これまで、PDFの関連仕様としてPDF/X,PDF/A などについて説明してきました。これらの各仕様の中には「カラーの再現性を保証」するために、PDFがサポートする各種カラースペースに対して制限を設けているものがありました。たとえば、PDF/X-1およびPDF/X-1aでは、使用できるカラースペースをCMYK(およびグレースケール)に限定しています。今回からPDFで使用できる色について、説明してみたいと思います。
- PDFのカラー機能
 - まずPDFのカラー機能ですが、色を指定する機能と色を描画する機能に分けられます。
 - 色を指定する機能
 - ページコンテンツの文字、線、画像、あるいは、ページコンテンツ以外のしおり、注釈といった各種オブジェクトに対して色を指定する機能になります。
 - 色を描画する機能
 - 色の変換やガンマ補正などを行ってPDF内に指定されている色を表示する機能です。
 
PDFの作成者側では、PDF内の各種オブジェクトに対して色を指定し、PDFの表示・印刷などの使用者側では、指定された色を解釈し、対象のデバイスで使用可能な機能を用いて指定された色を再現することになります。PDFの色指定には様々な方法が用意されています。表示する特定のデバイスに依存しない方法で色を指定することもできます。
- PDFのカラー指定
 - 次にPDFでカラーを指定する方法を見ていきたいと思います。
 - カラー値
 - PDF内での色の指定方法は各種存在しますが、通常、カラースペースを指定し、カラースペースによって決まるカラー成分毎に値を指定することになります。たとえば、RGBカラースペースであればカラー成分はR,G,Bの3成分を持ちますので、カラースペースとしてRGBを指定したのち、これらの各成分に対応する3種類の値を指定することになります。
 - カラースペース
 - PDFで使用されるカラースペースの説明に入ります。PDFのカラースペースは大きく3種類のカテゴリに分類されます。
- デバイスカラースペース
- DeviceGray
 - DeviceRGB
 - DeviceCMYK
 
 - CIEベースカラースペース
- CalGray
 - CalRGB
 - Lab
 - ICCBased
 
 - 特殊カラースペース
- Pattern
 - Indexed
 - Separation
 - DeviceN
 
 
 - デバイスカラースペース
 - デバイスカラースペース
 - 出力デバイス上の表現に直接関係するカラー値を指定します。一番簡単な指定方法ですが、同じ指定をしても出力デバイスが異なれば違った色に見えることが多いという欠点もあります。
- DeviceGray
無彩色の光の輝度を白と黒の比率で制御します。カラー値の成分は1つであり、黒 0 ~白 1の範囲で表現されます。 - DeviceRGB
加法混色の3原色 赤・緑・青(R,G,B)を成分に持ち、各成分の値を 0(成分無)~1(最大輝度)で表現します。黒(0,0,0) ~白(1,1,1)となります。 - DeviceCMYK
減法混色の4原色 シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック (C/M/Y/K)を成分に持ち、各成分の値を0(その成分無)から1(最大濃度)で表現します。白(0,0,0,0)から黒(1,1,1,0) となります。成分Kは、理論的には不要ですが、CMYのインクを混合して黒を生成するより黒インクを使用するほうが印刷上、きれいな黒が表現されるために使用されます。(0,0,0,1)も黒となります。 
 - DeviceGray
 
PDF内で、各カラースペースを混在して指定することができます。たとえば黒でABCと3文字表示されていても「A」はDeviceGrayの0、「B」はDeviceRGBの(0,0,0)、「C」はDeviceCMYKの(1,1,1,0)という場合もあり得ます。(PDF/XやPDF/Aではこのあたりの混在使用を禁止しています)
次回、CIEベースカラースペースについて説明したいと思います。
- PDFの色指定について(2)
 - 色とは何か
 
- PDFの色指定 (3)CIE1931 CIELuv CIELAB
 - CIEカラースペース
 
- PDFの色指定(4)
 - ICCプロファイル
 
- PDEの色指定(5)CIEベースカラースペース
 - PDFのCIEベースカラースペース格納形式と使用のされ方の概略
 
          


