オフィス退去時の原状回復についてのメモ

アンテナハウスは、11月に本社を移転する予定です。移転先につきましては、別途、ご案内する予定ですが、新オフィスを探して、契約をする過程で気が付いたことがありますので、皆様のご参考になればと思い、ここにメモとしてご紹介します。
以前(6年前)にオフィスビルを探した時は、あまり無かったように記憶していますが、今回、オフィスビルを探している過程で、契約更新料と、解約時の敷金償却がゼロの条件で、募集をかけている物件が目立つようになってきました。正確な割合を出しているわけではないですが、かなり目立ちました。
実は、今回、そういう物件2件と契約を締結しました。この時、もう一つ気が付いたのですが、そうした物件は退去時の原状回復の特約条項にいづれも明確に「借主が室内をリフォームすること」(用語が適切でないかもしれませんが)を記載しています。
以前、何回かビルの契約を結んだときとはかなり違っているようです。
どうも、これは、原状回復特約について、最高裁判所が平成17年12月16日に出した判決が影響を与えているのではないかと思います。
この判決の要旨は、次の通りです。
「賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負うためには、賃借人が補修費を負担することになる上記損耗の範囲につき、賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか、賃貸人が、口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識して、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」。(判例タイムズ No.1200 p.127より引用)。
少し解説しますと、一般的に、賃貸借契約の賃料には通常使用することによる損耗を含んでいると考えられています。従って、退去時の原状回復には、通常損耗の回復義務はないと考えられています。これに対して、賃借人が負担する項目を契約時に特約で決める訳ですが、この特約については契約時の明確な合意が必要であるという趣旨の最高裁判決が出たわけです。
いままで、原状回復特約については退去時の争いの焦点になることが多かったのですが、大抵は途中で和解してしまうことが多かったようです。
最高裁まで争って判断を求めたケースとして、かなり画期的だと思います。恐らく、この最高裁の判決が、私の経験したオフィスビルの賃貸借条件の変化の原因ではないだろうかと、思います。
そうしますと、裁判をすることにも社会的な意義があるのだな、と思い当たった次第です。