骨抜き加速? 電子取引データ保存制度

令和5年11月17日 国税庁のWebサイトの制度のパンフレット等

新しいちらし「システム導入が難しくても大丈夫!!令和6年1月からの電子取引データの保存方法」(PDF)が掲載されました。

2024年1月から施行される電子取引データ保存制度への対応策が、国税庁のパンフレットにしては優しく表現されています。

制度が易しくなったのかな? と思いつつ読んでみると、このパンフレットに記載されている内容は、本ブログで紹介したことと同じです。但し、国税庁のちらしの方が分かりやすい印象はあります。

電子帳簿保存法の電子取引データ保存は、なにしろ、準拠する要件項目の組み合わせが多いので、条件の組み合わせを間違えないようにしつつ、説明を分かりやすくするのが難しい制度です。

これまでの説明はちょっと難しすぎたかな~? ちなみに、前回・前々回のブログへのリンクは次のようになります。

前回 2024年1月からの電子取引データ保存方策検討:検索要件対応で選択肢を細分すると・・・
前々回 電子取引データ保存要件の中で、複雑なパズル並みに理解し難いのが検索要件だ

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Wordでマニュアルを執筆してWebマニュアルを作る

お知らせ
2024年1月30日 事例紹介ウェビナーを開催いたします。
どうぞ、ご参加ください。
お申し込みは次からどうぞ。
ワードからすばやくウェブ オンワード

Microsoft Wordを製品やサービスのマニュアルを執筆するのに使用している人はかなり多いと思われます。

そうして作成した原稿はPDFとして配布されることが多いでしょう。なぜならば、Wordはもともとプリンタで紙に印刷して配布するための文書を執筆するツールだからです。

ところが、現在は、あらゆる情報をWebで閲覧・聴取する時代です。PDFは紙のページをそのまま電子化したもので、ディスプレイで閲覧するにはあまり便利ではありません。これは現実に多くの方が実感されていることでしょう。

そうすると、マニュアルをWordで制作した場合、どのようにしてWebページにするか、ということが大きな課題になるはずです。

この解決策はいろいろあります。一番、革命的解決策は、Wordでマニュアルの原稿を執筆するのをやめる、というものです。具体的には、マニュアルの内容をXMLとして用意するといったものです。

その対極としては、Wordで書いたマニュアルの原稿をWebページに変換する、という方法もあります。

ここにご紹介する『HTML on Word』は、後者の方法を実現するものです。今回、1年ぶりにV2にバージョンアップしました。今回のバージョンアップは、Wordで執筆してマニュアルからより実用的なWebページが作成できる様になりました。

主な機能強化点
1.HTMLを分割出力
Word文書の章や節など、指定したアウトラインレベル単位で分割してHTMLを出力できるようになりました。

2.ページ移動リンクの出力
HTMLを分割して出力する場合は、オプションの指定で「前へ/次へ」といった、ページを順に移動するリンクを出力することができるようになりました。

3.目次の変換を強化
Wordの目次機能で作成した目次箇所を、HTMLの<nav>タグで出力するようにしました。また、目次箇所のタグやclassなどの要素を追加しました。

4.目次を別ファイルで出力
HTMLの分割時は目次箇所を別のファイル(html)として出力することができるようになりました。

30日間試用できるV2.0の評価版も提供しておりますので、上記新機能を実際にお試しいただけます。下記よりお申し込みの上、是非おご利用ください。

製品ページ
https://www.antenna.co.jp/xhw/

製品ページ・機能詳細
https://www.antenna.co.jp/xhw/function.html

評価版ダウンロード申込
https://www.antenna.co.jp/xhw/trial.html

英語版も
『HTML on Word』は英語版も用意しております。
英語版についての情報は次からご覧ください。

https://www.antennahouse.com/html-on-word-2.0




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10月24日16時より電子取引データ保存についてのウェビナーを開催します。

電子取引データのデジタル保存完全義務化が数か月後に迫っています。皆様準備はお済でしょうか?
まだ、準備完了していない方は、お急ぎください。

その節は丁度良い機会ですので、次のウェビナーを視聴されてみてはいかがでしょうか。

来週、10月24日16時よりZoomウェビナー「電子取引データを効率的にデジタル保存」(視聴無償)を開催します。

本ウェビナーは、前半と後半に分かれています。

前半は電子取引データのデジタル保存についてです。

既に本ブログで何回も繰り返しているのでご承知のことでしょうが、2024年から電子取引データを必ずデジタル保存することが義務付けられます。この対策が中心となります。

