月別アーカイブ: 2023年8月

電子商取引についての調査報告から電子取引データ保存を考えてみる

8月31日付けで、経済産業省から電子商取引に関する市場調査結果が発表されました。

経済産業省のプレスリリース

電子商取引の普及度合は、電子帳簿保存法で対象とする電子取引の普及度合と関係が深いでしょう。そうすると電子取引データの保存の市場を考える上でも参考になりそうです。そこで、次に両者の関係について、整理しながら考えてみました。

本調査では、日本の電子商取引を、国内電子商取引(BtoC-EC、BtoB-EC)、国内の個人間電子商取引(CtoC-EC)、日本と米・中国の3国についての国際電子商取引(越境EC)に分類して、その市場規模を推定するとともに、一部のみですが、EC化率(市場規模全体に対する電子商取引の割合)を推定しています。

まず、電子商取引(EC)の定義は、OECDでは次のようになっています。(報告書p.13)

(1)広義には、企業、世帯、個人、政府、公的機関の間の物やサービスの取引で、注文がコンピュータのネットワークを介して行われるもの、とされています。EDIやオンラインアプリケーションでの注文を含みます。支払いや配送の形態は問いません。
(2) 狭義にはWeb・インターネットを用いたものとされています。

本調査では、広義には、「受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われ、成約金額を補足できる」としています。狭義には、そのうち、インターネットで通信を行うものとしています。

商取引のプロセスの中では、受発注時を対象にしており、製品情報の提供・見積り・計画などの成約前段階、請求・決済・納品・保守サービスなどの成約後プロセスは含んでいません。これは、ECの市場規模を補足するということが大きな目的になっているためでしょう。

電子帳簿保存法でいう電子取引では、請求・決済の取引も含むので、本調査とは商取引プロセスの中でカバー範囲が広くなっています。

細かい話はこれぐらいにして、ざっくり、ECがどの位の割合になっているかを見ると、次のようになります。

1.国内の物販BtoC-ECは、2021年から2022年成長率5.37%、EC化率は2022年で9.13%
2.国内サービス系・デジタル系BtoC-ECは2021年から2022年成長率がそれぞれ32.4%、▲6.1%。EC化率は計算せず。(少なくともデジタル系は成約は100%ではないだろうか)
3.国内BtoBのECは、2021年から2022年成長率12.7%、EC化率は2022年で37.5%(報告書 p.92)

電子帳簿保存法7条で保存対象となるのは、主に法人税に関係する電子取引が多いはずです。BtoC-ECでは主に売り手側、BtoB-ECでは売り手側と買い手側になります。BtoCの物販系取引は、EC化率9%なので大部分が書面取引になり、BtoBはEC化率が平均37.5%ということなの過半数が書面取引になるとみられます。

こうしてみると、2022時点では電子取引より書面の取引がかなり多かったと言えそうです。例外として、BtoCのサービス、BtoCのデジタルの領域では電子取引が多いものと推測されます。

参考)
令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(令和5年8月 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)

前回:EDI(電子データ交換)による電子インボイス交換と取引データのデジタル保存対応
次回:2024年1月からの電子取引データ保存義務化への対応方法

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EDI(電子データ交換)による電子インボイス交換と取引データのデジタル保存対応

電子帳簿保存法で、国税関係の保存義務者が電子取引を行った場合、電子取引データをデジタルで保存することが義務付けられています。

電子取引を行う仕組みの一つとして、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)があります。EDIは一般的には、異なる組織間で合意された規約に基づいてコンピュータ業務システム間でデータ転送を行う仕組みとされています。

EDIは参加する組織、交換するデータなどに応じて多種多様ですが、比較的大きな企業が中心になって運営するもの、または業界EDIが普及しているようです。一方、中小企業向けのEDIや電子インボイスを交換する新しいEDIのサービスも始まっています。

EDIによる電子インボイス交換

2023年10月から消費税のインボイス制度がスタートします。これにともなってEDIで電子インボイスを交換する規約が策定されています。

中小企業共通EDI

「中小企業共通EDI」は、中小企業間の取引のデジタル化を目指す規約です。中小企業庁の後援を得て、ITコーディネータ協会が策定しているものです。

中小企業共通EDI

「中小企業共通EDI」のV4では、国連CEFACTを元にして、日本の中小企業取引環境や商習慣に適合させた標準インボイス仕様を策定しています。

中小企業共通EDI標準のバージョンアップ(ver.4)版の公開

JP PINT

もうひとつは、デジタル庁が日本におけるオーガナイザーとして運営を始めたJP PINTの電子インボイスです。

JP PINT(デジタル庁)

デジタル庁はPeppolの運営団体であるOpenPeppolのメンバーとして、日本におけるネットワークのオーソリティーになるとともに、日本のインボイス制度で使用できるインボイス形式を決めています。

