月曜日連載! Microsoft Wordスタイル探索(60)Webマニュアル時代の索引として、機能別索引というアイデア

紙の出版物では「索引」は、特定のキーワードが出版物の中で出現するページを調べるという目的で重要です。

しかし、出版物の提供形式がWebページ(HTML)になると、特定のキーワードが出現する位置を調べるには、全文検索機能が使えます。そうなると、キーワードを単純にページに配置する従来のような索引は、Webの出版物では存在意義がなくなってしまうかもしれません。

では、Webマニュアルなどを制作するときに索引を作るのは無駄なのでしょうか? この疑問に対する回答として、新しいアイデアとしてテーマ別(または機能別)索引のような形式で新しい価値を提供できないかと考えています。

例えば、「PDF Tool APIコマンドライン版」のWebマニュアルを例に上げてみます。

「PDF Tool APIコマンドライン版」(現行バージョン)

この現行マニュアルの中核はコマンドの機能説明部分です。このマニュアルではコマンドの機能を順番に説明しています。各機能は目次の項目となっており、利用者は目次の項目から機能を探すことになります。(次の図)

現在、本製品のマニュアルには索引はありませんが、新しいバージョンのマニュアルでは索引を用意したいと考えています。但し、索引を用意するにあたって、慣例的に索引用語をずらりと並べるだけではキーワードを入力して全文検索するのと大して変わりません。そこで、別のやり方を考えてみました。次に簡単に説明します。

PDF Tool APIには多数のコマンドがあります。例えば、「PDFの注釈」機能に関連するコマンドは多数あります。すべてを探すには、本文の説明を見ながら目次で該当しそうなコマンドを順番にたどって探すことになります。これはあまり効率的ではありません。

索引を次の図のように「機能別索引」として用意したらどうでしょうか?

これは索引語を次の図のように親子索引として用意することで簡単に実現できます。

Microsoft Wordでは、リボン「参考資料」の「索引登録」ダイアログから次のように親子索引を設定します。

Wordの編集画面には次のように索引フィールドが入力されます。

HTML on Word』を使ってWordのdocxから、索引ページを備えたWebマニュアルに簡単に変換できます。

このような索引ページを用意すると、目次を使って順番に見出し項目からコマンドを選択するだけではなく、特定の機能を提供するコマンドを横断的に探すことができます。また、親階層には機能が並ぶので、索引ページをざっと見ることでコマンドの機能を網羅的に概観して探すこともできるでしょう。

いわば、目次で縦断的に探す、索引で横断的に探す、という二つの探し方を提供しようということです。

【前回】(59)もう一つのスタイルー表スタイル

◆シリーズ総目次:Microsoft Wordのスタイル探索




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ワンソース・マルチユースの実践:『CAS-UB』から『HTML on Word』へ

アンテナハウスは、主にドキュメントのデータ変換、ドキュメント制作、PDF作成およびドキュメントの保存・管理の分野に集中して、製品開発・販売・サービス提供の事業を行っております。

ドキュメント制作分野で、重要な課題の一つにワンソース・マルチユースがあります。この実現方法の本筋はXMLでドキュメントを制作してパブリッシング時に構造変換(トランスフォーメーション)を行うというものです。この流れで世界的に大きな流れになっているのにDITAがあります。

アンテナハウスは、専門のチームを用意してDITAサービスを提供しています[参考資料(1)]。ただし、DITAはXMLを直接編集し、CMSで制作物を管理、出版時にトランスフォーメーションを行うため仕組みが大掛かりになりがちです。こうして日本でDITAを採用するのはグローバルビジネスを展開する大手企業が中心になっています。

DITAは当社のような小規模企業の制作システムとして、必ずしも適切と言い切れません。そこでDITAの考え方を利用して、より簡易的にドキュメントを制作・編集・管理し、PDF、EPUB、WebHelpといった多様なフォーマットで出力することを目指したのが『CAS-UB』[参考資料(2)]です。

『CAS-UB』は2010年頃から開発開始、2010年代から15年ほど社外のお客様に制作サービスとしてご提供するとともに、自社の製品マニュアルの制作に活用してきました。しかし、残念ながら普及するに至らず、一方、システムが古くなって保守がままならない状態になってきたため2026年4月末でサービスを終了することに致しました[参考資料(3)]。

現在、『CAS-UB』に変わって力を入れているのが『HTML on Word』[参考資料(4)]です。『HTML on Word』は製品として販売していますが、また自社製品のマニュアル制作も『CAS-UB』から『HTML on Word』に移行しつつあります。

これから発売する自社の新製品や新しいバージョンのマニュアルは、Microsoft Wordで編集し、完成後にPDF化するとともに『HTML on Word』でWebマニュアルとして出力していくものが増えていくことになります。

しかし、まだ、『CAS-UB』でできるけれど『HTML on Word』ではできないことが多く、課題はたくさんあります。Wordは構造化文書編集用のツールではないということに起因する問題もあります。

このあたり、いろいろ自分で試してみて気がついたことを、随時、具体的にお話したいと考えております。

参考資料

(1) 『Antenna House XML/DITAサービス』
(2) 『デジタル出版物制作Webサービス CAS-UB』
(3) 『デジタル出版物制作Webサービス CAS-UB』サービス終了に関するお知らせ
(4) WebページをWordで作る『HTML on Word』




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株式投資の考え方:今期予想にトランプ関税や為替予想をどう折り込むかで株価の反応が違う!?

