「消えた年収」(北見 昌朗著、文芸春秋社発行、2009年8月10日)は国税庁の「民間給与実態調査」を分析して日本の給与所得者の給与動向を分析した注目の書です。日ごろのニュースなどで大体予想はしていましたが、実際の数字と解説で示されるとショッキングです。
中でも一番印象深いのは、日中貿易と給与の関係。日中貿易は平成9年11兆3千億円から平成19年32兆8千億円となり21兆5千億円増。一方、給与所得総額は220兆円から201兆円になり19兆円減少。平均年収467万円から437万円に30万円減少。
著者は、中国貿易の拡大が、日本での給与所得の減少の大きな要因のひとつと指摘しています。そして、経営者は中国との付き合いを再考せよ、と主張。
前半は同感です。が、この傾向は今後も避けることはできないと思います。昭和の時代に日本が欧米に輸出攻勢をかけて欧米の企業と勤労者を窮地に陥らせたのと同じことが、今起きている訳です。
これを見て連想したのが、フリーソフト・廉価製品によるソフトウエア売上の縮小です。PDFの分野では無償ソフト・廉価製品はどんどん出てきています。これは避けられない流れと思いますが、その流れに流されてしまえば、ソフトウエア製品の売上は減少します。そうばればPDFソフトを作る開発者の年収は減らざるを得ないでしょう。企業経営も苦しくなり、利益を出して税金を納めることもできなくなります。
フリーソフト・廉価製品は、この影響を避けられない点では、中国の攻勢と同じです。その時代にどうやって生き残るか、舵の取り方の難しいところです。経営者の腕の見せ所かもしれません。