現時点では、「適格請求書」「仕入明細書」「区分記載請求書」の3種類の仕様が公開されています。

なお、これらはもともと欧州の電子インボイス交換ネットワーク規約であるPeppolがもとになっています。Peppol(Pan European Public Procurement Online)は名前のとおり、欧州でスタートしたものです。その後、シンガポールやオーストラリア、ニュージーランドなど大洋州に広まるとともに、PINT(Peppol International)という名称も使われるようになっています。

連携補完機能

中小企業EDIやJP PINTのネットワークで、電子インボイスが交換されると、それは電子取引にあたるので、取引データをデジタルで保存することが義務付けられます。

中小企業EDIでは、EDIと企業内のアプリケーションとの間でデータ形式を変換したり、ネットワークに接続して送受信を支援するツールを、連携補完アプリと呼びます。

アンテナハウスでは『電子取引Save V2』を発売するにあたり、オプションとして、JP PINTで交換される電子インボイスを、『電子取引Save』に自動的に取り込む機能をもつ、連携補完機能を用意しました。この連携補完機能は中小企業EDIでいうと連携補完アプリの一種になります。

前回:2024年1月から電子取引データのデジタル保存を始める場合の最適な対応方策は?
次回:電子商取引についての調査報告から電子取引データ保存を考えてみる

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2024年1月から電子取引データのデジタル保存を始める場合の最適な対応方策は?

本ブログをいままでお読みいただいていた方には、既に耳にたこができると感じておられるかもしれませんが、次に2024年1月から新しく電子取引データのデジタル保存を始める場合の対処策について考えてみます。

前提条件

2021年3月に改定された電子帳簿保存法第7条(法律)により、国税関係の保存義務者が電子取引を行った場合、その取引データをデジタルで保存する義務が課せられています。2023年1月迄は書面に印刷して保存も認められていました(宥恕措置)が、2023年12月で宥恕措置は廃止となります。

保存の方法については財務省令(以下、施行規則)によります。当該施行規則は2023年3月31日に公布され、2024年1月1日より施行となります。その施行規則を前提として保存施策を検討します。

電子取引データ保存の方法については、施行規則4条の1項と3項に規定されています。1項は保存要件を満たした上で保存する方法です。3項は間に合わない場合、要件に関わらずに保存する方法です。なお、すでに保存要件を満たした保存を行っている場合、3項の適用は認められないようです。

現状と課題

これから電子取引データのデジタル保存を開始する保存義務者は、取引データ保存の現状は次のいずれかになっているはずです。

・電子取引データを印刷した書面を保存することで法的保存義務を満たしている(宥恕措置で2023年12月迄は問題ない)
・電子取引を行っておらず、書面による取引のみを行っている

こうした保存義務者は書面依存になっているといえます。

従来、書面依存の保存義務者が、2024年1月から書面を完全に廃止して、電子取引に切り替えることは困難でしょう。すると、2024年1月以降は電子取引に加えて、書面による取引書類も残ります。その書面も保存する必要があります。

解決方策

電子取引と書面取引が混在している場合、取引書類保存策は次の3つです。

(1) 2024年1月から書面による保存を一切廃止し、デジタルデータの保存に切り替える。

この場合、書面取引で交換した書面をスキャナーでデジタル化して保存する必要があります。このためには電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たしての保存が必要です。そうすると書面を廃棄できます。

さらに、電子取引データは、施行規則4条1項の要件を満たすデジタル保存を行います。

以上を実施すると、書面を保存する必要がなくなり、フルデジタルの保存となります。

(2) 書面の保存とデジタルの保存を並行して行う。

書面による取引は書面を保存する。電子取引は施行規則4条1項の要件を満たすデジタル保存を行う(電子取引データを印刷した書面の保存はしない)。

この場合、取引の記録はデジタルデータと書面のどちらかで保存することになります。ある取引記録を探すには、両方を探してみないと見つけることができません。

(3) すべてを書面として保存し、電子取引データはデジタル保存もする。

この場合、書面は次の2種類となります。
a. 書面による取引に用いた書類
b. 電子取引の取引データを印刷した書面(電子取引の取引データはデジタルでも保存されている)

すべての取引データは書面で保存されているので、取引の記録は書面の中から探すことができます。一方、デジタルデータは部分的な記録のみとなります。

具体例で考察

例えば、2024年に契約書を年間100件締結する見込みとします。その半分が契約書を書面で交換し、残りの半分が電子契約で契約書を交換する見込みだとします。

この契約書の法的保存方策は次の3通りのどれかです。

(1) 書面による契約書をスキャナで電子化し、スキャナ保存の要件を満たす保存を行う。また、電子契約による契約書は施行規則4条1項の要件を満たすデジタル保存を行う。