5月14日の日経に面白い記事がありました。
「正直者は株価上がらず 決算反応、関税影響お構いなし」
ポイントは「関税影響が予想される88社を対象に調べたところ、影響を織り込まないか開示しなかった企業群は、詳細な情報を開示した企業群に比べて発表からしばらくは株価が高い」として「「正直者」企業が評価されない相場」という話題です。

似たような例ですが、建設機械のコマツと日立建機の決算発表に対する株価の反応に興味深い点があったので紹介します。

2025年3月期決算比較

両社とも2025年3月期の決算は比較的速く4月下旬に発表されました。主要な項目は次のようになっています。

税引前の利益でみるとコマツが利益率15%と素晴らしい成績です。日立建機も同10%なので良い成績といえるでしょう。2025年3月期一株あたり利益はコマツが473.44円、日立建機が382.83円でした。配当はそれぞれ190円(5/15終値で配当利回り4.4%)、175円(同4.0%)と両社とも高配当です。

さて、違いは2026年3月期の予想です。2026年3月期一株あたり利益予想はコマツが334.83円と29%減、一方、日立建機は390.22円と2%増です。明暗が大きく分かれています。なぜこんなに差が出るのでしょう?

予想の前提はコマツが保守的、日立建機が楽観的

売上予想はコマツが8.8%減、日立建機は0.3%増と見ています。これが利益率の増減の大きな要因でしょう。

さらにその前提になっている為替レートをみると、コマツは1ドル135円、日立建機は1ドル145円と10円もの差があります。

決算短信の中の次期予想の説明をチェックしてみます。

コマツは「建設機械・車両部門では、(中略)、円高及び米国の関税政策の影響により、減収となる見通しです。利益については、(中略)円高及び米国の関税政策の影響に伴うコストの増加により減益となる見通しです。」とあるので、米国の関税政策の影響を織り込んでいると解釈できます。

日立建機は「米国における関税政策の影響については、一定の想定に基づき需要減退や関税そのものによる影響額を推定しているものの、現時点では政策動向が流動的であることから、本業績見通しには織り込んでおりません。」とあり、社内的な推定は行っているが業績見通しに織り込んでいないようです。

主に、為替レートの予想、関税の影響について、コマツは保守的な見通しを立て、日立建機は楽観的な見通しといえるでしょう。

さらにコマツは2026年度に発行済み株式数の4.3%の自社株買いを予告しています。これは1年後の一株益上昇の要因になります。

市場は圧倒的に日立建機を支持

次の表に株価をチェックした結果を紹介します。

コマツは2月19日に年初来高値をつけ、4月7日にトランプ関税ショックで3,630円まで下げた後、戻っているものの高値までは戻っていません。一方の日立建機は4月7日に同3,294円に下げた後、決算発表を挟んで急上昇、5月13日に年初来高値を付けました。

決算発表日から今日までの動きでもコマツが184円の上げに対し、日立建機は312円の上げと対照的な動きになっています。両社とも今期の配当予想は据置なので、売上と利益の予想の表面的な明暗が、この株価の動きの相違をもたらしたものと考えられます。

さて、あなたがもしどちらかを選ぶならどちらの株を選択しますか?

【前回】
株式投資の考え方:トランプ不況は来るか? 株式インデックスの動きから考える




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月曜日連載! Microsoft Wordスタイル探索(59)もう一つのスタイルー表スタイル

Microsoft Wordではリボンの「挿入」で表を新規に作成できます。

表スタイルギャラリー

作成済みの表を編集するには、編集画面で作成済の表を選択して表示される「テーブルデザイン」と「テーブルレイアウト」メニューを使います(図上)。

「テーブルデザイン」を選択すると表のデザインを編集するリボンが表示されます。表全体、行、セルを選択してから、リボンのメニューを使って上下左右の罫線の種類を設定したり、背景色を指定したりなど、自由度が高いデザインができます。

「テーブルデザイン」には「表のスタイル」というグループがあります(図下)。「表のスタイル」には予め罫線の線種・色、背景色の組み合わせパターンがギャラリーとして登録されています。
ギャラリーに登録されているパターンはグループに分かれています。一番先頭行はモノクロ・スタイルパターン7種類で、「標準の表」というグループ名が付いていて、それぞれの名前は次のようになっています。

ギャラリーには、ほかに「グリッドテーブル」グループ7列×7行=49種類、「表(一覧)」グループ7列×7行=49種類が登録されています。「標準の表」グループと合わせて105種類となります。

さらに、ギャラリーの下のメニューで各スタイルを変更したり、新しいスタイルを作成して名前をつけて登録できます。

スタイルの適用

Wordのリボン「ホーム」のスタイルグループにテキストに対する推奨スタイルのギャラリーが用意されています。このスタイルギャラリーの下に「スタイルの適用」というメニューがあります。

「スタイルの適用」メニューでは、文書で指定できるすべてのスタイル名を表示することができます。表スタイルに分類されるものは、先頭に表のアイコンが付いています。

表のスタイルを選択すると、そのスタイルを適用した表を直接作成できます(次図)。

組み込み表スタイルは247種類

「スタイルの適用」メニューには文書で指定できるすべてのスタイル名を表示することができます。自分で作成したカスタムスタイルも表示されます。

一覧の中から、表スタイルに分類されるものをピックアップしてリストにしたのが次のPDFです。
List-Table-Style
Microsoft Word 2021では、驚くことに組み込み表スタイルは全部で247種類もあります。

残念なことに、私自身はこれまでWordの組み込み表スタイルを使った経験はほとんどありません。これらの表スタイルはどの程度活用されているのでしょうか?

