい、すっかり職業病です。

ついこの前ははカーナビの取説のレイアウトにじっくり見入ってしまいました。
趣味の小説を読んでいてもつい、
“これ自動組版で全部可能だろうか”
なんて思ってしまうともう内容が頭に入ってきませんね、困ったものです。

『AH Formatter V5.0』から CSS 組版をサポートしてからもうすぐ 5年が経とうとしています。
最近、弊社サポートにも CSS 組版のお問い合わせが増えてきたなぁと実感しています。
今まで XSL-FO で運用してきたお客様の中にも、
簡単なものなら CSS 組版で出来るのではないかということで
検討を始めているというお話も耳にします。
弊社では、CSS 組版でここまでできる「ページ組版のための CSS 指南」の販売も行っております。
CSS 組版を検討されている方であれば、ぜひ御購入をお勧めします。

[書籍紹介] ページ組版のための CSS 指南


システム製品の保守期間終了後の動作について

AH Formatter 担当です。
掲題のお問い合わせをいただくことがございます。

AH Formatter に限らず、弊社のシステム製品に共通した動作となりますが、
保守期間が終了しても現在お使いいただいている製品は正式版として動作します。
使用できなくなったりすることはありません。

ただし、保守期間終了後にリリースされた改訂版をそのライセンスファイルでご使用いただくと、
評価版として動作します。
繰り返しになりますが、
保守期間終了以前にリリースされた改訂版であれば正式版として動作いたします。

弊社システム製品の保守サービスにつきましては、
ソリューション・システムコンポーネント製品保守サービス仕様
のページで詳細をご覧いただけます。


AH Formatter についてと FormatterClub のご案内

私(@MurakamiShinyu)は、AH Formatterの開発に携わっているのですが、そのことを人に話しても、AH Formatterはあまり知られていなくて、もっと知ってもらう努力をしなくてはと感じてます。

というわけで、AH Formatterとは何かということや、その意外に知られていないことについて、書きたいと思います。

■ AH Formatter(= Antenna House Formatter、アンテナハウス・フォーマッタ)は、組版ソフトであり、XMLやHTMLデータからきれいにページが組まれたPDFに変換するのに使われます。

■ W3C標準をサポートしてます。XML組版のための標準仕様であるXSL-FOと、Webのレイアウト用に普及しているCSSのどちらにも対応していて、目的に応じて使いたい方を使うことができます。

■ HTMLとCSSを解釈してレイアウトしてレンダリングを行うというところは、Webブラウザと共通しています。そのレイアウトエンジンは既存のWebブラウザ(例WebKit)を使うのではなく、私どもが独自に開発したもので、ブラウザでは不得意なページの組版の機能(CSS3 Page仕様のサポートなど)が充実しています。

■ CSSで、(X)HTMLだけでなくXMLの組版も可能です。

■ 各種組み込みインターフェースをもっており、サーバー利用でのPDF生成に最適です。

■ 世界で使われています。多言語の組版に役に立っています。様々な世界の文字での組版ができます。(例:アラビア語など中東の言語、東南アジアやインド系の諸言語)

■ OpenTypeフォントの機能をいろいろ活用することができます。IVSをサポートしており、異体字の選択ができます。

■ 日本語組版の機能も充実してます。縦書きと横書きの混在ももちろんできます。

■ CSS3のいろいろな機能をサポートしています。それでも不足な機能は独自拡張で追加しています。

■ 日々開発・改良を続けており、進化しています。

詳しくは
AH Formatter V6.1 の紹介

以下の記事もご参考に

評価版は以下のページよりお申し込みいただけます。
AH Formatter V6 評価版のお申し込み

AH Formatterをもっと知りたい、試してみたい、使っている人に聞きたいという方にFormatterClubをお勧めします。
会員(無料)には会員向け試用版の提供をしています。通常評価版では出力ページに「すかし」が入りますが、この会員向けはページの下部にAH FormatterのURLが表示されるだけになり、この表示を改変・削除しない限りにおいて、評価用に利用することのほか、個人的に文書作成に利用するなど、非営利目的に限って使用することが可能です。

FormatterClubへの入会お申し込み

それから、「CSS組版ブログ」もどうぞよろしくお願いします。


Antenna House Web Interface V5.0 for AH Formatter リリース

2013年10月1日より『Antenna House Web Interface V5.0 for AH Formatter』のリリースを開始いたしました。

『Web Interface V5.0』は、サーバ上の組版ソフト『AH Formatter』をインターネット経由で遠方のクライアントから簡単に使用できる便利なソフトウェアです。サーバ側とクライアント側のパソコンに必要なソフトをインストールするだけで、新規にプログラムを開発することもなく、すぐに運用を開始できます。

『Web Interface V5.0』にて追加された機能
・Windows 64ビット版に対応
・HTTPS プロトコルに対応
・『AH Formatter V6.1』との組み合わせ動作保証

Windows 64ビット版対応など、ご利用範囲が広がりましたので、この機会にぜひ評価版でお試しください。

『Web Interface V5.0』に関する詳しい情報は以下のページをご覧ください。
Antenna House Web Interface V5.0 for AH Formatter

評価版は以下のページよりお申し込みいただけます。
Web Interface V5.0 評価版のお申し込み


[AH Formatter] FO 中での言語指定の重要性について

ユーザサポートに寄せられる問い合わせ(トラブル)で FO 中での言語指定がないことが原因となっている場合がよくあります。

font-family においてフォントの候補が複数列挙されている時や font-family の指定が無い時、AH Formatter は文字に対してどのフォントを適用すべきかをスクリプトによって決定します。これによって “ABC” などのラテン文字は欧文フォント、”あいうえお” などのひらがな(日本語)であれば和文フォントになります。

Unicode で定義されているスクリプト情報のみで判断できない場合には前後の文字などで判断しますが、それでも決定できない場合があります。例えば、段落に単独で ○(U+25CB)があったり、○ の前後に半角スペースが存在するような場合です。○ は和文フォントと欧文フォントでその字体には違いがあります。

FO 中での言語指定の重要性について

スクリプトが決定できない=フォントが決定できない時、AH Formatter はオプション設定ファイルの default-lang と default-lang2 の設定に従います(フォントの選択方法については、オンラインマニュアルの 技術的資料 – フォントの選択を参照してください)。この指定の既定値に従うと、言語指定のない FO では “eng” が指定されているものとみなします。したがって、上記のような ○ のスクリプトが決定できない場合は欧文フォントが選択されます。

FO 中での言語指定の重要性について

このように言語指定が無いことが原因で同じ ○ に対して適用されるフォントが欧文フォントだったり和文フォントだったりと統一されないことがあります。XSL-FO での言語指定は、xml:lang や language プロパティで行います。この指定を行うことでこのようなトラブルを未然に防ぐことができます。

組版対象の FO において、言語指定をすることは非常に重要です。日本語のドキュメントでは、ひらがな、カタカナ、漢字などの日本語とアルファベットや記号などが混在して文字の言語情報に関して意識しないことが多いのですが、このようなトラブルを防ぐために言語やフォントの指定を正しく行うことが必要です。


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