年別アーカイブ: 2016年

XSL-FOの便利な機能、参照エリアとインデントとはどんなもの?(1)

先日、XSL-FO仕様の難しさ、CSS組版のリスクで、XSL-FOとフロートの違いを説明しましたが、もう少し翻ってみますと、XSL-FOとCSSには基本的な相違がいろいろあります。

XSL-FOもCSSもレイアウトの基本は次のようなモデルです。内容領域にテキストを配置、その周りにパディング領域があり、そのまわりにボーダー領域があり、その周囲にマージンがあるというモデルです。

border-model

これをCSSではボックスといい、XSL-FOではエリアといいます。ボックスとエリアは用語の違いはあるにしても、類似です。一つの要素はエリアにレイアウトされます。そして、その要素の子供は親要素の内容にレイアウトされます。XSL-FOでは要素(FOと言います)がページの境界で分割されることがありますので、FOとエリアは1対1ではなく、1つのFOから複数のエリアができます。

また、前回も説明しましたが、XSL-FOでは絶対方向に加えて論理方向による指定も使えます。これは縦組などに対応するために用意されたものです。

さて、XSL-FOは印刷レイアウトを想定していますので、エリアモデルにはCSSのボックスモデルにはない基本概念が導入されています。

参照エリアという種類のエリアです。参照エリアは、座標系の基準になるエリアで、普通のエリアと違って次の特徴があります。

  • 参照エリアはインデントの基準になります。
  • 参照エリアの一部では回転を指定できます。回転を指定すると内容が回転します。
  • 参照エリアの一部にはライティングモードを指定できます。参照エリア単位で縦組などを指定できます。

ひとつのページの本文を配置する区画(fo:region-body)は参照エリアになります。fo:region-bodyに縦組を指定して、本文全体を縦組にできます。なお、縦組でも柱は横組ですので、柱を置く区画(fo:region-before)は、普通、横組指定となります。

それだけではなくページの中の矩形の領域や、行内の一部を部分的に回転したり、縦書きにもできます。

さて、XSL-FOにあって、CSSにないのがブロック単位のインデントです。ブロック単位のインデントとはどんなものでしょうか?

ワープロなども共通ですが、インデントには次の2種類があります。両者は混同しがちですが、別物です。

(a) 段落全体の左端を行の開始位置から数文字分ずらす。日本語組版では字上げ・字下げといいます。引用文を本文とは別の行とする場合、本文との区別のために字下げするなどの用途で使われます。これがブロック単位のインデントです。ブロック単位のインデントは、引用以外では、次のようなレイアウト用途に使われます。

・注記の字下げ
・箇条書きの先頭を揃える
・ブロックの数式の先頭位置揃え

CSSでは(横書なら) margin-left、margin-rightで指定します。XSL-FOでは(横書なら)margin-left、margin-rightも使えますが、むしろ、start-indent(行の開始側)、end-indent(行の終了側)で指定すると便利です。

(b) 段落の先頭行の最初を1文字(日本語)あるいは数文字(ラテン)分空けます。昔の作文では、段落の書き出しを1文字空白にする、と教わりました。いまでもそのような書き方をする人は多いですが、Microsoft Wordなどの欧文ワープロを初め、CSSでもXSL-FOでも段落の先頭行の字下げは空白ではなく、text-indentで設定します。

段落の先頭行だけを1文字字下げするのは、段落の区切りを判りやすくするためです。

英語の組版では段落の先頭を字下げするのは二つ目以降のみで、最初の段落は字下げしないことも多いのです。最初の段落の前には章や節の見出しがあり、また見出しとの間に空きがありますので字下げの必要はありません。また、図版の直後で始まる段落は字下げしないという規則もあります。先頭行を字下げしたり、しなかったりするので空白文字を入れてしまうと不都合があります。

