カテゴリー別アーカイブ: EPUB

DITA Festa 2010 Autumn終了

11月25日午後から26日にかけて開催されたDITA Festa 2010 Autumnは無事終了しました。
今回は、直前に行われたDITA Europe に派遣した調査団の報告、ならびに2日目に米国のXML分野の第一人者であるEliot Kimber氏を招待しての講演が目玉でした。
DITA Europe調査派遣団の報告については、参加者から「新しい風を感じた。」という声もあり、反応は大変良かったように感じました。
 
「DITA特殊化」については、天野氏による1.1の技術解説は少し難しかったようですが、Kimber氏による1.2の新機能は分かりやすかったと思います。
 
第三部のDITA for Publishersについては、従来、テクニカルマニュアルのためと捕らえられているDITAを出版業界向けに使おうということで、Kimber氏によると「DITAの神話を壊すためのもの」とのこと。現在、盛り上がっているEPUBを初めとする電子書籍に関係することからか、大変多くの参加者がありました。また、DITAコンソーシアムジャパンでもDITA for Publishersの短期研究プロジェクトを立ち上げており、今後の成果を期待したいところです。
 
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ちなみに、弊社は、Wikiを利用して書籍を制作するためのサービスを開発しています。(2010年11月23日 『「Wikiベースの書籍オーサリングとEPUB出力」のこと』 をご参照ください。) DITA も考えたのですが、書籍出版用のサービスとしては重すぎるのではないかと判断しています。DITA神話にとらわれて、非効率的な独自DTD開発をしているのかどうか?いづれ評価すべきときが来ると思います。


CSS3のグローバリゼーションの課題について (メモ)

CSS3で日本語のレイアウト機能を強化しようという動きが活発になっています。この大きなきっかけはEPUB3.0に縦書きを含む日本語レイアウト機能を追加しようということで、EPUB3.0のスケジュールの関係上、CSS3の日本語レイアウト機能追加を大車輪で行う必要が出ています。
 
CSS3の日本語レイアウト機能は、既に1990年代の終わり頃から提案されていますが、この10年近くほとんど進捗していなかったのが実情です。
 
これを半年程度の期間で、実装可能なレベルに固めていこうということですからかなり野心的な目標です。実現できればCSS3の利用者を増やすと言う点でも大きなインパクトがありますので、頑張って早く進めたいものです。
 
アンテナハウスでは、2006年からCSSによるレイアウト指定組版 「CSS Print」 を目標として、組版ソフトを開発してきました。具体的には、CSS3をXSL-FO組版機能(AH 独自拡張を含む)と同等のレベルまで拡張して実装しています。この成果として、2009年にAH CSS Formatter V5として発売しています。
 
そして、この間 CSSのWorking Groupにも参加して、ほそぼそとですが活動してきました。こうした関係でCSSのグローバリゼーションの難しさもある程度理解しているつもりです。そうした立場で、22日に行われたJEPAのEPUBセミナーについてのTwitterの議論を見ていると、この難しさがなかなか理解されていないように感じました。
 
ということで、現在、感じている問題点を以下にあげておきます。
1.CSSはもともとラテン文字を画面にレイアウトすることを想定して設計されています。右から左に書いたり、上から下に書くという、考えは設計時にビルドインされていません。CSS3の仕様設計者の大多数は欧米の技術者であり、彼らには、漢字や日本文字のテキスト・レイアウト自体が理解できないので、これは無理も無いことです。そこでCSSの仕様設計者に日本語の組版を理解してもらうところから始めなければなりません。
 
2.日本語レイアウトは欧米の技術者にはそれほど関心もなく、またメリットや学ぶ動機もあまり無いと思われます。従って、前項の活動は主に日本人が積極的に行わなければなりません。しかし、日本人の中でこれに取り組んでいる人は極めて少数です。
 
3.ブラウザも欧米のラテン文字を想定して開発されています。CSS3の作業グループに参加しているのはブラウザの開発団体の代表者が多いため、ブラウザの実装に影響を与えることになると、参加者の利害に直結してしまいます。こうした利害関係に基づく反対もあります。これは、理解云々の話ではないので対応が難しくなります。
4.作業プロセス上の問題もあります。現在のW3Cのプロセス方針は、「仕様作成は合意に基づいて進める」ということになっています。このため、強硬な反対者がいると先に進むことができません。
 
5.11月のTPACに提案された論理プロパティはXSL-FOの相対プロパティに相当するものです。当社は、既に10年間にわたってXSL-FOのスタイルシートを多数開発しています。XSL-FOは最初からグローバル化の考えが盛り込まれており、多言語対応のスタイルシートの開発において、相対プロパティはシンプルですし、有用です。しかし、CSSにとっては全く新しい概念であるため相対プロパティの有用性が理解できないようです。また、CSSにはカスケーディングという仕組みがあるため、相対プロパティを絶対プロパティに対応つけるのは最終段階にならざると得ないという技術的な難点もあります。