【前回】(58)Word文書内の箇条書きをチェックしてみると
【次回】(60)Webマニュアル時代の索引として、機能別索引というアイデア

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月曜日連載! Microsoft Wordスタイル探索(58)Word文書内の箇条書きをチェックしてみると

Microsoft Wordでマニュアルなどの長文文書を制作するときの課題の一つにスタイルの統一があります。スタイルには、書き方(書記方法)、レイアウト、および文書構造(見出しスタイルなど)といった側面があり、多面的です。

書記方法の統一については意識している方も多く、日ごろから行われています。文書をPDFとして配布するにはレイアウトスタイルの統一も重要です。文書構造はWord文書をHTMLに変換してWebページ化するときに重要になります。PDF出力とHTML変換では別の配慮が必要です(参考資料)。

PDF作成時のレイアウトスタイルの統一、HTML変換のための文書構造統一は、原稿を執筆する際に、Wordのスタイル機能を活用することによって解決できます。

今日は、現在開発中の当社製品新バージョンのマニュアル(Wordで制作中の草稿です)をチェックしていたところ、箇条書き(行頭記号付き箇条書き、以下同様)に予想外のパターンがあることを見つけました。箇条書きのレイアウトスタイルの統一という課題の参考資料としてご紹介します。

箇条書き指定箇所のスタイルの具体例

次の図は本マニュアル中に登場する箇条書きの例です。表示で下書きモードを選択することにより、各段落に適用されているスタイルを左余白に表示しています。

上の図でケース1がデフォルトです。次の操作と結果をデフォルトとして想定しています。
1. Wordの箇条書きを設定する一番シンプルな方法は、①本文段落上にカーソルを置いて、②リボン「ホーム」の段落グループの「箇条書き」をクリックする
2. 段落に「標準」スタイルが適用されているときは、段落スタイルは「リスト段落」となる
3. 箇条書きの記号は左揃えで左インデント0(印刷領域左端に寄せて配置)、箇条書きの項目の文字先頭までデフォルトのタブ幅が取られる
4. 箇条書きの行頭記号は、レベル1では●(Wingdingsフォントの108)になる
5.箇条項目の上にカーソルを置き、段落グループの「インデントを増やす」をクリックすると、当該項目の左インデントが増加し、レベルが増える。レベルに応じて行頭記号が変化する

Wordでは、上記のデフォルト以外の操作でも箇条書きを指定できます。操作方法の違いのため、箇条書き指定箇所にスタイルの相違がでてしまうことがあります。

デフォルトとの相違点と想定発生原因

ケース2~ケース6はデフォルトと異なります。どのような編集操作をしているのでしょうか? Wordの機能と合わせて調べてみました。自分で編集した文書でないので推測も交りますが、結果は次のようになります。

ケース2
レベル1の箇条書きの行頭文字が異なります。この行頭文字は、MS PゴシックのU+30FB(カタナカ中点)です。
レベル2の行頭文字は、Wingdingsフォントの216で、これはデフォルトです。

ケース3
箇条項目の段落スタイルに「標準」と「リスト段落」が混在しています。
行頭文字の位置に6.3ミリのインデントがあります。
箇条項目の行頭文字(●)がデフォルトより小さくなっています。これはWingdings2フォントの黒丸でしょう。●はいろいろありますが、フォントによって大きさが違うので注意が必要です。

ケース4
箇条項目の段落スタイルがすべて「標準」で、それ以外はケース3と同じです。Word 2007以降では、「標準」スタイルの段落に「箇条書き」を設定すると、「リスト段落」スタイルに変わるので、箇条項目の段落スタイルを「標準」にはできないはずです。一体、どういう操作を行ったのでしょうか。(なお、Word2003と同じ設定になるオプションを指定するとできます。)

ケース5
箇条項目の段落スタイルが「標準(Web)」になっています。段落スタイルに「標準(Web)」という組み込みスタイルを指定してから、「箇条書き」を設定するとこのようになります。

ケース6
箇条書きの段落スタイルに「リスト段落」と「標準(Web)」が混在しています。「箇条書き」を設定する前の段落スタイルが項目によって異なる状態だったのでしょうか?

