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株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例

前回(株式投資の考え方:投資成績の評価方法)は、株式投資の成績評価方法について弊社で行っている考え方を示しました。

考え方だけでは抽象的で分かりにくいので実際の例を紹介します。以下は、弊社で取得・保有している「積水ハウス」の例です。あくまで評価方法を考えるために取り上げているものです。

取引の履歴

初回買付は2022年6月17日で、1万株を取得し、金額は手数料込みで23,143,307円、一株あたり2,314.33円となります。
2023年8月17日に4,000株を売却しました。売却価格から取得原価を差し引いて2,166,398円の売却益がでました。
2023年10月4日に5,000株を取得して、累計保有株数が11,000株、取得額の残高は27,937,683円となっています。
この間、中間配当と期末配当を受け取り、配当金の累計金額は2,394,000円となりました。(いずれも税額控除前の金額です)。

評価

保有期間は9月25日までで832日。
売却と買付で残高が増減していますが、平均保有残高は24,638,616円となります。

2024年9月25日昼時点の「積水ハウス」の株価は、3,963.0円なので、評価額は43,593,000円となります。

9月25日時点での実現トータルリターン(実現トータル損益)は4,560,398円。
これに評価益を加えたトータルリターン(評価込みトータル損益)は20,215,715円となります。

平均残高で割って損益率を計算すると、実現18.5%、評価込み82.0%となります。これは保有期間832日に対する損益率なので、年率に換算すると年率実現利益率8.1%、評価込みでは年率で36.0%となります。

保有している銘柄についてこのような評価値を計算し、一覧表にして、パフォーマンスの悪い銘柄をカットしていくなどの措置を行うと良いでしょう。

連載

初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例(本記事)




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株式投資の考え方:投資成績の評価方法

株式投資に限らず、自分が行った投資判断が正しかったのかどうかを確認して、間違っていた場合は、それなりに軌道修正をする必要があります。そのためには、判断の根拠とするための評価データが必要です。

投資信託では、トータルリターンで評価することが多いようです。トータルリターンとは、インカムゲイン(投資信託の売買損益)とキャピタルゲイン(分配金)を合計したものです。

株式投資の評価もトータルリターンで評価するのが良いでしょう。株式投資でのトータルリターンは、株式売買の損益と配当金を合わせたもので計算します。

売買損益や配当金は税込みで計算するか、源泉税を控除したあとの金額で計算するか、といった選択肢があります。

さらに、評価損益を加味した金額で計算するか、といった選択の余地があります。

当社の資産運用では次のように評価しています。

1.確定トータルリターン(確定トータル損益)
=税込売買損益+税込受取配当金合計値

2.評価込みトータルリターン(評価込みトータル損益)
=税込売買損益+税込受取配当金合計値+評価損益額
=確定トータルリターン+評価損益額

※全売却済の株式では評価損益額はゼロになります。

資産が増えているか減っているかは、これで分かります。しかし、確定トータルリターンも評価込みトータルリターンも、売買しないままで年月を経過すると配当金が積み上がって大きくなります。これでは、効率性の評価ができません。

そこで、投資効率を評価するために、保有期間中平均購入残高で割って、収益率とし、更に、保有期間(年換算)で割って、年率のトータルリターンを計算します。

3.確定トータルリターン(確定トータル損益)(年率)
=(確定トータルリターン/保有期間中平均購入残高)/保有期間(年数)

4.評価込みトータルリターン(評価込みトータル損益)(年率)
=(評価込みトータルリターン/保有期間中平均購入残高)/保有期間(年数)

こうした数字を使って、投資がうまくいっているのか、うまくいっていないかを把握します。

うまくいっていない場合は、対応策を考えます。

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初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法(本記事)
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例




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株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか

前回(株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法)は、投資先候補銘柄の選定法について、弊社の投資先選択に際して採用している考え方を紹介しました。

