カテゴリー別アーカイブ: AH Formatter

【動画公開】「DITAで本を書いてAH XSL Formatterで自動組版する」、FormatterClub2021ウェビナーのお知らせ

2021年8月10日に開催しました、ちょっと一息アンテナハウスウェビナー「DITAで本を書いてAH XSL Formatterで自動組版する」の録画を編集した動画が公開されています。

動画は1本10分程度の4本立てとなりました。

ご好評いただけましたようで、当日は予定時間をはみ出すくらいにご質問をいただきました。
「タグを気にせず書きたい」といった意見もございました。個人的には「タグを気にしながら書きたい」派でしたのでそういった方のための資料はあまり用意できていなかったのですが、そういった方面のアプローチも存在しますので、機会があればあらためてまとめたいと思います。

さて、この動画自体は少し前に公開されたのですが、何故今ブログ記事にしているかというと、次のイベントに関連するためです。

FormatterClub2021ウェビナー開催

日時
2021年9月17日(金)17:00~18:10
概要
今回のFormatterClubでは、キヤノンの吉田一様にFormatterでのマニュアル作成と自動組版の取り組みの発表の他、XSL拡張仕様のご説明、AH Formatterの今後をご紹介を致します。
内容紹介・お申込みページ
ウェビナー登録ページ【終了しました】

Formatter Club は、アンテナハウスの XML 自動組版ソフト『AH Formatter』を導入されているユーザーや関心を持っていただいている皆様と開発者とを繋ぎ、会員同士の交流、情報交換により『AH Formatter』の利用技術を向上させ、より皆様のお役に立てる製品としていくために役立てることを目的として発足いたしました。
『AH Formatter』とその関連技術(XSL、CSS、XML 多言語組版など)に関心のある方でしたらどなたも参加できます。参加費は無料です。
Formatter Club の活動には会員メーリングリストを情報交換のために利用し、会員専用の Web ページも提供いたします。また定例会を開催し、会員相互の親睦をはかります。定例会は、『AH Formatter』開発者から最新バージョンの紹介・デモ、活用事例紹介、組版技術の向上のための勉強会などを行います。

Formatter Club について | アンテナハウス株式会社

ということで、「XSL拡張仕様のご説明」として『使いこなしガイド』の紹介をさせていただく予定です。
今回のウェビナーはFormatter Club会員様以外でも参加が可能ですのでお気軽にご登録、ご視聴ください。

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XSL-FO試行錯誤 SVGでもっとグラフィカルなボーダーを

Antenna House Formatterではボーダーに指定可能な線種について大きく拡張されています。

しかし、それでもボーダーの意匠について自由自在とまでは行きません。
例えば「ロープで結ったような枠線を出したい」というときには、背景画像を置くことになるでしょう。ボーダーの扱いで(他の多くと同様に)難しいところは、ページ分割のときにどうするかです。
背景画像に固定枠の画像を指定したとき、段落の長さによって枠をずらすようなことはできませんね*。ページ分割時にbeforeとafter部分のボーダーを再表示する必要がなければ、段落の前後に画像を挟めば良いだけで、テーブルレイアウトにする必要はありません。

さて、XSL-FO試行錯誤シリーズ、以前の回でテーブルレイアウトを駆使してブロックがページ分割されるごとに特定の要素を出現させる方法を紹介しました。
つまり、テーブルレイアウトのヘッダとフッタにボーダーとなる画像を指定し、テーブルのボディのbeforeとafterの位置に表示させてやろうというのが今回の試みです。

やることは単純明快。ソースコードは単純とはいきませんが。
早速結果を見てみましょう。

可変長の段落に対応した装飾的なボーダー

今回のソースコードは(特に)色々無駄があります。見ながら一緒に突っこんでいただければ幸いです。

ソースコード
<fo:block-container>
  <fo:table table-omit-header-at-break="false" table-omit-footer-at-break="false">
    <fo:table-header>
      <fo:table-row>
        <fo:table-cell>
          <fo:block-container 
            absolute-position="absolute"
            top="-2cm" left="-2.6cm"
            width="100%" height="6cm"
            axf:background-content-height="scale-down-to-fit"
            background-image="url(./corner.svg)"
            axf:background-size="cover">
          </fo:block-container>
        </fo:table-cell>
      </fo:table-row>
    </fo:table-header>
    <fo:table-footer >
      <fo:table-row>
        <fo:table-cell>
          <fo:block-container 
            width="100%" height="10cm">
            <fo:block-container
              absolute-position="absolute"
              top="-4cm" left="3cm"
              width="100%" height="10cm"
              axf:background-content-height="scale-down-to-fit"
              axf:transform="rotate(180)"
              background-image="url(./corner.svg)"
              axf:background-size="cover">
           </fo:block-container>
         </fo:block-container>
       </fo:table-cell>
     </fo:table-row>
   </fo:table-footer>
   <fo:table-body>
     <fo:table-row>
       <fo:table-cell>
         <fo:block space-before="4cm"
           space-before.conditionality="keep" start-indent="2cm" end-indent="2cm">
 Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua. Ut enim ad minim veniam, quis nostrud exercitation ullamco laboris nisi ut aliquip ex ea commodo consequat. Duis aute irure dolor in reprehenderit in voluptate velit esse cillum dolore eu fugiat nulla pariatur. Excepteur sint occaecat cupidatat non proident, sunt in culpa qui officia deserunt mollit anim id est laborum.

