カテゴリー別アーカイブ: コラム

無料のPDF編集ツールはどの程度使えるか―Smallpdfは無料で使える?

Copilotに聞いてみました。

質問
無料のPDF編集ツールはどんなものがありますか

回答
もちろんです!PDFを編集するための無料のツールがいくつかあります。以下はいくつかのオプションです。

Smallpdf:
オンラインで直接使える無料のPDFエディターです。
テキストの編集や画像の追加、図形やハイライトの挿入などが簡単に行えます
<以下、略>

Copilotに限らず、無料のPDF編集ツ―ルとしてSmallpdfがよく挙げられます。Smallpdfは結構人気があるようです。そこでSmallpdfってどんなものなのかちょっと調べてみました。

まず、Webページです。Smallpdfのトップページはこちらです:
https://smallpdf.com/jp

画面右上で「ログイン」すると次のような画面になります。

メニューにリストされている機能を一覧表に整理すると次のようになります。

分類 機能リスト 概要説明
変換&圧縮 PDF 圧縮 PDFのサイズを縮小
PDFコンバーター Word、Excel、ppt、および画像ファイルがPDFに変換されます。PDFファイルは選択されたファイルタイプに変換されます。
PDFスキャナー PDFをモバイルでスキャン
整理 PDF 結合 PDFドキュメントをマージ
PDF 分割 ページずつ分割したり、特定のページを切り取って新しいPDFファイルを作成
PDFを回転 回転するページを選んだり、すべてのページを一度に回転
PDFページを削除 PDFからページを削除
PDFページの抽出 1つのPDFとしてページを抽出できます。また、選んだページごとに個別のPDFを作成することも
表示&編集 PDF編集 テキストや画像、ハイライト、描画の追加やドキュメントの整理
PDF注釈 注釈が追加されたPDFを透かしなしでエクスポートし、さまざまなファイル形式に変換したり、圧縮
PDFリーダー 自由に解析、編集、共有、印刷
ページ番号を付ける 各ページのヘッダーまたはフッターに自由にページ番号を付ける
AI PDF要約 50MBのファイルサイズと50,000ワードの文字数を上限に、PDFドキュメントをお好きな数だけ要約
PDFから変換 PDF Word 変換 PDFをワードファイルに変換
PDF Excel 変換 PDFファイルをExcelスプレッドシートにすばやく変換。OCRも可能
PDF PPT 変換 PDFをPPTファイルに変換
PDF JPEG 変換 「全てのページを変換」または「画像を1枚ずつ抽出」
PDFに変換 Word PDF 変換 DOCとDOCXを数秒以内にPDFに保存
Excel PDF 変換 xls/xlsxファイルをPDFに自動変換
PPT PDF 変換 PPT も新しい PPTX フォーマットもどちらも変換
JPEG PDF 変換 文字のサイズ、ページの向き、ページ余白を自由に調整
PDF OCR OCRなら、選択可能なテキストを含む検索可能なPDFを作成
署名&セキュリティ EサインPDF 署名と署名者を検証するためのLTV(長期検証)タイムスタンプが付与
PDF ロック解除 PDFからパスワードを解除
PDFを保護 PDFにパスワードを追加
PDFをフラット化する 内容がドキュメントに恒久的に埋め込まれる

ざっくりみると、PDF編集ツールとしてはかなり機能が充実しているように見えます。もう少し詳細なところは後ほどチェックすることにして、「価格」を見てみましょう。

価格には次の4つのメニューがあります。
①無料
②プロ(月額1,013円)
③チーム(月額825円)
④ビジネス(カスタム価格)

プロとチームは、それぞれ、7日間のトライアル期間があります。トライアル期間を開始するにあたっては、クレジットカード情報の登録が必要で、7日間の試用が終わると課金されることになります。

有償ツールのトライアル期間は無料ツールには含めないとすると、「①無料」でどこまで使えるかがチェックポイントとなります。実際に使ってみると、多くのメニューは確かに無料で使えますが、しかし、重要な制限があります。