さて、ではこうして選択した投資先の銘柄をいつ買い・いつ売ったら良いのでしょうか? 株式の売買での利益(源泉税控除前)は、売値から買値を引いた差額(さらにそこから証券会社に払う手数料を引いた金額)なので、できるだけ安い値段で買い、できるだけ高い値段で売るのが良いことには異論の余地がありません。

できるだけ安い値段=最安値、できるだけ高い値段=最高値とすると、最安値で買い、最高値で売ることが理想ということです。しかし、これを実現するのは不可能です。それどころか、最安値、最高値を確定することもほとんどできません。なぜなら、これは期間の取り方に依存し、今日は最安値だったとしても、明日はさらに安くなるかもしれないからです。つまり未来まで予想しないと最安値は決まらないため、最安値で買うというのは不可能となります。同様に、最高値で売ることも不可能となります。

ということなので、売り買いのベストタイミングを確定することは何人にもできません。

株の売り買いの方法についていろんな本を読んだり、自分でもいろいろなやり方を試みているのですが、上のような理由からか、なかなか決定打といえるものは見いだせません。

科学であれば、ある人が発表した実験結果は、他の人が同じ方法で再現できるはずです。しかし、株の売り買いは他人の方法を本などで読んで真似してもなかなかうまくいきません。そうすると株の売買というのは科学ではなく、芸術の領域なのかもしれません。

そういってしまうと、話は終わりなのですが、昨日(9月12日)みずほ証券の中村克彦氏の講演を聞きにいったところ、氏曰く「順張りでは資産を増やせない。逆張りの発想が良い。新型コロナショックや8月5日大暴落のような機会に買うべきだ」とのことでした。これは私もほぼ同意見です。

新型コロナショックや8月5日大暴落のような日経平均が20%ほども下落する危機はめったにありません。このため、大暴落のタイミングを狙うだけでは、継続的に利益を上げるのは難しいでしょう。しかし、個別銘柄が(赤字決算以外で)大きく下げたタイミングを狙って買う、逆張りの買い方は比較的うまくいくようです(赤字決算で下げたときに買ってはいけません)。

大きな下げのチャンスに向けて計画を立てて、資金を貯めてじっくり待ち、チャンスが来たらぱくっと食べる。これが良いのではないでしょうか。そのためにはいつも多少お腹を空かせている必要もあります。

安く買うことができれば、あとは何時売っても利益がでます。利は仕入れにあり。商売は仕入れが重要なのです。

ところで、米国の陸軍レンジャー隊には「どんな計画も敵との交戦には生き延びられない。」という教えがあるそうです[1]。戦いは臨機応変、柔軟な対応が必須ということのようです。

計画をたてていてもいざ暴落になったらうまく対処できないということのないように。日ごろからの資金の備えと心の鍛錬が重要です。

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[1] 『AI覇権 4つの戦場』(ポール・シャーレ著、早川書房、2024年5月25日発行)




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株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法

初回(株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか)に、「良い会社の株価は、長い目で見れば、必ず上がる」と言いましたが、では良い会社とはどのような会社でしょうか。

最近読んでいる為替取引の教科書に株式と為替の違いとして「株式は資産と考えられるが、為替は資産ではない」という意味の説明があり「なるほど」と思いました。

株の資産価値とは

良い会社の基本は、保有している間に資産価値が増えるという観点で考えると分かりやすいでしょう。では株式の資産価値とはどういうことでしょうか。

会社法によって株式会社は貸借対照表を作成・公開することが義務付けられています。簡単にいうと、貸借対照表の資産総額から負債総額を引いた純資産がその会社の全体としての資産価値を表すと考えられます。会社全体の資産価値を会社が発行している株式の数で割ると「一株あたり純資産」を計算できます。

純資産は、税引後利益から、配当、自社株買いや役員報酬などを引いた残りを毎年積み上げたものです。株数は発行済み総株数から自社株数を引いたものなので、新しく株を発行すれば増え、自社株を取得すれば減ります。

