作成者別アーカイブ: 村上 真雄

CSSの縦書きとUnicodeの縦書きの文字の向き(UTR#50)の話題

(追記2012-02-04)Twitterでの議論まとめ(随時更新中。ハッシュタグは #UTR50)

「電子書籍、電子出版のCAS-UBブログ」
のほうで、CSSの縦書きとUnicodeの議論 UTR#50: Unicode Properties for Vertical Text Layout (Proposed Draft) がホットです(by小林社長):

私(村上)のほうはというと、ラテンアルファベットと数字を縦にするか、横にするか、というのは、両方ありとして、ラテンアルファベットと数字を横にする場合に、そのほかの文字の向き(とくに和文でも欧文でも使われる記号類など)はどうするかということに関心があります。

以下、UnicodeのフォーラムにUTR#50へのコメントを投稿(英語)したことについて、EPUB仕様についての情報・意見交換のML(←関心のある方はぜひ参加ください)に投稿したものを転載します:

Subject: UTR#50: 正立・横倒し両方ありえる文字の向き
—-

村上です。

Unicodeのフォーラムに今朝次の投稿をしてます:

Default orientation of upright/sideways ambiguous characters
http://unicode.org/forum/viewtopic.php?f=35&t=252

書いたことは、別のところで前から書いてる意見ですが:

レガシーな日本語ワープロでは縦書きで全角文字は正立(または変形)、半角(または幅狭)文字は横倒しということになってました。UTR#50の今のドラフトはその慣例に従っているようで、そこは若干問題あると思っています。

Unicodeに英数字類の全角形のコードポイントが存在するのはレガシーな理由のためであり、これからは、縦書きで英数字を正立させるために全角文字の使用を推奨するべきではなく、通常の英数字類でも正立にすることができる必要があると思います。CSS3 Writing Modes仕様には、そのために ‘text-orientation: upright’ があります。UTR#50でも、この「正立だけモード」(括弧やダッシュ類や罫線など一部の文字を除いては基本的に正立)を定義するべきでしょう。

いまのUTR#50ドラフトは、「正立・横倒し混在モード」(縦書きで通常の英数字類は横倒し)を定義しようとしているのだと私は理解してます。このモードにおいては、正立・横倒し両方ありえる曖昧な文字(Unicode仕様でEast Asian WidthプロパティがAmbiguousとされてるもの、あるいはJLREQ文字クラスでcl-19漢字類とcl-27欧字類の両方に含まれているもの)をどうするかが問題ですが、それらは基本的に横倒しにして英数字類と一致させるべきだろうと思います。(ただし丸囲み数字など和文テキストで全角扱いでよく使われていて欧文ではそれほど使われないような文字なら正立のほうがよさそうではあります。)

たとえば、次の文字は今のUTR#50ドラフトでは正立とされていますが、横倒しとすべきかと思います。

U+00A7 § SECTION SIGN
U+00AE ® REGISTERED SIGN
U+00B0 ° DEGREE SIGN
U+00B1 ± PLUS-MINUS SIGN
U+00B6 ¶ PILCROW SIGN
U+00BC ¼ VULGAR FRACTION ONE QUARTER
U+00BD ½ VULGAR FRACTION ONE HALF
U+00BE ¾ VULGAR FRACTION THREE QUARTERS
U+00D7 × MULTIPLICATION SIGN
U+00F7 ÷ DIVISION SIGN
U+2016 ‖ DOUBLE VERTICAL LINE
U+2020 † DAGGER
U+2021 ‡ DOUBLE DAGGER
U+2022 • BULLET
U+2024 ․ ONE DOT LEADER
U+2030 ‰ PER MILLE SIGN
U+2032 ′ PRIME
U+2033 ″ DOUBLE PRIME
U+2035 ‵ REVERSED PRIME
U+20AC € EURO SIGN
U+2103 ℃ DEGREE CELSIUS
U+2105 ℅ CARE OF
U+2109 ℉ DEGREE FAHRENHEIT

(これらの文字を正立で使いたいというときはだいたい英字や数字も正立にしたいという場合であるので、その場合、正立だけモードを使えばよいということになります)