...
 
         </fo:block> 
       </fo:table-cell>
     </fo:table-row>
   </fo:table-body>
  </fo:table>
</fo:block-container>

思いつきのままに書いたのでもっとやりようがある気もします……。

corner.svgがボーダーとして用いる画像です。上のコードのように、わざわざaxf:transformで回転するよりも、もう1つフッタ位置用の画像を用意した方が早いでしょう。

ボーダー分、段落のbeforeにスペースを空けています。ボーダー画像を背景に指定しているブロックコンテナにabsolute-positionを設定しているためで、ブロックとfo:external-graphicでボーダー画像を配置した場合は不要です。SVGのサイズをきちんと把握して作成しておけば、もっとスッキリした指定になるでしょう。
background-sizeにcoverを指定していますが、coverである必要もないですね。左上の画像は高さの指定と合わず切れているので怒られかねません。

今回はbeforeとafterのボーダーに注目しました。ではstart、endのボーダーはどうすればいいのでしょうか? これは実はより単純で、背景に指定したボーダー用の画像をbackground-repeatでブロック進行方向に繰り返すことで、ある程度可変長の段落に対応できるようになります。ただ、ボーダー画像の端で上手く繰り返せるように段落の高さが背景画像の高さの整数倍になるようにする、beforeとafterのボーダー画像と破綻しないようにする、といった調整が必要になるでしょう。
beforeとafterについては背景画像ではなくfo:external-graphicやfo:internal-graphicでもあまり問題はないのですが、startとend方向は繰り返しの指定上背景画像への指定が良いのではないでしょうか。

* 後から検討したのですが、背景画像を指定した複数のブロックコンテナを入れ子で記述して描画位置を調整すればある程度可能そうです。結局ページ分割の問題にあたってしまいますが。

DITAで本を書いてAH XSL Formatterで自動組版する

日時
2021年8月10日(火)16:00~17:00
概要
2021年5月18日に公開/販売した『AH XSL Formatter 拡張仕様使いこなしガイド』の制作報告を通し、XML執筆からPDFを作る過程の知見をご紹介します。
DITAについてや、DITAでの書籍制作における実例の紹介や、DITAを扱うときの注意事項など、自動組版やXMLの使い方、DITAに興味がある方、Formatterユーザーさん、必見です!
内容紹介・お申込みページ
こくちーずプロからお申し込み:https://www.kokuchpro.com/event/20210810/
Zoomウェビナーへ直接お申込みいただく場合: ウェビナー登録ページ





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XSL-FO試行錯誤 最初からハイフンのある語の制御

5月18日に『AH XSL Formatter拡張仕様使いこなしガイド』が公開・発売したことは
当日の記事で述べました。

『Antenna House XSL Formatter 拡張仕様使いこなしガイド』を公開・発売しました I Love Software2!

『XSL-FO 試行錯誤』連載ではこれまで密かに「AH XSL Formatterの拡張仕様はメインの対象にしない」という縛りでやってきたのですが、めでたく書籍が公開されましたので、これからは拡張仕様についても対象にしていきます。『AH XSL Formatter 拡張仕様使いこなしガイド』に載せられなかった話題について扱うかもしれません。たとえばAH XSL FormatterではCSS3にあるような装飾表現が可能であったりするのですが「CSS3を紹介したWebサイトを見れば良いのでは」となってボツにしたものがそこそこあります。

制作のXSL-FO以外の面についての話についても折を見て記事などで展開する予定です。気になった点などがあればコメントやSNSなどで言及していただければ反映できるかもしれません。

最初からハイフンのある語の制御

ということで、本記事の話題は見出しの通り。どういったものがあるかというと、コマンドラインのオプション引数(-optionとかですね)、XSL-FOの要素、プロパティ名など(border-top-styleなど)ですね。

そもそもこれらは行分割位置に来ないようにするのがおそらく理想的ですが、ページ数の制約などで妥協することもあるかもしれません。

もとからハイフンがある語は分割によるハイフンを追加しない

<fo:block ...
 hyphenate="true"
 axf:hyphenate-hyphenated-words="false">...
</fo:block>

サンプルFOのページのサンプルでもよく使われています。プロパティ名など、もともとハイフンを含む語にハイフンが追加されてしまうと、元からあったハイフンなのか、分割時に追加されたハイフンなのか分からなくなってしまうかもしれませんからね。

他の回避手段としては、ハイフネーションとして追加される記号を変更するという方法も考えられます。

ハイフンを含む特定の文字列を、分割可能でないハイフンに置き換える

(XSL-FOの標準仕様として、「行分割でハイフンが追加され得る単語で、分割前後の文字数によって分割位置を調整する」ことができるhyphenation-remain-character-counthyphenation-push-character-countがあります。)

さて、元からハイフン(-)を含む語があり、初期設定でこのハイフンの後では分割可能であるとします。しかし、この文字の後が1字のみのとき(「UTF-8」など)のとき、「8」だけ次の行にいくのはあまり望ましくないですね。

