「電子取引」新7条について次の4つの視点で詳しく見ていきましょう!
- 電子取引の概要(令和3年12月までの現行法令)
- 電子取引制度の改正
- 電子取引時の保存義務違反のリスク
- よくあるご質問等
1)電子取引の概要(令和3年12月までの現行法令)
保存義務者は、電子取引(注)を行った場合には、財務省令で定めるところにより、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないこととされています。 ただし、財務省令で定めるところにより、その電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りではないとされています。(電子帳簿保存法10)。
(注) 「電子取引」とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。)の授受を電磁的方式により行う取引をいい(電子帳簿保存法2六)、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引等が含まれます。
2)電子取引制度の改正
適正な保存を担保する措置として、次の見直しが行われました。(電子帳簿保存法新7条)
- ⑴ 申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。
- ⑵ 電子取引の取引情報に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が 10 %加重される措置が整備されました。
3)電子取引時の保存義務違反のリスク
令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録を出力した書面等による保存をもって、当該電磁的記録の保存に代えることはできません。
したがって、災害等による事情がなく、その電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。
なお、青色申告の承認の取消しについては、違反の程度等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうか等を検討した上、その適用を判断しています。
また、その電磁的記録を要件に従って保存していない場合やその電磁的記録を出力した書面等を保存している場合については、その電磁的記録や書面等は、国税関係書類以外の書類とみなされません。
ただし、その申告内容の適正性については、税務調査において、納税者からの追加的な説明や資料提出、取引先の情報等を総合勘案して確認することとなります。
4)よくあるご質問等
Q1 電子取引に当たる代表的なケースを教えてください
- A1
- 以下の6つのケースを参考にしてください。
- ⑴ 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
- ⑵ インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用
- ⑶ 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
- ⑷ クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
- ⑸ 特定の取引に係るEDIシステムを利用
- ⑹ ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
Q2 令和4年から違反となることを具体的に教えてください
- A2
- 得意先からメール添付やダウンロードでPDFの証憑を入手したときは、紙に印刷しての保存は違反で、PDF証憑を電子取引の保存要件に従って、7年以上保存することが必要です
Q3 電子取引の「真実性の保存」で、自社でタイムスタンプを付与する場合等の要件とは
- A3
- 速やかに又は業務サイクル後速やかにタイムスタンプを付与するか、訂正削除の防止等(訂正削除が出来ない文書管理システムへの保管等の措置)の要件確保が必要です。
詳しくは、https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdfの「問-11」をご覧ください。
Q4 要件確保するにはどうすればよいのですか
- A4
- 現在利用中のScanSave on ONeSaasへの保存などが必要です。なお、電子契約サービスや電子請求書等のサービスをご利用の場合は、個々のサービスが電子取引の保存要件を具体的にどのように確保しているのか調査をして、不備があれば、現在利用中のScanSave on ONeSaasへの保存などが必要です。
Q5 得意先から、“紙の請求書”も“PDF請求書”も受領することがある場合はどうなりますか
- A5
-
下記の2つの情報から総合的にご判断ください。
- 「電子取引」の「一問一答」の「問4」の回答「ホ」に、
「取引慣行や社内ルール等により、データとは別に書面の請求書や領収書等を原本として受領している場合は、その原本(書面)を保存する必要があります。」と記載があります。 - 更に、21年11月12日付で、追加で公開された「一問一答」に「【制度の概要等】関係(紙と電子データの重複)」があり、「電子データと書面の内容が同一であり、書面を正本として取り扱うことを自社内等で取り決めている場合には、当該書面の保存のみで足ります。
ただし、書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれているなどその内容が同一でない場合には、いずれについても保存が必要になります。」と回答が掲載されました。
詳しくは、https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021010-200.pdfをご確認ください。
- 「電子取引」の「一問一答」の「問4」の回答「ホ」に、
Q6 紙証憑を受領して、PDF化して、PDF保存していますが、大丈夫ですか?
- A6
- この時、受領した紙証憑が税法上の原本となります。PDFを税法上の原本にするためには「スキャナ保存」制度の要件確保※が必要です。
※国税関係書類に係る電磁的記録のスキャナ保存を行うに当たって、真実性を確保するための要件や可視性を確保するための要件が財務省令で定められています。
Q7 PDF証憑を受領して、担当者のパソコンに保存していますが、大丈夫ですか
- A7
- この場合、検索要件が確保できない恐れがあるので、現在利用中のScanSave
on ONeSaasへの保存などが必要です。
Q8 令和3年12月末までに入手したPDF証憑が各担当者のパソコンにあるのですが、そのままで良いですか
- A8
- そのままでは電子取引の義務違反になるので、現在利用中のScanSave on ONeSaasへの保存などするか、紙に印刷しての保存が必要です。
Q9 受領したPDF証憑と紙をスキャンしたPDFの違いがわかるのですか(バレますか)
- A9
- 基本的にPDFを生成したデバイス情報や画像PDF化などPDFのプロパティ等を解析すれば、判断が付きます。
Q10 令和4年1月1日以降受領したPDFを担当者のパソコンへの保存や紙に印刷しての保存を続けた場合、どうなりますか
- A10
- PDFを担当者のパソコンへの保存することは検索要件が確保できない不備になります。更に令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録を出力した書面等による保存をもって、当該電磁的記録の保存に代えることはできません。したがって、災害等による事情がなく、その電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。
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