1.無料で使用するとき「ダウンロード」の制限があります。今回試した範囲では二つのPDFファイルを作成してダウンロードできました。しかし、三つ目をダウンロードしようとしたら、もう1日の制限容量を超えてしまったということで、次の画面のメッセージがでてダウンロードできません。1日にたった2ファイルしかダウンロードできないのでは、少なくとも仕事には使えないでしょう。

2.メニューでは一通りの機能があるように見えます。しかし「PDF編集」の中の「テキストや画像、ハイライト、描画の追加」をみると、ほぼ注釈の編集機能です。PDF本文編集では、本文への「テキスト」の追加機能があります。これを使おうとすると、次のダイアログが表示されます。


どうやら、これはSmallpdf proの機能のため「無料」では使えないようです。

Smallpdfツールは機能がかなり充実していて魅力的を感じる点もあるサービスです。

しかし、上記の1、2の制約を考えると「無料のPDF編集ツール」かもしれませんが、Smallpdfを「無料で実用に使える」とは言えないでしょう。無料はPR効果を狙った宣伝用語に過ぎないといえそうです。

弊社の有償ツールとの比較

結局、PDF編集を実用的に使いこなそうとするならば、有料のSmallpdf Proを契約するしかなさそうです。Smallpdf Proは、弊社製品で比較するならば『瞬簡PDF統合版』が機能的には一番近くなります。

契約体系が全く異なっているので価格は比較しにくいですが、次の表のとおり、1年と少しを超えて使用する予定があるなら『瞬簡PDF統合版』の方がお安くなります。

無料という宣伝文句に踊らされないようにしっかり比較してみましょう。

Smallpdf pro 瞬簡PDF統合版
シングルライセンス
契約方式 サブスクリプション 永続ライセンス
月間利用料 非課税(?)1,013円 パッケージ版
税込15,950円
ダウンロード版
税込14,190円

価格は値引きなし標準価格
値引きが適用されとさらにお安くなります。
1年間使用 非課税(?)12,150円
2年間使用 非課税(?)24,300円
3年間使用 非課税(?)36,450円

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【ご注意】Microsoft Copilotの回答は、ときどき、お頭が空っぽなオーム並みのことがあります

生成AIが注目されているので、Windows 11に付属しているCopilot無償版(プレビュー)に、いくつかPDF関係の質問をしてどんな回答が得られるか、どの程度役に立つのだろうかと少しばかり試してみました。

幾つか試してみたところ、質問の内容によっては参照元Webページの要約をまとめていることが明らかなケースがときどきあります。

この場合、参照元のWebページが誤っていると、Copilotはその内容の真偽を判断することなく、オーム返しに誤った回答をしています

例えば、

質問:フォント埋め込みの方法を教えてください。

Copilotの回答:

PDFファイルにフォントを埋め込む方法は、Adobe Acrobat Reader DCを使用して行うことができます。以下にWindowsとMacの両方の方法をご紹介します。

Windows(Adobe Acrobat Reader DCを使用)
Adobe Acrobat Reader DCを開きます。
(以下、省略)

この回答の中では、Acrobat Reader DCでPDFを表示して、そのPDFを「Adobe PDF」ドライバで印刷して新しいPDFを作る方法を説明しています。

これでは、Adobe Acrobat のプリンタドライバで新しくPDFを作り直しているのであって、Adobe Acrobat Reader でフォントを埋め込むとは到底言えないでしょう。

しかも「設定」の説明も誤っています。

Copilotが、このような本質的に誤った回答をしている原因は、この回答で参照しているWebページの内容が誤っていることにあるようです。

Copilotが、この回答で参照しているWebページは次の二つです。

[1] https://office-hack.com/pdf/font-embedding/
[2] https://pdf.wondershare.jp/pdf-edit/font-embed.html

この[1]には「Adobe Acrobat Reader DCでPDFにフォントを埋め込む方法」という説明文があり、Copilotはこの説明文をほぼそのままオーム返しに、自分自身の回答としています。今回の場合、かなり「引用」に近い状態です。

ここで大きな問題は、[1]の内容がまるでデタラメということです。結果的に、Copilotの回答もデタラメになっています。

本来は、Copilotは自分自身が蓄積した知識を使って、Webページの内容の真偽を判断し、情報の取捨選択をしたうえで、正しい情報のみを整理しないといけないはずです。しかし、現時点では、収集した情報の真偽の判断ができていないようです。

ある情報の真偽を判断するのは人間にとっても難しいものです。人間の場合は、例えば実際に行動して、その失敗から学んで正しい知識を身に着けていく場合も多いでしょう。しかし、CopilotのようなAIが、自らの行動の結果に基づいて学ぶということは簡単ではないかもしれませんね。




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Google検索、PDF編集は「無料」にハックされているか?