投稿内容は以上。

「ただし丸囲み数字など…は正立のほうがよさそう」と書いたところは、ちょっと弱いところです。
℃(U+2103)なども、横倒しなら°とCを書けばよいのだから一文字の℃ならいつも正立でよいのかもしれません。
このあたりは今後の議論で決まればよいと思います。私はそれほどこだわりません。
だいたい、今のOpenType和文フォントでvrt2で横倒し字形があるような文字ならみな横倒しがよいだろうと思います。
参考、Twitterから:
monokano:@KAN0U @ogwata 一応念のため ver2 の一覧PDFです http://tama-san.com/test2/vrt2_IwaUDMinPro-Md.pdf (立てたくない文字と縦組用グリフが並んでますね、なるほど〜) [http://twitter.com/monokano/status/164225572325691392]

正立だけモードをデフォルトにすべきという意見もありますが(小林社長 http://blog.cas-ub.com/?p=862 )私は、Unicode仕様でどちらが縦書きの標準と決めなくてもよいと思っています。

正立・横倒し混在モードで、曖昧な文字を正立優先としてしまった場合に問題が大きいのはダブルクオートとシングルクオートであると思います。
縦書きの中で欧文が横倒しなのに “I don’t know.” の “ ’ ” が正立(あるいはフォントによって別の引用符に変換)されて表示されたら、とてもおかしな結果になります。
これについては前にコメント投稿してます:
http://unicode.org/forum/viewtopic.php?p=612#p612


AH Formatter 事例紹介セミナーと Formatter Club 例会のご案内

「XML自動組版ソフト『AH Formatter』を開発してます」と自己紹介しても、知る人ぞ知るというかそんな有名でないソフトなので、実際どんなふうに使えるものなのか、なかなか伝えにくいものがあります。

そこで、実際に AH Formatter を使って役に立てていただいているユーザー様から事例の紹介していただくセミナーを企画しました。

XML/HTML自動組版エンジン『AH Formatter』事例紹介セミナー(無料)

2011年12月7日(水) 13時30分~15時45分
会場:月島区民会館

おもな内容

  • 『AH FormatterV6』紹介
  • 事例紹介
    アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)様
    税金出版物配布の新“ページ組版システム”に採用
    株式会社ベネッセコーポレーション様
    XML+XSL-FOを使った教材・問題集作成の効率化
    株式会社エヌ・エヌ・エー様
    CSSレイアウトよる日刊情報誌「The Daily NNA」18 紙の制作
    株式会社クレステック様
    大量ドキュメントの作成支援システムの効率化
    株式会社ナビックス様
    ハイブリッド翻訳システム「XTM」と多言語出力
    アンテナハウス株式会社(自社)
    クラウド型電子書籍制作サービス「CAS-UB」での自動組版に採用

詳しくはこちら

参加は無料ですので、興味のある方ぜひお越しください。

また、セミナー終了後に「Formatter Club」例会(16:00~16:45)を開催いたします。こちらのほうも続けてどうぞ。

Formatter Club もよろしく

AH Formatter を実際に試してみたいという方は、ぜひ Formatter Club の会員になってください(無料)。いつでも Formatter 最新評価版をダウンロードしてお使いいただけます(評価利用のほか、非商用利用なら Formatter Club ライセンスで無料で使えます)。
今回の「Formatter Club」例会は、会員でなくても参加できます。ぜひ事例紹介セミナーとあわせてご参加ください。

詳しい案内と申し込みフォームはこちらから:


EPUB3、電子書籍とWebとXMLの組版技術

ブログ更新が滞ってるうちに、AH Formatter V6リリースしたり、EPUB3が正式に勧告になったりしてます。

さいきんEPUB3やXML組版に関する講演をさせてもらう機会がありました。その資料を紹介します。

「EPUB3.0の仕様と日本語組版」(PDF)

日本印刷学会西部支部 印刷標準化セミナー「電子書籍の標準化-現状と課題-」講演資料)

「電子書籍とWebとXMLの組版技術」(PDF)

TeXユーザの集い 2011講演資料)