<前半のアジェンダ>
1. 電子データの保存を行ううえでの課題と対処法
2. 「電子取引Save V2.0」の紹介
3. 製品デモンストレーション

後半では、デジタルインボイス交換システム(JP PINT)で交換した電子取引データ保存になります。JP PINTはまだまだ一般的ではありませんが、今後は普及する可能性が大きいと予想されます。

<後半のアジェンダ>
1. 「連携補完機能」とは
2. 日本のデジタルインボイスの標準仕様「JP PINT」
3. 製品デモンストレーション

ウェビナー録画をYouTubeで公開しました。次のリンクでご視聴ください。
電子取引データを効率的にデジタル保存




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日本に残っている「紙と電子の間」のベルリンの壁を壊せ

1989年11月にベルリンの壁が崩壊してから既に34年近くなる。ベルリンの壁は東西冷戦の時代に東と西を分断する象徴だった。その壁が崩壊して東西の主に経済的な融合、グローバル化が急速に進展して世界が今のようになった。ベルリンの壁と聞いて、そういう歴史の経過を実感をもって思い浮かべることができる人は少数派かもしれない。

9月21日岸田首相が、ニューヨークで演説して、海外資産運用業の日本市場参入を呼び掛けたというニュースが流れた。これを伝える各社のニュースを読んで、日本国民のためを考えて、日本で株式などによる資産運用を増やすために、もっと他にやることがあるだろうと感じた。

ご承知のように株式による資産運用の方法を大きく分けるとインデックス投資と個別株投資がある。そして運用によって益を得る方法を大きく分けると売買による収益(キャピタルゲイン)と配当による収益(インカムゲイン)がある。インデックス投資は資産を少しずつ増やすには良いが配当収益にはあまり重きがない。それに対して個別株投資は銘柄選択が難しいが、配当収益を得られるというメリットが大きい。ざっくり考えると、例えば、年金生活者などにとっては個別株投資で得られる株式配当を生活費の足しにするというやり方があっているのではないだろうか。一旦買い取った株式を死ぬまで保有すると考えたら、評価額の上下に一喜一憂する必要もないのだから。

少しばかり前置きが長くなったが、このような観点で、日本株と米国株で、主に配当重視の個別株投資を行ってみた結果、米国株の方が日本株よりも遥かに株主にとって有利になっていると感じた。

例えば、次のような点である。
(1) 米国株は1株から買い付けできるが、日本株は原則100株からとなり投資単位が大きい。
(2) 米国株は四半期毎(3か月に1回)の配当が多いが、日本株は半期毎の配当が主であり小さな銘柄では1年一回の配当である。
(3) 配当の権利確定日から配当が支払われるまでの日数でみると米国株は概ね30日程度であるが、日本株は90日程度かかる。
(4) 日本株は3月決算が圧倒的に多数で、12月決算と合わせると決算期が集中しており、その結果、配当支払い月も集中している。しかし、米国株の配当支払い月はかなり分散しているようだ。そこで、米国株を組み合わせることで毎月のコンスタントな配当収入の流れを作れるだろう(2023/10/11追記)。

なぜ、そのようなことになっているのか? これは恐らく日米の投資に関する規制の違いによるのではないかと思われる。これについては専門家の意見を聞いてみたいところだ。

昔、まだデジタルによる配信がなかった時代には、株式配当の受け取り用書類は郵便で送られてきたようだ。現代は株式の売り買いもネットでデジタルで行う時代である。ところが驚いたことに、日本株では株主総会招集通知はもとより、株式配当計算書が毎回郵便で送られてくる。株主総会は1年一回だが、株式配当計算書を毎回郵便で送付するのでは、株主数が増え、さらに配当回数が増えたらコストが膨大になることは容易に想像できる。また書面を作成して、印刷・送付するのに要する日数もかかる。株式配当計算や振込はコンピュータを使って実施すれば低コストで瞬時にできるはずである。ところが日本はいまだに書面なのである。

なぜ、デジタル化をさっさとやらないのか? デジタル化すればコストをそれほど増やすことなく一株株主の獲得も可能だろう。

2023年度の決算から、上場企業については株主総会招集通知のWeb化が義務付けられるようだが、このように、従来書面で行っていた手続きを、デジタル化にするには法規制が大きな壁になっているようだ。

銀行などの案内を見ても、書面の手続きとデジタルの手続きの間の壁が非常に複雑で大きいということを感じる。

岸田首相は、ニューヨークで富裕層向けの演説をする前に、日本の市民株主がもっと手軽に株を売買し、配当所得を享受できるようにするべきではないだろうか?

