第91回 「スマホによるスキャナ保存について考える 3 」

作成者:アンテナハウス株式会社 益田康夫
資 格:上級 文書情報管理士、簿記3級、行政書士
本ブログの記載内容は、公開日時点での法令等に基づいています。
その後の法令改定により要件が変わる可能性がありますので、最新の法令などをご確認下さい。

 前回は関連する通達を詳細に確認しました。

みなさん軸ができてきましたか?

さて、今回はQ&Aを読み込んでみましょう!

Q&Aは法令に具体的にあらすことが困難なユーザー向けの具体的な運用や方策について記述されているのでこれを理解実践することで安心してスキャナ保存が行えると言えます。

筆者が重視するポイントを赤文字にしておきますので、まずはさらっと見ていき、その後入念に読み込んでみて下さい。

問32 当社は、従業員が立替えた交際費等の領収書について、所要の事項を整理した精算書とともに提出させていますが、このような精算書は、スキャナ保存の対象とすることができますか。また、適時入力方式の対象となりますか。
回答
法人税法施行規則第59条第4項等に規定する「帳簿代用書類」に該当すれば、スキャナ保存の対象とすることができます。また、「帳簿代用書類」は、適時入力方式の対象とはなりません。
解説
1 法人税法施行規則第59条第4項等に規定する「帳簿代用書類」は、同条第1項第3号等の規定により保存しなければならないこととされている書類であることから、電子帳簿保存法では国税関係帳簿ではなく国税関係書類に該当することとなります(法2二)。
このため、スキャナ保存(法43)の対象とすることができます。
2 「帳簿代用書類」は、規則第3条第6項に規定する国税庁長官が定める書類から除かれている(平成17年1月31日付国税庁告示第4号)ことから、規則第3条第5項第1号に規定する速やかな入力及び同項第2号ハに規定する大きさに関する情報の保存などが必要となります。

問33 スキャナについて原稿台と一体型に限るとする要件が廃止されたので、当社は、営業担当者が私物のスマートフォンで領収書等の読み取りを行うこととして申請を検討していますが、利用機器が私物であることについて、制約はありますか。
回答
私物か否かについて、法令上の制約はありません。
解説
私物か否かについて、法令上の制約はありませんが、私物か否かにかかわらず、申請に当たっては当該機器の機器名等を承認申請書に記載する必要があります。また、保存場所において当該機器に係る操作マニュアルなどの備付けが必要となります(規則3条第5項第7号において準用する規則第3条第1項第3号ハ)。
なお、操作マニュアルの備付けについては、問20を参照してください。
問34 スマートフォンやデジタルカメラ等を使用して読み取りを行った場合、解像度について、規則第3条第5項第2号イ(1)に規定する「スキャニング時の解像度である25.4ミリメートル当たり200ドット以上」の要件を満たしていることをどのように判断するのでしょうか。
回答
読み取った書類の大きさと画素数を基に判断することとなります。
解説
A4サイズの大きさの書類を例にとると、A4サイズの紙の大きさは、縦297ミリメートル、横210ミリメートルであり、1インチは25.4ミリメートルです。
このA4サイズの紙の大きさは、インチ換算すると、縦約11.69インチ、横約8.27インチになります。
これを画素に換算すると、縦11.69インチ×200ドット=2,338画素、横8.27インチ×200ドット=1,654画素、そして総画素を算出すると2,338画素×1,654画素=3,876,052画素になります。
したがって、A4サイズの紙が規則第3条第5項第2号イ(1)に規定する解像度の要件を満たすためには、約388万画素以上が必要となり(A4サイズを画面最大で保存する際に必要な画素数です。)、このように、読み取った書類の大きさと画素数を基に解像度の要件が満たされていることを判断することとなります
また、機器によっては、A4サイズと縦横比が異なっている場合もあることから、そのような場合には、縦2,338画素、横1,654画素をそれぞれ満たしている必要があります
なお、スマートフォンやデジタルカメラ等で読み取りを行った場合、画像の解像度が72dpiと表示される場合がありますが、これは、デジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格(一般社団法人カメラ映像機器工業会・社団法人電子情報技術産業協会 策定)において、「画像の解像度が不明のときには72dpiを記録しなければならない。」とされていることにより表示されるものであり、必ずしも画像の解像度を取得できているわけではありません。
おって、階調に関する情報の保存については、例えば、赤・緑・青、各256階調の場合、Exifの「Bits Per Sample」のタグに「8 8 8」が格納され、ファイルのプロパティに「24ビット」と表示されるなど、その階調が分かる情報が保存されれば良いことになります。