「分割しないハイフン(NON BREAKING HYPHEN)」(U+2011)という文字があります。この文字でハイフンを置き換えてあげれば、ハイフンの前後で行分割は通常起こりません。
では、すべてのハイフンを置換しますか? それはそれで文字数の調整が狂ってしまいかねません。
また、元のファイルが500ファイル以上になっていたので、時間的に個別に置換するのはちょっと困難だとします。

今回は「特定の文字の組み合わせ(-*)でのみ、1字の次行送りが発生する」ことが分かっていたので、axf:text-replaceを使うことにしました。

axf:text-replace / CSS (-ah-)text-replace AH Formatter マニュアル


<xsl:attribute-set name="code">
<xsl:attribute name="axf:text-replace" select="'-&#x2217;' '&#x2011;&#x2217'"/>
</xsl:attribute-set>

指定に確認していない漏れがなければ上手く行っているはず。


この成果(書籍全体で適用されているか)は『AH XSL Formatter 拡張仕様使いこなしガイド』で確認してください!
(XMLファイルを処理するときにXSLTは経由したわけで、XSLT 2.0の正規表現などによる置換なども可能ですが、その辺りをあまり変更したくない、変更できない場合、ありますよね?)


『AH XSL Formatter 拡張仕様使いこなしガイド』





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『Antenna House XSL Formatter 拡張仕様使いこなしガイド』を公開・発売しました

に『Antenna House XSL Formatter 拡張仕様使いこなしガイド』を公開しました。


Antenna House XSL Formatter 拡張仕様使いこなしガイド | AH Formatter XML関連出版物の紹介

また、弊社Webページで公開しているPDF版のほか、AmazonのPrint On Demand(POD)により印刷版をお買い求めいただけます。

Antenna House XSL Formatter 拡張仕様使いこなしガイド | Amazon

書籍の概要や目次についての詳細は紹介ページに掲載されていますが、この記事では少し短くまとめて紹介します。

本書は、W3C勧告のExtensible Stylesheet Language(XSL)1.1のFormatting Object(FO)から、アンテナハウスが独自に拡張した機能について解説しています。本書は次の4章構成です。

  1. 『ショウケース』
  2. 『Antenna House XSL Formatter 拡張仕様と応用例』
  3. 『PDF出力』
  4. 『その他の拡張』

『ショウケース』はAntenna House XSL Formatterを利用してどのようなレイアウトが可能であるのか、サンプルをどんと出してから、どのようにXSL-FOを記述しているかを項目に分けて説明しています。



『AH XSL Formatter 拡張仕様と応用例』では拡張仕様によって可能になる文書構造、利用例を逆引きで掲載しています。「行いたい表現」から対応する仕様を探す際などにお役に立てていただくことを想定しています。

『PDF出力』『その他の拡張』も拡張仕様の逆引き項目を主内容としますが、PDFに特化した機能は多岐に渡り、セクションでまとめるには大変な量となってしまうため、章として独立しています。『その他の拡張』は印刷やオプション設定など、文書内部とは関連の薄い項目をまとめています。

それぞれのトピックは、ほかのトピックへの言及は極力避け、目次、または最後に配置した仕様一覧へと頻繁にアクセスすることを想定した構成になっています。

さて、本書自体もAntenna House XSL Formatter V7.1改訂2版を用いて制作されています。
LwDITAで下書きを行い、DITAに変換し調整、修正を行った後、DITA-OTとPDF5-MLを基に拡張したプラグインでFOに変換、Antenna House XSL FormatterでAmazon PODの要求する仕様に沿ったPDFを出力、という工程です。この詳細についてはまたブログなどでまとめられればと思います。

Antenna House Formatterでは試用版をご用意しています。XSL-FOによる組版、そして本書で紹介しているような拡張を試用してみたい方はぜひお申込みください。
AH Formatter 評価版のお申し込み





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【動画公開しました】1月26日火曜日のちょっと一息・アンテナハウスウェビナーは「PDF自動生成超入門 PDF自動生成へ挑戦する人のための始めの一歩」

アンテナハウスでは、昨年8月から第2、第4火曜日の16時から「ちょっと一息・アンテナハウスウェビナー」*と題する無償のZoomウェビナーを開催しています。

ちょっと時間の余裕があれば、お気軽にご参加いただけて有用な知識を持ち帰っていただける、肩が凝らないウェビナーを目指しています。

来週は、「PDF自動生成超入門 PDF自動生成へ挑戦する人のための始めの一歩」と題して、自動組版は初めてという人向けに、弊社が目指す自動組版のお話をさせていただきます。

自動組版にはDTPソフトを組版エンジンとして使う方式から、自動組版専用エンジンを使う方式までいろいろな方法がありますが、26日のウェビナーでは、自動組版専用エンジンであるAH Formatter**を使う方法についての簡単な説明を致します。


※画像をクリックすると「こくちーず」の本ウェビナーご案内ページに移動します。
終了しました。

本ウェビナーご視聴いただければ、今すぐでなくてもいずれは必ずお役に立つ情報を得られるでしょう。自動組版に少しでも関心をお持ちの方はぜひご参加ください。


2021年2月:追記ウェビナーの録画を編集した動画を公開しました。

なお、「ちょっと一息・アンテナハウスウェビナー」の過去開催分は録画を、YouTubeのアンテナハウスPDFチャンネルにて公開しています。
チャンネル登録をお願い致します。