ざっくり言うと、毎年の一株あたり利益から一株あたり配当を引いた残りの分だけ一株あたり純資産が増えることになります。

保有する株式数に一株あたり純資産をかけた額が、保有株の資産価値を表す目安となります。こうした考え方は、会社のオーナーとしての資産価値判断に近いといえます。

上場会社は、「一株あたり純資産」とは別に一株あたりの「取引価格」が市場で決まります。株主にとっては保有する株の資産価値を、その取引価格×保有株数によって評価できます。

最近は、上場会社の株価は株価純資産倍率(PBR: Price Book Ratio、株価÷一株あたり純資産額)が1以上であるべきだ、などと強調されています。つまり、取引価格である株価は一株あたり純資産額より高くあるべきだという考えです。

このように評価する基準は一つではないのですが、何にしても株式は交換価値と保有価値をもつ資産であるといえます。

良い会社とは

さて、当社では上場株式による資産の運用を行っています。資産運用にあたり、まず良い会社を選んで投資候補銘柄リストを作成します。

ここで良い会社と考える条件を大雑把にまとめると次のとおりです。

1.常に利益を出し続けていること
利益の基準としては原則として経常利益を用います。そして売上高に対する経常利益率が10%以上であることが望ましいとしています。毎年しっかり利益を出すとそれが積み重なって、純資産が確実に増えていきます。これにより資産価値が大きくなるわけです。また、原則として過去10年間は赤字を出していないことを条件とします。赤字を出す会社は、会社として社会に存在を認められていないと考えます。赤字を出し続ける会社は投資先としてふさわしくありません。

2.成長していること
売上や利益が年々増えていること。売上や利益が減少傾向にある会社は選ばないようにします。

3.毎年配当を出していること
配当利回り(年間配当÷株価(%))は4%以上あるのが望ましい。
配当性向(配当÷一株あたり利益(%))は高くないことが望ましい。
特別配当は毎年の配当とは考えられない(減配される可能性がある)ので含めない。
但し、株価は高くなったり、安くなったりするのに加えて、配当も半期単位で増減する可能性があるので配当利回りもかなり変動します。リストアップする時は、配当利回りの許容範囲を広くしておく方が良いでしょう。
会社は配当を出さずに、それを再投資に回す方が良いという考え方もあります。しかし、株主の立場からは、仮にインフレ率2.5%の状態で5年間株を保有すると、投資資金が12.5%も目減りしてしまいます。インフレ率を上回る配当があれば投資資金の目減りを心配することなく長期保有できます。

4.株価が割高でないこと
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio、株価を一株あたり利益で割った数字)が概ね15以下であること。但し、PERは分母が一株あたり利益という動きやすい値です。このため減益になると分母が小さくなる結果、PERが大きくなるなど変動が大きくなります。また、一株利益を実績値とするか予想値とするかでも変わります。こうしたことを鑑みると15という数字は絶対ではなく、一つの目安と考えます。

5.人気があり、売買し易いこと
株式投資は人気投票であると言われます。人気がある株は買われやすく需給から株価が上がりやすくなります。人気があるかどうかは、日本株であれば日経平均など有力な株価指標に採用されているかどうかで判断します。米国の株であれば、S&P500に採用されている銘柄を優先するわけです。また、流通している株数が少ないと、売り買いしようとするときに値段が付かないことがあります。また、自分の売り買いだけで、株価が動いてしまうことがあります。時価総額が大きい銘柄が売買しやすいと言えます。

評価の観点を分類すると1,2は会社の業績評価、3は長期保有し易いこと、4、5は株を売買する観点からの評価になります。こうした多角的観点で評価します。

会社の業績は経済環境のような外部環境、経営体制、新製品の売れ行きなどで変化します。そこで、四半期毎の決算発表などを参考にして、投資候補銘柄リストを随時更新していきます。

最後に、ここで説明した考え方は、かなり保守的、つまりなにかあっても大きな損失にならないという方針に基づくものであることを補足しておきます。

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2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
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株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?