問題点

ここに挙げたケース2~6の中でPDFを配布する上で問題になるのは、文字の種類(記号の字形)と揃え位置が異なる、ケース2~4でしょう。箇条項目にどのような段落スタイルが適用されているかはPDFを作る上で、今回のケースでは問題になりません。ただし、場合によっては問題になるかもしれません。

『HTML on Word』でHTMLに変換するときは、現在のところ、問題はありません。

Wordの段落スタイルを使用するメリットの一つは、段落スタイルによるレイアウトの統一管理にあります。例えば、レイアウトを一括して変更するなどの操作ができることです。そうした操作をすると設定されているスタイルの相違が問題として顕在化する可能性があります。

ここに挙げたケースは、Wordで箇条書きを設定した時に生じる段落スタイル設定の氷山の一角と思われます。想定外の誤りを避けるには予め編集ガイドを作成して、担当者に渡すなどの対策が必要かもしれません。

参考資料

Word文書とHTMLの構造の違いによる変換時の留意事項

【前回】(57)Wordのリンクスタイルとは? その挙動を理解する
【次回】(59)もう一つのスタイルー表スタイル

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月曜日連載! Microsoft Wordスタイル探索(57)Wordのリンクスタイルとは? その挙動を理解する

以前に連載(53)組込スタイルの種類と継承関係で、Wordに組み込まれているスタイルの一覧を調べました。そのとき、組込スタイルの種類には、①段落スタイル、②文字スタイル、③リンクスタイルがあると説明しました。この中で、リンクスタイルはどのようなものかわかりにくいと思います。そこで、実際に使用して動作を確認してみましょう。

スタイルの種類は、Wordの編集画面の「スタイル」ウインドウで確認できます。次の図で赤枠で囲ったのがリンクスタイルです。ここでは、見出しスタイル、表題、副題がリンクスタイルに分類されています。組込スタイルのうちリンクスタイルは、全部で40種類あります。

リンクスタイルの設定の仕方

段落の上にカーソルを置いた状態で、リンクスタイルを適用すると段落全体に適用されます。次の図[1]の一番上の「WordからHTMLファイルに出力」という見出し2の行がその適用例です。

段落の中のテキストを選択して、リンクスタイルを適用する時は、「スタイル」ウィンドウの下にある「リンクされたスタイルを使用不可にする」のチェック有無で機能が変わります

デフォルトの状態ではチェックがありません(次図赤枠)。このとき、次のように動作します。
(1) 段落のテキストの一部を選択した状態(図①)で、リンクスタイル(この例では「見出し2」)を適用する(図②)と、選択範囲のみにそのスタイルが適用(図③)されます。この例では、元の段落は「標準」スタイルで、部分的に「見出し2」スタイルを適用した後も、この段落は「標準」スタイルのままです。これを仮に「インライン」設定と呼ぶことにします。

(2)「リンクされたスタイルを使用不可にする」にチェックが入った状態で(2)と同じ操作をしてみます。段落のテキストの一部を選択して(次図①)、リンクスタイルを適用する(次図②)と、段落全体にそのスタイルが適用(次図③)されます。段落全体が「見出し2」となります。これを仮に「ブロック」設定と呼ぶことにします。

このようにリンクスタイルの設定状態には「インライン」と「ブロック」の2種類の設定方法があります。

インライン設定の挙動

インライン設定ではリンクスタイルは文字スタイルとして働き、ブロック設定では段落スタイルとして働いているようです。インライン設定の扱いについて、もう少し試してみましょう。

例1. 段落の罫線と背景色
見出し2のスタイルを変更して、①文字の色をダイダイ色に変更、②上下に罫線を設定、③背景色を設定します。「罫線と網掛け」ダイアログでは罫線と背景色の設定対象は段落となっています。

スタイルの変更を適用した後の編集画面は次のようになります。見出し2をブロック設定した段落は期待通りです。しかし、インライン設定した部分は、文字の色と背景色だけが変更され、罫線は適用されていません。

罫線の設定対象が段落になっていますが、背景色は文字単位に適用されるようです。「罫線と網かけ」ダイアログの表示が、実際の動作と異なっているのかもしれません。

例2. 「標準」スタイルを変更してみると・・・
標準スタイルの文字サイズを18ポイント、背景色を水色に変更してみます。すると、インライン設定のある段落は次図のように変わります。

これをみると「見出し2」をインライン設定した範囲は、標準スタイルの変更が反映されていません。「見出し2」スタイルのインライン設定状態が優先されていることがわかります。

インライン設定と文字スタイルは同じ?

リンクスタイルのインライン設定は、文字スタイルに似た挙動になっているようです。しかし、リンクスタイルのインライン設定の挙動は文字スタイルと完全に同じではありません。例えば、段落の一部テキストに①「斜体」スタイルを指定し、②斜体スタイルを変更すると、テキストの周りに罫線を引くことができます(次図)。

文字スタイルを変更するときの「罫線と網掛け」ダイアログでは設定対象が文字になっています[2]


[1] Word編集画面の「表示」を下書きモードにして、左余白にスタイル名を表示しています。
[2] これは、リンクスタイルのインライン設定と文字スタイルの相違というよりも、Wordの編集ダイアログの都合上でそうなっているのかもしれません。

【前回】(56)Wordで索引を作成するー数多くの索引項目を効率的に登録する三つの方法
【次回】(58)Word文書内の箇条書きをチェックしてみると

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Windows 10のサポートが2025年10月25日終了ってどういうことなのか? サポートポリシーを調べてみました。

