8月31日付けで、経済産業省から電子商取引に関する市場調査結果が発表されました。
電子商取引の普及度合は、電子帳簿保存法で対象とする電子取引の普及度合と関係が深いでしょう。そうすると電子取引データの保存の市場を考える上でも参考になりそうです。そこで、次に両者の関係について、整理しながら考えてみました。
本調査では、日本の電子商取引を、国内電子商取引(BtoC-EC、BtoB-EC)、国内の個人間電子商取引(CtoC-EC)、日本と米・中国の3国についての国際電子商取引(越境EC)に分類して、その市場規模を推定するとともに、一部のみですが、EC化率(市場規模全体に対する電子商取引の割合)を推定しています。
まず、電子商取引(EC)の定義は、OECDでは次のようになっています。(報告書p.13)
(1)広義には、企業、世帯、個人、政府、公的機関の間の物やサービスの取引で、注文がコンピュータのネットワークを介して行われるもの、とされています。EDIやオンラインアプリケーションでの注文を含みます。支払いや配送の形態は問いません。
(2) 狭義にはWeb・インターネットを用いたものとされています。
本調査では、広義には、「受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われ、成約金額を補足できる」としています。狭義には、そのうち、インターネットで通信を行うものとしています。
商取引のプロセスの中では、受発注時を対象にしており、製品情報の提供・見積り・計画などの成約前段階、請求・決済・納品・保守サービスなどの成約後プロセスは含んでいません。これは、ECの市場規模を補足するということが大きな目的になっているためでしょう。
電子帳簿保存法でいう電子取引では、請求・決済の取引も含むので、本調査とは商取引プロセスの中でカバー範囲が広くなっています。
細かい話はこれぐらいにして、ざっくり、ECがどの位の割合になっているかを見ると、次のようになります。
1.国内の物販BtoC-ECは、2021年から2022年成長率5.37%、EC化率は2022年で9.13%
2.国内サービス系・デジタル系BtoC-ECは2021年から2022年成長率がそれぞれ32.4%、▲6.1%。EC化率は計算せず。(少なくともデジタル系は成約は100%ではないだろうか)
3.国内BtoBのECは、2021年から2022年成長率12.7%、EC化率は2022年で37.5%(報告書 p.92)
電子帳簿保存法7条で保存対象となるのは、主に法人税に関係する電子取引が多いはずです。BtoC-ECでは主に売り手側、BtoB-ECでは売り手側と買い手側になります。BtoCの物販系取引は、EC化率9%なので大部分が書面取引になり、BtoBはEC化率が平均37.5%ということなの過半数が書面取引になるとみられます。
こうしてみると、2022時点では電子取引より書面の取引がかなり多かったと言えそうです。例外として、BtoCのサービス、BtoCのデジタルの領域では電子取引が多いものと推測されます。
参考)
「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(令和5年8月 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)
前回:EDI(電子データ交換)による電子インボイス交換と取引データのデジタル保存対応
次回:2024年1月からの電子取引データ保存義務化への対応方法