この方式では書面の契約書は廃棄し、すべての契約書をデジタルで保存することとなります。100件のデジタルデータを保存します。

(2) 書面による契約書は書面で保存する。また、電子契約による契約書は施行規則4条1項の要件を満たすデジタル保存を行う(電子契約書は書面で保存しない)。

この場合、書面の契約書と、デジタルの契約書がそれぞれ法的要件を満たすことになり、書面保存が50件、デジタル保存が50件です。

(3) 書面による契約書は書面で保存する。また、電子契約による契約書は書面に印刷して保存すると同時に、施行規則4条1項を気にしないで、4条3項によるデジタル保存を行う。

この場合、書面の契約書は100件、デジタルで保存した契約書が50件となります。2024年の契約書を全部調べるなら書面の契約書を調べる必要があります。

評価と選択

2024年1月からの電子取引データの保存方針を決めるには、この3種類の保存方策の優劣を評価した上で、方策を選択する必要があります。

どの方策を選択するかは各保存義務者がどのような取引を行っているか、それぞれの実態によって変わると思われます。

場合によっては、(1) 売上にかかる取引記録はすべてデジタル保存、(2) 仕入れや経費にかかる取引記録は書面とデジタルを並行し、(3)契約書は書面を主とする、というように、取引の区分ごとに(1)~(3)の保存方策を使い分けたいことがあるかもしれません。このような方策が許容されるかどうかは、施行規則4条を読んでも直ちに判断ができません。

前回:中堅・中小企業は2024年1月から施行される電子取引データ保存にどう対処するか
次回:EDI(電子データ交換)による電子インボイス交換と取引データのデジタル保存対応

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中堅・中小企業は2024年1月から施行される電子取引データ保存にどう対処するか

2年ほど前のことですが、電子帳簿保存法が2021年に改定されました。その第7条で国税関係書類の保存義務者が電子取引を行ったときには、取引データを書面に印刷して保存できず、デジタルで保存しなければならないと義務付けられました。

それに基づいて、主に弊社のような小規模な企業が、電子取引データ保存義務にどのように取り組んだら良いかを検討し、「中堅・中小企業は2022年1月から施行される電子帳簿保存法第7条電子取引データ保存にどう対処するか(考察)」(2021年11月2日、2021年12月15日税制改正大綱について追記)をまとめました。

本文はWebページで公開していますが、これから書き直す予定なので、現状の内容をPDFに印刷したものを次にリンクしておきます:
電子帳簿保存法第7条電子取引データ保存について – アンテナハウス(資料1)

本資料を公開後の2021年12月27日公布の財務省省令(施行規則)で宥恕措置が導入されました。こうして、電子取引データのデジタル保存義務開始は実質的に2年延期され、2024年1月からとなりました。2024年1月施行で、どのような変更があったのかは、これまでの本ブログで細かく紹介したとおりです。

いままで本ブログで紹介してきた財務省令の変更ポイントを改めて見直し、一番大きな変更点をあげるとすると次になります。

「電子データによる保存が間に合わないときは、保存要件に関わらずデジタルデータを保存しても良い。」

当初の資料1では、どのようにしたら施行規則(4条1項)で定められている保存要件を守って保存ができるかという点に絞って、検討しました。

ところが、2年延期の末に、施行規則の方に「保存要件に拘らないで保存しても良い」という正反対ともいえる規制項目が追加されてしまったということになります。

もちろん、従来どおり保存要件を満たす保存もできます。

なお、既に保存要件を満たす保存をしている場合は、システム更新によって保存要件を満たさない保存に変更することは認められていません。(一問一答 問63)

あらたに電子取引データを保存する人たちだけですが、保存要件に拘らない電子取引データ保存も可能になるため、2021年11月に作成した上記資料1は見直しが必要となりました。現在思案中です。

こうして、だんだんと話が複雑になりますが、なんにしても対処策の改定が必要となっています。

前回:2024年1月から義務化される電子取引データのデジタル保存用に最適『電子取引Save V2.0』を9月リリース予定
次回:2024年1月から電子取引データのデジタル保存を始める場合の最適な対応方策は?

