DITA Festa 2012 終了。マニュアル制作の危機を痛感!

DITA コンソーシアムジャパン主催のDITA Festa 2012が、1月25日と26日二日間開催され、盛況のうちに終了しました。
今回のDITA Festaでは、従来に比べてさらに実践的な内容が多く報告されました。現在、日立で日米同時進行で進んでいるソフトウェアマニュアルのDITA化の中間報告は、まさにマニュアル制作現場の熱い戦いを臨場感をもって伝えるものでしたし、DITA ヨーロッパ2011の視察報告も、報告者の深い経験に基づく考察を踏まえたもので、単なる視察報告の域を超えたものでした。
しかし、それにもまして、強い印象をうけたのは日本企業の急速なグローバル展開と、マニュアル制作の危機とも言える現状です。
藤枝さんの市場分析の中で「DITA化したいドキュメントの展開言語数」のグラフに典型的に表れていましたが、2010年11月時点では「36言語以上」はゼロなのに対して、2011年6月の時点では、「36言語~40言語」が5社、「41言語以上」が2社となっています。多言語展開が大きな課題になっているのは明らかです。
技術的な製品であれば、ドキュメントは日本語と英語だけでもなんとかなりますが、コンシューマ製品になれば、現地の言葉でドキュメントを作るのは必須です。このため日本企業がコンシューマ製品を世界に展開していくときには、企業のグローバル化のスピードにあわせて同時に説明書の多言語化が必要となります。
「DITAユーザー交流会」の報告は、日本企業のマニュアル制作が総括されました。とりわけ、オムロンヘルスケア社のDITA検討状況の報告は、企業のグローバル展開が急速に進んでいるのに、ドキュメント制作体制が伴っていないために起きる状況を典型的に伝えています。同社は製品のグローバル展開を急速に進めていますが、その製品説明書はDTPで制作する体制をとっています。日本語だけであれば特に問題がないのでしょうが、DTP制作体制のままで内容をコピー&ペースト方式で多言語化していったためにドキュメントの保守ができなくなり始めているようです。具体的には、本社の移転に伴う住所表記の変更作業が大きな日数とコストを要する作業になっているということがその一例です。この一例はDTPと手作業のままでマニュアルの多言語展開をしていくことの限界を象徴しています。
そういえば、DITAヨーロッパの視察報告の中で、SAPが企業を買収して製品群を自社の中に融合していく際にマニュアル制作方式の統一が必要になったという事例が報告されていました。
今回のDITA Festaでは、企業活動とマニュアル制作は密接な関係をもっていること、そして、グローバル化とM&Aという激しい流れに対応できるマニュアル制作体制の確立が必須になっている、ということに強い印象を受けました。
DITA Festa2012