電子雑誌は成立するのだろうか?

雑誌の凋落が厳しい。原因は広告収入の減少と言われる。実際、マス媒体の広告費の中で雑誌広告費は、2008年から2009年に掛けて25%減少で、最も減少率が激しい。
2009年(平成21年)日本の広告費の概要
 
雑誌広告はインターネット広告に広告主を奪われているのだろう。
 
弊社はパソコン雑誌への広告を重要な販売促進手段として位置づけてきたが、従来、広告を掲載していた雑誌に中では「YOMIURI PC」が昨年5月号(3月24日発売)で休刊となっている。弊社のような会社にとってパソコン雑誌の廃刊は利用可能な広告媒体の減少、ひいては販売促進手段の選択肢が減ることになるので他人事ではない。専門雑誌社の雄である日経BP社でさえも売上減少が続き、ついに直近の決算で赤字転落したことが伝えられているなど、雑誌媒体の今後は楽観を許さない状況になっている。
 
雑誌の不振は広告だけではない。雑誌の販売金額も1996~1997年をピークに年々減少している。無料情報の入手手段としてインターネットが増えて読者を奪われていることが販売の不振であろう。
 
雑誌ビジネスは、購読料収入と広告収入の二つが車の両輪の関係になっているが、この両輪が共に回らなくなっているところに雑誌の危機の深刻さがある。単なる不況であればいずれ回復するであろうが、これは不況ではなく構造の変化である。従って、雑誌社はビジネスを新しい枠組みにシフトさせるしか生き抜く方法はないだろう。
 
昨年来、米国AmazonやAppleなどが新しい電子ブック・リーダと電子書籍販売のプラットフォームビジネスで成功を収めつつあり、その影響が日本にも及んで、何回目かの電子書籍元年と言われる状態になっている。
 
このような背景を考えると、雑誌社が電子雑誌に活路を見出そうと試みるのは当然である。電子雑誌化したパソコン雑誌はまだ見えていないが、例えば電子パソコン雑誌は、果たしてビジネスとして成立しうるか?これを少し考えてみたい。
まず、雑誌とその競合になっているであろう、インターネット広告媒体(媒体型:記事を自前で用意するタイプ)、同(検索型:記事を自前で用意しないでクローラでかき集めるタイプ)、電子媒体の収支の構造を大雑把に比較してみると次の図のようになると思われる。
 
Magazines.png
 
雑誌と電子雑誌の収入構造とコスト構造はかなり似たものになりそうだ。つまり、雑誌の印刷・造本・配本のコストが、電子雑誌では恐らく通信費やシステム費用に代わるのだろう。従って、電子雑誌のコストは雑誌よりも少し小さくなり、電子雑誌は小型の雑誌に相当することになる。
どうもあまり楽しくない結論で申し訳ないが、既に、雑誌はインターネット広告に負けているという結果から鑑みて、それを小型化しただけの電子雑誌を作ったとしても、インターネット広告に対する劣勢を覆すことはできそうもない。特に電子雑誌の前提となる閲読デバイスがもっと普及しないと部数がものをいう広告の分野で、インターネット広告との競争に勝つのは難しいと言わざるを得ない。
 
そうすると残るは販売収入がどうなるかということになるのだが。




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