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2024年1月から義務化される電子取引データのデジタル保存用に最適『電子取引Save V2.0』を9月リリース予定

本ブログでは、2024年1月から義務化される電子取引データのデジタル保存について、財務省令やそれに基づく国税庁の一問一答を紹介してきました。

ブログを読まれた方の中には、来年からどうしようかとお悩みの方も多いかと思われます。見積、請求、領収書を書面で交換していた時代と比較すると、デジタル化することで、却って保存が厄介になってしまうという印象を持たれる方が多いのではないでしょうか。

その大きな原因は、財務省令(施行規則)によって、デジタル保存に複雑な要件を追加してきたためです。ところが、間に合わない向きが多いとみると、今度は要件はほぼそのままで、間に合わないなら要件を満たさなくても良いという猶予条件を追加したため、事態がさらに複雑になってしまいました。ということで、2024年からまだしばらくは混迷が続きそうです。

中堅・大企業であれば、システム投資によって、施行規則の要件を満たすデジタルワークフローを構築するなどで効率的な対応も可能です。しかし、中小企業では大きなシステム投資をしても、投資が大きいわりに効果が上がらないのでシステム化による解決が困難です。

こうした問題を解決するため、アンテナハウスでは「簡単導入」「自動入力」「ミニマムコスト」のコンセプトにより、『電子取引Save V2.0』を開発しています。

『電子取引Save』のWebページ

本製品は、電子取引データ保存に関係する社員が50人内外(10人から100人程度)のユーザーを想定して、できるだけ小さなコストで、電子取引データ保存を効率的に行えることを目標にしています。V2.0で追加した主な機能は次のページをご参照ください。

電子取引Save:V2.0 お知らせ

正式リリースは、2023年9月中を予定していますが、本日(2023年8月24日)より「ベータ版」の評価用ダウンロードを開始いたします。

なお、V2.0よりオプションとしてJP PINT用連携補完アプリも販売開始します。

JP PINT『連携補完機能』オプション

前回:2024年1月からの電子取引データ保存 結局、どうしたら良いのでしょうか?
次回:中堅・中小企業は2024年1月から施行される電子取引データ保存にどう対処するか

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2024年1月からの電子取引データ保存 結局、どうしたら良いのでしょうか?

2024年1月から法人税や所得税(源泉徴収関係は除外)の納税者が電子取引を行ったら、電子取引データをデジタルで保存しなければなりません。

もともとは2021年の電子帳簿保存法の改定により、2022年1月開始の予定でしたが、2022年から2年間の宥恕措置が設けられた結果、2023年12月までは電子取引データを書面にプリントして保存しても税法で要求される保存として認められました。

しかし、宥恕措置は12月末で廃止され、2024年1月からは印刷して書面で保存しても、書面だけでは税法上の保存ができているとは看做されないことになります。

いよいよ待ったなしで対策・準備が必要となっています。本ブログではこれまで7回に渡り、電子帳簿保存法の施行規則の変更点を中心に検討してきました。

ブログをお読みになって「それで、結局、どうしたら良いの?」という疑問を持たれた方も多いでしょう。そこで、次から、電子取引データのデジタル保存の準備ができていない保存義務者を対象として、どうしたら良いかを考えてみましょう。

まず、最初に言えることは、企業の経営にせよ、個人事業にせよ、自らが行った取引の記録を適切に保存することは、正しい経営管理、経理会計ひいては正しい意思決定を行うための前提条件です。

そして、現在、社会の仕組み全体として取引の仕方が、書面による情報交換からデジタルデータによる情報交換に変わっていきます。そうしたことを考えると、財務省や国税庁がどう考えているかに関わらず、電子取引データのデジタル保存に取り組むことは重要な課題と考えられます。

そのうえで、施行規則の第4条に対して、2024年1月からどういうスタンスで臨むかということを決める必要があります。

方針として、(1) 施行規則第4条1項で定めている保存要件を満たす取り組みを目指すか、それとも、(2) 当面は要件を満たす保存を目指すことを諦めて、3項の猶予措置で対応することを目指すかを決めることが必要です。

まず、(2)の猶予措置で対処するにはどうしたら良いかを検討します。このための条件については国税庁の一問一答 問64に一番詳しく書かれていますので、それを引用してみましょう。

問65
相当の理由が認められ、かつ、電子データ及びその電子データを出力した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限ります。)の提示又は提出の求めに応じることができれば、保存時に満たすべき要件に従った電子データの保存をしていなくても要件違反にならないとのことですが、「整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたもの」とはどのようなものでしょうか。また、「保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録及び当該電磁的記録を出力することにより作成した書面…の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしている」とありますが、具体的にはどのような対応が求められるのでしょうか。

【回答】
規則第2条第2項第2号において、電磁的記録の画面及び書面への出力は「整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができる」必要があると規定されており、規則第4条第3項の規定における「整然とした形式及び明瞭な状態で出力された書面」についても、同号における「整然とした形式及び明瞭な状態」と同様に、書面により作成された場合に準じた規則性を有する形式で出力され、かつ、出力された文字を容易に識別することができる状態をいいます。

また、「保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録及び当該電磁的記録を出力することにより作成した書面…の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしている」については、税務調査等の際に、税務職員の求めに応じ、電子データ及びその電子データを出力することにより作成した書面の提示又は提出(以下「提示等」といいます。)をしていただく必要があります。