AH FormatterとFormatter Clubについて、アンテナハウスブログの記事案内

アンテナハウスブログ I love software! に、AH Formatter組版エンジン開発担当者として記事を書かせてもらいました。

先日のFormatter Club定例会でAH Formatterのデモした内容を紹介しています。米国国税庁の案件、W3C技術ノート「日本語組版処理の要件」の書籍版の組版、青空文庫の組版など。
ここ「CSS組版ブログ」でAH FormatterとFormatter Clubについての紹介をこのところ書いてきましたが、アンテナハウスブログ I love software! でもFormatter関連の記事が増えています。

そこでここ「CSS組版ブログ」は、今後はもっとCSS組版の技術的なことなどを中心に書いていくようにしたいと思います。Webと電子書籍と紙の組版にCSSという共通のスタイルシート仕様が有効であるCSS組版の可能性を追求します。
それからCSSとともにAH Formatterがサポートしているスタイルシート仕様XSLについても重要です。いろいろな元XMLデータを自在に変換・加工して高度な組版処理をするのにXSLが向いています。XSL(XSLTとXSL-FOの2つの技術からなる)のことを勉強するには、次のブログがお勧めです:

それではまた。


Formatter Club 第2回定例会のご案内

前回7/27の発足会に続き、次の開催が決まりました。

  • 開催日程:2011年9月16日(金)開場:13:40 開始:14:00 終了:16:30
  • 場所:中央区産業会館 第1集会場

完成が近づいてきた AH Formatter V6.0 のデモなどを行う予定です。

参加費:無料

Formatter Clubは、当社のXML自動組版ソフト AH Formatter とその関連技術(XSL、CSS、XML 多言語組版など)に関心をもっていただいている皆様と開発者とをつなぐコミュニティです。詳細は以下の案内ページをご覧ください。

Formatter Club 第2回定例会への参加申込みは、E-Mail naganawa@antenna.co.jp あてに、「Formatter Club第2回定例会参加希望」と書いてご連絡ください。Formatter Club の会員にまだ申し込みされていない方は、会員申し込みに「第2回定例会参加希望」と添えて申し込みしてください。

どうぞよろしくお願いします。


AH Formatter V6 の紹介

Formatter Club発足会(7/27)でプレゼンした資料を公開します:

AH Formatter V6 の紹介 [PDF]

内容
  • AH Formatter、XSL-FOとCSS組版について
    • AH Formatterとは
    • XSLとは:XSLTとXSL-FO
    • CSSとXSLを比較
    • XSL-FOのページマスター機能
    • CSS3でのページマスターに相当する機能
    • AH拡張プロパティ
  • フロート拡張
    • CSS2.1とXSL-FO標準のフロート機能
    • AH拡張floatプロパティ
    • ページのフロート
    • 段のフロート
    • 段組のフロート
    • 絶対配置フロートと相対配置フロート
    • フロートを次のページ(または段)に移動するかどうかを指定
    • フロートとテキスト回り込みの調整
  • ルビと圏点のサポート
    • ルビ
    • 圏点

このPDFは、XHTML5+CSS(AH拡張入り)で書いたもの(→zipでまとめてダウンロード)を AH Formatter V6β版 で組版したものです。V6β版お持ちの方はお試しください。

Formatter Club発足会では、活発な意見をいただきありがとうございます。V6完成のため活かしていきたいと思います。今回配布のβ版、この資料を作りながら判明したバグも多しで、まだまだ直さなければです。今後ともどうぞよろしくお願いします。

続きを読む


Formatter Club 発足会のご案内

アンテナハウスでは、当社のXML自動組版ソフト AH Formatter とその関連技術(XSL、CSS、XML 多言語組版など)に関心をもっていただいている皆様と開発者とをつなぐコミュニティとして“Formatter Club”を企画しており、その発足会を下記の通り開催いたします。

  • 開催日程:7/27(水)16:30~(懇親会18:30~19:30)
  • 場所:水道橋 会議室内海 http://www.kaigishitsu.co.jp/ 301会議室

予定内容:

  • AH Formatterとその次期バージョン6.0での拡張機能の紹介(担当:AH Formatter開発リーダー 村上)
    AH Formatterとは:
    XML(構造化文書)の組版、W3Cのスタイルシート標準仕様XSLおよびCSSのサポート
    V6.0の新機能:
    • フロート配置の拡張(XML自動組版での図の配置の弱点を克服)
      ページや段の任意の位置への配置、複数の段をまたがる段抜き配置、など。
      JIS X4051(日本語組版)の図版配置方法に準拠した自動最適配置調整
    • ルビ(モノルビ、グループルビ、熟語ルビ)および圏点
  • AH Formatterユーザー様より、どのように使っているかの紹介
  • 他の組版ソフト(例:InDesign、TeX)と比べてどうよ。
  • 討論:AH Formatterに期待すること、よいとこ、ダメなとこ。他の組版ソフト(例:TeX、InDesign)と比べてどうよ。W3Cのスタイルシート仕様(XSL、CSS)の組版モデルをどう拡張していくか?

特典:AH Formatter V6.0プレリリースCD

参加費:無料

Formatter Clubとは

Formatter Club は、アンテナハウスのXML自動組版ソフト AH Formatter を導入されているユーザーや関心をもっていただいている皆様と開発者とをつなぎ、会員同士の交流、情報交換により当組版ソフトの利用技術を向上させ、より皆様のお役に立てる製品としていくために役立てることを目的とします。

AH Formatter とその関連技術(XSL、CSS、XML 多言語組版など)に関心のある方ならどなたも参加できます。

Formatter Club の活動には会員メーリングリストを情報交換のために利用します。また定例会を開催し、会員相互の親睦をはかります。

定例会は、AH Formatter 開発者から最新バージョンの紹介・デモ、活用事例紹介、組版技術の向上のための勉強会など行い、またあわせて親睦会をもちます。(当面隔月での開催を予定)

Formatter Club 会員向け試用版について

Formatter Club 会員向けに、開発中のAH Formatter最新バージョンの試用版を提供します。

この試用版は、AH Formatterの機能が制限なく使えるものです。ただし、出力したPDFや印刷ページの下部にAH FormatterのサイトのURLが表示されます。この表示を改変・削除しない限りにおいて、評価用に利用することのほか、個人的に文書作成に利用するなど、非営利目的に限って使用することが可能です。

参加のお申し込みは

参加申し込みは、E-Mail naganawa@antenna.co.jp あてに、タイトルに「Formatter Club発足会参加希望」と書いて、お名前、ご所属などをご記入のうえご連絡ください。

また7/27発足会への参加ができない方も、Formatter Clubへの参加について興味のある方はご連絡ください。どうぞ宜しくお願いします。


EPUB3.0のその先へ――CSS3 Writing Modes、Text、Line Grid――次世代電子出版とWeb表現技術フォーラム

cassupportの日記の次のエントリーのとおり、EPUB3.0仕様は進んでいます(今夏遅くに最終の勧告仕様とのこと):

「CSS組版」に関係するところは、EPUB Content Documents 3.03 EPUB Style Sheets です。EPUB3.0で使えることになる CSS のプロパティについて書かれています。
CSS3 TextWriting Modes については、まだドラフト仕様であるということで、プロパティ名に -epub- プレフィックスを付けたものがEPUB3.0で採用されることになりました。例えば、圏点を付けるプロパティは -epub-text-emphasis、縦書き/横書きの指定は -epub-writing-mode、縦中横は -epub-text-combine、などです。
EPUB3.0で、縦書き、縦中横、ルビ、圏点といった日本語組版の基本的な機能が入りましたが、採用が見送られたものもあります。EPUB3.0に含まれないCSS3 Text の機能としては、句読点のぶら下げの指定 hanging-punctuation、約物詰めなどの制御 text-spacing プロパティがあります。