問43 国税関係書類の受領者等が読み取る場合で、当該国税関係書類の大きさがA4以下のときには、大きさに関する情報の保存が不要となりますが、国税関係書類の大きさがA4以下とはどのように判断するのでしょうか。
回答
基本的には、日本工業規格(JIS P0138)において、A列4番以下の大きさであるかを判断することとなります。このため、A列4番からA列10番がA列4番以下の大きさに該当することとなります。
ただし、A列の規格に該当しない大きさの書類についても、日本工業規格A列4番に収まる大きさである場合、A列4番以下の大きさとして扱います。
解説
大きさに関する情報の保存を要しない書類について、規則第3条第5項第2号ハ括弧書は、「国税関係書類の大きさが日本工業規格A列4番以下であるとき」と規定していますので、基本的には、規格内における大小の判断をすることとなりますが、日本工業規格A列の規格に該当しない書類についても、A列4番に収まる大きさの書類についてはA列4番以下の大きさと扱います。
また、日本工業規格において、A列4番は短辺が210mm、長辺が297mmとされ、±2mmが許容されています。したがって、日本工業規格A列に該当しない大きさの国税関係書類の判断に当たっては、短辺が212mm、長辺が299mmの枠内に収まる大きさのものがA列4番以下の大きさの国税関係書類となります。
問45 国税関係書類の受領者等が読み取る場合に行う署名は、国税関係書類の表面に限られますか。
回答
国税関係書類の受領者等が読み取る場合に行う署名は、国税関係書類の表面に限られませんが、裏面に署名を行った場合、裏面についても受領者等が読み取りを行い、入力する必要があります。
解説
国税関係書類の入力すべき範囲については、法第4条第3項で、「当該国税関係書類に記載されている事項を・・・電磁的記録に記録する場合であって」と規定していることから、国税関係書類の表裏にかかわらず、原則として記載されている事項については全て入力する必要があります。
したがって、裏面には印刷等がなく、全くの白紙である場合は裏面の入力を要しませんが、何らかの符号で裏面に記したりしている場合には、当該裏面も入力を要することとなり、これについては、署名を行った場合についても同様です(参考:取扱通達4-18)。

問46 受領者等が読み取りを行うこととして承認申請をした国税関係書類については、その全てについて、受領者等が読み取りを行うことが必要となりますか。また、受領者等が読み取りを行わないこととする場合、変更の届出が必要でしょうか。
回答
受領者等が読み取りを行うこととして承認申請をした国税関係書類について、場面に応じて、受領者等以外の者が読み取りを行うことは可能です(問56参照)。
なお、上記のように場面に応じて受領者等以外の者が読み取りを行うような場合とは異なり、承認申請をした国税関係書類について、今後全て、受領者等以外の者が読み取りを行うこととするのであれば、申請書に記載した事項の変更をしようとする場合(規則62)に該当することから、変更の届出が必要となります。
解説
国税関係書類の受領者等が読み取る場合には、受領等後、受領者等が署名の上、3日以内にタイムスタンプを付す必要がある旨定められていますが(規則35二ロ)、これは、承認を受けた全ての領収書等について受領者等がスキャナで読み取りを行うことを要するものではありません。
なお、これを踏まえ、平成28年度の税制改正後の承認申請書においては、承認を受けようとする書類に、受領者等が読み取るものがある場合は、「受領者等による読取」欄にレ印を付して表示することとしています。

問47 領収書等について、受領者等以外の者が社内などにおいて、スマートフォンやデジタルカメラ等を使用して読み取りを行うことは可能でしょうか。
回答
可能です。
解説
この場合、国税関係書類の受領者等が読み取る場合に該当しないため、受領等後、受領者等が署名の上、3日以内にタイムスタンプを付す必要はありませんが、当該国税関係書類がA4以下の大きさであったとしても、大きさに関する情報の保存が必要になります。
一般的には、スマートフォンやデジタルカメラ等においては、読み取りの際に、大きさに関する情報の取得等が困難となっています。このため、別途、大きさに関する情報を入力して保存するなどの対応が必要となります。