なお、猶予措置の適用を受ける際の出力書面の整理方法については、法令上特段の規定はされていませんが、税務職員の求めに応じて提示等をしていただく必要がある書面については、その提示等を遅滞なく行っていただく必要があることを踏まえれば、例えば書面で保存している国税関係書類と同様に整理する方法で整理しておく等、税務職員の求めに応じて遅滞なく提示等ができるように、適切に管理しておくことが望ましいと考えられます。

簡単にまとめると、
a. 電子取引データを保存しておき、税務調査職員が求めた情報を提示
b. 電子取引データを問題なく閲読できる状態で出力した書面を、整理した状態で税務調査職員の求めに応じて提示

の2つができるようにする必要があります。税務調査は、通常、調査予定と調査する記録範囲について事前に連絡があるので、その連絡を受けたら、a. b. を準備すれば良いと思われます。

これは、電子取引データを漏れなく保存しておき、税務調査の予告があったときに要求された条件で記録を取り出して書面に印刷できれば満たされると考えられます。

データ件数が少ないときは手作業でもできるでしょうが、量が多くなると何らかのツールが必要になります。これを実現するツールは市場にいろいろあります。手前みそですが、これは、弊社の「電子取引Save」に電子取引データを保存しておくことでも実現できます。

ご参考:電子取引SaveのWebページ

さて、では(1)施行規則の第4条1項の電子取引データ保存要件を満たすにはどうしたらいいでしょうか? これについても、市場には様々なツールがあります。上記の「電子取引Save」でも第4条1項の電子取引データ保存要件を満たす保存ができます。

結局、市販のツールを使えば簡単にできてしまう、ということになります。

従って、あとは、ご予算がどの位必要かということと、どれだけ簡単に、手間をかけずに電子取引データのデジタル保存ができるか、ということに尽きてしまうことになりそうです。

そうすると、施行規則第4条の1項を満たすためにすること、3項を満たすためにすることとで実質的になにが違うのか、ということが疑問となりますね。

前回:財務省・国税庁の電子取引データ保存要件は石ころに金メッキして保存せよというようなものではないか?
次回:2024年1月から義務化される電子取引データのデジタル保存用に最適『電子取引Save V2.0』を9月リリース予定

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財務省・国税庁の電子取引データ保存要件は石ころに金メッキして保存せよというようなものではないか?

さて、これまで何度も示した通り、2024年1月から電子取引を行った場合、その取引データを印刷して書面として保存するだけでは国税関係書類が適切に保存されているとは看做されなくなります。

こうして、来年1月から電子取引データは必ずデジタルで保存しなければならなくなります。その保存要件が2024年1月1日から施行される財務省令(施行規則)の第4条1項に示されています。

詳しくは、2024年1月からの電子取引データ保存方法がどうなるか? 財務省令(施行規則)を読んでみるをご覧いただきたいのですが、第4条に1項に掲げられている保存要件の多くは現実的とは思えない内容です。

保存義務者である企業の経営者の立場から見ると、決算に使った請求書・領収書などの書類は、決算が終わってしまえば、その役目を終えたものです。従来、取引関係書類を書面で交換していたり、あるいはPDFで受け取ってもそれを書面にプリントして保存できた時代であれば、決算処理が終了したあと、書類を整理して段ボールに収めた上で倉庫の片隅に10年ほど保存しておけばそれで済んだわけです。

それが取引データをデジタルで交換したとたんに、「タイムスタンプを打て」とはどういうことでしょうか。これはあたかも、上流から流れてきた河原の石ころに金メッキを施して保存せよ、というようなものでしょう。

他にもあります。「訂正削除できないか、訂正削除の事実・内容を確認できるシステムを使用して授受及び保存を行う」とは一体どういうシステムを使えというのでしょうか? 

このように施行規則第4条1項は、石ころほどの価値しかもたない・使い終わった書類を保存するために、不必要としか思えない保存要件を要求していると言えます。納税者側の立場からみると、施行規則を守って保存してもなんら新しい付加価値が生まれることはないのです。こういうおかしな規制が広く普及するはずはないのは子供でも分かることでしょう。

電子帳簿保存法が2021年に改定されてから2年間、あまりにも多数の国民からの疑問が相次いだためか、2024年1月の施行規則では第4条3項が整備されて、次の文が追加されました。

所轄税務署長が当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録及び当該電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしているときは、第一項の規定にかかわらず、当該電磁的記録の保存をすることができる。

これに関連する国税庁の一問一答は次のようになっています。

問61 電子取引について、税務署長が「要件に従って保存することができなかったことについて相当の理由がある」と認める場合に、出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしているときは、保存時に満たすべき要件が不要となる旨の規定が設けられていますが、どのような場合がここでいう相当の理由があると認められることとなりますか。