そのためにはまず書面とデジタルの間にあるベルリンの壁をぶち壊すことだろう。

ちなみに、ベルリンの壁の建設を担当したのはホーネッカーとされている。ホーネッカーは1989年にベルリンの壁が崩壊するまで東ドイツの権力者としての地位にとどまった。ベルリンの壁は東ドイツの発展を妨げ、ホーネッカーにとっては自ら構築した壁によって権力が維持されたのである。翻って、日本の紙と電子の壁は誰によって作られ、誰のために存在するのだろうか? 

関連情報:DX時代に逆行する電子帳簿保存法は、そろそろ、いさぎよく廃止するべきではないでしょうか? 
前回:2024年1月からの電子取引データ保存方策検討:検索要件対応で選択肢を細分すると・・・

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[XSL-FO試行錯誤]索引のページ番号表示で一部を太字にする

索引語に続くページ番号表示。「3,6,11-15,100,…」のように並んでいても、「どこがその語を説明している箇所なのか」は分かりません。そのようなときに、索引表現ではとくに重要・説明的である箇所のページ番号についてスタイルを変えて表現することがあります。これを実現するFOについて考えてみましょう。


「ある箇所について特別な処理をしたい」というとき、必要なのは次の情報です。

  • 「ある箇所」と他を区別するルール
  • 特別な処理を実現するFO

今回の場合、「通常の索引と、重要な1箇所の索引が区別できること」については元のXMLとXSLT処理の書き方によって
大きく異なると思われますので、それらを最終的に落とし込むFOについて検討します。

索引用FOの機能

索引用のFOの基本は、@index-keyによって指定されるキーと、そのキーを表示するための<fo:index-citation-reference>です。

索引 XSL-FOの基礎 第2版

これらのFOでは、該当するキーを含むページ番号について、FOプロセッサが列挙し表示を調整するという処理を行います。
つまり、FOプロセッサというユーザの手を離れた段階で処理されるので、「索引用のFOで一部のページ番号だけを太字にしたい」という要求を実現するには、このFOでは上手くいかなさそうだということを意味します。


索引用FOでは「2ページだけを太字にする」処理は難しい

索引にリンクを付けたい場合はfo:index-citation-list/@page-number-treatment="link"で表示されたページ番号にリンクが付与されます。

汎用のページ番号参照

あるページの参照だけであれば、fo:page-number-citaionに該当箇所のidを指定すれば実現できます。これを利用することにします。
制限として、数ページにわたるページ番号参照には対応できません。

汎用的なリンク用のFOであるfo:basic-linkでは、internal-destinationにidを指定することで内部リンクを付与できます。

よって、id情報があれば、該当の番号のページへジャンプするリンクが付与されたページ番号参照が実現できます。

最終的な方針とFO

重要な箇所の索引をspとします。通常の索引のときは、fo:wrapper/@index-keyを挿入する通常の索引用の属性を、spの索引のときはfo:wrapper/@idを本文に挿入します。このとき、spの前後でindex-keyの値は変えておきます。

本文のFOを通常の索引とspとで切り換える
<fo:block><fo:wrapper index-key="あんてなはうす1"/>アンテナハウスは、Data Usability Companyです。</fo:block>
<!-- spの索引語 -->
<fo:block ...><fo:wrapper id="antenna"/>アンテナハウスは、日本のソフトウェア企業で、XML自動組版ソフトウェアAntenna House Formatterや、PDFに関連した製品を開発・販売しています。</fo:block>
<fo:block ...><fo:wrapper index-key="あんてなはうす2"/></fo:block>
<fo:block ...><fo:wrapper index-key="あんてなはうす2"/></fo:block>