また、行間を空けて、段落の先頭を字下げしないスタイルもあります。これは電子メールなどでお馴染みですね。

このように、欧文組版では段落スタイルが何通りか選択できますので、段落の開始に空白文字を入れるのは行われません。

さて、戻りますが、start-indent(行の開始側)、end-indent(行の終了側)が、どのように便利かは、次回に説明したいと思います。

『XSL-FOの基礎 – XML を組版するためのレイアウト仕様』(近日発売)


第51回「問43 規則第3条第6項に規定する適時に入力する方法が可能なのは、具体的にどのような書類が対象となるのでしょうか。」について

作成者:アンテナハウス株式会社 益田康夫
資 格:上級 文書情報管理士、簿記3級、行政書士
本ブログの記載内容は、公開日時点での法令等に基づいています。
その後の法令改定により要件が変わる可能性がありますので、最新の法令などをご確認下さい。

「問43 規則第3条第6項に規定する適時に入力する方法が可能なのは、具体的にどのような書類が対象となるのでしょうか。」について 

これは金融機関様より良く聞かれるテーマですね!
「口座振替依頼書」はスキャナ保存出来ますか?その時の扱いはどうなりますか?
と、いうものです。回答を見れば一目瞭然ですね!!

回答

 規則第3条第6項において、国税関係書類のうち国税庁長官の定める書類については、入力期間の制限なく入力することができることとされており、その書類については平成17年1月31日付国税庁告示第4号により告示されています。
この告示により、例えば、次のような書類が入力期間の制限なく適時に入力することができます。

  • イ 保険契約申込書、電話加入契約申込書、クレジットカード発行申込書のように別途定型的な約款があらかじめ定められている契約申込書
  • ロ 口座振替依頼書
  • ハ 棚卸資産を購入した者が作成する検収書、商品受取書
  • ニ 注文書、見積書及びそれらの写し
  • ホ 自己が作成した納品書の写し

さて、この「平成17年1月31日付国税庁告示第4号により告示」を読み解釈するのが法令を読みこなすのが
得意でない方には大きな負担となります。よって本QAが頼りになります。
また、注意点としては「注文書」です。
それは、「請け書」とセットの「注文書」は「契約書」扱いになる点です。専門家に確認しましょう。

――【広告】――
・アンテナハウスは、中小企業皆様のペーパレス経理への挑戦をサポートします!
・「ScanSave(スキャンセーブ)」は、証憑書類のスキャナ保存の要件確保用の
安心、低価格、短期導入可能なパソコン用スタンドアロンソフトです!

 ScanSave-Lite  (ソフト単体)適時入力専用  12万円
 ScanSave  (ソフト単体)業務サイクル+適時入力   45万円
 ScanSave
適時入力導入支援パック
適時入力専用
タイムスタンプ2,000個/月+スキャナix100+導入支援付き
 38万円~
 ScanSave
業務サイクル入力導入支援パック
業務サイクル+適時入力
タイムスタンプ2,000個/月+スキャナix500+適正事務処理要件コンサルティング+導入支援付き
 100万円~

・詳しくは、 https://www.antenna.co.jp/scansave/ をご覧ください。
・問合わせは、 sis@antenna.co.jp まで


「瞬簡PDF 書けまっせ 6」のよくあるお問合せ その2

前回 に引き続き、「瞬簡PDF 書けまっせ 6」のよくあるお問合せをご紹介します。

  • お問合せの内容:
    フォントや文字色の既定値を変更したい
  • 回答:
    通常、テキストボックスを作成した際には、フォントは「MS 明朝」、文字色は黒、文字の大きさは11ポイントが設定されています。 しかし、文字サイズの既定値は14ポイントにしたい。常に赤字で入力したい等の場合には既定値を変更することで作業効率を上げることができます。

操作方法は次のようなものになります。

  1. 任意の場所にテキストボックスを作成します
  2. 文字を入力します
  3. フォントや文字色、文字の大きさを既定値に設定したいものに変更します
  4. テキストボックスの枠を左クリックして選択状態にします
  5. テキストボックスの枠を右クリックします

