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株式投資の考え方:トランプ不況は来るか? 株式インデックスの動きから考える

今週は日米の中央銀行の金融政策決定会合が開催され、大方の予想どおり、政策金利の据え置きが決まった。会合後の会見では、日銀の植田総裁、およびFRBのパウエル議長は、ともにトランプ政権の政策の影響で各国の経済・景気の見通しが極めて不確実になっているという見解を示している。

トランプ関税の概要とその影響

第2次トランプ政権の政策の中で、世界経済にもっとも大きな悪影響を与える可能性があるのは関税であることは間違いない。経済ニュースを大雑把にまとめると、(1) 2月4日から中国からの輸入に10%の追加関税、(2) 3月4日からカナダ、メキシコからの輸入に25%一律関税を賦課(3月6日に『アメリカ・メキシコ・カナダ協定』(USMCA)に含まれる品目は4月2日まで猶予と修正[1])、中国にさらに10%の関税上乗せ、(3) 3月12日から鉄鋼・アルミニウムに25%の関税を賦課、(4) 4月2日から自動車に25%の関税を賦課するといったスケジュールになっている。この他、4月2日に相互関税の発表が予定されている。

米国の輸入関税は製品価格の上昇による需要の減少などを通じて米国のGDPを下振れさせる。また、コスト増と需要減、サプライチェーンの混乱などによる企業収益の減少となる。一方、輸出国側も輸出数量減によるGDP低下となる。その上に、相手国側が報復関税を掛ければ悪影響のスパイラル効果が生まれる。こうして世界全体の2025年経済見通しは厳しく変更されつつある[2]

いまのところ各種統計データには明確な影響が表れていないようだ。これは最大の懸念である自動車関税はアナウンスされただけで完全には実行されておらず、その他の関税も実行されてからの期間がまだ短いためである。統計データで確認するなら、早くて4月の月次統計、あるいは4月以降に発表される上場企業の会計報告を待たなければならない。

景気変動と株式投資

短期的な株式投資リターンを最大に上げようとするなら、こうした報告を待っていたのでは遅すぎる。バイアンドホールド(一度買ったら売らないで長く保有)という長期投資を目指すなら、そんなに急がず、株価に現れる結果をみて、十分安くなったことを確認してから動いても大丈夫だろう。但し、その長期投資家が下落時に買うつもりなら、いまのうちにある程度持ち株を売却して資金を用意し、腹を空かせておく必要がある。満腹では新たに買い難いからだ。

『株式投資 第6版』の第19章 株式と景気循環によると「ほぼ例外なく、株価は景気後退の前に下落し、景気回復の前に上昇する」。そして米国で第二次大戦後に12回あった景気後退期では、景気後退が始まる直前から13か月前(平均4.9カ月前)に株価インデックスがピークとなっているという説明と図表が掲載されている(pp. 292~293)。

12回の景気後退期において株式インデックスのピークからの最大下落率は平均21.32%、そのうち株式インデックスのピークから景気のピークまで(先行期間)に平均7.24%下げているということだ[4]

株価が大きく下落しても必ずしも景気後退にはならない。しかし、景気後退の前には必ず株価が下落する。つまり株式インデックスの下落は、景気後退の必要条件だが、必要十分条件ではない。

昨今の株価インデックスの状況をみると、トランプ大統領の意図が明らかになるにつれて主に米国株は大きく下げている。これをみると株価インデックスの動きからは景気後退の必要条件が満たされていると言える。

日米主要株価インデックスの動き

以下では、日経平均225、TOPIX、ダウ平均、S&P500、NASDAQの5種類のインデックスについて、2024年5月20日から2025年3月19日までの10カ月(200営業日強)の日次終値データを使って、もう少し詳しく分析してみたい。

最初に各インデックスの平均と標準偏差を計算すると次の表のとおりである。

日経平均(225) TOPIX ダウ平均 S&P500 NASDAQ
データ数
205 205 208 208 208
平均
38,589.29 2,717.78 41,897.68 5,728.52 18,369.27
標準偏差
1,300.12 85.45 1,927.92 253.97 1,011.97

これを使って、各インデックスの日々の終値を偏差値に換算(ノーマライズ)してグラフにしたのが次の図である。

日本株は昨年8月の暴落から戻ったあと、ほぼ横ばいとなっている。日経平均はピークから10%ほど下げた状態である。3月は日経平均とTOPIXの動きが乖離しているのが目を引く。

図 日本株の期中推移(ノーマライズ値)

米国株は2022年から右肩あがりの傾向だったが、ここにきてかなり大きく下げている。

図 米国株の期中推移(ノーマライズ値)