前回(株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること)は、日経平均の変化を、夜間の変化と日中の変化に分解してみました。

その結果、通常時は夜間の変化と日中の変化の関連性(相関)は小さい。しかし、8月2日と8月5日は、夜間に大きく下落し、日中にさらにその下落幅が大幅に拡大した結果暴落となったことが分かりました。

夜間取引は日経平均先物取引(シカゴ市場や大阪市場)になります。この夜間取引には米国市場の取引が影響を与えているかもしれません。そこで、視野を少し広げて、ダウ平均、S&P500、NASDAQという米国市場を代表する3つのインデックスと日経平均の動きがどのように関係しているかを調べてみます。

最初に、日経平均と米国の3つのインデックスについて、6月6日から8月16日までの50営業日の基本統計量を確認すると、次のようになります。

範囲/平均値27.8%6.6%8.8%13.9%

日経平均 ダウ平均 S&P 500 NASDAQ
平均値 38,715.42 39,616.43 5,464.18 17,585.50
標準偏差 2,090.39 724.93 106.555 593.72
最小 31,458.42 38,589.16 5,186.33 16,195.806
最大 42,224.02 41,198.08 5,667.2 18,647.448
範囲 10,765.6 2,608.92 480.87 2451.642

※数値絶対値の単位:日経平均は円、米国インデックスはドル。以下、同様です。

ざっと見ると日経平均は他のインデックスと比べてかなり変動幅が大きくなっています。これは範囲(最高値と最安値の幅)を平均株価で割ってみると分かります。

この50営業日の間で、日経平均は平均値の上下に27.8%も変動しています。それに対してダウ平均が6.6%、S&P500が8.8%と小さく、NASDAQでも13.9%で変動幅は日経平均の半分でした。

次にこの4つのインデックスの動きを比較してみます。それぞれの変動範囲が異なるので、各インデックスの毎日の株価を偏差値に換算してからチャートに表してみます。(このチャートは各株価インデックスを平均からの偏差値に換算したものなので、変動の大きさの絶対値を表していません。ご注意ください。)

この図をみると、ダウ平均は、他のインデックスとはかなり異なる動きをしています。それに対して、他の3種のインデックスは比較的似た動きをしています。

そこでこの4つのインデックスの相関係数を求めてみると次の表のとおりです。

日経平均 ダウ平均 S&P 500 NASDAQ
日経平均 1
ダウ平均 0.22 1
S&P 500 0.84 0.51 1
NASDAQ 0.91 0.22 0.94 1

日経平均とNASDAQの動きがかなり似ています。米国株同士ではS&P500とNASDAQの動きが似ていますが、これはS&P500の中にNASDAQの有力銘柄が含まれているので自然です。

一方、日経平均とダウ平均は、この期間で見る限り、あまり連動していません。

上の表は日経平均と同じ日付の米国インッデクスとの相関を調べたものです。時差を加味すると日経平均の動きが米国株に影響を与えているかという観点で見ていることになります。そこで、米国株の動きが日経平均に影響を与えているかという観点で見るため、1日前、2日前の米国株インデックスと日経平均の相関も調べてみました。

ダウ平均 S&P 500 NASDAQ
同日 0.22 0.84 0.91
1日前 0.14 0.81 0.89
2日前 0.01 0.70 0.82

この表からは、日経平均と同日の米国株インデックスの相関が最大で、日経平均と前日の米国株インデックスの相関は少し小さく、日経平均と前々日の米国株インデックスの相関はさらに小さくなっています。このことから、この分析期間中は米国株インデックスが日経平均の下落の影響受けて下落した傾向もあると言えるでしょう。