「Wikiベースの書籍オーサリングとEPUB出力」のこと

11月22日にJEPA主催で開催された「EPUB日本語拡張仕様の現状と将来展開&サービス紹介」にて、現在、開発中のWikiベースの書籍オーサリングのサービスについて、少しお話させていただきました。
 
このセミナーが企画された当初は、EPUB関連サービスやアプリの紹介も何件か予定されていました。その後、「EPUB日本語拡張仕様策定」提案が総務省の「新ICT利活用サービス創出支援事業」のひとつに採択されたことから、一気に仕様策定関係者のプレゼンの場に傾斜してしまったものです。ということで、かなり肩身の狭い思いがありましたが、少しだけさわりを紹介させていただきました。
 
EPUB3.0に日本語のレイアウトに必要な機能を盛り込むことは、もちろん重大な課題です。一方で、EPUBを初めとする電子書籍を出版活動の中にどのように組み込んでいくかを真剣に考える必要があると考えているからです。
 
EPUBは主に配布形式として利用されますので、従来の制作工程で考えて見ますと印刷された本に匹敵します。従って、書籍制作の流れの中では下流に位置づけられます。しかし、電子書籍の制作はもっと上流から見直していく必要があるように思います。Wikiベースの書籍オーサリングは、書籍の制作をコンテンツを執筆するという上流から見直していこうというものです。
 
セミナー終了後、何人かの方から意見を頂戴しましたが、Wikiを採用した理由についての質問と意見が多くありました。このあたりは、また、時期をみて詳しく報告したいと考えています。とりあえずは、発表の後、IDPFから参加されたBill MaCoy氏から「Extreamly Interesting !」と声を掛けていただいたことを報告しておきます。
 
○プレゼン資料
「Wikiベースの書籍オーサリングとEPUB出力」
11月22日EPUBセミナーの資料とライブ映像


11月25日~26日 DITA Festa 2010 Autumnを開催します

DITAコンソーシアムジャパンは、11月25日~26日東京にてDITA Festa 2010 Autumnを開催します。
 
今回は、「DITA最前線」をテーマに欧州でのDITAの活用事例や、DITAの第一人者であるEliot Kimber氏をお招きし、DITA特殊化技法や電子書籍等へのパブリッシング技法などを解説いただきます。
 
・日時
2010年11月25日(木) 13:30~18:00 第1部 事例編
2010年11月26日(金) 10:00~12:00 第2部 特殊化編
                13:30~18:00 第3部 技術編
三部構成です。
 
・会場
富士ゼロックス株式会社 本社セミナールーム
東京都港区赤坂九丁目7番3号 (東京ミッドタウン)
・内容
第1部 DITA最前線 ~事例編~ 11月25日
「開会挨拶」
「公開サイトアンケートから考察するDITAの潜在市場」
「XMLコンソーシアムでのDITA利用体験」
「DITA Europe 2010から欧州DITA導入事例の報告」
「IBMの半導体開発におけるDITAの活用」
「DITA普及の試み」
 
第2部 DITA最前線 ~特殊化編~ 11月26日
「DITA1.1特殊化の解説」
「DITA1.2特殊化作法と海外での利用状況、OASIS TCの状況」
 
第3部 DITA最前線 ~技術編~ 11月26日
「DITAパブリッシング最前線」
「DITA ePubプロジェクトの発足と活動計画」
「DITAトピックライティングの解説」
「DITA Europe2010から最新技術事例紹介」
「DITA 1.2 言語仕様の翻訳活動報告およびOASISの最新状況」
「DITAコンソーシアムジャパンの今後の活動と会員募集」
○詳しい情報とお申し込み
http://dita-jp.org/?p=894


EPUB3.0へのCSS3採用の推進に関して

2011年5月策定を目指して、EPUB3.0の仕様策定作業は急ピッチで進んでいます。先週の頭には、サンフランシスコで世界各国の要求事項を絞込み、整理する作業が行われています。
 
要求事項の中でも重要な項目として、縦書き他の日本語組版機能があります。EPUBは、独自の仕様を書き下ろすのではなく、外部の標準的な仕様を参照し、利用する形になります。日本語組版機能に関しては、CSS3で策定作業が行われており、EPUBではCSS3を利用することになります。
 