企業ユーザーにとってMicrosoft Windows 10のサポートが2025年10月25日に終了することが大きなイベントになっています。この件、Microsoft(日本法人)のWebページには次の案内があります。
Windows 10、Windows 8.1、Windows 7 のサポート終了について
このページでWindows 10の項をクリックすると画面に次のメッセージがでかでかと表示されます(2025年4月16日確認)。

メインストリームサポートと延長サポート

しかし、よく考えると不思議です。というのは、他のWebページにWindows 10のサポートポリシーについて次のような記載があります。

「マイクロソフトの製品は発売後、最低 5 年間のメインストリーム サポートと最低 5 年間の延長サポート (合計最低 10 年間) が提供されます。」
出典:2025 年 10 月 14 日に Windows 10 のサポートを終了します​[1]
また、昔のニュースですが、次のような記事もあります。
「Windows 10のメインストリームのサポート期間が2020年10月13日まで、延長サポート期間が2025年10月14日までというのは、2015年7月のWindows 10リリース時点で決定されていた。」
Windows 10は2025年にサポート終了?(2021年6月14日)
この記事はMicrosoftの公式ページではないので、あくまで解釈です。

こうした情報をみるとWindows 10のサポートには、「メインストリームサポート」と「延長サポート」という二つの段階があるということになります。そうすると、いまは、「メインストリームサポート」中なのか、「延長サポート」中なのか、どちらなんだろうという疑問が生まれるわけです。 

MicrosoftのWebページの説明では、「メインストリームサポート」は最低5年なので、現在が「メインストリームサポート」であっても矛盾はしません。その場合、「延長サポート」期間はなしで、いきなりサポート終了ということになります。

ライフサイクルのモダンポリシーと固定ポリシー

一体、どうなっているのでしょう? もう少し調べると、Microsoftのライフサイクルポリシーには、モダンポリシーと固定ポリシーというのがあります。
出典:モダン ポリシーと固定ポリシーに関するお知らせ

モダン ライフサイクル ポリシーは、もともとWebサービスのライフサイクルポリシーであって、所定の条件を満たす場合に、サポートが継続され、製品がなくなるときのサポート終了は12か月前にアナウンスされることになっています。
「Modern Lifecycle Policy は、継続的に保守およびサポートされる製品およびサービスをカバーします。 このポリシーでは、次の条件を満たす場合に製品またはサービスのサポートが継続されます。
・・・中略・・・
モダン ライフサイクル ポリシーが適用される製品では、Microsoftは、・・・中略・・・、後継の製品またはサービスを提供せずにサポートを終了する場合、少なくとも 12 か月前に通知します。」
出典:Modern Lifecycle ポリシー

どうやら、モダン ポリシーではメインストリームサポートと延長サポートという区別がなくなって、リリースバージョン毎にサポート期間が決まっているようです。

そして「Windows 10 Home and Pro は、モダン ライフサイクル ポリシーに従います。」ということになっています[2]
出典:Windows 10 Home and Pro

そして、このWebページによると、「現在のバージョンである 22H2 は Windows 10 の最終バージョンで、このサポートが2024年10月25日で終了」ということのようです。

10月15日以降、Windows 10はどうなる?

サポート終了後、Windows 10を使い続けることもでき、セキュリティが気になる向きにはESUが提供されるようです
「2025 年 10 月 14 日にサポートが終了した後も Windows 10 を引き続き使用することを選択した個人のコンシューマーまたは組織の場合は、有料の拡張セキュリティ更新プログラム (ESU) に PC を登録できます。 ESU プログラムを使用すると、PC はサポート終了後も、重要なセキュリティ更新プログラム (Microsoft Security Response Center の定義に従って) を継続的に受信できるようになります。」
出典:ライフサイクルに関する FAQ – 拡張セキュリティ更新プログラム

また、「既存の LTSC リリースでは、特定のライフサイクルに基づいて、その日以降も引き続き更新プログラムが受信されます。」ともあります。
出典:Windows 10 Home and Pro

なので、Windows10のサポートが完全に消滅するわけでもないようです。

注:考察

[1] Microsoft Webページのスクリーンショット(2025/4/17)

[2] 上の「マイクロソフトの製品は発売後、最低 5 年間のメインストリーム サポートと最低 5 年間の延長サポート (合計最低 10 年間) が提供されます。」という文言とモダンポリシーは論理的に両立せず、破綻していると考えられます。最初の疑問で書いたように、モダンポリシーでは「最低 5 年間の延長サポート」を保証できないためです。上のスナップショットで見る限り、Windows 11はサポート開始=発売と仮定すると「最低 5 年間のメインストリーム サポート」さえも保証されていないことになります。「Windows 10は、リリースされた当初は固定ポリシーで、途中からモダンポリシーに変更されたようで、Webページの情報が一部古いまま残っている結果、矛盾が生じているのではないか、と推察します。

なお、Windows 10 Long-Term Servicing チャネルは、固定ポリシーのままのようです。
出典:Windows 10 クライアントおよび Windows Server 半期チャネル ライフサイクル ポリシーの更新プログラム




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月曜日連載! Microsoft Wordスタイル探索(56)Wordで索引を作成するー数多くの索引項目を効率的に登録する三つの方法

