日別アーカイブ: 2024年10月8日

株式投資の考え方:株価はなぜ下がるか、そのパターンを分類する

株式投資においては、まず、投資対象銘柄を安く購入することが大事です。そのためには株価が大きく下がったときにチャンスです。しかし、下がった株価がもとに戻り、さらに上がらないと売買の利益を得られません。そのため、株価が再び回復するかどうか、それまでどの位の期間がかかるか、投資資金をそれまで維持できるかを見通してから買う必要があります。

株価が下がったときは、下がった原因を見極めることが第一歩でしょう。下がる原因はその時々によって異なっているわけですが、下げの現象はいくつかのパターンにわけることができます。過去の同じようなパターンで株価がどのように動いたか、どのように回復したかを知っていると未来を予想する手掛かりをえられます。

次に大きく下げるパターンを簡単に整理してみましょう。

主要な銘柄の株価が一斉に下がる

日本市場なら、東証プライム登録銘柄の大部分の株価が一斉に値下がりするような状態です。この典型例は2024年8月5日株価暴落のような事態です。このときは、7月31日に日銀が政策金利を0.25%程度に引き上げたのをきっかけとする円高と米国の景気見通しの不安などが重なって暴落したとみられています。

このほか、近いところでは、2020年2月~3月のコロナショック(新型コロナウィルス感染症パンデミック発生)による株価の下落、2015年8月のチャイナ・ショックによる下落、2008年9月のリーマンショック(2008年9月15日リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとする金融危機)による株価下落など歴史に残る下落があります。

こうした、歴史に残るような大きな下落以外にも、中央銀行の利上げ、景気先行きへの不安あるいは戦争の勃発などで株価が一斉に下落することがあります。

こうした過去の下落はいずれも回復していますが、回復に要する期間はそれぞれ異なっています。過去のチャートを研究して頭にいれておくことである程度の判断基準が得られます。

同一業界の銘柄の株価が一斉に下がる

最近の一つの例として、2024年10月4日、日本郵船、商船三井、川崎汽船の株価がそれぞれ前日終値比で516円(9%)、329円(6%)、223円(10%)急落したことが挙げられます。これに関しては、米国港湾ストの終結で上昇期待が剥落したということのようです。これは将来の業績への思惑から下げたケースにあたりそうです。

世界の海運株急落 米港湾スト終結で運賃上昇期待が剝落

このほか、最近(10月初旬)は、中東情勢の悪化で原油の価格が上がっています。これに連動して、米国市場の石油・天然ガス採取会社の株価が上がっています(下がったケースではないのですが…)。しかし、10月中旬には原油価格の下落で米国エネルギー企業の株価が若干下がっています。

業界の主導的企業が業績見通しを引き下げたことで業界全体の株価が下がることもあります。この例として、10月15日夜ASML(業界最大の半導体製造装置メーカ)の第3四半期決算が事前に漏れ、年間売上高見通しが期待外れになったため、株価が16%下落した。26年ぶりの大幅下落だそうです。この影響で他の半導体製造装置メーカの株価も大きく落ちています。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は5%強の下落となりました。

半導体製造装置の中国への輸出規制強化で、半導体製造装置メーカーの売上が変化し、株価が変動しています。これは地政学的な要因による株価変動になります。但し、政府の規制の場合は、強化されると回避策が働いて需給が変化するためか、規制強化が常に売上減になるといった関係が生まれるとは限らないようです。

個別株が下がる

個別株が下落する原因は、業績の悪化または悪化の予想により下げる場合と、業績とは直接連動しない、株式の需給関係に大別できます。

業績の悪化には、次のような項目があります。
・通期決算または四半期決算で赤字になる
・通期の決算または四半期決算が当初の目標を下回る
・利益の見通しが減益になる
・利益の見通しが下方修正される
・配当が減る(減配)

このような情報は、四半期決算短信などの企業の開示情報から得られるので、開示情報を確認しておく必要があります。一般的には業績の悪化もしくは悪化予想で当該企業の株価は下がることが多いのですが、事前予想によっては、上がることもあります。また、決算発表に際して、業績が下がっても配当を増やして株価を維持するといった対策も見られます。このように業績悪化が直ちに株価下落につながらないこともあるので注意が必要です。

特に、収益の悪化の原因が企業のビジネスモデルの劣化のような構造的要因にあると考えられる場合、業績回復には長い時間がかかるので株の購入は見送るべきでしょう。

業績の悪化が株価の需給の悪化を引き起こすほか、次のように業績の悪化と直接連動しない下落要因もあります。
・企業が新規の株式を売り出すことで需給関係が悪化
・大口株主が株を売却する(需給関係が悪化)
・証券会社が企業の投資判断を引き下げる

例えば、大規模な資産運用ファンドのマネージャが、投資先企業の業績を予想し、株価がピークを付けたと判断して、保有株を売却することがあります。この場合は、業績の悪化が公開になっているわけではないので、一般投資家には原因がわかりにくいものです。株価が原因不明で下がったときは、出来高を確認すると良いでしょう。

連載

初回:株式投資の考え方:株価の暴落にどう対処するか
2回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落から学べること
3回目:株式投資の考え方:2024年8月の株価暴落はどのように起きたのか?
4回目:株式投資の考え方:良い会社とはどのような会社か、投資先候補銘柄の選定法
5回目:株式投資の考え方:いつ買い・いつ売るか
6回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法
7回目:株式投資の考え方:投資成績の評価方法ー実例




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