この10カ月間の最小(ボトム)と最大(ピーク)、インデックスがピークを付けた日とピークから3月19日までの日数、および下落率をみると次の表のとおりである。

日経平均(225) TOPIX ダウ平均 S&P500 NASDAQ
最小(ボトム)
31,458.42 2,227.15 38,111.48 5,186.33 16,195.81
最大(ピーク)
42,224.02 2,929.17 45,014.04 6,144.15 20,173.89
ピークを付けた日
2024年
7月11日
2024年
7月11日
2024年
12月4日
2025年
2月19日
2024年
12月16日
ピークを付けた日から3月19日までの経過日数
251 251 105 28 95
ピークからの下げ
-4,472.14 -133.21 -3,049.41 -468.86 -2,423.10
ピークからの下落率
-10.6% -4.5% -6.8% -7.6% -12.0%

まとめ

いまのところ、暴落という状態ではないが、いまが景気の転換点だとするとさらに10%以上は下がることになる。

『株式投資 第6版』では「景気の転換点を正確に予測することから得られる利益は大きいが、エコノミストの多大な努力にもかかわらず、予測の精度はあがっていない。」とする一方、「投資家が最もとってはいけない行動は景況感を後追いすることである。」(p.299)と戒めている。

景気が悪くなってから株を売り、景気が良くなってから株を買うのでは遅すぎるということなのだろう。下げた後で売り、上げた後で買う、という行動がもっとも良くないのだ。

これからトランプ不況が来る可能性があり、もし来たならば株価はさらに大きく下落し、そのときが投資家には絶好の買い場となるでしょう。但し、この予想があたるかどうかは神のみぞ知るです。信じすぎないようご注意ください。

参考資料
[1]「USMCAはメキシコからの輸入品の約半分とカナダからの輸入品の38%に適用されている」(NHKニュース
[2] トランプ関税の米国経済への悪影響に注目が集まる:25%の関税の応酬で米国のGDPは1.8%、日本のGDPは0.9%低下
[3]『株式投資 第6版』(ジェレミー・シーゲル他著、株式会社日経BP、2025年3月10日発行)本書は米国株式市場を対象としており、このブログで引用したデータはすべて米国のものである。
[4] 図は『株式投資 第6版』の表19-1、表19-3を元に作成した模式図




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株式投資の考え方:個別株の運用成績に拘らず、全体の運用成績を上げること

前回は日本株の運用開始から2025年1月末までの期間で、全銘柄の運用パフォーマンス(運用成績)を確認しました。今回は同じ期間で、個別株の成績を確認してみます。

運用成績一覧

次の図は全銘柄の運用成績一覧です。1~28番までが全売却済み、29~46番までは1月31日現在で保有中の銘柄です。

トータルリターンの列を見ると最大が41番で約1億1千万円のプラスです。最少は36番で約1,180万円の損失となっています。いずれも保有中なのでこれから変動します。46銘柄中トータルリターンがマイナスになっているものは4銘柄となっています。プラスマイナスで勝敗を分けると勝率91%となります。

全売却済28銘柄の中でトータルリターン最大は、1番の約2,000万円、最小は27番の約590万円の損失でした。全売却済28銘柄のうち2銘柄が最終的にマイナスつまり損失でクローズしたということになります。同勝率93%となります。

こうしてみると株式の個別銘柄運用では大きな利益を出すこともあれば大きな損失に終わることがあることがわかります。まさしく、ハイリスク・ハイリターンなのです。ですので、個別銘柄の運用損益を気にするのではなく、全体としてパフォーマンスを上げることに注力する方が良いでしょう。

運用成績をアップするには

運用成績を上げる方法について考えるため、銘柄の保有期間と年間利回りの関係を調べてみます。

全売却済みについての保有期間と年間利回りの関係は次の図のとおりです。図の横軸は保有日数、縦軸は年間利回りです。

この図から分かることは保有日数が短いほど年間利回りが高く、長いほど年間利回りが低くなるということです。そうすると運用成績を上げるには短い保有期間で売買を繰り返すと良いということになるのでしょうか?

そうかもしれません。これについては、まだ自分なりに納得できる結論を出せていません。そこで回答を保留とし、次に保有中の銘柄について同様の関係図を確認します。

最初の図とは少し様相が異なり、保有日数が短いほど年間利回りが高く、長いほど年間利回りが低くなるという関係は明確ではありません。

この二つの図を見て反省点として次が挙げられます。まず、全売却済み分については:

1.27番は保有期間1067日で約580万円の損失を出しています。これは会社の業績回復を期待して長く保有したが、結局、業績は回復せず株価も低迷を脱しなかったので、諦めて売却しました。
2.23番は保有期間1027日で約150万円の利益を出しています。利益が出てはいるものの年間利回りは6%なので低すぎます。
3.14番は保有期間718日で約210万円の損失でした。買付後業績がなかなか回復せず718日で見切り売りしたわけです。なお、この会社はその後、業績が絶好調に転じ、株価も大きく上がりました。仮に、そこまで保有し続ければ年間利回り20%になっていたので、結果論でいうと見切りが早すぎたということになります。

