今回はflow-mapについてです。今回の記事は「概要編」としてflow-mapとはどんなものなのか紹介します。
region-bodyは複数記述可能
<fo:region-body>
は<fo:simple-page-master>
に複数記述可能です。region-body同士は重なり得るので、適切に配置します。<fo:flow>
の@flow-name
で利用するregion-bodyを指定します。
たとえば、翻訳文を併記したいけれどテキストの長さが元の文と異なってしまうときなどにも対応可能ですね。表組や段組で左右の文の位置が揃うよう並べるよりも構造がすっきりしているのではないでしょうか。表組の解除や段抜きなどはないため、図版だけページ中央に表示したいなどの要求があるとややこしくなりますが。
flow-mapについて
本記事の本題はflow-mapです。名前の通りflowのマッピングを行える機能です。簡易な理解ではページシーケンスマスタでのページシーケンスとページマスタの関係を、flowとregionに置き換えたものとなります。ページシーケンスマスタのように条件よる参照分岐はできません。
JIS X 4179『拡張可能なスタイルシート言語(XSL) 1.1』で紹介されているflow-mapの使い方は3パターンほどです。簡単な例としては次のような形があります。
- 別々のregionであるregionA、regionBに対し、同じflowを流し込む
- 1つのregionに対し、別々のflowであるflow1、flow2を流し込む
- regionA、regionBにflow1、flow2を流し込む
この中でもっとも使い方として分かりやすいのは「regionA、regionBに対し同じflowを流し込む」という形でしょう。
<fo:flow-map>
に@flow-map-name
を指定し、<fo:page-sequence>
でそのflow-mapを参照するようにします。
流し込まれるソースのflowの@flow-name
と同じ値を<fo:flow-source-list>
の子、 <fo:flow-name-specifier>
の@flow-name-reference
に、流し込み先のregionを<fo:flow-target-list>
の子、<fo:region-name-specifier
の@region-name-reference
に指定します。今回はregion2つに対してflow1つを割り当てました。
<fo:page-sequence>
に@flow-map-reference
で参照するflow-mapを指定する必要があります。
複数flow-mapを用意すれば、同じflow-nameのflowに対し、flow-mapの参照を変更することで別のregionに流し込むことも可能です。
さらに細かいregionとflow-mapを利用することで、次のようなレイアウトも可能です*。
試行錯誤であるところはここからで、このregionはマッピングされているとはいえそれぞれ独立です。たとえばフォントサイズを大きくするとテキストの位置がずれ、次の行のテキストと重なるかもしれません。
- * このようなレイアウトを実現するほかの方法として
<fo:block>
に都度インデントを指定するような方法も考えられます。そのときはテキストの内容を行ごとにあらかじめ分割しておく必要があるでしょう。
上は極端な例ですが、領域が独立していて困ることはほかにもあります。この話題については来週に続きます。
参考資料
- 『XSL-FO の基礎 第2版 – XML を組版するためのレイアウト仕様 第2版』(アンテナハウス株式会社, 2017)
- Extensible Stylesheet Language (XSL) Version 1.1 – 6.4.22 fo:flow-map
- JIS X 4179『拡張可能なスタイルシート言語(XSL) 1.1』
前回:XSL-FO試行錯誤 脚注のインデント