ところが、CSS3はまだ仕様策定の途中あり、EPUBで必要とする日本語組版機能は、次の二つのモジュールとして進んでいます。
 
(1)CSS Text Level 3
(2)CSS Writing Modes Module Level 3
CSS3側から見ますと、CSS3に縦書きを含む日本語レイアウト機能を盛り込む意義は、当面、書籍形式であるEPUBにそれが採用されるかどうかが重要なポイントになると思われます。
 
CSS3縦書き機能が、もしEPUB3.0の仕様策定作業に間に合わず、EPUB3.0で独自縦書き方式を採用するか、各メーカでがばらばらになった場合、ひとつのコンテンツに対して、異なるレイアウト指定方法が必要となり出版界にとって損失が大きいように思います。
 
そのようなことから、弊社は、CSS3がEPUB3.0に採用されるために努力すべきとの判断をしております。


Amazon Kindle形式の電子書籍出版方法

欧米の電子書籍ではePubと並んでAmazanのKindleで形式も重要な存在である。しかしKindle形式については公開された資料があまりないようだ。そこで、「The Complete Guide to Formatting Books for the Amazon Kindle」(eBookArchtects.com発行、Joshua Tallent著)を読んでみた。同書から以下にポイントを簡単に紹介してみる。
 
Kindleで本を出版するには次の方法がある。
1.Kindle形式は実質的にMobipocket形式なのでMobipocket形式を作ってKindle DTP (Digital Text Platform)にアップロードする。
2.DTPにWord文書ファイルやHTMLファイルをアップロードし、DTPがそれらのファイルからMobipocket形式を自動的に作成する。
Mobipocket形式にしてからDTPにアップロードするメリットは次の3点である。
(1)toc.ncx というファイルを加えて、ナビゲーション機能を使えるようにすることができる(Kindle2から有効)
(2)eBookBaseというMobipocketの電子書籍配信チャネルを使うことができる。
(3)DTPにHTMLをアップロードするとDRMフリーになる。それに対して、Mobipocket形式ではDRM(デジタル著作権管理)を設定できる。
Mobipocket形式のファイルはcalibreやMobipocketCreatorを利用してHTMLから作成する。MobipocketCreatorでは内蔵の変換機能を利用して、テキストファイル、Word文書ファイル、PDFファイルをインポートすることもできる。
MobipocketCreatorでは、OPF (OpenPackaging Format)を作成する。OPFの形式はePubと同じである。OPFの中に,Metadata, Manifest, Spine, Toc (toc.ncxファイルの参照) などの情報を保存する。
 
OPFの情報を準備した後、書籍をビルドする。この処理をMobigenというコマンドライン・プログラムで行うこともできる。OPFやtoc,ncxをプログラムで作れば、すべての処理をオン・ザ・フライで行うことも可能である。


電子書籍関係の用語についてのメモ

○電子媒体と印刷媒体の関係
印刷媒体である書籍、雑誌、新聞は情報の内容、印刷・流通技術、ビジネスモデル、マーケティング方法がかなり違います。書籍、雑誌、新聞の紙のモデルをそのまま電子機器の上に継承して実現することできるかは未知数です。でも当面は、電子書籍、電子雑誌、電子新聞は、紙のモデルを継承したものとして定義しておきます。将来はいづれそれぞれ紙媒体とは異なる姿になっていくのかもしれません。
 
○書籍(紙)
書籍とは思想・情報に関する言語表現をある方針で編集した、ある厚さ(表紙を除き、49頁以上)をもつ不定期刊行の冊子のことを言います。
 
○電子書籍
電子機器で閲読される利用方法を想定してパッケージされ配布される書籍のデータ。このような定義では、例えば、印刷を目的として発注元から印刷会社へ受け渡されるPDFは電子書籍には分類されません。電子書籍というとき、電子雑誌や電子新聞を含んでいることもありますので注意が必要です。
○ePub
ePubは電子書籍の情報パッケージ形式の一種で、電子機器の上のePubリーダで閲読します。
ファイル形式の仕様はInternational Digital Publishing Forum (IDPF) が策定しています。
 
○Webページと電子書籍の関係
Webページは、インターネットに接続された状態の電子機器の上で、主にブラウザを使って閲読するもの。ブラウザはページの概念を持っておらず、ブラウザの表示は長い巻物の一部を画面をずらしながら見ていくやり方です。
電子書籍はパッケージされた状態で配布されており、オフラインで見ることができる点で、Webページとは異なります。電子書籍の閲読は画面を1ページとして割り当ててページを捲るように見ていく方式が主流です。
 