昨日「Google 検索、劣化してない?」で、検索結果について「上位に来る記事は『無料』というキーワードがちりばめられたものばかり。無料というキーワードがないと記事としても認められないのだろうか?」とお話しました。この点をもう少し詳しくみてみます。

Googleで「PDF編集」というキーワードで検索し、ヒットしたページのタイトルとURLを上位から10位まで並べると次のようになります。(スポンサーとマークされたページは除外しています。)

タイトル URL
【無料】PDFの編集やコメントの追加 | Adobe Acrobat https://www.adobe.com/jp/acrobat/
online/pdf-editor.html
PDFを編集する方法を徹底解説!WordやExcelへの変換手順と無料でできるやり方を紹介 https://www.itreview.jp/labo/archives/8901
無料のPDFエディターとフォームフィラー。オンラインでPDFを編集 https://www.ilovepdf.com/ja/edit-pdf
PDFを編集 – ブラウザで直接使える無料PDFエディタ https://smallpdf.com/jp/edit-pdf
PDF編集のやり方!PDFとは?初心者向けに徹底解説 | コエテコキャンパス https://coeteco.jp/articles/11361
PDF を編集する – Microsoft サポート https://support.microsoft.com/ja-jp/
office/pdf-%E3%82%92%E7%B7%A8%E9%9B%
86%E3%81%99%E3%82%8B-b2d1d729-6b79-499a-
bcdb-233379c2f63a
【2023年最新】無料PDF編集ソフト10選オススメ https://pdf.wondershare.jp/ranking/
pdf-editor-top-10.html
PDFを編集 | Adobe Acrobat https://www.adobe.com/jp/acrobat/
how-to/pdf-editor-pdf-files.html
PDFは編集できるの?どうやって編集するの? https://www.antenna.co.jp/pdf/reference/
PDFEdit.html
PDF 編集 – 簡単、オンライン、無料 https://tools.pdf24.org/ja/edit-pdf

こうしてみると、上位10本の記事のなかで6本のタイトルに「無料」という言葉が含まれています。

「PDF編集」をGoogleで検索した結果は「無料」にハックされている、と言えるかもしれません。

ハックとは「システムで許容されているが、その設計者は意図も予想もしていなかったこと。」(『ハッキング思考 強者はいかにしてルールを歪めるのか、それを正すにはどうしたらいいのか』(ブルース・シュナイアー著、日経BP発行、2023年10月16日))

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Google 検索、劣化してない?

最近のGoogle検索は広告のスペースが多すぎじゃないだろうか?
例えば「PDF編集」で検索すると、検索結果は次のように、PCの1画面分ほとんど広告が占有してしまう。

Webを検索した結果を知りたいのに、出てくるのは、検索の結果ではなくて、広告ばかり。
ちょっとひどすぎるのではないか? これでは検索機能の本来の目的を果たせていない、と思うのだけど。

しかも、上位に来る記事は「無料」というキーワードがちりばめられたものばかり。無料というキーワードがないと記事としても認められないのだろうか? 

Googleが登場したときの「Webページ間のリンクによって、ページランクを計算する。結果的に良質のWebページからのリンクが多いときページランクが高くなる。」という優れた着想はどこに行ってしまったのだろうか?

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『AWSなどでMicrosoft製品(SPLAライセンス)が使えなくなる!?』ってホント??