【回答】
令和5年度の税制改正において創設された新たな猶予措置の「相当の理由」とは、例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、この猶予措置における「相当の理由」があると認められ、保存時に満たすべき要件に従って保存できる環境が整うまでは、そうした保存時に満たすべき要件が不要となります。

ただし、システム等や社内のワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存時に満たすべき要件に従って保存できるにもかかわらず、資金繰りや人手不足等の理由がなく、そうした要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用は受けられないことになります(取扱通達7-12)。
なお、この猶予措置の適用を受けるに当たり税務署への事前申請等の手続は必要ありません。

一言でいうと、環境が整わなかったという理由さえあれば、第4条1項に示す要件が不要になるということです。

いままで迷走を続けてきた電子帳簿保存法第7条電子取引データの保存は、ますます、混迷の度合いを深めてしまった、という印象もあります。しかし、一方、納税者から謙虚にみると、ある意味常識的な方向に向かっているかもしれないとも言えるのかもしれません。

前回:2024年1月からの電子取引データ保存をどのように進めたら良いかを考える(2)保存しなければならない書類は?

次回:2024年1月からの電子取引データ保存 結局、どうしたら良いのでしょうか?

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2024年1月からの電子取引データ保存をどのように進めたら良いかを考える(2)保存しなければならない書類は?

2024年1月1日から法人税と所得税(源泉税を除く)に関連する取引をインターネットなどで行った場合、その取引データをデジタルで保存することが改めて義務化されます。

前回は、保存義務が課される主体者は誰か、について示しました。今回は、保存義務の対象となる取引データには、どのようなものがあるか、具体的に示されている情報をまとめます。

以下は、国税庁が公開している一問一答から、保存しなければならない書類として挙げられているものをピックアップした項目です。

・取引情報(注文書、領収書等に通常記載される事項)を電磁的方式により授受する取引(電子取引)を行った場合のその取引情報(問1)

・「取引情報」とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項(問2)

・電子メール本文に取引情報が記載されている場合は当該電子メール本文、電子メールの添付ファイルにより取引情報(領収書等)が授受された場合は当該添付ファイル(問3)

・取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に係るデータを保存(問4)

・事業に関連するクレジットカードの利用明細データを受領した場合のように、個々の取引を集約した取引書類のデータを授受した場合には、クレジットカードの利用明細データ自体も電子取引の取引情報に該当することから、その電磁的記録の保存が必要です。また、その利用明細データに含まれている個々の取引についても、請求書・領収書等データ(取引情報)を電磁的に授受している場合には、クレジットカードの利用明細データ等とは別に、その保存が必要となります。(問4)

・クラウドサービスを利用して取引先から請求書等を受領した場合の、取引当事者双方で共有する請求書などのデータ(問6)

・スマホアプリを利用して決済した際に、アプリ提供事業者から受領する利用明細に係る内容(問6)

・インターネットバンキングを利用した振り込みの電磁的記録については、金融機関の窓口で振込等を行ったとした場合に受領する書面の記載事項(振込等を実施した取引年月日・金額・振込先名等)が記載されたデータ(電磁的記録)であり、そのデータ(又は画面)をダウンロードする又は印刷機能等によってPDFファイルを作成するなどの方法によって保存してください。(問9)

・従業員が会社の経費等を立て替えた場合において、その従業員が支払先から電子データで受領した領収書(問10)

・書面と電子データで取引情報を受領する場合、書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれているなどその内容が同一でない場合には、書面及び電子データの両方を保存する(問14)

・EDI取引で授受した電子取引の取引情報として保存すべきデータは、EDI取引で実際に授受したデータそのものに限定されておらず、当該EDI取引で授受したデータについて、その取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法により編集されたデータにより保存することも可能(問36)

・一つの取引に関して、異なる取引条件等に応じた複数の見積金額が記録された見積書データを授受した場合、検索機能における記録項目である「取引金額」については、課税期間において自社で一貫して規則性を持っている限り、見積書データに記録されている見積金額のうちいずれの見積金額を用いても差し支えない(問50)

・所得税法上、一定の雑所得に係る請求書・領収書等(現金預金取引等関係書類)(問68)

国税庁の、電子取引データ保存に関する一問一答に登場する、デジタル保存を要する電子取引データは上のとおりです。実際のビジネスの現場では多種多様な書類がデジタル化されて取り交わされているので、どのようなものをデジタルで保存しておく必要があるかはその都度注意深く決めていく必要がありそうです。

ところで、先日、法人用スマホの機種変更を行いました。機種変更には月々の支払額(変更)や機種変更手数料が記載されているので、法人税法上は手続きした記録の保存が必要になるものと考えられます。で、お店の担当者から、このデータをデジタルでお渡ししましょうか? それとも印刷してお渡ししましょうか? と問われたので印刷したものをもらったのです。手続き自体はタブレット上でのチェックとサインで完了したので、この場合、2024年からは電子データで入手して保存しないと電子取引データ保存義務違反になるのでしょうかね? 