索引ページのFO
<fo:block ... space-after="2rem" font-size="72pt">索引</fo:block>
  <fo:block background-color="black" color="white">あ</fo:block>
  <fo:block text-align-last="justify" text-align="justify">アンテナハウス<fo:leader leader-pattern="dots" leader-alignment="center"/><!--
--><fo:index-page-citation-list merge-sequential-page-numbers="merge"
	merge-pages-across-index-key-references="merge" 
	merge-ranges-across-index-key-references="merge">
	<fo:index-page-citation-list-separator>,</fo:index-page-citation-list-separator>
	<fo:index-page-citation-range-separator>-</fo:index-page-citation-range-separator>
	<fo:index-key-reference ref-index-key="あんてなはうす1" page-number-treatment="link" />
</fo:index-page-citation-list><!--spの索引--><fo:inline>,<fo:inline font-weight="bolder"><fo:basic-link
 internal-destination="antenna"><fo:page-number-citation ref-id="antenna"/></fo:basic-link></fo:inline>,</fo:inline><fo:index-page-citation-list
  merge-sequential-page-numbers="merge"
  merge-pages-across-index-key-references="merge" 
  merge-ranges-across-index-key-references="merge">
	<fo:index-page-citation-list-separator>,
	<fo:index-page-citation-range-separator>-
	<fo:index-key-reference ref-index-key="あんてなはうす2"  page-number-treatment="link"/>
</fo:index-page-citation-list>
</fo:block>

fo:index-page-citation-listは複数のfo:index-page-referenceを持てますが、今回は特別扱いするfo:inlineを挟みたいため、一旦終了して特別処理の箇所の後に別のfo:index-page-citation-listを開始しています。

これをFormatterで組版し、冒頭に上げた画像の索引が作成できました。

補足

実作業で厄介なのはXSLTでの処理時に@index-keyを持たないspを、索引リスト作成時にどのようにして取得するかでしょうか。また、spである索引が登場する場合としない場合、sp前後に同じ語の索引が登場しない場合の「,」表示の分岐など、索引FOが吸収していた面倒な分岐も自前で用意する必要があるでしょう。

索引ウェビナーの宣伝

索引について、もう少し全般的な紹介をするウェビナーを2023年9月19,26日(火)16時に行います。今回の記事は応用実装よりでニッチ度が高いものでしたが、まだまだ話題がありますので、どうぞご検討ください。




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2024年1月からの電子取引データ保存方策検討:検索要件対応で選択肢を細分すると・・・

電子帳簿保存法第7条で義務付けられている電子取引データ保存の方策を続けて検討します。2024年1月から施行される財務省令(施行規則)で適法とされる保存方策を検索要件対応まで考慮して分けると次の図の1~4の4レベルになります。

背景を黄色で塗りつぶしたセルは2024年より変更(対象者拡大)になったもの。背景をうす緑色で塗りつぶしたセルは2024年より新規追加されたものです。

保存要件対応策については、本ブログで何回か検討してきました。これまでは、検索要件対応についてのレベルを分けずに、次の二つの対応策を検討しました。
A 規則第4条第一項の保存要件に対応して保存する。
B 電子取引データの保存要件に対応せず保存だけする。

参考)
電子取引データ保存の2つの方策を比較する(9月5日)
2024年1月からの電子取引データ保存義務化への対応方法(9月4日)

保存方策Aは検索要件への対応レベルを加味すると、図表の1~3に細分できることになります。

検索要件については前回のブログで説明しています。
電子取引データ保存要件の中で、複雑なパズル並みに理解し難いのが検索要件だ

イは、①取引年月日その他の日付、②取引金額、③取引先の3項目を検索の条件として適用できるように設定するという要件です。

検索項目の設定方法としては、ワークフローシステムから電子取引データを登録するときに、自動的に検索項目を設定するシステムを構築できれば工数がかかりません。しかし、そうではなく、電子取引データを人手で登録し、そのときに検索項目を設定することになると結構工数がかかり負担が大きくなります。

検索要件のロ、ハは検索を手作業で行うときは負担になるかもしれませんが、データ保存にデータベースシステムを使っている場合は負担にならないでしょう。つまり図表の「2 検索要件イのみ対応」のメリットは大きくありません。