保有中銘柄については:
1.34番は保有期間1322日で約300万円の利益が出ています。しかし、年間利回りは5%なので低すぎます。
2.31番は保有期間990日で約460万円の利益が出ています。しかし、年間利回りは6%なので低すぎます。

34、31番は次の全売却の候補になります。

まとめると、個別銘柄に拘らず、全体としての運用成績を上げることを目指す方が良い。そのためには、パフォーマンスが良くない銘柄は継続保有に拘らず売却し、その資金を良好なパフォーマンスが見込める銘柄に振り替えていく必要があります。パフォーマンスの良否の判断として、日経平均全体のパフォーマンスを加味すると年間利回り10%程度を目安にすると良いでしょう。

株価は総じて会社の業績が良ければ上がり、業績が悪いと低迷します。従って、銘柄の入れ替えは業績を見ながらということになります。会社の経営という観点からみると、業績が低迷してから回復させるまでには場合によっては3年程度かかるだろうと考えられます。そこで1000日程度を一つの区切りとして判断すると良いのではないでしょうか。




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株式投資の考え方:過去の投資成績を日経平均のパフォーマンスと比較する

当社は2019年5月から日本株の個別銘柄による資産運用を開始しました。資産運用を開始してから5年9ケ月ほど経過していますが、いろいろ勉強して、最近は徐々に運用額を増やしています。

今回は、これまでの日本株による資産運用を総括評価してみます。

全体の成績

全体の成績は次の表のとおりとなりました。

いままでに買付した銘柄総数は延べ46銘柄です。そのうち全部を売却したのが28銘柄、保有中が16銘柄です。なお、一旦すべて売却して間隔をおいて再び買い付けたときは別銘柄にカウントしています。

全銘柄の平均保有日数は534日、保有期間中平均購入残高の平均値は約2,245万円、保有期間中のトータルリターンは約844万円、一年あたりのトータルリターン(以下、利回りと表記)は22%となりました。

保有中の銘柄のパフォーマンスは比較的よく、売却済みの銘柄のパフォーマンスは比較的悪くなっています。この理由は、銘柄別成績評価を行い、成績の良くない銘柄を全て売却していることによります。最初の頃は評価方法ができていなかったのですが、特に2024年から、評価結果により売却判断しています。

区分 銘柄数 平均保有日数 保有期間中
平均購入残高
(平均値)(円)
トータルリターン
(平均値)(円)
一年あたり利回り
全銘柄 46 534 22,458,483 8,443,041 22%
売却済み 28 454 19,527,203 4,778,662 19%
保有中 18 659 27,018,252 14,143,186 24%

保有期間中平均購入残高、トータルリターン、一年あたり利回りの計算方法は、株式投資の考え方:投資成績の評価方法をご参照ください。なお、売却済みの銘柄のトータルリターンは確定値(税込み)、保有中銘柄のトータルリターンは確定分(税込み)と評価損益の合算です。保有中銘柄の評価額は2025年1月31日の終値によります。

日経平均と比較する

この運用成績は日経平均のパフォーマンスと比べて良かったのでしょうか?

2018年12月28日の日経平均終値は20,014.77円、2025年1月31日の日経平均終値は39,572.49円です。平均株価は約6年強で約98%の上昇です。一年あたりでは約16%程度の上昇なので当社の運用成績は、この間の日経平均の上昇率よりも若干良いといえそうです。

実際には、日経平均はかなり大きく変動します。単純に二つの期日の日経平均の終値をピックアップして、その間の上昇率から年間のパフォーマンスを計算するのは適切ではないかもしれません。

そこで、もう少し詳しく調べてみました。

次の図は日経平均株価の月末終値と1年前の同月末終値を比較して年間上昇率(マイナスは下落率)を計算してグラフ化したものです。これをみると変動はかなり大きくなっています。例えば、2021年3月末は前年同月末比で54%も上がっています。そうかと思うと、2022年9月末は同約12%の下落になっています。

2019年1月末から2025年1月末まで毎月末の前年同月末からの上昇・下落率の平均値は10.7%となりました。

日経平均の年間上昇・下落率はグラフのように変動が大きいのですが、ざっくり、この5年間の平均で年率換算約11%上昇です。

こうしてみますと、当社の運用成績は日経平均株価でみた日本株パフォーマンスよりも成績がかなり良いといえるでしょう。

注)2月10日 保有中銘柄の平均保有日数を741日から659日に訂正しました。




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株式投資の考え方:暴落をチャンスに変えて利益を得るアイデア