Antenna House YouTube Channel

アンテナハウスPDFチャンネル


Antenna House XML Services
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MathMLで空欄付きの数式を表現する

センター、もとい、大学入学共通テストがおこなわれましたね。

数学や物理では数式に空欄が入った問題がおなじみです。「空欄アに入る数を答えよ」といったものですね。

ふと、「これをMathMLだけで組めるのだろうか」と思い、軽く調べてみました。
文字自体は<mtext>で良いとして、空欄であることを示すための枠線が必要です。

borderのようなattributeを持つ要素を探してみると、<mtable>が該当しました。
frame="solid"のようにして枠線が付けられます。枠で囲った「ア」を描画してみました。
セルや行、列単位で枠線を引くのであればcolumnlinesなど細かいattributeを指定しますが、今はもっとも外側の枠線だけて十分ですね。

<mtable frame="solid"><mtr><mtd><mtext>ア</mtext></mtd></mtr></mtable>

数式中に記述し、AH Formatterで出力してみます。

<mtable>による空欄付きの数式

 

根号の中に空欄が表示されています。<mtable>widthを指定できるので、幅を明示的に指定しました。

<mtable>は数ベクトルや行列を表現するために用いるのが主用途であることを考えると、電子的に配布を考える場合は別途注釈や内容のMathMLを記述した方が良いかもしれません。ともあれ、空欄付きの数式を表示してみました。

より簡潔な方法もありました。<menclose>です。

<menclose>による空欄付きの数式

こちらは「ア」の前後のパディングに、とりあえず<mspace>を使用しています。

ふと思いたち書いてみた方法なので、あるいはもっと適した方法があるのかもしれません。

なお、本記事で記述した方法を推奨したり保証するものではありません。


参考文献

Mathematical Markup Language (MathML) Version 3.0 2nd Edition

MathML 数式組版入門





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XSL-FOでスライドを作成してみる

先日社内でプレゼンの機会がありました。プレゼンといえばスライドですね。プレゼンには身振り手振りやデモなどもありますが、制作期間や発表時間といった制限時間、不測の事態や資料の提出などを考えるとスライドは安定性が違います。欲をいえばプレゼン時にスクリーンに出す資料と頒布する資料は対応を取りつつ情報量を変えたいなどもありますが、こういったものはリソースとの戦いですね。

スライドといえばMicrosoft PowerPoint、macOSであればKeynoteもあります。
これらのソフトを立ち上げスライドのファイルを読み込みいざオンラインプレゼン、オンライン会議ツールを立ち上げ……あ、画面が固まった。なんてことも。GUIによるプレゼンテーション作成ソフトと、オンライン会議ツールを同時起動しているゆえに負荷がそこそこ高いからでしょうか。
他の手段として、HTML+CSS+JavaScriptスライドというのもあります。Webブラウザがあれば動くということで、まあ悪くありません。クラウドのオフィスツールではGUIでこれらを作ることもできます。外部サービスでは会社で採用していないと使える機会が限られるのが難点でしょうか。

これらのスライドを、PDFに別で保存することがあります。PDFであれば、会議の進行役に念のため予備を渡しておいて「表示環境がない」ということもそうありません。先に挙げたようなオフィスツールでPDF出力をしてもよいし、作り方にもよりますがHTMLスライドもWebブラウザなどからPDFとして出力できます。

今回なぜか発表本番2、3日前にXSL-FOを直接書いてスライドをPDF出力していました。せっかくなのでそのときのFOを一部ご紹介します。

スライドを作成するとき、コンテンツはスライドのコンテンツとして都度作成しなければなりません。構成や情報量は、発表時間やオーディエンス、発表環境などによって、練り直さなければならないためです。「スライドの一部を書き換えて何度も利用する」というのはよくあるかもしれませんが、媒体の方向性としては一品ものと捉えてもよいでしょう。1からスライドを作るのにXSL-FOを直接書くというのは個人的におススメできないことはあらかじめお伝えしておきます。

テキスト内容などは変更しています。また動作などについて保証するものではありません。使用したのはAntenna House XSL Formatter V7.0 MR5となります。

ページレイアウトと背景


<fo:root xmlns:fo="http://www.w3.org/1999/XSL/Format"
xmlns:axf="http://www.antennahouse.com/names/XSL/Extensions"
font-size="28pt"
line-height="1.8"
font-family="sans-serif"
color="white">
<fo:layout-master-set>
   <fo:simple-page-master master-name="slide"
    background-image="linear-gradient(to left, rgba(0,0,0, .7) 0%,rgba(0,0,0, .9) 100%) )"
    page-width="1920px" page-height="1080px"
    margin="0"
>
    <fo:region-before extent="2cm" />
    <fo:region-after region-name="footer" extent="2cm"/>
    <fo:region-body region-name="body" margin="2cm 3cm" />
  </fo:simple-page-master>
</fo:layout-master-set>

ページサイズは幅1920px、高さ1080pxのFHDサイズにしました。これはPDF出力時に物理的なサイズに変換されます。
ルートでフォントサイズ、行の高さ、フォントファミリ―を指定しています。文字色も指定していますが、背景の色と関連するのでルートよりも後で指定する方が望ましいかもしれません。その背景は単純ページマスターで指定しています。線形グラデーションで灰色の度合いを変化させています。rgbaで透過色を指定をしているのは当初この下に背景画像を置こうとしていたからです。実際に追加するのであれば、linear-gradientの後に指定します。