株価の動きのまとめ

さて、この50営業日の株価の動きと上で調べた結果から考えられることをまとめてみます。

1.8月16日までの50営業日では、日経平均とNASDAQの変動は似通った動きをした。
2.変動の幅ではNASDAQより日経平均が2倍程度大きかった。
3.NASDAQは7月10日に最高値を付けてその後下落を始めた。一方、日経平均は7月11日に最高値を付けて下落を始めた。日経平均の動きがNASDAQに1日遅れていることから、この時点では日経平均はNASDAQの下げを追随しているようです。
4.両者は7月最終週まで下落傾向にあったが、7月31日に日銀が利上げを発表した時点では一旦少し上がった。
5.翌8月1日から日経平均は3日連続で合計7,643.40円下げ(7月31日終値の約20%の下げにあたる)。この間NASDAQも3日連続で合計1,399.32円の下げとなった。これは7月31日終値の約8%の下げにあたるのでNASDAQの動きは日経平均に同調したが変動幅ははるかに小さかった。
6.日経平均は8月5日に31,458.42円で底となり、その後、8月16日までで5,255.16円上げた。NASDAQは8月7日の16,195.806ドルが底となり、その後、8月16日までで1,435.914ドル上げて、既に7月31日の株価を上回った。

ダウ平均はNASDAQとは異なる動きをしています。恐らく、投資資金の一部がNASDAQ銘柄からダウ銘柄に移動しているのでしょう。

なお、いうまでもないことですが、日米株価の相関が高いことは因果関係があることを示しているわけではありません。日米両方の市場で投資活動を行っているグローバル投資家が日米両方の市場で同じような売り買いをしているためでしょう。

こうしてみると、8月1日からの株価の下げは株価だけをみるだけでは原因が分かりません。恐らく、7月11日のNASDAQ急落以降の下げのダメージに加えて、日銀利上げによる円高ショックが8月5日の暴落の原因なのでしょう。特に日本株については、為替レートの変動が大きい影響を与えているようです。

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株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること

前回(株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか)は、株価の暴落を事前に察知できず暴落に巻き込まれてしまったときは、なにもしないで株価がもとに戻るのを待つのが良い選択になるかもしれない、と書きました。

このようなことがいえるのは自己の(余裕)資金で現物株を保有していることが前提になります。

信用取引をしているときはそういうわけにはいきません。信用取引には、①清算期限があるのでのんびり待てない、②資金を借りるコストがかかる、③保有している株価が大幅に値下がりしたときは追加の信用取引保証金が必要になる、といった問題があります。

従って、信用取引をしている場合は、起きている事態を見極めて迅速に手を打たなければなりません。

では、株価が下がるかどうか、上がるかどうかをできるだけ早く見極めるにはどうしたら良いでしょうか。ここでは2024年8月5日の暴落を中心とする日経(225銘柄)平均株価の最近の動きを分析して何が学べるかを考えてみます。まとめるには少し気が早いかもしれませんが・・・

日経平均株価の毎日の動きは次のように表すことができます。

(当日の)終値の前営業日の終値からの変化
=(当日の)始値の前営業日からの変化+(当日の)日中の変化
=夜間の変化+日中の変化

日経平均が上がった、下がったというのは、終値の変化をいいます。上の式では「(当日の)終値の前営業日の終値からの変化」にあたります。

終値の変化は、上の式のように夜間の変化と日中の変化に分解できます。図で示すと次のようになります。

この3つの日経平均株価はどんな関係があるのでしょうか。2024年6月7日から2024年8月16日までの49営業日について調べてみます。

2024年6月6日の終値は38,703.51円、8月16日の終値は38,062.67円です。6月7日から8月16日の49営業日で終値が640.84円下げており、1営業日あたり13.08円の下げとなっています。

この49日間の日経平均株価の変化の基本統計量を計算すると次の表のとおりです。

夜間の変化 日中の変化 終値の変化
平均値 -23.209 10.130 -13.078
標準偏差 339.331 795.883 997.103
最小 -682.160 -3,790.940 -4,451.280
最大 618.910 2,598.130 3,217.040

夜間の変化と日中の変化を比較すると、夜間の変化の標準偏差より、日中の変化の標準偏差の方が倍以上になっているので、主な変化は日中に起きていることがわかります。最小値、最大値(の絶対値)も日中の方が大きくなっています。日中の日本市場の参加者が多いことからこれは自然な傾向です。