    既定値として設定

    既定値として設定

  6. 表示されたメニューから「既定値として設定」を選択します

    既定値として設定ボタン

    既定値として設定ボタン

以上の操作を行うことで、次回以降に作成するテキストボックスの既定値が変更されます。
なお、上記操作の他、5.の操作を行った後、「書式」メニューから「既定値として設定」ボタンを押しても、同様の結果となります。

是非一度お試し下さい。
その3 へ続きます。)


第50回「問42 速やかに入力又は業務サイクル後速やかに入力などの入力方式を、課税期間の中途で変更することは認められるのでしょうか。」について

作成者:アンテナハウス株式会社 益田康夫
資 格:上級 文書情報管理士、簿記3級、行政書士
本ブログの記載内容は、公開日時点での法令等に基づいています。
その後の法令改定により要件が変わる可能性がありますので、最新の法令などをご確認下さい。

「問42 速やかに入力又は業務サイクル後速やかに入力などの入力方式を、課税期間の中途で変更することは認められるのでしょうか。」について

 これは、最近まで私自身が良く押さえていなかったノウハウになります!
皆さんも一緒に把握しましょう。

回答

入力方式ごとの要件を満たしていれば認められます。

解説

入力方式については、「速やかに入力」(規則35一イ)、「業務サイクル後速やかに入力」(規則35一ロ)及び「適時に入力」(規則36)の3方式がありますが、法第4条第3項の承認を受けていれば、それぞれに規定する要件を満たしてスキャニングを行うことにより、書類の種類ごとや事業部ごと等を問わず、承認申請書の「入力方式」の欄にチェックを付した方式の範囲内でどの方式を採用してもよく、また、課税期間の中途で変更することも納税者の選択により行うことができます(変更の届出は必要ありません。)。

ポイントを整理しましょう!
解説で入力方式は、「3方式」あるとある点。
「申請書の「入力方式」の欄にチェックを付した方式の範囲内でどの方式を採用してもよく、また、課税期間の中途で変更することも納税者の選択により行うことができます(変更の届出は必要ありません。)。」とあるので極端な話ですが、全てにチェックしておけばよいように受け取れます。しかし注意が必要です。それは、
重要書類は適時入力が出来ない点です。この点は解説の書き方が丁寧でないと考えます。
なお、これらの知識の有無で導入や提案の幅が変わることがあるのでしっかり理解しましょう!

――【広告】――
・アンテナハウスは、中小企業皆様のペーパレス経理への挑戦をサポートします!
・「ScanSave(スキャンセーブ)」は、証憑書類のスキャナ保存の要件確保用の
安心、低価格、短期導入可能なパソコン用スタンドアロンソフトです!

 ScanSave-Lite  (ソフト単体)適時入力専用  12万円
 ScanSave  (ソフト単体)業務サイクル+適時入力   45万円
 ScanSave
適時入力導入支援パック
適時入力専用
タイムスタンプ2,000個/月+スキャナix100+導入支援付き
 38万円~
 ScanSave
業務サイクル入力導入支援パック
業務サイクル+適時入力
タイムスタンプ2,000個/月+スキャナix500+適正事務処理要件コンサルティング+導入支援付き
 100万円~

・詳しくは、 https://www.antenna.co.jp/scansave/ をご覧ください。
・問合わせは、 sis@antenna.co.jp まで


第49回 「問41 「その業務の処理に係る通常の期間」については、規則第3条第1項第1号ロ及び同条第5項第1号ロにそれぞれ規定されていますが、その期間については同様に解してよいのでしょうか。」について

作成者:アンテナハウス株式会社 益田康夫
資 格:上級 文書情報管理士、簿記3級、行政書士
本ブログの記載内容は、公開日時点での法令等に基づいています。
その後の法令改定により要件が変わる可能性がありますので、最新の法令などをご確認下さい。

「問41 「その業務の処理に係る通常の期間」については、規則第3条第1項第1号ロ及び同条第5項第1号ロにそれぞれ規定されていますが、その期間については同様に解してよいのでしょうか。」について 