前回は本文中に索引項目を登録する基本的な操作を説明しました。冊子本のボリュームが多いときには索引項目の数が多くなります。そこで、次に数多い索引項目を効率的に登録する三つの方法を紹介します。

1. キーボードショートカットを使う
2. 蛍光ペン検索とキーボードショートカットの合わせ技
3. 索引自動登録機能を使う

1. キーボードショートカットを使う

索引登録項目が多いときは、キーボードショートカットを使うと効率的です。

索引登録ダイアログを開くには、リボン「参考資料」の「索引登録」をクリックする代わりに、キーボードで[ALT]+[Shift]+[X]キーを同時に押す方法(キーボードショートカット)が使えます。このキーボードショートカットは索引登録ダイアログが開いている状態では、索引項目を索引登録ダイアログに取り込みます。例えば次の図のように、①索引のフォームが空白の状態で、②編集画面で索引項目を選択、③選択した項目を[ALT]+[Shift]+[X]キーで索引フォームに取り込みます。

また、索引登録ダイアログの「登録」ボタンをマウスでクリックする代わりにキーボードで、[ALT]+[M]キーを同時に押すか、[Enter]キーを押す方法が使えます(上図の右のように「登録」ボタンが有効な状態になっているときのみ)。

キーボードショートカットを使って連続登録する手順は次のようになります。最初の索引項目登録で索引登録ダイアログを開き、二つ目からはダイアログを開いたまま登録します。
① 編集画面上で索引項目を選択する
② [ALT]+[Shift]+[X]キーで索引登録ダイアログを開く。選択された索引項目が索引登録ダイアログに取り込まれる
③ 取り込まれた索引項目の内容を確認して、[ALT]+[M]キーで登録する。
④ 索引登録ダイアログを開いたまま、編集画面上で次の索引項目を選択する
⑤ [ALT]+[Shift]+[X]キーで索引登録ダイアログに索引項目を取り込む
⑥ 取り込まれた索引項目の内容索引項目を確認して、[ALT]+[M]キーで登録する
⑦ ④~⑥を繰り返す

2. 蛍光ペン検索とキーボードショートカットの合わせ技

前項では、編集画面上で次の索引項目をひとつずつ指定しました。その代わりに索引項目をあらかじめ蛍光ペンで指定しておき、蛍光ペンを順番に検索しながら索引登録することもできます。蛍光ペンの検索は、「置換と置換」ダイアログを開き、検索条件「書式」の「蛍光ペン」を指定します。

また、初回の検索条件で検索した後は、「置換と置換」ダイアログを閉じても、キーボードショートカット[Ctrl]+[PageDown]を使って、同一条件で次の検索ができます。
*[PageDown]キーが[Fn]+[↓]に割り当てられているときは、[Ctrl]+ [Fn]+[↓]

蛍光ペンの検索を使うと、前項④の「索引登録ダイアログを開いたまま編集画面から次の索引項目を選択」する操作を「索引登録ダイアログを開いたまま編集画面で、次の蛍光ペンを検索して、索引項目を選択する操作」で代替ができます。

蛍光ペン検索とキーボードショートカットの合わせ技の具体的な操作手順は次のようになります。
① 索引項目をあらかじめ蛍光ペンで指定しておく
② リボン「ホーム」から「置換と置換」ダイアログを開き、検索条件「書式」の「蛍光ペン」を指定し、蛍光ペンを1回検索して検索ボックスを閉じる
③ [ALT]+[Shift]+[X]キーで索引登録ダイアログを開く。②の検索でヒットした蛍光ペンの索引項目が索引登録ダイアログに取り込まれる
④ 取り込まれた索引項目の内容を確認して、[ALT]+[M]キーで登録する
⑤ [Ctrl]+[Tab]キーでカーソルを登録ダイアログから本文に移す
⑥ [Ctrl]+[PageDown]キーで次の蛍光ペンを検索する
⑦ [ALT]+[Shift]+[X]キーで索引登録ダイアログに索引項目を取り込む
⑧ 取り込まれた索引項目の内容を確認して、[ALT]+[M]キーで登録する
⑨ ⑤から⑧の操作を繰り返す
⑩ 全索引項目の索引登録が済んだら、索引項目の蛍光ペンをすべて削除する

この技をつかうと、最初に、蛍光ペンで索引項目を指定しておくと、ほぼキーボード操作のみで連続的に索引登録ができます。ただし、操作には慣れが必要です。もし、うまくいかないときは索引登録ダイアログの「登録」ボタンの状態を確認すると良いでしょう。

「登録」ボタンが有効(図の左)のとき、[ALT]+[M]キーで索引項目の登録ができます。また、[Ctrl]+[Tab]キーで制御を編集画面に移動したとき、「登録」ボタンが無効(図の右)となり、[Ctrl]+[PageDown]キーで蛍光ペンの検索ができます。

上記の手順では、⑥で「登録」ボタンが無効になり、⑦で「登録」ボタンが有効となっています。

3. 索引自動登録機能を使う

索引ダイアログ(リボン「参考資料」の「索引の挿入」で開く)の自動索引登録ボタン(図)で索引項目を一括登録できます。

このためには「一括登録」用索引項目の表形式データ(データファイル)を用意しておきます。データファイルの形式の例は次のように、一列目が索引項目、二列目にXEフィールドの内容です。

