書籍をXMLで制作する動きは一般化するか?

つい先日まで、書籍は特別なものを除き、XMLで作るのは効率が悪いと思っていました。しかし、どうやらその考えを改めるべき時期が来ていると感じています。
 
電子書籍の時代が近づいているのですが、そうなると一つの書籍コンテンツを印刷と電子書籍の少なくとも2つのメディア向けに利用できるようになります。さらに、電子書籍はリーダデバイス向けに何種類か用意する必要もありますので、コンテンツをXMLで制作して多様なメディアに出す仕組への投資が意味をもつようになると思われます。
米国では、コンピュータ関係の専門書を出版しているO’Reillyは電子書籍に熱心です。すでに様々な形式への対応を済ませており、電子書籍を一回買えば一生読めると書いています。DRMフリーでPDF, ePub, Kindle, Android 用の各種形式をそろえていて、どの形式でもDLできると。
http://oreilly.com/ebooks/
 
書籍をXMLで作るのは難しいと思っていたのは、主に次のような理由からです。 
 
1.書籍はドキュメントとしては、一品生産であり、多品種少量生産の最たるものであること。
2.それに対して、XMLで作ろうとするとシステムの初期投資も必要である。
3.XMLのエディタは高価なものが多いし、XMLエディタの使い方を覚えなければならず、オーサリングの生産性が低下する可能性が大きい。
4.XMLで文書を作るには、要素や属性の意味や使い方を理解しなければならず、書籍の著者にそういう学習を求めるのは難しいだろう。
5.世間には、XMLのタグを見ただけで、恐れをなしてしまうような人が多く、そういう人を相手に教育するだけでも大変だろう。
 
このように考えるとXMLを書籍分野に応用するのは労多くして、その割りに益が少ないのだろうということになってしまいます。
 
但し、一部の出版社は書籍をXMLで作ることに力を入れています。その最右翼はO’Reillyです。同社は書籍をXMLで制作しているものが多いようです。以前調べたところでは多くはFrameMakerで制作されてました。 どの程度の割合かは分かりませんが、一部の書籍は当社のXSL FormatterでPDF化しているものもあります。同社の本をダウンロードして、PDFのプロパティを見ると分かります。 
 
技術文書で一般的な文書型であるDocBookもO’Reillyが提唱したもののようです。大変な先見の明と思います。
日本でも一部の出版社が熱心に取り組んでいます。
 
書籍をXMLで制作することで、出版社の制作期間とコストは大幅に下げることが可能となります。これは弊社が関与した次のような例でみても明白です。
1.「Open Office XML Formats入門」(2007年9月25日, 毎日コミュニケーションズ)
ケーススタディ報告:XSL-FO による書籍の自動組版 http://bit.ly/bC4sCa
2.「Introduction to DITA(ジョアン・ハッコス著)」をDCJが翻訳した「DITA概説書」
ソースはDITA(XML)形式となっています。これをXSL-FOとしてAH FormatterでPDFを作成。PDFを出版社に渡して書籍にしています。 DITA Festa 2010でケーススタディが報告されています。
「DITA概説書」
 
これらの例で見ますと、書籍の制作期間の大幅短縮・出版社にとっては大幅な制作費のダウンとなっています。
 
但し、これらの例は、いずれも著者がXMLの専門家であって、XMLのコンテンツ編集は障害になっていません。また普通は1品ものだとXSLスタイルシートの開発コストが高くついてしまうのですが、上のケースでXSLスタイルシートは、実は両方とも弊社の技術スタッフが作りましたので、スタイルシード開発費は見えていません。
 
Twitterでは、その対策として「XMLのひと要素にXSLTのひとテンプレート/ファイルを対応させています。また、FOの属性値もハードコードではなく、パラメータ渡しできるようにしています。パラメータ渡しを徹底すると、汎用性が増す上にFANTaStIKK のようにGUIをかぶせてやることもできますね。増えすぎるとコード書く人間が混乱してきますが。」(@henowaさん)というツイートもありましたが、XSLスタイルシート開発コストを下げる工夫も鍵となります。
 
また、マニュアルなどと商品としての書籍ではレイアウトについても変わって来ますので、商業レイアウトのできるスタイルシート開発者の確保も必要になると思います。
 
このようにいろいろな課題がありますが、いよいよ、1品ものの書籍もXML制作の時代がきたということを強く感じます。今後は、この点への取り組みを強化していきたいと考えています。




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