株式投資の本道とは少しずれるかもしれませんが、株が安いときに買って高いときに売ることで利益を得ることができます。利幅を大きくするには、まず、できるだけ安くなった時に買うことです。

安くなるパターンについては、「株式投資の考え方:株価はなぜ下がるか、そのパターンを分類する」で整理しました。

この応用例として、2023年に発生した米国金融危機によって下落した銀行株から、利益を得たケースを紹介してみます。

2023年3月10日に米国のシリコンバレー銀行が経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれました。次にニューヨークのシグネチャバンクが破綻、やはりFDICの管理下に。その後、5月1日に米国のファースト・リパブリック銀行も破綻しました。

米国の主要な銀行の株価の動きは、主要24銀行の株価で構成する KBW 銀行株指数(BKX指数)で把握できます。BKX指数は2023年3月1日の終値109.33から3月15日には81.08まで約26%下落しました。

下がったときに買う、という立場からみると、これは絶好のチャンス到来です。しかし、安く買うのは良いとしても肝心の銀行が破綻してしまうと株の価値はゼロになり購入資金が全損になってしまいます。幾ら安く買ったとしても全損になってしまうと致命的失敗です。

損失リスクを下げるために、銀行株をひとつだけ買うのはなく、いくつかの銀行株をパッケージで購入してリスクを分散するというアイデアを考えました。

例えば、5つの銀行株をパッケージとして購入します。仮に、その中のひとつの銀行が破綻してしまった場合、元本の5分の1が失われてしまいます。その場合でも残りの4行の株価が購入時から売却時までに25%上昇すれば、すくなくとも元本は回収できます。

BKX指数は金融危機前から26%下落しました。危機が収束して指数が元に戻るとすると株価は74%に下落した状態から100%に上昇することになります。この場合の上昇率は、100/74=1.35、すなわち35%です。なので仮に5行中1行が破綻しても若干の利益を得ることができるでしょう。

凡そ、このような計算を前提に、米国の金融危機の状況、FRBの対応状況、銀行の株価の動きなどを半年ほどリサーチ。最終的に2023年10月20日に5つの銀行株をパッケージとして買い付けました。

その後、約1年経過。本日(11月8日)までに5つの銀行の株を全部売却しました。成果は次の表にまとめたとおりです。12万4千ドルの投資で4万8千ドルほどの総リターンを得ました。投資額に対する利益率は39%です。

保有日数を加味して利益率を年率に換算すると概ね60%近くになります。売買益・配当は税込みです。

なお、この5銀行の選択にあたっては、株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法で説明した基準で銘柄を選定しています。すなわち、米国の主要株式インデックスであるS&P500に採用されている銀行をリストアップして、その中から、利益率が高く、配当利回りが高く、時価総額が比較的多いなどの基準で銀行を選択しました。

参考のためにBKX指数のチャートを示します。結果論ですが、株式を買い付けた2023年10月20日は銀行株の株価が金融危機後の底値に近く、その後急速に上昇しています。BKX指数は金融危機から1年程度で危機前の水準に回復しました。

なお、日本の平成金融危機をはじめ、さまざまな金融危機に際して、各国の金融監督当局がどのように活動したかについてのドキュメンタリーがいろいろあります。これらを読むと金融システムは危機に対してかなり脆弱だという印象を受けます。つまり、金融危機に対して、当局が対応策を一歩間違えると金融システムが破綻してしまう可能性がある、ということです。

そう考えると、ここで紹介したやり方がうまくいったのは幸運だったのかもしれません。




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株式投資の考え方:日本株投資と米国株投資の相違点を考える

1年ほど前に、主にデジタル化(DX化)の観点で、日本株と米国株の投資を比較すると米国株の方が個人投資家(中小企業の資産運用投資家を含む)にとって好都合になっていると説明しました。
日本に残っている「紙と電子の間」のベルリンの壁を壊せ」(2023年9月22日)

この時は投資家から見た株式市場のDXの遅れという観点だったので、今回、改めて少し幅広い観点で考え直してみます。

前回の要約

個人投資家にとって好都合な点を具体的に挙げると次の通りです。
(1) 米国株は1株から買い付けできるが、日本株は原則100株からとなり投資単位が大きい。
(2) 米国株は四半期毎(3か月に1回)の配当が多いが、日本株は半期毎の配当が主であり小さな銘柄では1年一回の配当である。
(3) 配当の権利確定日から配当が支払われるまでの日数でみると米国株は概ね30日程度であるが、日本株は90日程度かかる。
(4) 日本株は3月決算が圧倒的に多数で、12月決算と合わせると決算期が集中している。また、その結果、配当支払い月も集中している。しかし、米国株の配当支払い月は分散している。