自動索引登録ボタンをクリックすると「ファイルを開く」ダイアログが表示されるので、あらかじめ用意したデータファイルを呼び出します。すると、Wordが表の一列目に記載されている索引項目を文書中で検索して、ヒットした箇所にXEフィールドが挿入するという処理を行います。

自動登録の索引登録では、文書中の索引項目を全文検索するのと同じ数の索引箇所が登録されます。重要でない箇所まで端から索引登録されてしまう欠点があるため、使える索引用語が限られそうです。

【前回】(55)Wordで索引を作成するー基本操作、Wordの索引の問題点とその解決策
【次回】(57)Wordのリンクスタイルとは? その挙動を理解する

◆シリーズ総目次:Microsoft Wordのスタイル探索




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月曜日連載! Microsoft Wordスタイル探索(55)Wordで索引を作成するー基本操作、Wordの索引の問題点とその解決策

マニュアルや書籍のような冊子本には、通常、索引が用意されています。今回は、Wordによる索引作成操作の基本を説明し、Wordによる索引作成の問題点について考えてみます。

索引とは

索引は、冊子本の内容を探すためのキーワード(索引項目)と、その索引項目が本文に現れるページ番号をリストアップしたページです。次の図は索引の例です。

上の索引ページを見ると、例えば「相互参照」という項目があり、そこに60と85という数字が付随しています。これは「相互参照」という項目は60ページと85ページに出てくることを意味しています。

冊子本文の85ページを開くと、次のように相互参照という用語がでています。

この例で示したように、用語がどこにでてきたのか分からないときでも、索引を使うとそのページを簡単に探すことができます。

次にMicrosoft Wordによる索引作成の基本を説明します。

索引作成では、①文書の本文中に索引項目を登録する作業を行い、すべての索引項目の登録が終わったら、②索引ページを作成します。

本文中に索引項目を登録

編集画面上で索引項目を登録するには、リボン「参考資料」の「索引登録」をクリックして表示される索引登録ダイアログを使います。

索引項目を選択(図①)して、「索引登録」ボタン(図②)をクリックすると、索引用語と読みが入力されたダイアログ(図③)が開きます。

このまま索引項目を登録するなら、ダイアログ下部の「登録」ボタンをクリックします。するとカーソルの位置に索引項目が挿入されます。

索引項目が文書中に挿入されると、その設定内容が、画面上に索引項目フィールド(XEフィールド)(図①)として表示されます。XEフィールドを非表示にするには、リボン「ホーム」の段落グループにある「編集記号の表示/非表示」(図②)をクリックします。

索引ページの作成

本文中の索引項目の登録が一通り終わったら、索引ページを作成します。

索引ページの作成は、リボン「参考資料」の「索引の挿入」ボタン(次の図①)をクリックします。すると索引登録ダイアログ(図②)が表示されるので、必要ならオプションを選択して「OK」をクリックします。

Wordの索引の問題点

このように、索引項目の設定から、索引ページ作成までの基本操作は簡単です。ただし、Microsoft Wordで作成できる索引は、紙に印刷して製本した冊子用であり、もはや時代遅れになっているという問題があります。

索引ページの索引項目には、本文でその索引項目が現れるページ番号が表示されます。紙で印刷・製本して冊子本としていた時代にはそれで良かったのです。

しかし、現在は、Wordで作成した本の出版媒体は、PDFやWebページが中心になっています。PDFにはリンク(リンク注釈)という機能[1]があります。リンクを使えば索引項目のページ番号をクリックして本文で索引項目が現れるページとその位置に直接ジャンプできます。

またWebページではもはやページ番号はありません。索引項目にリンクを設定しておき、索引項目のリンクをクリックしたら、ブラウザは本文で索引項目が現れる位置を表示するのが普通です。

PDFやWebページは、索引の代わりに全文検索があれば良いとお考えの方も多いかもしれません。しかし、全文検索ではヒットする箇所が多すぎるので、索引を使いたいという要望も多いのではないでしょうか。

しかし、Microsoft Wordでは出力したPDFやWebページの索引から本文の索引項目へのリンクを設定できません

そこで、当社のOSDC(PDF)、Docx to HTML/HTML on Wordの最新版で、Wordの索引の弱点である索引ページから本文へのリンクを、独自解析により自動的に設定する機能を用意しました。

次回以降、Microsoft Wordの索引作成機能について詳しく説明すると同時に、OSDC(PDF)、Docx to HTML/HTML on Wordによる問題解決について紹介いたします。

参考資料

[1] PDFにおけるリンクの仕組み、設定方法、サンプルとブラウザのPDFリンクサポート状況
[2] Office Server Document Converter (OSDC)
[3] Docx to HTML
[4] HTML on Word

【前回】(54)Wordの段落番号のレイアウト
【次回】(56)Wordで索引を作成するー数多くの索引項目を効率的に登録する三つの方法

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【PDFテックの知恵袋】PDFにデジタル署名ができるかどうか。これは複雑すぎて生成AIでは正答できないかもしれません。

先日、弊社のAntenna House PDF Driverのお客さんから質問がありました。
「PDF Driverで作成したPDFのセキュリティ[1]が次の図のように「署名」許可になっている。しかし、Adobe Readerで電子署名できないがなぜでしょうか?」

最近のAdobe Readerの署名機能はどうなっているか? 気になったので調べてみました。

Adobe Readerでデジタル署名はできる?

