電子書籍はWeb化するのだろうか?

TechWaveで湯川鶴章氏は「電子書籍は紙へのノスタルジア=いずれウェブに同化する」と書いている。このタイトルは刺激的である。
 
http://techwave.jp/archives/51466408.html
 
私的には、Webと電子書籍がどういう関係になるかはかなり大きな課題と考えている。まず、ここでいうWebページとは、HTMLで記述されており、インターネット・ブラウザで表示する、通常は無償で閲覧することができるものとしておきたい。多分、この理解には湯川氏と私の間で違いはない。
  
湯川氏がここであげている論点は次の5つであるが、結論としては、電子書籍という形態は要らない。課金のことを除けば、普通のWebページで良いじゃないかということであろう。
1.iBooks のようなページを捲るインターフェイスはいづれ廃止される。
2.電子書籍というテキスト中心の知的生産物の形態も最後には消滅すると予測。
3.電子書籍のファイル形式のe-pubである必要はない。ウェブの表示言語であるHTMLでよくなる。
4.電子書籍という名称は課金のためだけに使われる。
5.ネットによって人類の知的活動は今までと比較にならないほど共同作業によって生まれるようになる。
この中で、1、3はそれほど大きな問題ではないと思う。インターフェイスはアプリケーションの作り方によってどうにでもなるし、ファイル形式もアプリケーションの作り方の問題、つまり些細な技術の問題に過ぎないと言ってよい。
 
現在、電子書籍というときには、電子雑誌・電子新聞も含んでいるようだが、雑誌や新聞はひとつひとつの記事が短いし、記事間の連続性・関連性も弱い。個々の記事をばらばらに取り出せばWebページにしても違和感はないものが多い。従って、雑誌をそのまま電子化した場合、Webページとどのように差別化するかは相当な難問だろう。完全に同化してしまう可能性も大きい。
 
それに対して、書籍はどうだろうか。書籍は多くの場合、著者の考えをまとめたもので、個人の思想を伝える知的生産物という特性をもつ。また形態上は章単位で分かれていたとしても、章と章の間には連続性があり、また1冊の書籍が一定の思想の元に統制されているという特色を持っている。1冊の書籍を読むには数時間から数10時間掛かると思われる。こういう書籍を電子化した場合、Webページと同化するのであろうか?
2つの疑問が残る。
○Webページは一般に無償で提供されているが、電子書籍も無償になるのだろうか?
○電子書籍は個人の知的活動の成果としてテキスト中心の静的なコンテンツから成り立つ存在であり続けるかどうか、それともインターネットを使った共同作業によって進化する知的生産物になるのか?
今のところ、未来は、電子書籍に関係する全ての人間の意思によって決まることになるとしか言えないが。