回答

 規則第3条第1項第1号ロに規定する「その業務の処理に係る通常の期間」とは、事務処理後データの入出力を行うまでの業務サイクルの期間をいい、同条第5項第1号ロに規定する「その業務の処理に係る通常の期間」とは、国税関係書類の作成又は受領からスキャナで読み取り可能となる前までの業務サイクルの期間をいいます。

そうです!取引関係書類の規定は3条第5項第1号ロ側です。

解説

規則第3条第1項第1号ロ及び同条第5項第1号ロでは、いずれも「その業務の処理に係る通常の期間」と規定しています。それは、企業等においてはデータ入力又は書類の処理などの業務を一定の業務サイクル(週次及び月次)で行うことが通例であり、また、その場合には適正な入力又は処理を担保するために、その業務サイクルを事務の処理に関する規程等で定めることが通例であるという共通した考え方によるものです。
しかしながら、規則第3条第1項第1号ロは国税関係帳簿に係る記録事項を入力する場合であり、同条第5項第1号ロは国税関係書類に係る記録事項を入力する場合であることから、「その業務」の内容が異なり、それぞれが具体的に指し示す期間には次のとおり差があります。
したがって、規則第3条第1項第1号ロについては事務処理終了後の入力までの期間であることからおおむね1ヶ月程度、また、同条第5項第1号ロについては事務処理の期間であることから最長1ヶ月の業務サイクルであれば、通常の期間として取り扱われます。

≪その業務とその期間≫

  • イ 規則第3条第1項第1号ロの場合

     その業務とは、帳簿の元となるデータの入出力を含むことと考えられることから、その期間については、事務処理終了後データの入出力を行うまでの業務サイクルの期間をいいます。

  • ロ 規則第3条第5項第1号ロの場合

     その業務とは、企業等における書類の事務処理と考えられることから、その期間については、国税関係書類の作成又は受領からスキャナで読み取り可能となる前までの業務サイクルの期間をいいます。

     スキャナ保存を語る(理解する)には、どうしても帳簿の知識が必要になるところが、厄介な点です。できれば簿記の基礎的な知識を別途習得することをお勧めします。

    ――【広告】――
    ・アンテナハウスは、中小企業皆様のペーパレス経理への挑戦をサポートします!
    ・「ScanSave(スキャンセーブ)」は、証憑書類のスキャナ保存の要件確保用の
    安心、低価格、短期導入可能なパソコン用スタンドアロンソフトです!

     ScanSave-Lite  (ソフト単体)適時入力専用  12万円
     ScanSave  (ソフト単体)業務サイクル+適時入力   45万円
     ScanSave
    適時入力導入支援パック
    適時入力専用
    タイムスタンプ2,000個/月+スキャナix100+導入支援付き
     38万円~
     ScanSave
    業務サイクル入力導入支援パック
    業務サイクル+適時入力
    タイムスタンプ2,000個/月+スキャナix500+適正事務処理要件コンサルティング+導入支援付き
     100万円~

    ・詳しくは、 https://www.antenna.co.jp/scansave/ をご覧ください。
    ・問合わせは、 sis@antenna.co.jp まで


「瞬簡PDF 書けまっせ 6」のよくあるお問合せ その1

弊社サポートセンターにはユーザーの皆様から様々なお問合せがありますが、「瞬簡PDF 書けまっせ 6」 のお問合せでよくある質問をいくつかご紹介したいと思います。

  • お問合せの内容:
    PDFの文字を消したい
  • 回答:
    書けまっせ 6 では PDF 内の文字を削除することはできません。

しかしながら、ボールペン等の字を修正する修正ペンのように 「修正テープ」機能 を使用することで文字の上に修正テープを貼って対象の文字を隠すことができます。

操作方法は次のようなものになります。

  1. 「ホーム」メニューを選択します
  2. 「図形」アイコンの下にある▼をクリックします
  3. 挿入可能な図形の一覧から「修正テープ」を選択します

    修正テープ機能

    修正テープ機能

  4. 消したい文字をドラッグ&ドロップで囲みます

なかなか便利な機能ですので、一度お試し下さい。
その2 へ続きます。)