このように記載内容が同一の取引情報であっても、書面とデジタルを別物と考え、法的な取り扱いを別にする、というところが個人的に電子帳簿保存法が天下の愚法であると考える所以です。

前回:2024年1月からの電子取引データ保存をどのように進めたら良いかを考える(1)保存しなければならないのは誰?
次回:財務省・国税庁の電子取引データ保存要件は石ころに金メッキして保存せよというようなものではないか?

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2024年1月からの電子取引データ保存をどのように進めたら良いかを考える(1)保存しなければならないのは誰?

2022年1月より施行電子帳簿保存法の第7条で、所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は電子取引を行った場合、その取引に関する電磁的記録(デジタルデータ)を保存することが義務付けられています。2021年12月まではデジタルデータを書面に出力して、書面で保存しても良かったのです。但し、その準備が間に合わない向きが多いため2023年12月までは宥恕措置として、引き続き書面で保存することができるようになっています。しかし、2024年1月からは宥恕措置が廃止されデジタルデータ保存が必須になります。

この経過・事情の詳細については、これまでのブログを参照してください。
1.DX時代に逆行する電子帳簿保存法は、そろそろ、いさぎよく廃止するべきではないでしょうか?
2.電子帳簿保存法・電子取引データ保存で目にあまる迷走を続ける財務省
3.電子取引データの保存、宥恕措置終了後の2024年(令和6年)1月1日からはどうなる?
4.2024年1月からの電子取引データ保存方法がどうなるか? 財務省令(施行規則)を読んでみる

個人的には電子帳簿保存法は本質的なところで設計を間違えている日本希代の愚法(という言葉があれば)と断言して差し支えないと考えています。そうは言っても日本国の法律になってしまっている以上、善良なる国民としてはこれを守らざるを得ません。ということで、これからデジタルデータ保存の検討を始める保存義務者であるという想定のもとに、どのように準備を進めると良いかを考えてみます。

誰が対象か

最初に、「保存義務者」とは誰か? を検討します。

電子帳簿保存法の第2条4項には保存義務者が次のように定義されています。
保存義務者 国税に関する法律の規定により国税関係帳簿書類の保存をしなければならないこととされている者をいう。

ところが、第7条では、「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。」となっています。

つまり、電子取引のデジタルデータ保存では、所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者に限定されているわけです。ご承知のとおり、国税にはこれ以外に様々な種類があり、特に大きなものでは消費税があります。消費税に係る証憑は必ずしもデジタル保存する必要がないことになります。なぜ消費税が除外されているのは謎です。

法人税の課税対象は、普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等などの法人で電子取引データの保存義務者となります。個人事業主は、所得税の課税対象者なので、電子取引データのやはり保存義務者です。

では例えば、本職会社員で、副業をしている人、個人の不動産を貸したり、フリマで販売したり、あるいは株式投資やFXなどの投資活動を行っている人はどうなるでしょうか? 

これについては、国税庁から出ている電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】 (PDFファイル/773KB)
【令和6年1月1日以後の取扱いに関するもの】
に次のようなQ&Aがあります。

質問(問68)
私は、勤務先から支払われている給与のほか、副業として行っている講演・原稿執筆から得ている雑所得を有しています。これらの雑所得を生ずる活動については、相手方等との一切のやりとりを電子メール・ウェブサイト上で行っていますが、法第7条の規定に基づき、その取引情報に係る電子データを保存しなければなりませんか。

回答
所得税法上、ある年の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額について、前々年の金額が300万円を超える場合には、その業務に関してやりとりした請求書・領収書等(以下「現金預金取引等関係書類」といいます。)を保存する必要があります。
副業として行っている講演・原稿執筆等は、ここでいう雑所得を生ずべき業務に該当することから、その業務に関する現金預金取引等関係書類の保存義務があるため、それを電子データで授受した場合には、法第7条の規定に基づいて当該電子データを保存する必要があります。

前々年の収入金額が300万円を超えるという閾値が設定されていますが、電子取引データの保存義務があるようです。このように、電子取引データ保存義務が課せられるのは法人だけでありません。個人事業主(開業届を出している)や事業主ではない個人も対象になるようです。

他人事では済まされない人も多いのではないでしょうか。

前回:2024年1月からの電子取引データ保存方法がどうなるか? 財務省令(施行規則)を読んでみる
次回:2024年1月からの電子取引データ保存をどのように進めたら良いかを考える(2)保存しなければならない書類は?