2023年8月18日付けのIIJのエンタープライズIT Columns(JJI-ITCと略記)に、『AWSなどでMicrosoft製品(SPLAライセンス)が使えなくなる!? 』という記事が掲載されています。

だいぶ前の記事なのですが、「2025年9月30日以降、AWSやGoogle Cloudなどのパブリッククラウドを利用しているサービス提供事業者は、Microsoft製品(SPLAライセンス)の持ち込みができなくなる」とあるので、本当だとすると、結構インパクトが大きそうです。

現時点で1年半ほど先の話ですが、弊社でも関係するクラウドサービスを提供しているため調査を始めています。

マイクソロソフトのWebページで関連する情報を探すと、次の記事が見つかりました。
クラウドへのワークロードとライセンスの導入を容易にする、新たなライセンス特典(2022年9月12日)

この中の「アウトソーシングに関するSPLAプログラムのアップデート」と見出しのついた段落がJJI-ITCの記事で言っている内容に該当するようです。

この記事は次の元記事(英語)の翻訳とされています。
New licensing benefits make bringing workloads and licenses to partners’ clouds easier (2022年8月29日:元の記事を読むにはブラウザで言語を英語にする必要があります。)

この記事を読むと、マイクロソフトのSPLA(Services Provider Licensing Agreements)は、データセンターを運営する事業者とユーザーの間の契約を想定していた。しかし、マネージド・サービス・プロバイダーが、SPLA契約でマイクロソフト製品のライセンスを購入して、他社のデータセンターでサービスを行うようになった。これを元の意図に沿って正したいということのようです。

そこで、リストに該当するプロバイダーの上にSPLAを持ち込むことができないようにするという措置を講じるということです。

リストに該当するプロバイダーとは次のとおりです。
Alibaba, AWS (Amazon Web Service), Google, Microsoft およびサービスの一部としてこの4つのプロバイダを使ってアウトソースサービスを提供しているプロバイダ

英文の記事中で掲げられている対応策は
現在マイクロソフト製品をSPLAで利用しているパートナーは、2025年9月までに上記のリストに該当するプロバイダーから移行するか、上記のリストに該当するプロバイダーからライセンスをSPLAとは別に直接取得しなければならない
とされています。

この記事を読んで、よく行くTOHOの映画館で映画上映前にいつも出る「当館以外で購入された飲食物の持ち込みはご遠慮ください」という無粋な告知を思い浮かべてしまいました。

館内で販売されているやや高めの飲食物を買って楽しむか、上映中に飲食すること自体を諦めるか、どっちかの選択が必要になるということですかね。

もしかすると、弊社の『Office Server Document Converter』の出番がありますか?

【ご注意】本記事の詳細はさらに調査中です。(当社の主体の記事ではなく、解釈なので)誤っている可能性もありますのでご注意ください。




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米国国債の利回り変化と国債価格の値動きを調べてみた

一般には、金利が上がると債券の価格は下がると言われている。では、金利のうごきと債券価格の動きは定量的にどのような関係になっているのだろうか。

債券運用の本を読んでみたところ、次のような説明があった。ここでは単純化するために利息(クーポン)の付かない割引債(ゼロクーポン債)の場合について示す。

割引債の価格(P)と複利最終利回り(r)には次の関係がなりたつ。

P=100/((1+r)^n) (n:残存年数)

これは価格Pの割引債を満期まで(n年)保有すると100で償還される。そのときの複利計算の利回りがrとなるということを表す式なので、割引債がデフォルトしない限り必ず成り立つ一種の定義式である。

上式の両辺をrで微分すると次のようになる。

dP/dr=-100n/((1+r)^(n+1))=-nP/(1+r)

これは次のように置き換えられる。

dP/P=-(n/(1+r))*dr

この式は残存n年の割引債の価格変化率(dP/P)は複利最終利回りの変化幅(dr)に対して、n/(1+r) 倍した値になるということを表している。

現在の米国30年国債の利回りは概ね4%強になっている。なので残存期間30年の米国割引国債を買って保有したとき、利回りが1%下落すると、価格は28%ほど上昇するということになる。

式の導出過程を振り返れば分かるとおり、上の関係は理論的なものだ。

実際には国債の価格は市場の需給関係で決まっていると言われている。自然界ではニュートンの万有引力の法則が成り立つとしても、魑魅魍魎が支配する証券業界で、こんな理論的関係が、あたかも万有引力の法則のように働くものなのだろうか。