第48回「問40 規則第3条5項第1号イ及びロに規定する入力期間を、誤って経過してしまった場合の取扱いはどのようになるのでしょうか。」について

作成者:アンテナハウス株式会社 益田康夫
資 格:上級 文書情報管理士、簿記3級、行政書士
本ブログの記載内容は、公開日時点での法令等に基づいています。
その後の法令改定により要件が変わる可能性がありますので、最新の法令などをご確認下さい。

第48回「問40 規則第3条5項第1号イ及びロに規定する入力期間を、誤って経過してしまった場合の取扱いはどのようになるのでしょうか。」について

よく相談や質問で聞かれることです。
1週間の速やかや、Max1か月の業務サイクルの期間が過ぎたら保存義務違反になり、青色申告取り消しになるのか?と言うものです。
そこまで心配はありませんが、一応の注意が必要です。
国税側の回答をまず見てみましょう!

回答

入力期間を経過した国税関係書類についてもその他の保存要件に沿って入力するとともに、当該国税関係書類を紙のまま保存することとなります。

解説

スキャナ保存の承認を受けている国税関係書類については、その全てについてスキャナ保存する必要があることから、誤って入力期間を経過した場合であっても、その他の要件に従ってスキャナ保存することとなります。ただし、入力期間の制限というスキャナ保存における要件を満たしていない電磁的記録となることから、それをもって当該国税関係書類の保存に代えることはできず、元の書類は紙のまま保存することとなります。
なお、この取扱いは、たまたま入力期間を経過してしまった場合に限るものであり、入力期間を経過した場合は本来要件違反となりますので、入力期間の経過が散見されるような場合にはこの取扱いはなく、また、元となった国税関係書類を保存することによって、保存要件を満たしているとみなすものではありません。
本質的に、紙段階での改竄の可能性を限りなく低くすることを国税庁側は要求していると考えて差し支えありません。電子化規程を明確に定めて、現場の運用が正しく回るようにして、定期的な検査が必要です。
なお、皆様ご承知のように国税重要書類と国税一般書類ではその要件が大きく異なります。要件が簡単で
確保が容易な国税一般書類から導入してみるのも一策です。

――【広告】――
・アンテナハウスは、中小企業皆様のペーパレス経理への挑戦をサポートします!
・「ScanSave(スキャンセーブ)」は、証憑書類のスキャナ保存の要件確保用の
安心、低価格、短期導入可能なパソコン用スタンドアロンソフトです!

 ScanSave-Lite  (ソフト単体)適時入力専用  12万円
 ScanSave  (ソフト単体)業務サイクル+適時入力   45万円
 ScanSave
適時入力導入支援パック
適時入力専用
タイムスタンプ2,000個/月+スキャナix100+導入支援付き
 38万円~
 ScanSave
業務サイクル入力導入支援パック
業務サイクル+適時入力
タイムスタンプ2,000個/月+スキャナix500+適正事務処理要件コンサルティング+導入支援付き
 100万円~

・詳しくは、 https://www.antenna.co.jp/scansave/ をご覧ください。
・問合わせは、 sis@antenna.co.jp まで


XSL-FO仕様の難しさ、CSS組版のリスク

2001年~2002年頃にかけて、XSL-FO(当時はV1.0)について学びました。10数年を経て、この2か月ほど、再び、XSL-FO(今度は V1.1)と格闘しています。先日ブログで紹介した、『XSL-FOの基礎』を完成するために。

いまは、フロートについて調べています。フロートは、本文の文脈中に記述する要素です。但し、組版処理を行ったとき、本文の流れとは切り離して配置します。XSL-FOとCSSには、類似のフロート関連機能があります。では、XSL-FOとCSSのフロートの違いはなんでしょうか? まず、フロート関連の機能をざっくりと比較してみましょう。