まず、Adobe Reader(バージョン:2025.001.20435)の「すべてのツール」のメニューを見ると、署名に関連しそうなのは「入力と署名」「証明書を使用」の二つです。

このうち、「入力と署名」はどうやら、自分のイニシャルや画像などで署名する機能のようです。これはデジタル署名ではありません[2]。一方、「証明書を使用」では、署名フィールドを作成し、デジタル署名を付加するという一連の操作ができます。

デジタル署名を選択すると次のダイアログが表示されます。

先に進むと、電子証明書を作成または既存の電子証明書を使用して署名する操作ができます。このようにAdobe Readerの「証明書を使用」でデジタル署名ができます。

しかし、「証明書を使用」では署名フィールドを作成する(だけ)、あるいは、署名フィ―ルドを作成済みのPDFの署名フィールドを指定して、そこにデジタル署名を付加することはできません。

セキュリティ設定されたPDFの場合

PDFにセキュリティ設定されているとどうでしょうか?

最初の図に示したPDFのセキュリティ設定状態では「署名」は許可になっています。しかし、このようなセキュリティ設定がされたPDFをAdobe Readerで開いて「証明書を使用」を選択すると、次のようにメニューがグレーになってしまいます。

一方、他のツール[3]でPDFに「署名フィールド」を作成したうえで、最初のPDFと同じセキュリティ(「署名」を許可)を設定して保存したPDFを作成します。これをAdobe Readerで開くと次のように署名フィールドが表示されます。

Adobe Readerで、この署名フィールドを選択すると、デジタル署名を付加できます。次の図は署名フィールド設定後にセキュリティ設定をしたPDFをAdobe Readerで開いて、署名フィールドを選択してデジタル署名を付与した結果の表示です。

PDFのデジタル署名の仕組みとAdobe Readerの動作

ややこしくて分かりにくいですが、PDFのデジタル署名の仕組みを大雑把に整理すると、次のようになっています。
(1)「署名フィールド」を作成する操作と、署名やタイムスタンプの関連データ(署名データ)を計算する操作、「署名フィールド」を指定して署名データを設定する操作に分かれている。
(2)PDFのセキュリティ設定で「内容の変更を禁止」すると、「署名フィールド」を作成できない。結果、署名データを設定する操作もできない。
(3)署名フィールドを作成済のPDFを第三者に渡して、デジタル署名の付与のみをしてもらうことができる。このとき、PDFには「内容の変更を禁止」、「署名を許可」する設定ができる。
(3)PDFのセキュリティ設定で「内容の変更を禁止」されていても、「署名フィールド」があって、「署名を許可」になっていれば、署名フィールドに署名データを設定できる。

Adobe Readerの動作は次のようになっています。
(1)セキュリティ設定されていないPDFであれば、署名フィールドの作成とデジタル署名を一括操作でできる。
(2)しかし、署名フィールドの作成のみを行うことはできない。
(3)セキュリティ設定で「内容の変更を禁止」されていても、「署名フィールド」があって、「署名」を許可されていればデジタル署名を付加する操作はできる。

生成AIの回答は

さて、このような複雑な条件の組み合わせで決まる動作の可否を生成AIで正しく回答できるでしょうか?

まず、Google AIに聞いてみました。まず、「Adobe Reader でPDFにデジタル署名はできますか?」と聞くと、次のような回答になります。

これは、最新のAdobe Readerでの操作手順とは違っています。しかし、回答はあながち間違いとも言えません。

次に、「セキュリティの設定されたPDFにAdobe Reader でPDFにデジタル署名はできますか?」と聞くと、次のような回答になります。

回答が正しいかどうかは、厳密にはセキュリティ設定の条件にもよります。しかし、ざっくりいうと、上のGoogle AIの回答は誤っているのではないでしょうか。

弊社でも、PDFに関する質問に生成AIを利用して回答するシステム「コンシュルジュWebサービス」を開発しています(現状は社内でいろいろ検証中で非公開です)。そこで、検証中の「コンシュルジュWebサービス」に聞いてみました。回答は次のようになります。

昔は、Adobe Reader でPDFにデジタル署名はできなかったのですが、いまは、できるようになっています。こうした背景を知っていると「コンシュルジュWebサービス」の回答は、少しばかり古いということがわかります。AIに与える情報が古いという問題であれば新しくすることで解決できるでしょう。

しかし、生成AIを利用して、「このような種類の微妙な質問まで、常に正答させることができるのだろうか?」と若干不安に感じる面もあります。このあたりは人間でもいろいろ調べないと正しく回答できないことです。なので、もし生成AIで完全な正答が得られるなら、人間は要らなくなってしまうのですが。

参考資料

[1] PDF資料室:PDFの標準セキュリティ機能
[2] 電子署名とデジタル署名の使い分けを推進しよう
[3] 例えば、『瞬簡PDF統合版・官公庁向け』バージョンでは、署名フィールド作成機能があります。




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