こうしてみると図表の「3 検索要件に対応せず保存する」という方策は検索項目を設定する必要がなくなるので、手作業で登録する際のデータ保存コストが小さくなりメリットがあります。

検索要件に対応しなくても良いケースは、2024年1月からの施行規則で適用範囲が拡大されました。具体的にはつぎのようになっています。

(1) 基準期間の売上高が5000万円以下の事業者は、税務調査でのダウンロードの求めに応じる場合、検索項目の登録が不要です。(2023年12月までは同期間の売上高が1000万円以下)。
(2) 電子取引データを出力した書面を日付などで整理をしたうえで提示・提出する求めに応じ、かつ、電子取引データのダウンロードの求めに応じる場合は検索機能の確保の要件は不要になります。(2024年1月より新設)

(2)は売上高が多くても適用されます。書面に出力したものを整理しておく必要があるので電子取引データの件数が多いとコストが大きくなりますが、件数が少ないときは採用を検討する価値があります。

前回:電子取引データ保存要件の中で、複雑なパズル並みに理解し難いのが検索要件だ
次回:日本に残っている「紙と電子の間」のベルリンの壁を壊せ

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電子取引データ保存要件の中で、複雑なパズル並みに理解し難いのが検索要件だ

電子帳簿保存法第7条の電子取引データ保存要件は全体として複雑ですが、特に分かりにくいのは、検索要件です。

検索要件の原則は登録された電子取引データから次の条件を指定して該当するものを探す(絞り込む)ことができるようにすることとされています。

イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

イを実現するには、まず、それぞれの取引データに対して、①取引年月日その他の日付、②取引金額、③取引先を検索キーとして設定しておく必要があります。検索キーを設定しないで、全文検索で要件を満たすのはおそらくできないでしょうから、各取引データを保存するときに、検索キーの値を確定してその取引データに対応付けなければならないでしょう。

電子取引データの保存にデータベースシステムを使えば、検索キーを指定して入力する工数がかかりますが、ロ、ハの検索条件指定による絞り込み自体は簡単です。

ところが、国税庁の一問一答を見ると、なかなか面白いQ&Aがあります。

問16 妻と2人で事業を営んでいる個人事業主です。取引の相手方から電子メールにPDFの請求書が添付されて送付されてきました。一般的なパソコンを使用しており、プリンタも持っていますが、特別な請求書等保存ソフトは使用していません。どのように保存しておけばよいですか。
【回答】
例えば、以下のような方法で保存すれば要件を満たしていることとなります。
1 請求書データ(PDF)のファイル名に、規則性をもって内容を表示する。
例) 2022年(令和4年)10月31日に株式会社国税商事から受領した110,000円の請求書
⇒「20221031_㈱国税商事_110000」
2 「取引の相手先」や「各月」など任意のフォルダに格納して保存する。

ファイル名に検索キー3項目の値が設定されているので、ロ、ハの要件による絞り込みは実現可能なはずです。しかし、簡単ではないように思います。例えば、金額の範囲を指定して絞り込むことが簡単にできるのだろうか? そもそも、「取引の相手先」や「各月」でフォルダを分けていれば、ファイル名に取引の相手先や日付を設定する必要はないと思うのだけどね。

なお、この回答の解説には次のような検索簿の例もあります。ファイル名がこの例のようについていれば、ファイル名から図のような検索簿を作り出すのは難しくないでしょうが、いかにも整理されていない質疑応答の印象があります。


(問16の解説にある図)

こういう質問が多くあったためか基準期間の売上高が少ない事業者は検索要件が免除されています。

(上記引用の続き)
※ 税務調査の際に、税務職員からダウンロードの求めがあった場合には、上記のデータについて提出してください。
※ 判定期間に係る基準期間(通常は2年前です。)の売上高が5,000 万円以下であり、上記のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合又は電磁的記録を出力した書面を取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものを提示・提出できるようにしておき、上記のダウンロードの求めに応じるようにしている場合には、上記1の設定は不要です。
(注) 令和5年度の税制改正前(令和5年12 月31 日までに行う電子取引の取引情報)については、判定期間に係る基準期間の売上高が1,000 万円以下であり、上記のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合に限り、上記1の設定等による検索機能の確保が不要となります。

この文章は、「上記のデータを提出してください。」と言っている一方で、「上記1の設定は不要です」と言っています。設定不要なら当該データは存在しない。しかし、データが存在しなければ提出できない。そうすると二つ目の引用部分は論理的に破綻してしまいませんか?