ヘッダーとフッターの領域を2cmずつ用意し、本文区画は上下2cm、左右3㎝のマージンをとっています。

タイトルページ

タイトルページ
 <fo:page-sequence master-reference="slide">
  <fo:flow flow-name="body">
   <fo:block-container id="title" 
    <fo:wrapper font-size="92pt" line-height="2"  text-align="center">    
     <fo:block margin-top="2cm" >
       なんかものすごい<fo:block />プレゼン</fo:block>
    </fo:wrapper>
      <fo:block-container space-before="3cm" 
            text-align="end">
        <fo:block>2020-11-30</fo:block>
        <fo:block>アンテナ太郎</fo:block>     
        </fo:block-container>
    </fo:block-container>
  </fo:flow>
</fo:page-sequence>

タイトルページではヘッダーとフッターを表示しないよう、その後のページとページシーケンスを分けていますが、参照しているページマスターは同じです。ページマスターを分けるほど複雑な構成は必要なかったためこのようにしています。
タイトルは中央揃え、名前や日時はendに揃えています。よりこだわるなら名前や日時のブロック自体は右側に置いた上で、ブロックの内側では左揃えといった置き方もできます。

ヘッダーとフッター

ヘッダーに社のロゴ、フッターにスライドのページ番号を表示することにします。

ヘッダーとフッター、箇条書き

<fo:page-sequence master-reference="slide" initial-page-number="2">
<fo:static-content flow-name="header" >
    <fo:block-container><fo:block text-align="end">
      <fo:external-graphic src="url(https://www.antenna.co.jp/img/ah_headerlogo.svg)" width="8cm" height="1lh"/>
  </fo:block>  
  </fo:block-container>
</fo:static-content>
  <fo:static-content flow-name="footer">
      <fo:block-container>
          <fo:block 
           text-align="end" space-before="1cm" end-indent="2cm">
           <fo:inline font-family="serif"> p-<fo:page-number font-variant="oldstyle-nums"/> </fo:inline>
          </fo:block>
      </fo:block-container>
  </fo:static-content>
...
<fo:page-sequence>

ヘッダーのロゴの高さを行の高さにしました。このスライドでは使用していませんが、スライドの見出しをマーカーで参照し、ヘッダーで表示することを想定したサイズ指定です。SVGのロゴ画像なのでサイズ変更が容易で助かりました。

本文がサンセリフなのに対し、フッターのページ番号はセリフにすることで本文と区別できるようにしています。ついでにページ番号の数字はオールドスタイルにしてみました。ページ番号の前に接頭辞をつけるにはページシーケンスでfo:folio-prefixをつける方法がありますが、
ページ番号参照のときに「p-4」のように表示させたいわけではないので、通常のテキストとして配置しています。

initial-page-number=”auto”では前のページ番号を引き継ぐので、上で記述されているページの開始番号のように指定しなくとも問題ありません。

箇条書き

スライドでは定番の箇条書き表現。GUIのプレゼンテーションツールやHTMLとXSL-FOでかなり書き心地が異なります。

<fo:block-container break-before="page">
    <fo:wrapper font-size="62pt" font-weight="bold">
        <fo:block>
       XSL-FOの関連仕様
        </fo:block>
    </fo:wrapper>
    <fo:list-block provisional-distance-between-starts="0.5em"
    provisional-label-separation="0em"
    >
        <fo:list-item>
            <fo:list-item-label end-indent="label-end()">
          <fo:block xml:lang="en">•</fo:block>
            </fo:list-item-label>
            <fo:list-item-body start-indent="body-start()">
                <fo:block>Extensible Markup Language
          </fo:block>  
          </fo:list-item-body>
        </fo:list-item>
        <fo:list-item>
            <fo:list-item-label end-indent="label-end()">
          <fo:block>•</fo:block>
            </fo:list-item-label>
            <fo:list-item-body start-indent="body-start()">
               <fo:block>XMLNamespace</fo:block>
          </fo:list-item-body>
        </fo:list-item>
        <fo:list-item>
            <fo:list-item-label end-indent="label-end()">
          <fo:block>•</fo:block>
            </fo:list-item-label>
            <fo:list-item-body start-indent="body-start()">
           <fo:block>XML Transformations</fo:block>
          </fo:list-item-body>
        </fo:list-item>
        </fo:list-block>
    <fo:block>
    </fo:block>
</fo:block-container>

1つの箇条書き項目を表すために記述がリストブロック、リストアイテム、リストアイテムラベル、リストアイテムボディの要素と、ラベルとボディ間の間隔を指定する必要があります。入れ子のリストブロックや長さがバラバラのリストアイテムなどがあるとき真価を発揮する箇条書き用の構造ですが、これくらいの内容であれば項目ごとにブロックで記述した方が簡単です。

ソースコードを複数段表示する

ソースコード

スライドはスクリーンなどの都合もあり幅の方を長くとることが大半であると思います。これは改行で整えられた行数の多いコードを表示するのにあまり向きません。ブロックコンテナ―に段組を指定し、スライド1枚に詰め込めるソースコードを増やしてみました。