その後、1年を経過しましたが、この事情はほとんど変わっていません。

上の項目は、個人投資家の観点、特に配当に偏りすぎなので、もう少し大局的な観点で考えて補足します。

決算締め日から決算報告までのスピード

日本企業も米国企業も四半期毎に決算報告をすることは同じですが、決算報告までのスピードが違います。直近では9月末(四半期)決算報告が予定されています。

これについては、米国企業は、10月中旬から始まり、概ね11月初旬には終わるようです。対して、日本企業の発表は、10月下旬から11月中旬が多いようです。

日本企業の決算発表は米国企業よりも1週間から2週間程度遅いのではないでしょうか。

為替レートの影響

日本株投資と米国株投資の大きな違いは為替レートの影響の相違です。

日本居住者が米国株直接投資をするには、円をドルに替える必要があり、買付時と売却時の円・ドルの為替レート変動の影響を受けます。米国企業のドルベースの株価自体は、円・ドルの為替レートには大きな影響を受けないようです。この影響は投資対象企業によらず一律になります。こうして、米国株投資では資金のドル・円転換時の為替レートを考えるだけで済みます。

日本株は円・ドル為替レートの影響は企業毎に異なります。つまり、円高になると輸入企業は増益、輸出企業は減益方向になります。つまり、株価への影響が企業毎に異なるので、判断が難しくなります。また、株価変動にドル・円為替レートが影響するので、変動が大きくなるようです。

この項は具体的なところはまだ分析できていませんので、あくまで予想です。

産業構造の違い

もっと本質的な相違として、日米の一番大きな相違点は産業構造の違いがあります。次のような相違があります。
・米国にはグローバルなビッグテック企業がある。
・新しいビジネスモデルで大きく成長する企業がある。
・地場のエネルギー資源会社(石油と天然ガス採掘)が多い。
・米国市場に上場している海外本社の会社が多い。特にカナダの会社など。
産業構造の違いは投資判断ではかなり大きな要因ですが、詳しくは今後の課題としたいと思います。

連載

初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例
8回目:8回目:株式投資の考え方:株価はなぜ下がるか、そのパターンを分類する(前回)




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株式投資の考え方:株価はなぜ下がるか、そのパターンを分類する

株式投資においては、まず、投資対象銘柄を安く購入することが大事です。そのためには株価が大きく下がったときにチャンスです。しかし、下がった株価がもとに戻り、さらに上がらないと売買の利益を得られません。そのため、株価が再び回復するかどうか、それまでどの位の期間がかかるか、投資資金をそれまで維持できるかを見通してから買う必要があります。

株価が下がったときは、下がった原因を見極めることが第一歩でしょう。下がる原因はその時々によって異なっているわけですが、下げの現象はいくつかのパターンにわけることができます。過去の同じようなパターンで株価がどのように動いたか、どのように回復したかを知っていると未来を予想する手掛かりをえられます。

次に大きく下げるパターンを簡単に整理してみましょう。

主要な銘柄の株価が一斉に下がる

日本市場なら、東証プライム登録銘柄の大部分の株価が一斉に値下がりするような状態です。この典型例は2024年8月5日株価暴落のような事態です。このときは、7月31日に日銀が政策金利を0.25%程度に引き上げたのをきっかけとする円高と米国の景気見通しの不安などが重なって暴落したとみられています。

このほか、近いところでは、2020年2月~3月のコロナショック(新型コロナウィルス感染症パンデミック発生)による株価の下落、2015年8月のチャイナ・ショックによる下落、2008年9月のリーマンショック(2008年9月15日リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとする金融危機)による株価下落など歴史に残る下落があります。

こうした、歴史に残るような大きな下落以外にも、中央銀行の利上げ、景気先行きへの不安あるいは戦争の勃発などで株価が一斉に下落することがあります。

こうした過去の下落はいずれも回復していますが、回復に要する期間はそれぞれ異なっています。過去のチャートを研究して頭にいれておくことである程度の判断基準が得られます。

同一業界の銘柄の株価が一斉に下がる

最近の一つの例として、2024年10月4日、日本郵船、商船三井、川崎汽船の株価がそれぞれ前日終値比で516円(9%)、329円(6%)、223円(10%)急落したことが挙げられます。これに関しては、米国港湾ストの終結で上昇期待が剥落したということのようです。これは将来の業績への思惑から下げたケースにあたりそうです。

世界の海運株急落 米港湾スト終結で運賃上昇期待が剝落

このほか、最近(10月初旬)は、中東情勢の悪化で原油の価格が上がっています。これに連動して、米国市場の石油・天然ガス採取会社の株価が上がっています(下がったケースではないのですが…)。しかし、10月中旬には原油価格の下落で米国エネルギー企業の株価が若干下がっています。