○組版
組版は文章や図・表などを配置して印刷のための版を作成することです。組版においては版の大きさ、特に版面設計が非常に重要なポイントとなります。紙のサイズには一定の規格があり、本の大きさ(判型)の種類は限られています。また一つの書籍では判型は固定です。
○電子書籍と組版
電子書籍に関する最近組版という言葉を議論でも見かけます。しかし、電子書籍では、電子機器のディスプレイのサイズや解像度はばらばらです。電子書籍のリーダは画面のサイズに合わせて、文章を最適表示します。読者が文字の大きさを指定することとも可能です。このように画面に可視化する処理と判型を固定した上で、文字や画像を配置する印刷組版とを同一に組版と言う言葉で表すのは違和感があります。電子書籍の表示はレンダリングという言葉を使うことを提案します。
○印刷
印刷は文字通り紙に出力することを示します。書籍は、通常、印刷会社で印刷しますが、今後は、書籍をPOD(プリント・オン・デマンド)で印刷することも増えていくと思います。


新しい本作りのワークフロー XHTMLを交換形式に使う

少し前になりますが、境祐司さんのPodcastで交換形式の重要性を語っていて、その記事を次回の「読むウェブ ~本とインタラクション/gihyo.jp」に書くと言っていました。きっと第16回になると思い、心待ちにしていたのですが、第15回が7月15日で、もう1ヶ月過ぎたのになかなか発表されません。
 
これはあまりに革新的すぎて、編集部でリジェクトされたのではないかなどと妄想していますので、記事が出る前に勝手ながら、ちょっと解説してみます。境さんの方法は、動機と目的は違いますが、方法としてはオーム社開発局のIdeo Typeとかなり似ている方法です。
 
(1) Ideo Type方式は著者にXHTMLで原稿を書いてもらい、これをTeXに変換してTeXで書籍を制作する方法です。
 
(2) 境方式ではXHTMLを元にしてInDesignを使って書籍を制作する。書籍を制作したときの最終版までの修正箇所をまとめて、オリジナルのXHTMLに反映する。XHTMLを元にしてePubを作るという方法を取っているようです。
 
両方とも著者が書籍のコンテンツをXHTMLで作成するというところが共通です。この場合、問題はXHTMLの標準のままでは書籍に必要な次のような要素が表現できないということです。
・索引項目
・脚注(記号、テキスト)
など
 
Ideo Typeではclass属性値を規定して解決しているようですが、境方式ではどうしているのか?このあたりが気になっています。いづれにしても書籍のコンテンツをXHTML(拡張を含め)で表現するというのが、XHTMLエディタによる編集、Webとの親和性からしても一つの方法です。
 
境方式は、ワークフローの成果物としてePubなどの電子書籍を重視していますが、IdeoTypeは開発時点では電子書籍は配慮してないと思います。Ideo Typeを電子書籍向けに拡張していくのは簡単なはずです。
 
また、将来はXHTML文法からHTML5文法に変わるのかもしれません。いずれにしても、紙と電子を統合する新しい書籍制作フローの萌芽と思います。
Podcast: 境祐司さん


DITA からePubを自動作成するオープンソース・プロジェクト

だんだんと電子書籍形式の主流になりそうなePub形式。iBooksのePubリーダは、7月下旬の1.1.0でエンハンストePub機能(音声、マルチメディアの埋め込み)がサポートされるなど、速いスピードで進化しています。現在は日本語テキストの表示機能はいまいちですが、iBookstoreで日本版電子書籍の取り扱いが正式に始まる頃には、多分、日本語テキスト表示も改善されるに違いありません。
 
ePub作りは、まだ、DTPで元ネタを作ってからというワークフローが注目されています。例えば、最近の「MdN」(2010年9月号)。しかし、これは非生産的。
 
XMLからePubを自動的に作り出すのは簡単ですし、本来、こちらが主流となるべきと考えます。
 
そういう意味でDITAのOpenToolKitのプラグインとして開発が進んでいる「DITA For Publishers」に注目。8月14日にV0.9.1が公開されました。
 
○「DITA For Publishers version 0.9.1」
http://sourceforge.net/projects/dita4publishers/


デジパブフェア出展 ePub on iPad が大人気

本日で、第14回デジタルパブリッシングフェアが終了です。
 
ご来場いただいた皆様ありがとうございました。また、関係者にお礼を申し上げます。
 
今回は、直前に発表になった、平成22年情報通信白書のePub版をiPadでデモしていたのですが、これが大人気となって、狭いブースの入り口が一杯になってしまい、ブースの中で展示していた製品のデモに至らなかったようです。
 
直前にデモ版(β版)が完成した「アウトライナー2 速ワザ」はチラシがかなり人気でしたが、どの程度、実際にご覧いただけたでしょうか?
 
「アウトライナー2 速ワザ」のWebページ
○ブースの様子
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