この質問の回答からは、検索要件の確保が不要な事業者はデータをどのように整理して出せば良いのかが理解できません。この回答を読み解くのは、筆者にとってはパズルを解くより難しいです。

出典は『電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】』(令和5年6月国税庁)

前回:電子取引データ保存の2つの方策を比較する
次回:2024年1月からの電子取引データ保存方策検討:検索要件対応で選択肢を細分すると・・・

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電子取引データ保存の2つの方策を比較する

昨日は、「2024年1月からの電子取引データ保存義務化への対応方法」で、2024年1月から電子取引データ保存の方法として、次の2つの方法のどちらかを選択できると説明しました。

A 規則第4条第一項の保存要件に対応して保存する。
B 電子取引データの保存要件に対応せず保存だけする。

Aの場合には、電子取引データを書面とする必要がありませんが、Bの場合には税務調査で電子取引データを印刷したものを書面として提示・提出が求められます。

各保存義務者によって、取引件数、取引全体に占める電子取引の割合、社内のワークフローやシステムが異なるので、その実情を鑑みて、A、Bのどちらかを選択します。選択の指針はおおむね次のようになります。

Aを選択するのが良いケース

次のように業務処理の流れ(ワークフロー)が概ねデジタル化されている場合にAを選択すると良いでしょう。

  • 電子取引データの件数が多く、保存(倉庫など)のスペースや作業効率からデジタル化が書面よりも有利である。
  • 社内のワークフローのデジタル化が済んでおり、デジタル保存の仕組みも整っている。
  • 外部との取引はすべて電子化されている。あるいはその大部分が電子化されており、近いうちにデジタルに統一される。

Bを選択するのが良いケース

逆に、次のようにワークフローが概ね書面ベースになっている場合にBを選択すると良いでしょう。

  • 社内のワークフローが書面ベースになっている。つまり書面で社内手続き処理を進め、書面で保存するようになっている。
  • 取引書類の過半数が書面であり、電子取引データの割合は少ない。取引書類はすべて書面に揃えて保存しておくほうが効率的であり、後で探しやすい。
  • もともと書類の件数自体が少なく、電子取引データ保存要件を満たす仕組みを導入してもコスト面で引き合わない。

現在、社外との取引をすべて電子的手段で行っており、書面(紙)での取引データ交換はない、という会社はほとんどないでしょう。そうすると、書面と電子データ交換(EDI、ECストアあるいはe-メール)を併用しているはずです。

Aを選択した場合は、書面をスキャナーで電子化してワークフローに載せることになります。書面の取引書類は税法上の保存義務があるため、原則として原本の書面を廃棄できません。もし、廃棄したい場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存という制度を利用する必要があります。

前回:2024年1月からの電子取引データ保存義務化への対応方法
次回:電子取引データ保存要件の中で、複雑なパズル並みに理解し難いのが検索要件だ

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2024年1月からの電子取引データ保存義務化への対応方法

電子帳簿保存法第7条で義務付けられている電子取引データのデジタル保存ですが、2023年12月で宥恕措置期間が終了し、2024年1月から必ずデジタル保存をしなければなりません。

この保存方法については、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」(以下、規則)の第4条で決まっています。第4条は2023年3月に改正されました。新しい規則は2024年1月から施行されます。

2024年1月からは、第4条の規定に従うと、保存義務者がデジタル保存を実施するときの方策は、次のA、Bのどちらかを選択することになります。

A 規則第4条第一項の保存要件に対応して保存する。

施行規則第4条第一項については、例えば、「電子取引の保存要件に対応するには」をご参照ください。
この場合、電子データを印刷した書面を保存する義務はありません。

アンテナハウスは、2022年1月から、『電子取引Save』を使用して、電子取引データを規則第4条第一項の保存要件に対応して保存しています。これを運用開始して1年8カ月経過しています。保存要件に対応するために必要な中で工数がかかるのは、検索要件を満たすことです。具体的には取引データを1件登録するごとに、検索用の項目(取引先名、取引金額、取引日付)を入力しなければなりません。これは入力作業に結構手間がかかる要因になっており、よい解決方法が望まれています。