俄かには信じがたいので、早速、楽天証券で米国30年ストリップ国債(残存期間25年3カ月)を少額だけ購入して実際の値動きを調べてみた。

1.楽天証券では評価額は毎日当日夕方の17時頃にわかる。
2.また別にQuick情報で米国30年国債の利回りを調べる。米国30年国債の利回り(終値)は翌日の朝にわかる。

1月16日から2月8日までのデータは次のとおりであった。

この結果を見ると、前日に国債利回りが上がっているときは、ストリップ国債の楽天の評価価格が下がり、逆に利回りが下がっているときは、ストリップ国債の評価価格が上がっている。

国債利回りの変化(drに相当)をx軸に、ストリップ国債の価格の変化率(dP/Pに相当。Pは前日の価格、dPは前日からの価格変化)をy軸にとって分布図にすると次のようになる。

Excelで回帰分析して、次の関係式を得た。xとyは1日ずれている。

y=-0.241x+0.001

これによると、利回りが1%下がると、価格は概ね24%アップする、という関係になる。

概ね、理論どおりの関係が成り立っているようだ。

実際には、前日の米国30年国債の利回り終値を見て、楽天証券が評価価格を計算しているのかもしれない。もし、そうなら観測値がほぼ直線上に並ぶはずなのだが。

「債券の価格と利回りはコインの裏表の関係にある。しかし、主従関係からみれば価格が主」という説明もあるが、債券の価格決定過程はブラックボックスなので、真実はわからない。

参考資料:『債券運用と投資戦略』(金融財政事情研究会)




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DeepLによるHTML翻訳でタグが正しく取り扱われるか?

日本語の文章を英語に翻訳するためにツールとして、機械翻訳がかなりいいレベルまで来ているのは周知のとおりです。では、HTMLでタグ付けされたWebページの翻訳にも機械翻訳を使えるでしょうか?

HTMLファイル機械翻訳の課題

日本語HTMLファイルは大きくわけるとテキストコンテンツと画像やマークアップ(タグなど)から構成されます。

タグにはいろいろな種類があります[注1]。メタ情報を表すタグ、見出し、段落、箇条書き、表などのブロックの区別を表すタグ、強調、アンダーライン、上付き・下付きなどテキストの意味合いを表すインラインタグ、リンクや画像を埋め込むタグ、などです。

WebページのレイアウトはCSSで指定します。このため多くのタグに、CSSによるレイアウトを制御するための属性が付加されます。また、HTMLファイル内にはブラウザで表示する際のダイナミックな動作を表現するためにJavaScriptが埋め込まれます。このためHTMLファイルは、コンテントのテキストと比べてかなり複雑になり、通常はマークアップ作業に多大な時間がかかります。

機械翻訳のシステムでHTMLファイルを日本語から英語に翻訳するとき、(1)テキストコンテンツの翻訳の品質に関わる課題と、(2)タグの扱いが適切かどうかという課題があります。

タグの扱いについての要件

ここでは、主にタグの取り扱いを考えてみます。まず、タグの扱いは基本的には次の条件を満たす必要があります。

1.タグ自体は翻訳せず、タグのツリー構造は保持されなければならない。つまりタグの順序が変更されないこと。開始タグと終了タグの対が保持されること。タグの親子関係(入れ子関係)が崩れないことなどが満たされること。
2.開始タグには属性と属性値が付随することがあります。属性は翻訳せず、属性値は多くの場合、翻訳しない方が望ましいが、翻訳してほしいこともある。

日本語のHTMLファイルを機械翻訳した結果、タグのツリー構造が壊れてしまったり、マークアップが不適切になってしまうと、機械翻訳の出力として得られたHTMLファイルのタグ付けを修正する作業が必要になります。もし、タグの構造が完全に破壊されてしまうと、プレーンテキストにゼロからタグ付け作業をする方が手間が少ないということになります。

特に、インラインタグは翻訳テキスト中に混在するのでタグのツリー構造を維持するのが難しい場合がありそうです。そこで機械翻訳システムがテキストコンテントとタグを分離してうまく扱えるかどうかは詳しく調べてみる必要があります。

機械翻訳のHTMLファイル形式サポート

機械翻訳システムによってはタグでマークアップしたテキストを翻訳対象にできないことがあります。ここで使用するDeepLは、Free版ではHTML形式ファイルを扱えません。一方、Pro版とAPI版がHTMLファイル形式を翻訳対象としてサポートしています。

Which file formats can I translate?

