日別アーカイブ: 2020年6月9日

テレワークの目的を考える やはり日本では首都直下地震対策が一番重要

3月下旬から新型コロナウィルス感染症(COVID-19)対策として日本でも世界でもテレワークで働く人が急増しました。

前回(2020年5月よりテレワークを本格導入へ。中小企業のテレワーク実践例としてご参考まで。)は、主にCOVID-19対策の緊急措置をきっかけとして、弊社でテレワークを導入したこと、その問題点について報告しました。

その後、日本では5月下旬に緊急事態が解除され、また欧米でも解除の動きがあります。それに伴いテレワークについて大局的に・冷静に見直そうという話題も紹介されています。例えばFacebookは、COVID-19対策で大部分の社員が自宅からテレワークで働くようになったため、シリコンバレーの本社がゴーストタウン化していて、今後、シリコンバレー本社の価値などを含め抜本的な対策を考えていると発表しています[1]。

日本では首都圏を除くエリアが5月18日から緊急事態解除、首都圏が5月26日から緊急事態解除となりました。新型コロナウィルス(SARS-Cov-2)がいなくなったわけではなく、まだ感染リスクが残っている状況ですが、都心に働く人が徐々に戻ってきているようです。弊社でも、現在は希望者のみを対象として平常時のテレワーク規定を運用しており、社員の約3割がテレワーク、約7割が通常勤務となっています。

2カ月程度ですが、テレワークを実施する過程でいろいろな問題点が上がってきています。今後、そうした問題の一つ一つにきめ細かく対処することが必要です。一方で基本に立ち返って、なんのためにテレワークを導入するのか、一番大きな目標として、なにをすべきだろうかを最初に考えてみたいと思います。

首都圏直下巨大地震の可能性を考える

テレワークの目的を原点から考えなおすとすると、日本の大都市、特に東京が抱える、感染症とは別で、もっと大きなリスクである「首都直下巨大地震」について考えざるを得ません。

米国や欧州(イタリアやスペインを除く)の多くの先進国の国土と比べると、日本の主要部分が所在する日本列島は、世界の中でも特に火山と地震が集中している地域です。その原因はプレートテクトニクス(地殻表面が多数のプレートに分かれていて、各プレートはマントル対流に載って移動するという現象)にあります。プレートテクトニクスを少しでも学んだことがあれば、地球上の火山と地震はプレート境界線に沿って分布していることを知っていることでしょう。

最近の研究では、日本列島の中央から北部はオホーツクプレートに属していて、その南端である中部地方と関東地方の下にはフィリピン海プレートが沈み込んでいるそうです。その境界が相模トラフです。フィリピン海プレートの下にはさらに太平洋プレートが沈み込むという複雑な構造になっています[2]。プレートの移動速度は、例えばフィリピン海プレートは年間3cm程度で、この移動がプレート間の境界面にひずみ(すべり欠損)として蓄積されます。1923年9月に発生した大正関東地震(M7.9)はフィリピン海プレートの上部境界で発生しています。その前のM8クラスの地震は、1703年五代将軍徳川綱吉の時代の元禄関東地震(M8.1)とされています。これもフィリピン海プレートの上部境界で発生しています。この間200年ですが、大正関東地震では200年分の移動に相当する6~7mのプレート境界のすべり欠損が解消されたとのことです。200年に1回であれば次の関東大震災は2100年過ぎになりそうですが、関東地方の地下は複雑で様々なタイプの大地震の巣があります。そして、M7クラスの地震は過去100年間に5回発生しています。こうした地震は周期的でないため地震本部では確率予測をしており、それによると「30年以内にM7クラスの地震が発生する確率は70%」とされています[3]。前回のM7クラスの地震は1987年の千葉県東方沖地震(M6.8)です[4]。確率予測のため、いつ起きるか分からないが、いつ起きても不思議ではないということになります。

会社としてどのように首都直下地震に備えるか

大地震対策の基本としては、事務所の建物や内部の耐震対策があります。しかし、耐震性の強化で仮に、震災時の事故を回避したとしても、首都圏ではインフラの破壊、それによる水や食料不足など様々な問題が見込まれます。弊社では経営理念に「社員が仕事を通じて物心両面の幸福を得られるようにする」ということをあげていますが、それを平たく言えば、会社とはそこに集まった社員の生活の糧を得るための場ということになります。地震で経済的に飢えてしまっては会社の役目を果たせません。

そこで、仮に首都直下大地震に遭遇してしまっても、会社がなくなることがなく、ずっと継続していけるようにしなければなりません。こうしたことに備えるには、やはり働く場所を首都圏に過度に集中させず、地方に分散化していくことが重要だと思います。そのためにテレワークを活用することが重要だろうと考えます。それにしても日本という国は災害が多いですね。

[1] Facebookが社員半数をリモートワークに、シリコンバレー外に複数の拠点開設へ
[2] 『日本列島の下では何が起きているのか』(中島淳一著、講談社ブルーバックス、2018年10月発行)第10章 関東地方の地下で何が起こっているか?
[3]  関東地方の地震活動の特徴 (地震本部)
[4] 『首都直下地震』(平田 直著、岩波新書、2016年2月)




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