今回、『電子取引Save V2』では、入力を効率化するための機能をいくつか追加しています。

B 電子取引データの保存要件に対応せず保存だけする。

2024年1月から規則に定められた保存要件は気にしないで、電子データ・ファイルをPCのフォルダなどに保存しておくことが選択できるようになります。

この場合でも税務調査で要求された電子データを提示・提出できることが必要です。そのためには、例えば、従業員各人のPCなどにばらばらに保存するのではなく、保存につかうと決めたPCに、会社全体のファイルを集中し、整理しておくのが良いでしょう。例えば会計年度別・業務別にフォルダを作成し、所定フォルダに分類しておくと見つけ易くなります。

さらに電子ファイルを保存しておく一方で、その内容を印刷した書面を整理した状態で提示・提出できるようにしておかなければなりません。書面の整理・保存はこれまで行っていた方法どおりと考えられますが、具体的には顧問税理士などに相談されると良いでしょう。

方法Bでは、検索要件に対応する必要がないので、保存作業の負荷は小さくなることが期待できます。

前回:電子商取引についての調査報告から電子取引データ保存を考えてみる
次回:電子取引データ保存の2つの方策を比較する

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電子商取引についての調査報告から電子取引データ保存を考えてみる

8月31日付けで、経済産業省から電子商取引に関する市場調査結果が発表されました。

経済産業省のプレスリリース

電子商取引の普及度合は、電子帳簿保存法で対象とする電子取引の普及度合と関係が深いでしょう。そうすると電子取引データの保存の市場を考える上でも参考になりそうです。そこで、次に両者の関係について、整理しながら考えてみました。

本調査では、日本の電子商取引を、国内電子商取引(BtoC-EC、BtoB-EC)、国内の個人間電子商取引(CtoC-EC)、日本と米・中国の3国についての国際電子商取引(越境EC)に分類して、その市場規模を推定するとともに、一部のみですが、EC化率(市場規模全体に対する電子商取引の割合)を推定しています。

まず、電子商取引(EC)の定義は、OECDでは次のようになっています。(報告書p.13)

(1)広義には、企業、世帯、個人、政府、公的機関の間の物やサービスの取引で、注文がコンピュータのネットワークを介して行われるもの、とされています。EDIやオンラインアプリケーションでの注文を含みます。支払いや配送の形態は問いません。
(2) 狭義にはWeb・インターネットを用いたものとされています。

本調査では、広義には、「受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われ、成約金額を補足できる」としています。狭義には、そのうち、インターネットで通信を行うものとしています。

商取引のプロセスの中では、受発注時を対象にしており、製品情報の提供・見積り・計画などの成約前段階、請求・決済・納品・保守サービスなどの成約後プロセスは含んでいません。これは、ECの市場規模を補足するということが大きな目的になっているためでしょう。

電子帳簿保存法でいう電子取引では、請求・決済の取引も含むので、本調査とは商取引プロセスの中でカバー範囲が広くなっています。

細かい話はこれぐらいにして、ざっくり、ECがどの位の割合になっているかを見ると、次のようになります。

1.国内の物販BtoC-ECは、2021年から2022年成長率5.37%、EC化率は2022年で9.13%
2.国内サービス系・デジタル系BtoC-ECは2021年から2022年成長率がそれぞれ32.4%、▲6.1%。EC化率は計算せず。(少なくともデジタル系は成約は100%ではないだろうか)
3.国内BtoBのECは、2021年から2022年成長率12.7%、EC化率は2022年で37.5%(報告書 p.92)

電子帳簿保存法7条で保存対象となるのは、主に法人税に関係する電子取引が多いはずです。BtoC-ECでは主に売り手側、BtoB-ECでは売り手側と買い手側になります。BtoCの物販系取引は、EC化率9%なので大部分が書面取引になり、BtoBはEC化率が平均37.5%ということなの過半数が書面取引になるとみられます。

こうしてみると、2022時点では電子取引より書面の取引がかなり多かったと言えそうです。例外として、BtoCのサービス、BtoCのデジタルの領域では電子取引が多いものと推測されます。

参考)
令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(令和5年8月 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)

前回:EDI(電子データ交換)による電子インボイス交換と取引データのデジタル保存対応
次回:2024年1月からの電子取引データ保存義務化への対応方法

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