<fo:block-container break-before="page" column-count="2"
border="0.3pt solid white" 
axf:column-gap="2em" axf:column-fill="auto"
>
  <fo:block  border-bottom="0.3pt dashed white">XSL</fo:block>
  <fo:block
font-size="24pt"
line-height="1.2"
axf:line-number="show"
axf:line-number-color="white"
axf:line-number-font-size="20pt"
axf:line-number-offset="10pt"
axf:line-number-font-style="italic"
margin="2pt"
white-space-collapse="false" white-space-treatment="preserve"
linefeed-treatment="preserve"
xml:space="preserve" font-family="monospace">
..</fo:block>
</fo:block-container>

ということでXSL-FOで直接作成したスライドとその記述の一部を紹介しました。今回のように直接書くのはやはりおススメできませんが、他のXML文書などからスライドを用意するのであればなかなか悪くないのでは、と感じました。

xsl-foの基礎第2版




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fo:bookmarkというマークアップから考えるしおり

『岩波国語辞典第八版』*1によれば、「しおり(しをり)」には2つの意味があります。

1. 本の読みかけのところに挟んで目印とするもの 2. 初めての人などにわかりよく説明した本。手引き

岩波国語辞典第八版

「目次」は次のように記されています。

(書物の)内容の題目を、書かれている順に並べて記したもの

岩波国語辞典第八版

しおりについて、1の意味では、読み手側が設定するものという印象が強いですね。ちなみに岩波国語辞典だとブックマークはWebブラウザのブックマーク(お気に入り)機能についての言及となっています。

さて、XML組版の仕様であるXSL1.1仕様にはしおりを作成するための機能fo:bookmarkfo:bookmark-titlefo:bookmark-treeが存在します。1.1の仕様に1.0との差異が記載されているのですぐにわかりますが、実は1.0のときには存在しなかった機能です*2

『XSL-FOの基礎 第2版』*3にしおりのFOについての解説があります。また、Antenna House XSL Formatterの*4サンプルFOのページ*5からしおりの設定されたPDFを確認できます。

<fo:layout-master-set>
    …略…
  </fo:layout-master-set>
  <fo:bookmark-tree>
    <fo:bookmark internal-destination="MARK001">
      <fo:bookmark-title font-weight="bold">
    目次</fo:bookmark-title>
    </fo:bookmark>
    <fo:bookmark internal-destination="MARK002"
                 starting-state="hide">
      <fo:bookmark-title>第1章</fo:bookmark-title>
      <fo:bookmark internal-destination="MARK003">
        <fo:bookmark-title>1.1</fo:bookmark-title>
      </fo:bookmark>
     ...
     </fo:bookmark-tree>
     ...
    <fo:page-sequence ...>
      <fo:block font-size="2em" font-weight="bold" space-after="5mm" id="MARK001">Bookmark sample-1</fo:block>
        <fo:block font-size="1.5em" font-weight="bold" id="MARK002">Lorem Ipsum</fo:block>
          <fo:block space-before="4mm" margin-left="2em" line-height="1.4">
         <fo:block keep-with-next="always" font-weight="bold" id="MARK003">Lorem ipsum dolor sit amet</fo:block>
            <fo:block>...</fo:block>
        </fo:block>
...
</fo:page-sequence>

ごく簡単に説明すると、fo:rootの子としてしおりのツリーを用意し、その子として、目的のIDやURLなどをプロパティの値に持つしおりfo:bookmarkとしおりの項目名fo:bookmark-titleを記述します。上の例ではfo:blockにそのIDが記述されていますね。ツリー構造ですので、階層も表現できます。

PDFなど、ページドメディアへの出力を意識したマークアップであるXSL-FOの機能として用意されていることから分かる通り、これは文書コンテンツ提供側が用意するしおりです。
XSL-FOは(中間形式にせよ)ページドメディアとしてかなり明示的なマークアップを求めますから「fo:bookmark*」は「この箇所をしおりとする」というはっきりとした意思表示となります。
文書コンテンツ作成者がコンテンツ頒布時に「この部分は読みかけ」というしおりを作ることは稀なことと捉えて良いでしょう。そして、fo:bookmark-titleというマークアップ名から分かる通り、しおりの項目名は長い段落などを記述する箇所でもありません。

目次項目は当然その項の内容を反映しまとめたものになりますから、しおりは多くの場合目次項目と同じ箇所でマークアップされ、対応したPDFビューアーでは「しおりを表示」といった機能でページ表示とは独立して表示できます。
特に数百、数千ページのPDF文書を頻繁に読む機会のある方は頷かれるのではないかと思いますが、紙の文書ではそれこそ「しおり」を挟んで分厚いページの束をまとめてむんずと掴んで目次に戻ったりできますが、PDFビューアー上で毎回目次ページへ戻って目次項目を確認するというのはそこそこ時間がかかります。

個人的には、しおりの重要な点として「ページ外の要素」であることが大きいのではないか、と考えています。目次で「2.3 詳細 200ページ」、文章中に「299ページに詳細」、索引ページに「fo:bookmark…300p」といったページ参照があるのはそれはそれで重要ですが、「本文を読みながら文書(あるいは文書外)の他の箇所への目印へすぐにアクセスできる」機能がしおりといえるのではないでしょうか。そして、XSLでは文書コンテンツ提供側がそれを提供することになります。