業界の主導的企業が業績見通しを引き下げたことで業界全体の株価が下がることもあります。この例として、10月15日夜ASML(業界最大の半導体製造装置メーカ)の第3四半期決算が事前に漏れ、年間売上高見通しが期待外れになったため、株価が16%下落した。26年ぶりの大幅下落だそうです。この影響で他の半導体製造装置メーカの株価も大きく落ちています。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は5%強の下落となりました。

半導体製造装置の中国への輸出規制強化で、半導体製造装置メーカーの売上が変化し、株価が変動しています。これは地政学的な要因による株価変動になります。但し、政府の規制の場合は、強化されると回避策が働いて需給が変化するためか、規制強化が常に売上減になるといった関係が生まれるとは限らないようです。

個別株が下がる

個別株が下落する原因は、業績の悪化または悪化の予想により下げる場合と、業績とは直接連動しない、株式の需給関係に大別できます。

業績の悪化には、次のような項目があります。
・通期決算または四半期決算で赤字になる
・通期の決算または四半期決算が当初の目標を下回る
・利益の見通しが減益になる
・利益の見通しが下方修正される
・配当が減る(減配)

このような情報は、四半期決算短信などの企業の開示情報から得られるので、開示情報を確認しておく必要があります。一般的には業績の悪化もしくは悪化予想で当該企業の株価は下がることが多いのですが、事前予想によっては、上がることもあります。また、決算発表に際して、業績が下がっても配当を増やして株価を維持するといった対策も見られます。このように業績悪化が直ちに株価下落につながらないこともあるので注意が必要です。

特に、収益の悪化の原因が企業のビジネスモデルの劣化のような構造的要因にあると考えられる場合、業績回復には長い時間がかかるので株の購入は見送るべきでしょう。

業績の悪化が株価の需給の悪化を引き起こすほか、次のように業績の悪化と直接連動しない下落要因もあります。
・企業が新規の株式を売り出すことで需給関係が悪化
・大口株主が株を売却する(需給関係が悪化)
・証券会社が企業の投資判断を引き下げる

例えば、大規模な資産運用ファンドのマネージャが、投資先企業の業績を予想し、株価がピークを付けたと判断して、保有株を売却することがあります。この場合は、業績の悪化が公開になっているわけではないので、一般投資家には原因がわかりにくいものです。株価が原因不明で下がったときは、出来高を確認すると良いでしょう。

連載

初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例




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株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例

前回(株式投資の考え方:投資成績の評価方法)は、株式投資の成績評価方法について弊社で行っている考え方を示しました。

考え方だけでは抽象的で分かりにくいので実際の例を紹介します。以下は、弊社で取得・保有している「積水ハウス」の例です。あくまで評価方法を考えるために取り上げているものです。

取引の履歴

初回買付は2022年6月17日で、1万株を取得し、金額は手数料込みで23,143,307円、一株あたり2,314.33円となります。
2023年8月17日に4,000株を売却しました。売却価格から取得原価を差し引いて2,166,398円の売却益がでました。
2023年10月4日に5,000株を取得して、累計保有株数が11,000株、取得額の残高は27,937,683円となっています。
この間、中間配当と期末配当を受け取り、配当金の累計金額は2,394,000円となりました。(いずれも税額控除前の金額です)。

評価

保有期間は9月25日までで832日。
売却と買付で残高が増減していますが、平均保有残高は24,638,616円となります。

2024年9月25日昼時点の「積水ハウス」の株価は、3,963.0円なので、評価額は43,593,000円となります。

9月25日時点での実現トータルリターン(実現トータル損益)は4,560,398円。
これに評価益を加えたトータルリターン(評価込みトータル損益)は20,215,715円となります。

平均残高で割って損益率を計算すると、実現18.5%、評価込み82.0%となります。これは保有期間832日に対する損益率なので、年率に換算すると年率実現利益率8.1%、評価込みでは年率で36.0%となります。

保有している銘柄についてこのような評価値を計算し、一覧表にして、パフォーマンスの悪い銘柄を売却していくなどの措置を行うと良いでしょう。

連載

初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例(本記事)




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株式投資の考え方:投資成績の評価方法

株式投資に限らず、自分が行った投資判断が正しかったのかどうかを確認して、間違っていた場合は、それなりに軌道修正をする必要があります。そのためには、判断の根拠とするための評価データが必要です。

投資信託では、トータルリターンで評価することが多いようです。トータルリターンとは、キャピタルゲイン(投資信託の売買損益)とインカムゲイン(分配金)を合計したものです。