問48 領収書等について、受領者等が社内などにおいて、原稿台と一体型のスキャナを用いて読み取りを行うことは可能でしょうか。
回答
可能です。
解説
 この場合、国税関係書類を受領者等が読み取る場合に該当するため(規則35二ロ)、受領等後、受領者等が署名の上、3日以内にタイムスタンプを付すことが必要です。
なお、A4以下の大きさの国税関係書類に係る大きさに関する情報の保存は不要です。

問53 規則第3条第5項第1号ロに規定する「各事務の処理に関する規程」、同項第4号の「適正な実施を確保するために必要な体制及び手続に関する規程」及び同条第6項の「事務の手続を明らかにした書類」との違いは何でしょうか。
回答
「各事務の処理に関する規程」とは、作業責任者、処理基準及び判断基準等を含めた業務サイクルにおけるワークフローなどの企業の方針を定めたものです。また、「適正な実施を確保するために必要な体制及び手続に関する規程」とは、相互けんせい、定期的なチェック及び再発防止を定めたものです。それに対して「事務の手続を明らかにした書類」とは、責任者、作業の過程、順序及び入力方法などの手続を明確に表現したものをいいます。
解説
規則第3条第5項第1号ロの「各事務の処理に関する規程」については、業務サイクルに応じた入力事務を行うことにより、改ざん等の誘因を制限するものですから、書類の受領又は作成を始めとする企業のワークフローに沿ったスキャニング、タイムスタンプの付与の時期等について規定し、その規程に沿った入力事務の処理を行う責任者を規定することにより責任の所在を明らかにするという企業の方針を定め、真実性を確保するためのものです。
また、同項第4号の「適正な実施を確保するために必要な体制及び手続に関する規程」については、スキャナによる読み取り前の紙段階で行われる改ざん等の不正を防ぐ観点から、事務担当者間でチェック機能を働かせる仕組み(担保措置)を講じるために、相互けんせい、定期的なチェック、再発防止に関する規程を定めるものです。一方、同条第6項の「事務の手続を明らかにした書類」は、責任者、入力の順序、方法などの処理手続、さらにはアウトソーシングの際の事務の手続を定めることによる、適切な入力を確保するためのものです。
なお、これらの規程の例については、問63を参照してください。

問56 受領者が領収書の読み取りを行ったため、受領の日から3日以内にタイムスタンプを付しましたが、その後、経理担当者が電磁的記録の記録事項の確認を行ったところ、問題があり、再度読み取りを行うことが必要となりました。すでに領収書の受領の日から3日を経過してしまいましたが、どのように対応すればよいでしょうか。
回答
当該領収書の受領者以外の者が読み取りを行い、選択した入力方式に応じて速やかに、又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後速やかに入力することとなります。
解説
タイムスタンプを特に速やか(3日以内)に付すという要件は、国税関係書類の受領者等が読み取る場合の要件です(規則35二ロ)。したがって、読み取りを行った者が当該国税関係書類の受領者等でなければ、この要件は不要となります。
なお、受領者等以外の者が領収書の読み取りを行うこととした場合、当該領収書がA4以下の大きさであったときでも、書類の大きさに関する情報の保存は必要となります(規則35二ハ)。