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2024年1月からの電子取引データ保存方法がどうなるか? 財務省令(施行規則)を読んでみる

電子帳簿保存法の第7条で、電子取引を行なったとき、電子取引データをデジタルで保存しなければならないことになっています。その保存方法については財務省令で定めることになっており、2024年1月以降の保存方法は、2024年1月1日より施行される財務省令によります。

この財務省令(「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」)(以下、施行規則)を読んで、電子取引データ保存方法について整理してみます。

電子取引データ保存については施行規則の第4条に規定されています。第4条には1~3の3項があります。

2項は用語の意義を規定しているものなので省略すると、第4条の主な内容は1項と3項になります。このうち、1項が電子取引データの保存要件に関する規定で、いわば本筋と言えます。これに対して、3項は本筋の要件を満たせないときのこと(猶予措置)を規定しているという枠組みのようです。

それぞれについてできるだけ簡単にまとめてみます。なお、以下の説明は分かりやすくするためかなり大雑把にまとめていることに注意してください。

1項 保存の要件について

原則として、次の(1)~(6)が保存の要件とされています。
※例えば、「電子帳簿保存法第7条 詳細」にも具体的な解説がありますのでご参照ください。
(1) 保存場所:取引情報の授受が書面で行われたとした場合に保存するべき場所
(2) 保存期間:取引情報の授受が書面で行われたとした場合に保存するべき期間
(3) 保存のための措置:次のa~dのいずれかを行う。
a. 電子取引データにタイムスタンプを打ってから取引データを授受する
b. 取引データを授受してから速やかにタイムスタンプを打つか、業務処理規程で定めた期間を経過した後速やかにタイムスタンプを打つ
c. 訂正削除できないか、訂正削除の事実・内容を確認できるシステムを使用して授受及び保存を行う
d. 電子取引データの訂正・削除を防止する事務処理規程を定めて運用する
(4) コンピュータシステムと説明書を備え付けて、画面と書面に整然と速やかに出力できるようにする
(5) 検索要件:次の検索要件を満たすことができるようにすること
a. 取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を検索条件として設定できること
b. 日付または金額の範囲指定で検索できること
c. 二つ以上の任意の項目を組み合わせて検索できること
(6) (システム開発を他者に委託しているとき)システムの概要を記載した書類を備える

検索要件については例外があります。
例外1:税務調査の際に電子取引データの提示・提出要求に応じるようにしているなら、(5) 検索要件のb. c は不要。
例外2:さらに基準期間の売上高が5,000万円以下、または電子取引データを日付けと取引先毎に出力した書面を提示・提出に応じて、かつデジタルデータの提示に応じることができるなら、(5) 検索要件は不要。

保存要件の緩和措置
2023年12月までの施行規則では、タイムスタンプを打つときの電子取引データを保存する者や直接監督する者の情報を確認できる必要がありましたが、2024年1月からは不要になります。また、例外2の基準期間売上高は2023年までは1000万円以下ですが、2024年1月から5000万円となります。例外2の「または」以降は2024年1月から新設されます。

3項 保存の要件を満たせないとき(猶予措置)

3項(猶予措置)の全文を引用すると次のようになります。

法第七条に規定する保存義務者が、電子取引を行った場合において、災害その他やむを得ない事情により、同条に規定する財務省令で定めるところに従って当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明したとき、又は納税地等の所轄税務署長が当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録及び当該電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしているときは、第一項の規定にかかわらず、当該電磁的記録の保存をすることができる。ただし、当該事情が生じなかったとした場合又は当該理由がなかったとした場合において、当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったと認められるときは、この限りでない。

猶予措置の引用文中アンダーラインを施した箇所は2024年1月1日からの施行規則で追加されたものです。本筋で電子取引データの保存要件について規程しているにも関わらず、猶予措置では規程に関わらずに保存できるということなので、矛盾しているように見えます。猶予措置の前提として税務署長が相応の理由があると認めることも、恣意的な印象があります。このあたりはもう少し調べてみたいところです。

なお、第3項でも電子取引データの提示・提出が必要とされているので、電子取引データの保存が不要になるということはありません。

Webを検索すると2024年1月から「電磁的記録の電子保存義務化の経過措置として整備されていた「宥恕措置」が、恒久的なものとして制度化された」といった解説も見られます。しかし、この理解は誤りと思われます。つまり、宥恕措置では書面による保存を認めていたのに対し、2024年1月からの猶予措置では「電磁的記録及び当該電磁的記録を出力することにより作成した書面」の提示となっているので、デジタルデータと書面の両方を提示する必要があります。つまり書面の保存のみでは認められなくなります。

最後の「ただし」以降は何を意味しているのか理解しにくい文で不気味です。いまのところ、これに関する解釈を見つけることができていません。

前回:電子取引データの保存、宥恕措置終了後の2024年(令和6年)1月1日からはどうなる?
次回:2024年1月からの電子取引データ保存をどのように進めたら良いかを考える(1)

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