1年ほど前に、主にデジタル化(DX化)の観点で、日本株と米国株の投資を比較すると米国株の方が個人投資家(中小企業の資産運用投資家を含む)にとって好都合になっていると説明しました。
「日本に残っている「紙と電子の間」のベルリンの壁を壊せ」(2023年9月22日)
この時は投資家から見た株式市場のDXの遅れという観点だったので、今回、改めて少し幅広い観点で考え直してみます。
前回の要約
個人投資家にとって好都合な点を具体的に挙げると次の通りです。
(1) 米国株は1株から買い付けできるが、日本株は原則100株からとなり投資単位が大きい。
(2) 米国株は四半期毎(3か月に1回)の配当が多いが、日本株は半期毎の配当が主であり小さな銘柄では1年一回の配当である。
(3) 配当の権利確定日から配当が支払われるまでの日数でみると米国株は概ね30日程度であるが、日本株は90日程度かかる。
(4) 日本株は3月決算が圧倒的に多数で、12月決算と合わせると決算期が集中している。また、その結果、配当支払い月も集中している。しかし、米国株の配当支払い月は分散している。
その後、1年を経過しましたが、この事情はほとんど変わっていません。
上の項目は、個人投資家の観点、特に配当に偏りすぎなので、もう少し大局的な観点で考えて補足します。
決算締め日から決算報告までのスピード
日本企業も米国企業も四半期毎に決算報告をすることは同じですが、決算報告までのスピードが違います。直近では9月末(四半期)決算報告が予定されています。
これについては、米国企業は、10月中旬から始まり、概ね11月初旬には終わるようです。対して、日本企業の発表は、10月下旬から11月中旬が多いようです。
日本企業の決算発表は米国企業よりも1週間から2週間程度遅いのではないでしょうか。
為替レートの影響
日本株投資と米国株投資の大きな違いは為替レートの影響の相違です。
日本居住者が米国株直接投資をするには、円をドルに替える必要があり、買付時と売却時の円・ドルの為替レート変動の影響を受けます。米国企業のドルベースの株価自体は、円・ドルの為替レートには大きな影響を受けないようです。この影響は投資対象企業によらず一律になります。こうして、米国株投資では資金のドル・円転換時の為替レートを考えるだけで済みます。
日本株は円・ドル為替レートの影響は企業毎に異なります。つまり、円高になると輸入企業は増益、輸出企業は減益方向になります。つまり、株価への影響が企業毎に異なるので、判断が難しくなります。また、株価変動にドル・円為替レートが影響するので、変動が大きくなるようです。
この項は具体的なところはまだ分析できていませんので、あくまで予想です。
産業構造の違い
もっと本質的な相違として、日米の一番大きな相違点は産業構造の違いがあります。次のような相違があります。
・米国にはグローバルなビッグテック企業がある。
・新しいビジネスモデルで大きく成長する企業がある。
・地場のエネルギー資源会社(石油と天然ガス採掘)が多い。
・米国市場に上場している海外本社の会社が多い。特にカナダの会社など。
産業構造の違いは投資判断ではかなり大きな要因ですが、詳しくは今後の課題としたいと思います。
連載
初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例
8回目:8回目:株式投資の考え方:株価はなぜ下がるか、そのパターンを分類する(前回)