8月5日は最大の下げとなった日ですが、660.34円(1.8%)下げて始まり、日中の下げ幅が3,790.94円、終値4,451.28円(12.4%)の下げとなりました。

次は、この3つの株価の変化の相関係数を調べてみます。

夜間の変化 日中の変化 終値の変化
夜間の変化 1
日中の変化 0.45 1
終値の変化 0.70 0.95 1

ここから、夜間の変化と日中の変化の関連性は比較的小さく、日中の変化と終値の変化の関連性が比較的高いことが分かります。

次に、夜間の変化を横軸に、日中の変化と終値の変化を縦軸にとって日々の株価の変化をプロットしてみました。

これを見ると、夜間に概ね600円程度の上げまたは下げがあった場合、日中にその上げと下げをさらに拡大する方向に動き、結果として終値の上げと下げが、夜間の上げと下げよりもかなり増幅されたことがわかります。

夜間の下げが大きかった8月2日と8月5日、夜間の上げが大きかった8月6日と16日を除いて、3つの株価の変化の相関係数を計算してみました。

夜間の変化 日中の変化 終値の変化
夜間の変化 1
日中の変化 0.069 1
終値の変化 0.65 0.80 1

この結果からわかることは、平常の期間においては、夜間の上げ・下げと日中の上げ・下げはあまり関係がないようだということです。

前のグラフと合わせると、夜間の上げ・下げが非常に大きい場合にのみ日中の上げ・下げは夜間の上げ・下げを増幅する方向に動くようです。

日経平均先物の株価の動きから、日経平均始値をある程度予想できます。従って、信用取引をしているときは、先物株価の動きから日中の株価の動きを早めに察知して、リスクを小さくするための対策ができるかもしれません。

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株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか

2024年8月5日は日本株の投資家にとっては受難の日でした。

日経平均(225)は、8月5日 1日だけで4,451円(前日比12.4%の下げ)という歴史的な暴落を記録しました。それから1週間経過、まだ砂塵が収まらない状態ですが、この機会に株価の暴落に対して投資家がどのように対処するべきかを考えてみました。

まず、株式に投資する人は「良い会社の株価は、長い目で見れば、必ず上がる」ということを信じる必要があります。逆に、そのことを信じない人は、個別投資だろうがインデックス投資だろうが、そもそも株式投資をしてはいけません。

しかし、株価はかなり大きく変動します。これは歴史を振り返ってみればすぐにわかることです。例えば、近いところでは、2020年の2月頃から4月にかけて起きた新型コロナウィルス感染症パンデミックでは20%程度暴落しました。それ以外にも21世紀に入ってから、既に数回の暴落が起きています。

こうしたことを考えれば、株価が暴落したときどう対処するべきかは、日ごろから考えておかないといけないことと言えます。

さて、現在、1,000万円(評価額=取得額とします)の株を保有しているとします。明日、20%下落してしまったとしたらどうしたら良いでしょうか?

極端なケースとして、(1)何もしない場合と、(2)下がったところで売却(損切)するケースを比較してみましょう。先に、株価は必ず上がると言いましたが、ここで仮に株価が2年後に元に戻ったとしましょう。

1000⇒800⇒1000と変化するという想定ですが、この場合、下落率は20%、下落からの上昇率は25%ということになります。

(1)何もしない場合

今日の評価額:1,000万円
明日の評価額: 800万円
株価が2年後に回復したとして2年後の評価額:1,000万円

結果:2年後にはチャラになります。

(2)下がったところで売却して損切する

今日の評価額:1,000万円
売却した現金: 800万円(売却損:200万円)
明日の評価額:  0万円
株価が2年後に回復したとして、2年後の評価額:0万円(売却損:200万円)

売却しないで保持するケース(1)では2年後に株価がもとにもどればチャラになります。なお、2年間で配当金を得ることができれば、その分投資成績がプラスになります。つまり株価が暴落して、元に戻るのを待つとき、配当がかなり重要な利益源になるということです。