ところで、XSL-FOとXSL-FOプロセッサーによる処理ではPDFの作成時にしおりをマークアップすることになるので、すでにPDFとなっているものにしおりを付与することは範囲外です。Antenna House Formatterでは「PDFを画像のように埋め込む」といったことができるので、多少トリッキーな方法で後からしおりを付与することもできなくはありません。しかし専用のソフトウェアがあればもっと分かりやすく、そして効率的にしおりを付与できます。

antenna house webinar pdf bookmark

隔週で火曜に開催している「ちょっと一息 アンテナハウスウェビナー」、11月10日(火)16時からは「そもそも、PDFのしおりとはなにか ~目次と何が違うのか。どう作って活用するか~ 」というテーマでお送りします。この記事を書いているのが担当者でないため、発表内容の詳細はわかりません。しおりってなんなんでしょうね……。この謎を明かすためにも明日のウェビナーは必見です。

参考文献・資料

  1. *1 『岩波国語辞典第八版』(岩波書店, 2019年11月22日第1刷発行, ISBN 978-4-00-080048-8)
  2. *2 https://www.w3.org/TR/xsl11/#change10
  3. *3 https://www.antenna.co.jp/AHF/ahf_publication/data/xsl-fo-v2/201603282131.html『XSL-FO の基礎 第2版 – XML を組版するためのレイアウト仕様』(アンテナハウス株式会社, 2017年3月, ISBN 978-4-900552-48-7)
  4. *4 Antenna House Formatter
  5. *5 https://www.antenna.co.jp/AHF/ahf_samples/sample-fo.html#pdf




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海外ウェビナー動画「CSSとXSL-FO:印刷出版に私はどちらを使うべきでしょうか?」(日本語字幕付き)

Xplor International(https://xplor.org/)主催のウェビナーにて、弊社副代表のMichael Millerが発表を行いました。

タイトルは「CSSとXSL-FO:印刷出版に私はどちらを使うべきでしょうか?」(原題:CSS or XSL-FO: Which should I use for producing print publications)です。
「CSSとXSL-FO、どちらを使うべきでしょうか?」という質問をよくいただきます。こののウェビナーではCSSとXSL-FO、それぞれの特徴や歴史的な背景を昨今の出版を取り巻く環境も含めてご紹介しています。技術的な内容は少なめで、どなたでも理解しやすい内容となっています。

ウェビナーの様子はYouTubeでご覧いただくことができますので、ぜひご視聴ください。

なおYouTubeの字幕機能を使えば、日本語字幕付きでご視聴いただくこともできます。
字幕の設定方法は、

  1.  動画右下の設定アイコン(歯車マーク)をクリック
  2. 「字幕」をクリック
  3. 「日本語」にチェックを入れる

以上の設定で日本語字幕付きでご視聴いただけます。



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Google Chrome開発者版(86)でタグ付きPDFを出力[8/4修正]

[8/4追記]社内で「Chrome出力ではなくAcrobat Readerの対応外のタグ使用によって表示が壊れている可能性がある」と指摘を受けました。記事内での表現を修正します。

当初の記事タイトルは「タグ付きPDFがGoogle Chromeのデフォルトに?」だったのですが、現状としては「今後Google Chromeでタグ付きPDF出力が可能になるかもしれない」あたりのようです。

今回使用した環境は次になります。

  • Windows 10 Home 1909
  • Google Chrome バージョン: 86.0.4221.0(Official Build)canary (64 ビット)
  • Acrobat Reader DC – Japansese (20.009.20074)
  • 検証に使用したページ*https://www.w3.org/TR/xsl11/

2020年8月リリースのGoogle Chrome 85から、タグ付きPDFの出力がサポートされます[1]。関連する情報発信自体は以前からあったようですが、実際にリリースされるこのタイミングで俄かに活気づいているようです。活気づいてますよね?

早速Google Chromeをサイトからダウンロードしてみましたが、バージョンを確認すると2020年8月3日時点では84のようです。Google ChromeにはCanaryバージョンがあるのでこちらをダウンロード。試験運用版ですので、同様に検証される方はくれぐれも自己責任でお願いします。(84でもExperimentalの設定として「Export Tagged PDF」を有効化できます。)

バージョンを確認。86……86ですね。85ではありませんが、検証には問題ないでしょう

この後Chrome 84でのtagged PDF出力も確認しましたが、同様の結果になりました。

タグ付きPDFとは

ざっくりとまとめると「タグ付きPDFは、内部に文書構造を指定するタグを付与したPDFのこと」になります。
通常PDFは印刷物のデジタル表現、つまり視覚的な表現として文書構造が見られればよいわけですが、
PDF内部のデータを別の目的で使うときにこの情報だけでは不足することがあります。
別の目的としては、データの読み上げ、PDFから他形式への再変換などがあります。

また、PDFをHTMLのようにリフローで表示したいときにも、タグを用いることで文書の表示順序などを壊さないようにできます。
「HTMLのように」と書きましたが、このタグ付きPDFで設定できるタグの多くはHTMLでのタグと類似したものになります。

