この間、電子書籍とWeb標準関連のいくつかのイベントに参加しました。
W3C Workshop on eBooks & i18n
eBooks & i18n: Richer Internationalization for eBooks
Second W3C Workshop on Electronic Books and the Open Web Platform, 4 June 2013, Tokyo, Japan
私(アンテナハウス村上)のプレゼン:International Text and Page Layout for eBooks
現在のEPUBのページレイアウト(特に縦書きの場合)で問題になっていること(縦書きで扉ページを左右センタリングすることや、画像の配置の問題)は、CSSのPaged Media用のレイアウト仕様(CSS3 Paged Media, GCPMなど。AH Formatterはその拡張を実装してる)が利用可能になれば解決する。「日本語組版処理の要件」(JLREQ)の「第4章 見出し・注・図版・表・段落の配置処理」もそのために有用。というような話をしました。
しかし、私のこの拙いプレゼンより前に、CSSWGのBert Bossから、CSSとPaged Mediaについてのより詳しい講演がありました。その内容が公開されています:CSS and Paged Media。
ところで、IDPFでは EPUB Adaptive Layout という仕様が作られています。CSSの高度なページレイアウトの拡張仕様が -epubx- プレフィックス付きのプロパティで定義されています。これを使えばEPUBで高度なページレイアウトが可能になるが、しかしW3CのCSS標準仕様と別のものになってしまうのではないかと疑問に思っていました。これについて、IDPFのMarkus Gylling(この仕様のエディターのひとりでもある)に話を聞いたところ、EPUB Adaptive Layout仕様は結局使われることはなく撤回。将来W3Cで高度なページレイアウトの仕様が標準化されれば、それをEPUBに採用する方針であるとのこと。納得。
このWorkshopのProgramとPosition papersが公開されてます。各プレゼン資料も。
Test The Web Forward~W3C Developer Meetup
その週末には、Test The Web Forward Tokyoに参加。HTML5やCSSのテストを作るイベント。
私はCSS Text & Writing Modesについてのライトニングトークをすることに。EPUB3で縦書きなど日本語組版ができるようになったのはこの仕様のおかげだが、仕様はまだドラフトで、WebKitでの実装など問題が多くEPUB制作者は苦労している。だからこのテストが重要、というような話をしました。
このTest作りのイベントのあとのW3C Developer Meetup – Tokyoにも参加。いろいろとWeb標準関係の熱い人々と交流ができて貴重な機会でした。

括弧類、ハイフンやダッシュ類などは、縦書きで向きを変えないと役に立ちません。すべて正立にする“forced upright”は問題です(図1)。
“forced upright”といっても、実はフォント依存で必ずしも正立にならない文字があるのにも注意が必要です。和文フォントでは和文用・全角幅の括弧類や全角ダッシュなどには回転した形の縦書き字形があるのでそれが有効になります。困るのは、矢印類(上↑など)がuprightの指定で正立させたくてもフォントによっては正立にならないということです(図2)。この仕様のままでは、矢印類を正立にするには、uprightの指定ではなくて、縦中横の指定を使わなくてはなりません。
‘シングルクオート’と“ダブルクオート”:
ラテン、ギリシャ、キリルなどアルファベット類(Letter)は横倒しという方針なのに、Unicodeの Letterlike Symbols ブロックにあるLetterが正立(同ブロックにあるMath Symbol系は横倒し、またMathematical Alphanumeric Symbolsブロックの同種の文字も横倒しなのに)というのは整合性に欠けます。同じ種類に見える文字の向きがばらばらになってしまうというのは、問題です(図4)。