DeepLによる日本語HTMLファイルの英語への翻訳例

そこで、今回、DeepLでHTMLを翻訳したときタグが正しく扱われるかを調べてみました。翻訳の対象としたのは、Formatter V7.4(開発中)の日本語HTMLマニュアル(XSL/CSS拡張)です。

Formatterのマニュアルは、日本語と英語版のWebヘルプとして作成されています。V7.3(現行バージョン)についてはこちらからご覧いただけます。現在、翻訳は社内の専門スタッフが行っており、機械翻訳は使っていません。
Antenna House Formatter V7 日本語版マニュアル
Antenna House Formatter V7 日本語版マニュアル・XSL/CSS拡張
Antenna House Formatter V7 英語版マニュアル
Antenna House Formatter V7 英語版マニュアル・XSL/CSS Extensions

DeepL翻訳結果・第一印象

日本語のHTMLをDeepLで英語に翻訳翻訳した結果はいちおうHTMLなのでブラウザで表示できます。最初に、翻訳元の日本語HTMLファイルと、DeepLで翻訳した英語HTMLファイルのブラウザ表示を比較してみます。

1)目次部分

翻訳元日本語目次(左)、翻訳結果の目次(右)

2)見出し、本文や表

見出し、本文(太字)、リンク、表

3)表と箇条書き

表と箇条書き

こうしてみますと、ブラウザで表示して比較できるレベルでタグが付いているようです。ただし、ブラウザはHTMLファイルのタグが正しくなくても表示できるように作られているので、ブラウザで表示できるからと言って、タグが完全に適切に付けられているとは言い切れません。

また、翻訳された内容を詳しく見ると、細かい点に問題が見つかります。

では、HTMLタグがどの程度まで適切に設定されているでしょうか? これを確認するにはHTMLファイルのタグを詳細にチェックする作業が必要になります。そこで、次回は、DeepLのHTML翻訳結果のタグ付けについて詳細に検討してみることにします。

[注1]
HTMLのタグの種類やタグ付けの規則については次の標準仕様で規定されています。
HTML Living Standard




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骨抜き加速? 電子取引データ保存制度

令和5年11月17日 国税庁のWebサイトの制度のパンフレット等

新しいちらし「システム導入が難しくても大丈夫!!令和6年1月からの電子取引データの保存方法」(PDF)が掲載されました。

2024年1月から施行される電子取引データ保存制度への対応策が、国税庁のパンフレットにしては優しく表現されています。

制度が易しくなったのかな? と思いつつ読んでみると、このパンフレットに記載されている内容は、本ブログで紹介したことと同じです。但し、国税庁のちらしの方が分かりやすい印象はあります。

電子帳簿保存法の電子取引データ保存は、なにしろ、準拠する要件項目の組み合わせが多いので、条件の組み合わせを間違えないようにしつつ、説明を分かりやすくするのが難しい制度です。

これまでの説明はちょっと難しすぎたかな~? ちなみに、前回・前々回のブログへのリンクは次のようになります。

前回 2024年1月からの電子取引データ保存方策検討:検索要件対応で選択肢を細分すると・・・
前々回 電子取引データ保存要件の中で、複雑なパズル並みに理解し難いのが検索要件だ

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日本に残っている「紙と電子の間」のベルリンの壁を壊せ

1989年11月にベルリンの壁が崩壊してから既に34年近くなる。ベルリンの壁は東西冷戦の時代に東と西を分断する象徴だった。その壁が崩壊して東西の主に経済的な融合、グローバル化が急速に進展して世界が今のようになった。ベルリンの壁と聞いて、そういう歴史の経過を実感をもって思い浮かべることができる人は少数派かもしれない。

9月21日岸田首相が、ニューヨークで演説して、海外資産運用業の日本市場参入を呼び掛けたというニュースが流れた。これを伝える各社のニュースを読んで、日本国民のためを考えて、日本で株式などによる資産運用を増やすために、もっと他にやることがあるだろうと感じた。