概要は[2][3]、詳細は[4][5]をご覧ください。

新ビューアは今のところリフロー表示に対応していないらしい

Canaryだと、PDF出力オプションの他に「PDF Viewer Update」オプションがあるんですね。

chrome://flags/#pdf-viewer-update

これを有効化すると、84ではExperimentalのオプションである「PDF Two-up View」もついでに使えるようになります。

ウインドウ画面と表示をフィットさせる場合に上下と左右どちらを優先するか、回転表示、PDF注釈の表示のオンオフ、アウトライン表示など、色々改善がされていることがわかります。とはいえ、全体的なPDFの表示機能についてはまだまだ頑張ってほしいところです。

さて、タグ付きPDF対応と聞いて真っ先に期待してしまうであろうリフロー表示ですが、とりあえず86の新ビューアではできないようです。
「タグ付きPDFの出力」と「PDFのリフロー表示」は重なる部分もあるものの別の話なので、そういうこともありますね。
今回の新バージョンについて、ChromiumのブログにChrome Accessibilityのリーダーからコメントがあります。improving Chrome’s built-in PDF reader to better consume tagged PDFsとあるので、それなりに可能性はあるのではないでしょうか。
> While this is an important milestone, we’re not done. Future work includes both improving the quality of generated tagged PDFs, and also improving Chrome’s built-in PDF reader to better consume tagged PDFs.

タグ付きPDFをChromeで出力する

本題のタグ付きPDF出力です。Experimentalな設定で次を指定するとタグ付きPDFが出力できるようになるとあります。

chrome://flags/#export-tagged-pdf

では、PDFを出力してみます。*のページを「PDFで保存」します。さて、本来はこれをAcrobat Readerで開いてみて「おおー」となる予定だったのですが、「表示」「折り返し」を有効にしたAcrobat Readerでのリフロー表示がうまくいってないようです。

W3Cのページはあまり変なマークアップのHTMLはないはずです。タグ付きPDFは検証した日時でのGoogle ChromeとしてはExperimentalな機能なので、こちらが原因でしょうか。タグ付きPDFとリフロー表示についてはAcrobat Readerの対応状況も関連するので、Chromeの出力が原因ではないかもしれないとの指摘をいただきました。Google Chromeには自分の出力の正しさを証明するためにもPDFリフロー表示に対応してほしいですね。
PDFの内部を確認したい方は、アンテナハウスのデスクトップ製品『
瞬簡PDF 編集 9
』[6]付属の『タグ編集ツール PDFタグエディターVer.2』を使うとよいかもしれません。

他に数件確認してみましたが、ページが上のように壊れることはないものの、「いきなり何もかも上手く出力できる」とはいかないようです。Experimentalな機能なので詳細な検証をすることを避けました。

ちなみに、Chromeでのタグ付きでないPDF出力をAcrobat Readerの折り返し表示したときは、とりあえずは表示されています。

ちなみに、同じWebサイトをAntenna House Formatter V7.0 MR3でタグ付きPDFを出力した場合、折り返し表示でも問題はないようです(フォントサイズや余白、分割アルゴリズムの違いなどがあるので同じ条件にはなっていません。)。

ChromeでのHTMLとタグ付きPDFの補足資料

Chromiumのタグ付きPDF機能開発におけるデザイン資料[7]によればこれはマークアップを元にタグを付与するものなので(AIが何もかもやってくれるような話ではない)、求められるタグを出力できるかはページ製作者次第です。Chromeの開発過程で実際にはどうなったかは確認していませんが(資料中のメーリスやバグトラッカーを確認していけばよさそうです)、DOMツリーと描画用ツリー、そしてARIA属性などを基にした「Accessibility tree」を利用するデザインのようです。


The accessibility tree computed in Blink is another good possibility. The accessibility tree is derived from the DOM and the Layout Tree and also takes accessibility attributes such as ARIA attributes into account.
Chromium Tagged PDF Export Design Doc

We think the accessibility tree is the best fit and that’s the design proposed here.
Chromium Tagged PDF Export Design Doc

つまり出力が完璧だったとして、現在のところ多くのWebページについて実用的かと言われれば疑問の残るところ。残念ながら、ページによってはむしろ不要なノイズだらけになってしまうでしょう。[7]に次のようにありますが、こういった機能を機にアクセシブルなWebページを作ろうという気運が再燃したりすれば幸いです。

正常に出力されるページもあるかもしれませんが、現在Experimentalとある機能ですので、今回はここまでとします。

タグ付きPDFにご興味を持たれた方は、アンテナハウスのPDF製品を是非チェックしてみてください。


if you visit a web page that’s compliant with WCAG accessibility guidelines, then export it as PDF, then open that PDF in Chrome, the PDF in Chrome should have the same level of accessibility, modulo the limitations of a PDF file.Chromium Tagged PDF Export Design Doc

  1. [1] Using Chrome to generate more accessible PDFs – Chromium Blog
  2. [2] タグ付きPDFとはどんなもの
  3. [3] PDFのリフロー表示。タグ付きPDFとタグの付いていないPDFの比較。
  4. [4] 『タグ付きPDF 仕組と制作方法解説』
  5. [5] 『PDFインフラストラクチャ解説』
  6. [6] かんたん操作でPDFを自由自在に編集 瞬簡PDF 編集 9
  7. [7] Chrome Tagged PDF Export – Authors: dmazzoni[at]chromium.org
    November 2019





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