一方、売却するケース(2)では、売却した時点で損失が確定します。但し、損失が確定する代わりに800万円の自由に使える資金が確保できるので、それを2年間で125%を超えるリターンを得られるような新しい投資先を見付けることができれば(1)のケースよりも良い投資成果を生み出せる可能性もあります。現金化して何もしないのが最悪で200万円の損失で終わってしまいます。

保有している株が暴落する前に、それを察知して、暴落する前に売却して現金化しておくことができれば理想的です。しかし、神様でもない限り、それはなかなか困難です。そこで株式投資家は、保有している株が暴落したときどう対処するかを常にシミュレーションして考えておく必要があります。

連載

初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか(本記事)
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例




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米国国債の利回り変化と国債価格の値動きを調べてみた

一般には、金利が上がると債券の価格は下がると言われている。では、金利のうごきと債券価格の動きは定量的にどのような関係になっているのだろうか。

債券運用の本を読んでみたところ、次のような説明があった。ここでは単純化するために利息(クーポン)の付かない割引債(ゼロクーポン債)の場合について示す。

割引債の価格(P)と複利最終利回り(r)には次の関係がなりたつ。

P=100/((1+r)^n) (n:残存年数)

これは価格Pの割引債を満期まで(n年)保有すると100で償還される。そのときの複利計算の利回りがrとなるということを表す式なので、割引債がデフォルトしない限り必ず成り立つ一種の定義式である。

上式の両辺をrで微分すると次のようになる。

dP/dr=-100n/((1+r)^(n+1))=-nP/(1+r)

これは次のように置き換えられる。

dP/P=-(n/(1+r))*dr

この式は残存n年の割引債の価格変化率(dP/P)は複利最終利回りの変化幅(dr)に対して、n/(1+r) 倍した値になるということを表している。

現在の米国30年国債の利回りは概ね4%強になっている。なので残存期間30年の米国割引国債を買って保有したとき、利回りが1%下落すると、価格は28%ほど上昇するということになる。

式の導出過程を振り返れば分かるとおり、上の関係は理論的なものだ。

実際には国債の価格は市場の需給関係で決まっていると言われている。自然界ではニュートンの万有引力の法則が成り立つとしても、魑魅魍魎が支配する証券業界で、こんな理論的関係が、あたかも万有引力の法則のように働くものなのだろうか。

俄かには信じがたいので、早速、楽天証券で米国30年ストリップ国債(残存期間25年3カ月)を少額だけ購入して実際の値動きを調べてみた。

1.楽天証券では評価額は毎日当日夕方の17時頃にわかる。
2.また別にQuick情報で米国30年国債の利回りを調べる。米国30年国債の利回り(終値)は翌日の朝にわかる。

1月16日から2月8日までのデータは次のとおりであった。

この結果を見ると、前日に国債利回りが上がっているときは、ストリップ国債の楽天の評価価格が下がり、逆に利回りが下がっているときは、ストリップ国債の評価価格が上がっている。

国債利回りの変化(drに相当)をx軸に、ストリップ国債の価格の変化率(dP/Pに相当。Pは前日の価格、dPは前日からの価格変化)をy軸にとって分布図にすると次のようになる。

Excelで回帰分析して、次の関係式を得た。xとyは1日ずれている。

y=-0.241x+0.001

これによると、利回りが1%下がると、価格は概ね24%アップする、という関係になる。

概ね、理論どおりの関係が成り立っているようだ。

実際には、前日の米国30年国債の利回り終値を見て、楽天証券が評価価格を計算しているのかもしれない。もし、そうなら観測値がほぼ直線上に並ぶはずなのだが。

「債券の価格と利回りはコインの裏表の関係にある。しかし、主従関係からみれば価格が主」という説明もあるが、債券の価格決定過程はブラックボックスなので、真実はわからない。

参考資料:『債券運用と投資戦略』(金融財政事情研究会)




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