ご承知のように株式による資産運用の方法を大きく分けるとインデックス投資と個別株投資がある。そして運用によって益を得る方法を大きく分けると売買による収益(キャピタルゲイン)と配当による収益(インカムゲイン)がある。インデックス投資は資産を少しずつ増やすには良いが配当収益にはあまり重きがない。それに対して個別株投資は銘柄選択が難しいが、配当収益を得られるというメリットが大きい。ざっくり考えると、例えば、年金生活者などにとっては個別株投資で得られる株式配当を生活費の足しにするというやり方があっているのではないだろうか。一旦買い取った株式を死ぬまで保有すると考えたら、評価額の上下に一喜一憂する必要もないのだから。

少しばかり前置きが長くなったが、このような観点で、日本株と米国株で、主に配当重視の個別株投資を行ってみた結果、米国株の方が日本株よりも遥かに株主にとって有利になっていると感じた。

例えば、次のような点である。
(1) 米国株は1株から買い付けできるが、日本株は原則100株からとなり投資単位が大きい。
(2) 米国株は四半期毎(3か月に1回)の配当が多いが、日本株は半期毎の配当が主であり小さな銘柄では1年一回の配当である。
(3) 配当の権利確定日から配当が支払われるまでの日数でみると米国株は概ね30日程度であるが、日本株は90日程度かかる。
(4) 日本株は3月決算が圧倒的に多数で、12月決算と合わせると決算期が集中しており、その結果、配当支払い月も集中している。しかし、米国株の配当支払い月はかなり分散しているようだ。そこで、米国株を組み合わせることで毎月のコンスタントな配当収入の流れを作れるだろう(2023/10/11追記)。

なぜ、そのようなことになっているのか? これは恐らく日米の投資に関する規制の違いによるのではないかと思われる。これについては専門家の意見を聞いてみたいところだ。

昔、まだデジタルによる配信がなかった時代には、株式配当の受け取り用書類は郵便で送られてきたようだ。現代は株式の売り買いもネットでデジタルで行う時代である。ところが驚いたことに、日本株では株主総会招集通知はもとより、株式配当計算書が毎回郵便で送られてくる。株主総会は1年一回だが、株式配当計算書を毎回郵便で送付するのでは、株主数が増え、さらに配当回数が増えたらコストが膨大になることは容易に想像できる。また書面を作成して、印刷・送付するのに要する日数もかかる。株式配当計算や振込はコンピュータを使って実施すれば低コストで瞬時にできるはずである。ところが日本はいまだに書面なのである。

なぜ、デジタル化をさっさとやらないのか? デジタル化すればコストをそれほど増やすことなく一株株主の獲得も可能だろう。

2023年度の決算から、上場企業については株主総会招集通知のWeb化が義務付けられるようだが、このように、従来書面で行っていた手続きを、デジタル化にするには法規制が大きな壁になっているようだ。

銀行などの案内を見ても、書面の手続きとデジタルの手続きの間の壁が非常に複雑で大きいということを感じる。

岸田首相は、ニューヨークで富裕層向けの演説をする前に、日本の市民株主がもっと手軽に株を売買し、配当所得を享受できるようにするべきではないだろうか?

そのためにはまず書面とデジタルの間にあるベルリンの壁をぶち壊すことだろう。

ちなみに、ベルリンの壁の建設を担当したのはホーネッカーとされている。ホーネッカーは1989年にベルリンの壁が崩壊するまで東ドイツの権力者としての地位にとどまった。ベルリンの壁は東ドイツの発展を妨げ、ホーネッカーにとっては自ら構築した壁によって権力が維持されたのである。翻って、日本の紙と電子の壁は誰によって作られ、誰のために存在するのだろうか? 

関連情報:DX時代に逆行する電子帳簿保存法は、そろそろ、いさぎよく廃止するべきではないでしょうか? 
前回:2024年1月からの電子取引データ保存方策検討:検索要件対応で選択肢を細分すると・・・

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2024年1月からの電子取引データ保存をどのように進めたら良いかを考える(2)保存しなければならない書類は?