株式投資の評価もトータルリターンで評価するのが良いでしょう。株式投資でのトータルリターンは、株式売買の損益と配当金を合わせたもので計算できます。

売買損益や配当金は税込みで計算するか、源泉税を控除したあとの金額で計算するか、といった選択肢があります。

さらに、評価損益を加味した金額で計算するか、といった選択の余地があります。

当社の資産運用では次のように評価しています。

1.確定トータルリターン(確定トータル損益)
=税込売買損益+税込受取配当金合計値

2.評価込みトータルリターン(評価込みトータル損益)
=税込売買損益+税込受取配当金合計値+評価損益額
=確定トータルリターン+評価損益額

※全売却済の株式では評価損益額はゼロになります。

資産が増えているか減っているかは、これで分かります。しかし、確定トータルリターンも評価込みトータルリターンも、売買しないままで年月を経過すると配当金が積み上がって大きくなります。これでは、効率性の評価ができません。

そこで、投資効率を評価するために、保有期間中平均購入残高で割って、収益率とし、更に、保有期間(年換算)で割って、一年あたりのトータルリターンを計算します。

3.確定トータルリターン(確定トータル損益)(年率)
=(確定トータルリターン/保有期間中平均購入残高)/保有期間(年数)

4.評価込みトータルリターン(評価込みトータル損益)(年率)
=(評価込みトータルリターン/保有期間中平均購入残高)/保有期間(年数)

こうした数字を使って、投資がうまくいっているのか、うまくいっていないかを把握します。

うまくいっていない場合は、対応策を考えます。

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初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法(本記事)
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例

注)2025年2月4日読み直して、インカムゲインとキャピタルゲインを逆に書いていたことに気が付き、訂正しました。失礼しました。




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株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか

前回(株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法)は、投資先候補銘柄の選定法について、弊社の投資先選択に際して採用している考え方を紹介しました。

さて、ではこうして選択した投資先の銘柄をいつ買い・いつ売ったら良いのでしょうか? 株式の売買での利益(源泉税控除前)は、売値から買値を引いた差額(さらにそこから証券会社に払う手数料を引いた金額)なので、できるだけ安い値段で買い、できるだけ高い値段で売るのが良いことには異論の余地がありません。

できるだけ安い値段=最安値、できるだけ高い値段=最高値とすると、最安値で買い、最高値で売ることが理想ということです。しかし、これを実現するのは不可能です。それどころか、最安値、最高値を確定することもほとんどできません。なぜなら、これは期間の取り方に依存し、今日は最安値だったとしても、明日はさらに安くなるかもしれないからです。つまり未来まで予想しないと最安値は決まらないため、最安値で買うというのは不可能となります。同様に、最高値で売ることも不可能となります。

ということなので、売り買いのベストタイミングを確定することは何人にもできません。

株の売り買いの方法についていろんな本を読んだり、自分でもいろいろなやり方を試みているのですが、上のような理由からか、なかなか決定打といえるものは見いだせません。

科学であれば、ある人が発表した実験結果は、他の人が同じ方法で再現できるはずです。しかし、株の売り買いは他人の方法を本などで読んで真似してもなかなかうまくいきません。そうすると株の売買というのは科学ではなく、芸術の領域なのかもしれません。

そういってしまうと、話は終わりなのですが、昨日(9月12日)みずほ証券の中村克彦氏の講演を聞きにいったところ、氏曰く「順張りでは資産を増やせない。逆張りの発想が良い。新型コロナショックや8月5日大暴落のような機会に買うべきだ」とのことでした。これは私もほぼ同意見です。

新型コロナショックや8月5日大暴落のような日経平均が20%ほども下落する危機はめったにありません。このため、大暴落のタイミングを狙うだけでは、継続的に利益を上げるのは難しいでしょう。しかし、個別銘柄が(赤字決算以外で)大きく下げたタイミングを狙って買う、逆張りの買い方は比較的うまくいくようです(赤字決算で下げたときに買ってはいけません)。

大きな下げのチャンスに向けて計画を立てて、資金を貯めてじっくり待ち、チャンスが来たらぱくっと食べる。これが良いのではないでしょうか。そのためにはいつも多少お腹を空かせている必要もあります。

安く買うことができれば、あとは何時売っても利益がでます。利は仕入れにあり。商売は仕入れが重要なのです。

ところで、米国の陸軍レンジャー隊には「どんな計画も敵との交戦には生き延びられない。」という教えがあるそうです[1]。戦いは臨機応変、柔軟な対応が必須ということのようです。

計画をたてていてもいざ暴落になったらうまく対処できないということのないように。日ごろからの資金の備えと心の鍛錬が重要です。

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初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
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7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例

[1] 『AI覇権 4つの戦場』(ポール・シャーレ著、早川書房、2024年5月25日発行)




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株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法

初回(株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか)に、「良い会社の株価は、長い目で見れば、必ず上がる」と言いましたが、では良い会社とはどのような会社でしょうか。