問60 スキャナの読取サイズよりも大きい書類を受領した場合、その書類を分割するなどしてスキャナで読み取ることでも差し支えないでしょうか。
回答
ディスプレイの画面及び書面に規則第3条第5項第6号の要件を満たし、整然とした形式かつ原稿と同程度に明瞭な状態で、速やかに出力することができれば、どのような入力方法でも差し支えありません。
解説
規則第3条第5項第2号イ及びハにおいて、国税関係書類を読み取るに当たっての要件として200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調以上及び書類の大きさに関する情報を保存することを規定していますが(国税関係書類の受領者等が読み取る場合で、当該書類の大きさがA4以下であるときは、書類の大きさに関する情報を保存する要件はありません。また、同条第6項に規定する国税関係書類の場合は、いわゆるグレースケールで保存することが規定されており、書類の大きさに関する情報を保存する要件はありません。)、その他は特に規定していませんので、1頁の書類が2頁にまたがるなど、分割して出力されることなく原稿と同程度の出力ができる保存方法として規則第3条第5項第6号の要件を満たしていれば、入力方法については問わないこととされています。
したがって、本来はディスプレイに出力する際にファイル等が分割されることなく整然とした形式で出力することが必要であり、また、仮にA3の書類であれば当然にA3が出力できるプリンタ及びA3サイズの用紙を備え付けるべきですが、たまたま備え付けられているプリンタの最大出力サイズより大きい書類を1枚受領したときは、スキャン文書と元の書類の両方を保存することで差し支えありません。
(注) 備え付けられているスキャナがA3サイズに対応していないからといって、国税関係書類を複写機などで縮小コピーしたものをスキャニングすることは、法第4条第3項に規定する国税関係書類に記載されている事項をスキャニングすることには当たりません。

問62 受領者が領収書の読み取りを行い、その後、経理担当者が経理処理の際に必要に応じ領収書の書面を確認することとしていますが、この場合、入力を行う者とはどの者になりますか。
回答
一般的には、経理担当者となります。
解説
規則第3条第5項第3号に規定する「入力を行う者」については、スキャナで読み取った画像が当該国税関係書類と同等であることを確認する入力作業をした者をいうこととしており、その者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができる必要があります(取扱通達4-32)。
企業の事務処理体制により異なりますが、例えば、領収書の受領者がスマートフォンで読み取りを行う場合、一旦、受領者が読み取った画像が当該国税関係書類と同等であることを確認しますが、その後、経理担当者等がその画像を基に経理処理をし、必要に応じて領収書の書面の確認を行い、また、その後訂正削除の履歴等の確認を行うこととなると考えられます。このような処理体制であれば、経理担当者が、その確認作業をもって、読み取った画像が当該国税関係書類と同等であることを確認する入力作業をした者に該当することとなり、経理担当者(またはその者を直接監督する者)に係る情報を確認することができるようにすることとなります。

問66 規則第3条第5項第4号ロの「定期的な検査」とは、具体的にどの程度定期的に検査を行えばよいのでしょうか。
回答
最低限、1年に1回以上の検査を行う必要があります。
解説
平成27年度の税制改正において、規則第3条第5項第4号(適正事務処理要件)を新たに設けることにより、事務担当者間でチェック機能を働かせる仕組み(担保措置)が講じられました。
この要件のうち、同号ロの「定期的な検査を行う体制」については、個人事業者であっても、法人であっても、1年に1回決算を組むことが通常であり、これ以上の期間、検査を行わないとなると決算の際にも確認していないこととなるため、同号でいう「各事務について、その適正な実施を確保する」ことができていないと考えられることから、最低限、1年に1回以上の検査を行う体制が必要となります。

問67 規則第3条第5項第4号ロの「定期的な検査」は、検査の対象となる各事務を行っている者が行ってもよいのでしょうか。
回答
最低限、検査の対象となる各事務を行っている者以外の者が検査を行う必要があります。
解説
平成27年度の税制改正において、規則第3条第5項第4号(適正事務処理要件)を新たに設けることにより、事務担当者間でチェック機能を働かせる仕組み(担保措置)が講じられました。
この要件のうち、同号ロの「定期的な検査を行う体制」とは、具体的には、定期的に事務処理手続のチェック・検査を行う仕組み(体制、手続)がとられていることが必要とされるものです。
仮に、検査の対象となる各事務を担当している者が定期的な検査を行った場合において、紙段階で改ざんを行っているときには、チェック機能が働かないこととなります。
このため、最低限、その事務を担当している者ではなく、それ以外の者が定期的な検査を行う必要があります。
また、事業規模の小さな事業の場合、当該各事務を担当している者以外の者が検査を行うことが難しいことも想定されます。このような場合、外部の者に委託する方法なども考えられます。

 お疲れさまでした。

もう一度読み込んで通達組み合わせて軸を作ってみてください。

次回は スマホによるスキャナ保存の価値について考えてみたいと思います。

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