1.フロート

(1)適用対象オブジェクト

・XSL-FOではfo:floatという組版オブジェクトを規定し、フロートの処理方向をかなり詳しく書いてあります。また、フロート組版オブジェクトを配置できる(スキーマ上の)位置も規定しています。フロート配置したいオブジェクトはfo:floatの中に置きます。

・CSS2.0では、フロートという組版オブジェクトはありません。floatプロパティのみ規定しています。そして、floatプロパティは、絶対位置指定のボックスと生成されたボックス以外であれば何でも適用できる、とされています(CSS2.1では生成されたボックスにも適用できるようです)。つまり、HTMLの様々な要素にfloatプロパティを指定できます。

(2) floatプロパティ

・XSL-FOではfo:float組版オブジェクトに対するfloatプロパティで、浮動のさせ方を規定しています。floatプロパティは、before、 start、end、 left、right、inside、outside、noneがあります。

・CSS2では、left、right、noneの三つです。

XSL-FOは前方フロートを新設しています。また、サイドフロートという分類があります。前方、後方というのは行の進行方向を基準とします。横組なら前方は上、縦組なら前方は右です。

・beforeは前方フロートで横組ならページの上、縦組ならページの右に浮動させて配置します。例えば、<fo:float float=”before”>テキストや画像を含むブロックFOオブジェクト</fo:float>と指定すると、テキストや画像を含むブロックFOオブジェクトは、横組ならばページの上部に配置されます。

・start、end、 left、right、inside、outsideはサイドフロートで、それぞれ行の開始側、行の終了側、左、右、のど側、小口側への配置を指定します。サイドフロートは、CSS2のfloatプロパティの形式上の拡張になっています。厳密にいうとモデルのずれがありますので、形式上と表現しておきます。

2.フロートのクリア

フロートされたオブジェクトが先行するとき、その後方のオブジェクトのボーダーの前方辺がフロートされたオブジェクトのマージンの後方辺よりも後ろになるように空きを入れることをフロートをクリアすると言います。XSL-FO、CSSの組版モデルでは、オブジェクトの領域を内容、パディング、ボーダー、マージンという4層の玉ねぎ構造で規定しています。クリアは解除と訳されることが多いですが、厳密には解除では無くて前方マージンを広げることです。

(1)適用対象オブジェクト

・XSL-FOでは、clearプロパティはブロックレベルのFOとfo:floatに適用できます。

・CSS2では、clearプロパティはブロックレベルの要素に適用できます。

(2) clearプロパティ

・XSL-FOでは、start、end、left、right、inside、outside、both、noneがあります。前方フロートのクリアはありません。

・CSS2ではnone、left、right、 bothです。

3.侵入による移動

フロートが配置されると、本文はフロートが配置された分だけ移動して、フロートを回り込みます。

XSL-FOでは、侵入による移動(intrusion-displace)というプロパティで本文の移動の仕方を指定できます。このプロパティは、ブロックレベルのFOと、fo:table-caption、fo:list-itemに指定できます。

intrusion-displace=”line”とするとCSS2のフロートの回り込みと同じとなり、それ以外に、auto、none、indent、blockを指定できます。

CSS2には、侵入による移動の仕方を指定する機能はありません。

◎まとめ

XSL-FOでは印刷を意識してフロートの処理を比較的詳しく説明し、製本のため、小口・のどなどの方向拡張をしています。縦組でも破たんしないように前方・後方、行の開始・終了で方向を指定できます。一方、CSS2のフロート動作は、簡単な説明なので判りやすいですが、あまり厳密ではありません。さらに、適用する要素が広範なため、様々なHTML要素にfloatプロパティを指定したとき、その組版処理結果がどのようなレイアウトになるかが曖昧になりそうです。