2024年1月1日から法人税と所得税(源泉税を除く)に関連する取引をインターネットなどで行った場合、その取引データをデジタルで保存することが改めて義務化されます。

前回は、保存義務が課される主体者は誰か、について示しました。今回は、保存義務の対象となる取引データには、どのようなものがあるか、具体的に示されている情報をまとめます。

以下は、国税庁が公開している一問一答から、保存しなければならない書類として挙げられているものをピックアップした項目です。

・取引情報(注文書、領収書等に通常記載される事項)を電磁的方式により授受する取引(電子取引)を行った場合のその取引情報(問1)

・「取引情報」とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項(問2)

・電子メール本文に取引情報が記載されている場合は当該電子メール本文、電子メールの添付ファイルにより取引情報(領収書等)が授受された場合は当該添付ファイル(問3)

・取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に係るデータを保存(問4)

・事業に関連するクレジットカードの利用明細データを受領した場合のように、個々の取引を集約した取引書類のデータを授受した場合には、クレジットカードの利用明細データ自体も電子取引の取引情報に該当することから、その電磁的記録の保存が必要です。また、その利用明細データに含まれている個々の取引についても、請求書・領収書等データ(取引情報)を電磁的に授受している場合には、クレジットカードの利用明細データ等とは別に、その保存が必要となります。(問4)

・クラウドサービスを利用して取引先から請求書等を受領した場合の、取引当事者双方で共有する請求書などのデータ(問6)

・スマホアプリを利用して決済した際に、アプリ提供事業者から受領する利用明細に係る内容(問6)

・インターネットバンキングを利用した振り込みの電磁的記録については、金融機関の窓口で振込等を行ったとした場合に受領する書面の記載事項(振込等を実施した取引年月日・金額・振込先名等)が記載されたデータ(電磁的記録)であり、そのデータ(又は画面)をダウンロードする又は印刷機能等によってPDFファイルを作成するなどの方法によって保存してください。(問9)

・従業員が会社の経費等を立て替えた場合において、その従業員が支払先から電子データで受領した領収書(問10)

・書面と電子データで取引情報を受領する場合、書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれているなどその内容が同一でない場合には、書面及び電子データの両方を保存する(問14)

・EDI取引で授受した電子取引の取引情報として保存すべきデータは、EDI取引で実際に授受したデータそのものに限定されておらず、当該EDI取引で授受したデータについて、その取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法により編集されたデータにより保存することも可能(問36)

・一つの取引に関して、異なる取引条件等に応じた複数の見積金額が記録された見積書データを授受した場合、検索機能における記録項目である「取引金額」については、課税期間において自社で一貫して規則性を持っている限り、見積書データに記録されている見積金額のうちいずれの見積金額を用いても差し支えない(問50)

・所得税法上、一定の雑所得に係る請求書・領収書等(現金預金取引等関係書類)(問68)

国税庁の、電子取引データ保存に関する一問一答に登場する、デジタル保存を要する電子取引データは上のとおりです。実際のビジネスの現場では多種多様な書類がデジタル化されて取り交わされているので、どのようなものをデジタルで保存しておく必要があるかはその都度注意深く決めていく必要がありそうです。

ところで、先日、法人用スマホの機種変更を行いました。機種変更には月々の支払額(変更)や機種変更手数料が記載されているので、法人税法上は手続きした記録の保存が必要になるものと考えられます。で、お店の担当者から、このデータをデジタルでお渡ししましょうか? それとも印刷してお渡ししましょうか? と問われたので印刷したものをもらったのです。手続き自体はタブレット上でのチェックとサインで完了したので、この場合、2024年からは電子データで入手して保存しないと電子取引データ保存義務違反になるのでしょうかね? 

このように記載内容が同一の取引情報であっても、書面とデジタルを別物と考え、法的な取り扱いを別にする、というところが個人的に電子帳簿保存法が天下の愚法であると考える所以です。

前回:2024年1月からの電子取引データ保存をどのように進めたら良いかを考える(1)保存しなければならないのは誰?
次回:財務省・国税庁の電子取引データ保存要件は石ころに金メッキして保存せよというようなものではないか?

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