最近読んでいる為替取引の教科書に株式と為替の違いとして「株式は資産と考えられるが、為替は資産ではない」という意味の説明があり「なるほど」と思いました。

株の資産価値とは

良い会社の基本は、保有している間に資産価値が増えるという観点で考えると分かりやすいでしょう。では株式の資産価値とはどういうことでしょうか。

会社法によって株式会社は貸借対照表を作成・公開することが義務付けられています。簡単にいうと、貸借対照表の資産総額から負債総額を引いた純資産がその会社の全体としての資産価値を表すと考えられます。会社全体の資産価値を会社が発行している株式の数で割ると「一株あたり純資産」を計算できます。

純資産は、税引後利益から、配当、自社株買いや役員報酬などを引いた残りを毎年積み上げたものです。株数は発行済み総株数から自社株数を引いたものなので、新しく株を発行すれば増え、自社株を取得すれば減ります。

ざっくり言うと、毎年の一株あたり利益から一株あたり配当を引いた残りの分だけ一株あたり純資産が増えることになります。

保有する株式数に一株あたり純資産をかけた額が、保有株の資産価値を表す目安となります。こうした考え方は、会社のオーナーとしての資産価値判断に近いといえます。

上場会社は、「一株あたり純資産」とは別に一株あたりの「取引価格」が市場で決まります。株主にとっては保有する株の資産価値を、その取引価格×保有株数によって評価できます。

最近は、上場会社の株価は株価純資産倍率(PBR: Price Book Ratio、株価÷一株あたり純資産額)が1以上であるべきだ、などと強調されています。つまり、取引価格である株価は一株あたり純資産額より高くあるべきだという考えです。

このように評価する基準は一つではないのですが、何にしても株式は交換価値と保有価値をもつ資産であるといえます。

良い会社とは

さて、当社では上場株式による資産の運用を行っています。資産運用にあたり、まず良い会社を選んで投資候補銘柄リストを作成します。

ここで良い会社と考える条件を大雑把にまとめると次のとおりです。

1.常に利益を出し続けていること
利益の基準としては原則として経常利益を用います。そして売上高に対する経常利益率が10%以上であることが望ましいとしています。毎年しっかり利益を出すとそれが積み重なって、純資産が確実に増えていきます。これにより資産価値が大きくなるわけです。また、原則として過去10年間は赤字を出していないことを条件とします。赤字を出す会社は、会社として社会に存在を認められていないと考えます。赤字を出し続ける会社は投資先としてふさわしくありません。

2.成長していること
売上や利益が年々増えていること。売上や利益が減少傾向にある会社は選ばないようにします。

3.毎年配当を出していること
配当利回り(年間配当÷株価(%))は4%以上あるのが望ましい。
配当性向(配当÷一株あたり利益(%))は高くないことが望ましい。
特別配当は毎年の配当とは考えられない(減配される可能性がある)ので含めない。
但し、株価は高くなったり、安くなったりするのに加えて、配当も半期単位で増減する可能性があるので配当利回りもかなり変動します。リストアップする時は、配当利回りの許容範囲を広くしておく方が良いでしょう。
会社は配当を出さずに、それを再投資に回す方が良いという考え方もあります。しかし、株主の立場からは、仮にインフレ率2.5%の状態で5年間株を保有すると、投資資金が12.5%も目減りしてしまいます。インフレ率を上回る配当があれば投資資金の目減りを心配することなく長期保有できます。

4.株価が割高でないこと
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio、株価を一株あたり利益で割った数字)が概ね15以下であること。但し、PERは分母が一株あたり利益という動きやすい値です。このため減益になると分母が小さくなる結果、PERが大きくなるなど変動が大きくなります。また、一株利益を実績値とするか予想値とするかでも変わります。こうしたことを鑑みると15という数字は絶対ではなく、一つの目安と考えます。

5.人気があり、売買し易いこと
株式投資は人気投票であると言われます。人気がある株は買われやすく需給から株価が上がりやすくなります。人気があるかどうかは、日本株であれば日経平均など有力な株価指標に採用されているかどうかで判断します。米国の株であれば、S&P500に採用されている銘柄を優先するわけです。また、流通している株数が少ないと、売り買いしようとするときに値段が付かないことがあります。また、自分の売り買いだけで、株価が動いてしまうことがあります。時価総額が大きい銘柄が売買しやすいと言えます。

評価の観点を分類すると1,2は会社の業績評価、3は長期保有し易いこと、4、5は株を売買する観点からの評価になります。こうした多角的観点で評価します。

会社の業績は経済環境のような外部環境、経営体制、新製品の売れ行きなどで変化します。そこで、四半期毎の決算発表などを参考にして、投資候補銘柄リストを随時更新していきます。

最後に、ここで説明した考え方は、かなり保守的、つまりなにかあっても大きな損失にならないという方針に基づくものであることを補足しておきます。

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初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法(本記事)
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例




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