XSL-FOのclear、intrusion-displaceなどの説明は、英語の文章がセンテンスがながく、関係代名詞の使いまくり、未定義の用語 (ネィティブには定義する必要がない?)が一杯でてきて難しく、理解するのに難儀しています。XSL-FOの難しさは、まず、第一に仕様書の文章の難しさです。そ の先にまだあるかもしれませんが・・・第一の関門を突破しないとわかりません。ただし、仕様書にかかれている制約条件は、XSL-FOプロセサがきちんと処理してくれればユーザーが理解していなくても支障ありません。XSL-FOプロセサを開発する立場では、きちんと処理結果を保証しなければなりませんので、そうはいかないのです。

CSS3でフロートがどのように強化されているかまでは、まだ調べていません。CSS3ではCSS2の機能と互換になるように拡張しなければならないでしょうが、どうなるのでしょうかね。CSS組版のリスクは、文章はとっつきやすいけど規定が曖昧なことでしょうね。


保守作業に伴うサービスの一時停止のお知らせ

保守作業に伴うサービスの停止についてお知らせします。

下記期間において、弊社サーバーのシステムメンテナンスにより、アンテナハウスWebサイト、およびオンラインユーザー登録が一時的に利用できない場合があります。

期間 : 2016年5月6日(金) 18:00 ~ 19:00 頃

お客様には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願い致します。


OSやコンパイラやランタイムのバージョンアップについて

OS、コンパイラやランタイムのバージョンアップは、特にシステムの寿命が長いサーバ用ソフトの場合、お客様はもちろんですが、開発側としても悩ましい問題です。 いつまでも古い環境を維持したくないので、早く新しい環境に対応したものをリリースしてほしいというお客様がいらっしゃる一方で、現行システムのバージョンアップは、まだまだ先なので、新しい環境は不要というお客様もいらっしゃいます。

アンテナハウスには、 ソリューション・システムコンポーネント製品保守サービス仕様 の「1-7.プラットフォームの動作保証」にありますように、

「弊社システム製品の販売中、あるいは有償保守契約の期間中であっても、プラットフォーム製造元のサポート期間が終了した場合、動作保証はできません」

という基準があります。 これに照らして、新バージョンのソフトは、可能なら、新しい実行環境を想定して、新しい環境でビルドすることにしています。

一例を挙げます。
Server Based Converter』 は、今年出荷する V6.0 から、Windows 版、Linux 版ともに、新しい環境に移行します。旧バージョンについては、従来通りですので、ご安心ください。

Server Based Converter V6.0 のWindows 版は、Visual Studio 2015 でビルドします。Linxu 版は、GCC 4.8.5 でビルドします。 したがって、V6.0 の実行環境は、これら、新しいコンパイラが想定する実行環境になります。 これに加えて、Linux 版では、32bit 版は廃止し、64bit 版のみになります。 これは、V6.0 のLinux 版のターゲット環境である Red Hat Enterprise Linux(RHEL) と CentOS 7 が、64bit 版のみになったことによります。

サーバ上のシステムの開発では、新しいシステムに 32bit OS を使うことはなく、アンテナハウスに対しても 64bit 版のご希望ばかりなので、これは妥当だろうと思います。

Java インターフェースについては、
Oracle Java SEサポート・ロードマップ  をご覧いただくとわかるように、Java SE 7 までの Java はOracle のサポートが終了しており、アンテナハウスでも動作保証対象外になっていますので、Java SE 8 でビルドすることになります。したがって、Java SE 8 の環境が実行環境になります。

OS のサポート終了日については、以下をご覧ください。
Windows ライフサイクルのファクト シート
最終更新日: 2016 年 1 月

https://ja.wikipedia.org/wiki/Red_Hat_Enterprise_Linux
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)

https://ja.wikipedia.org/wiki/CentOS
CentOS

http://qiita.com/yunano/items/4757f86f9e92bb4f503f
各OSのリリース日とサポート終了日を表にまとめてみた


Pages: Prev 1 2 3 ... 12 13 14 15 16 17 18 ... 24 25 26 Next