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電子帳簿保存法・電子取引データ保存で目にあまる迷走を続ける財務省

先日は、「DX時代に逆行する電子帳簿保存法は、そろそろ、いさぎよく廃止するべきではないでしょうか?」と主張しました。この記事をお読みになっても、なぜ廃止するべきと主張するのか理解できないかもしれません。

そこで、今回は電子取引データ保存を例として、財務省の迷走をご紹介します。

例えば、アマゾンや楽天などのECサイトで、会社で使う物品を購入したとします。そうすると請求書または領収書をPDF形式で入手して、それによって経理処理をすることになるでしょう。

このPDF形式の証憑は電子帳簿保存法で保存義務が課せられます。該当する条文は、当初は第10条でしたが、2021年3月に電子帳簿保存法が改定されてからは第7条となります。

第10条は次のようになっていました。

第十条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない。

つまり、PDFを出力した書面を保存すればよく、デジタルデータは保存する必要はなかったのです。ところが、2021年3月改正の第7条では次のようになりました。

第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

そして、財務省令で保存のための要件が定められ、2022年1月より施行するとされていました。つまり、2022年1月からは書面にプリントして保存するのではなく、財務省令の要件を満たした上で、デジタルデータのまま保存しなければならないことになったわけです。

こうした状況を予想して、アンテナハウスは、2021年春から財務省令で定める要件を満たす電子取引データ保存専用の製品開発に急いで取り組みました。これは『電子取引Save』という製品名で2021年秋から発売するとともに、2022年1月から『電子取引Save』を用いて、自社でも電子取引データ保存を運用することとしました。

『電子取引Save』のWebページ
『電子取引Save』発売のお知らせ

ところが、2021年秋の税制改正大綱策定で雲行きが怪しくなりはじめました。そして最終的には2021年12月27日に財務省令が改定され、2022年1月から2024年12月31日まで次のような宥恕措置が施行されることとなりました。

電子取引データの出力書面等による保存措置の廃止(令和3年度税制改正)に関する宥恕措置について(財務省のWebページへのリンク)

一言でいえば、間に合わない事業者が多いので引き続き書面による保存を可能にするということです。

こうして、折角、新製品を開発してリリースしたにも関わらず、肝心かなめの財務省が腰砕け、真面目に取り組んだ国民は梯子を外されたということになりました。でも間に合わないというのは言い訳に過ぎないのです。実際に弊社は2022年1月より『電子取引Save』を使って電子取引データを保存しているわけですから。

こうして財務省の方針が一転してから約2年、2023年12月で宥恕措置の期限が切れることになります。さて次回は2022年から2023年の経過で迷走の第2幕、2024年1月からの保存がどうなるかをみたいと考えています。

参考資料)
見積書、注文書、請求書、領収書をPDFとして作成し、Webダウンロード配信や電子メールによる送受信をしたときの保存義務について(更新日: 2021/11/3)

前回:DX時代に逆行する電子帳簿保存法は、そろそろ、いさぎよく廃止するべきではないでしょうか?
次回:電子取引データの保存、宥恕措置終了後の2024年(令和6年)1月1日からはどうなる?

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DX時代に逆行する電子帳簿保存法は、そろそろ、いさぎよく廃止するべきではないでしょうか? 

法人税法などの国税関連法では、企業は決算に影響を与える証憑書類を、決算申告時点から7年(必要に応じて10年)保存することが義務付けられています。これは、会社を経営する人や、税理士なら皆知っていることなので、いまさら話題にもなりません。

取引の証憑が書面(紙)である場合は、会社から取引相手に発行した請求書や、取引相手から送られてきて支払いに使った請求書や領収書などは決算処理を行った後、整理して段ボールなどに入れて倉庫保存しておくのが普通です。一旦、倉庫にいれてしまえば、後日、取り出してみることはほとんどありません。何年かに一回、『税務署から調査にいくので用意しておいてください。』といった連絡があると、倉庫から送ってもらい、税務調査に備えるくらいです。

ところが、これらの証憑書類をPDFなどのデジタルデータにしたとたんに、「電子帳簿保存法」という法律の対象となってきます。そのため保存のための要件がいきなり厳しくなってしまうのですね。

電子帳簿保存法は1998年(平成10年)に初めて制定された法律で「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」というタイトルが付いています。

電子帳簿保存法では、①始めからコンピュータを使ってデジタルで作成した証憑のデータの保存、②書面(紙)で作成された証憑をスキャナなどでデジタル化したデータを書面に代えてデジタルで保存する、③インターネットなどでデジタルでやり取りした取引データをデジタルで保存するための要件を定めています。

詳しい内容は省きますが、電子帳簿保存法があるために、弊社のような中小企業では書面で作成してやり取りした証憑よりも、デジタルデータとしてやりとりしたデータを(要件を満たすように)保存する方が、保存に手間とコストがかかってしまうことになっています。

これは取引先が多岐にわたるため、書面とデータが混在してしまっていることもかなり大きな原因です。

最近では、電子帳簿保存法を最初に制定するときに、コンピュータを使って作成した国税関係帳簿書類の保存を「特例」として扱ってしまったことが根本的に誤っていたのではないかと考えています。つまり、書面とデジタルデータを、記載された内容が同じであれば同等のものとして扱うとしないで、書面とデジタルという内容を表現する媒体によって保存時の扱いが別になる・区別したということが問題ではないかということです。

振り返ってみると、1998年といえば、コンピュータがビジネスインフラとして欠かせなくなっていて、コンピュータで証憑の為のデータを作成するのが当たり前となり、インターネットもPDFも使われ始めていた時期です。そういう時に、コンピュータのデジタルデータを特例扱いする法律として制定された、というあたり、電子帳簿保存法は、未来が見えていない、どうしようもなく行き詰っているという印象を禁じえません。

次回:電子帳簿保存法・電子取引データ保存で目にあまる迷走を続ける財務省

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