CSS3 Text の text-spacing プロパティについて

CSS3 Text の以前のドラフト仕様では、和欧文間などにアキを入れる text-autospace、約物の詰め(行頭/行末/約物連続で半角幅に詰めるかどうか)を指定する punctuation-trim、行調整での約物の詰め text-justify-trim プロパティがありました(AH Formatter でもこれらを実装してますので、使っていただいている方にはお馴染みかもしれません)。それらがひとつに統合されたのが最新のドラフトでの text-spacing プロパティです。
以下は、text-spacing プロパティと他のプロパティを組み合わせて日本語の標準的な段落のスタイルを定義した例です(ドラフト仕様なので最終仕様は変わるかもしれません):

p {
margin: 0;
text-align: justify; /* 行揃え */
text-indent: 1em;    /* 段落1字下げ */
hanging-punctuation: first allow-end;
/* 起こし食い込み、句読点ぶら下げあり */
text-spacing: trim-start trim-end ideograph-alpha ideograph-numeric;
/* 行頭約物半角、行末約物半角、和欧間アケ、和数間アケ */
}

なお、text-spacing プロパティのデフォルト(normal)は space-start(行頭約物全角)、allow-end(行末約物全角/半角)、trim-adjacent(連続する約物間を詰める)の組み合わせなので、これらの値を変えないのであれば明示的に指定する必要はありません(上の例では trim-adjacent が暗黙に有効です)。
text-spacing プロパティは、将来の CSS Text Level 4 ではより詳細な指定ができるようになるかもしれません(Adobe InDesign の「文字組みアキ量設定」と同様のことができるようにという要望があります)。文字クラスの前後の組み合わせごとのアキ量の最適値と下限と上限と設定できるようにすることなどです。例えば ideograph-alpha(和欧間アケ)、ideograph-numeric(和数間アケ)をそれぞれ別のアキ量にしたいというとき便利でしょう。

CSS Line Grid (行グリッド仕様)について

CSS での行の配置方法は、日本語組版で基本とされている行送りを等間隔にすることやベタ組みで行頭行末を揃えることがしにくい問題があり、これを解決するために CSS Line Grid (行グリッド仕様)が必要とされています。
CSS Textと Writing Modes 仕様策定で Elika (fantasai)さんとともに中心になっている石井宏治さんが、Line Grid 仕様のエディターも引き受けてくれて、最近 Editor’s Draft が公開されました:

この仕様は次のことを実現しようとしています:

  • 行送りを等幅にして、見出しや図が間に入っても、等間隔が保たれて段組の段どうしで行の位置が揃うこと
  • 全角字送りの整数倍の行長になるようにすることで、なるべく等幅の字送り(行調整のアキが字間に入るのを最小に)

この仕様がどうなるかは、まだ議論がはじまったばかりです。
(参考:twitter まとめ「CSS3 Line Grid仕様検討会」「電子書籍やWebの行揃え」
いずれこの標準化が進めば、将来のEPUBのバージョンに反映されることでしょう。

次世代電子出版とWeb 表現技術フォーラム

CSSや日本語のレイアウトを中心としたフォーラムが東京(5月30日)と京都(6月1日)であります。主催は「次世代Webブラウザのテキストレイアウトに関する検討会」(Technical Leader は石井宏治さんで、私もメンバー)、W3C/慶應と総務省が後援しています。6月2~4日には京都で W3C CSSWG のミーティングがあり、それに合わせて開催されることになったものです。
次の案内ページをご覧ください:

5月30日の東京フォーラムは定員に達して参加登録受付は終わっていますが、ストリーム中継があります。ぜひご視聴ください。
6月1日の京都のほうは、CSSWG メンバーも多く参加してくれて、ランチミーティングなどで交流できます。ボランティアの通訳がつきます。
(直前の案内になり、すみません)
追記:Twitterでの次世代電子出版とWeb 表現技術フォーラムに関する話題、実況、コメントなどは、ハッシュタグ #css2011jp をご利用下さい。


「電子書籍フォーマットEPUB3.0の動向とXML」

今日、PAGE2011 「XMLパブリッシング交流会」というイベントで、XMLとEPUB3.0の話をします。
その資料を次のところに置きました。

このブログの更新が滞っていてすみません。そのあいだに EPUB3.0 も、EPUB3.0 で使われることになる CSS3 Writing ModesCSS3 Text のドラフト仕様なども、いろいろ更新されています。
アンテナハウスからのお知らせ:


W3C TPAC 2010~CSS3 Writing Modes 縦書きと論理方向仕様のゆくえ

W3C TPAC 2010 で CSS3 Writing Modes は…

今月初め、フランスのリオンでのW3C総会 TPAC 2010 のCSS WG会議で、CSS3 Writing Modes仕様について集中して審議されました
結果は、石井宏治さん(@kojiishi)がツイッターで報告:

縦書きは順調。論理方向は一歩前進したけど及ばず、でも、継続審議にはなった。EPUB3の最低限ゴールからすれば、合格。でも個人的にはちょっと残念。状況からすれば仕方ないか、論理方向を支持する声は国内でも多くはないし。でも蓋を開けると文句噴出かなぁ、という気はします。難しい。
[3 Nov @kojiishi]

このとき議論されたこの時点でのCSS3 Writing Modes仕様(11月2日版)は次のものです:

やはり論理プロパティ(8. Logical Properties and Values)については議論になり、残念ながら合意までには至らなかったようです。でも以前は反対していた人たちが、最低限の機能(margin と padding のショートハンドの logical キーワードなど)については必要性を認めるようになって、今後も議論を継続ということになったのは一歩前進です。
もうひとつ引用:

CSS WGのDanielから「今年はアジアからの参加者が過去になく多い、なぜだ?」と聞かれた。縦書きだ、と言ったら、うん、それだけ興味を持ってくれるなら日本で何かやらなければ、と言ってくれた。
みんなの貢献が将来につながります。多謝!
[3 Nov @kojiishi]

論理プロパティの必要性

例えばインデント(字下げ)の指定に横書きでは左アキ(margin-left)、縦書きでは上アキ(margin-top)などと物理方向を常に意識した指定が必要ということは制作者にとってとても不便だし、縦書きコンテンツを縦書き非対応のブラウザで横書きで表示した場合に、レイアウトが崩れて正常に読めないものになってしまうなど問題があります。
参考:「縦書きのときの方向指定問題」
それなら縦書きのとき「left」が上を指すように方向の定義を変えるという案もあったのですが、そうすると物理方向(top/right/bottom/left)は書字方向によらず絶対的な方向であるとしてきたCSS仕様の整合性を崩すことになってしまいます。
CSS仕様は中東のRTL(Right-to-Left:右から左への横書き)言語にも対応していますが、その場合、行頭側を空けるインデントの指定には margin-right を使う必要があります。RTL言語を含む多言語対応のウェブページの制作においてはCSSの「left」と「right」を入れ替える必要があり、制作者に負担が強いられているのが現状です(例えば次の変換ツールがこのために使われてます:CSS Janus)。もしも、RTLなら「left」が右を指すとすればCSSの変換は不要になりますが、左右の意味が逆になるのでは混乱するし、今さらそのようなCSSの仕様の変更は不可能です。
論理プロパティの案ならば、RTL言語にも、モンゴル語の左から右への縦書き(writing-mode: vertical-lr)にも有用です。

論理プロパティを別仕様に分離したうえで、CSS3 Writing Modes 公式ドラフト公開へ

CSS3 Writing Modes は、継続審議となった論理プロパティ(8. Logical Properties and Values)を別仕様に分離した上で、近いうちにFPWD(First Public Working Draft:最初のW3C公式ドラフト)となる見込みです。(その準備中の最新版のEditor’s Draft:http://dev.w3.org/csswg/css3-writing-modes/
来年5月に勧告予定のEPUB3.0には残念ながら論理プロパティ仕様は入らず、縦書きと横書きではスタイルシートを書き直すことが必要になりそうです(インデントの指定に横書きでは margin-left、縦書きでは margin-top など)。これに対処するために、スタイルシートの縦書き/横書き変換を支援するツールなどが提供されることになると思います(論理方向 margin-start などで指定したものから縦横それぞれ用に変換するなど)。
しかし、これは論理プロパティ仕様の標準化がEPUB3.0のスケジュールに間に合わないための暫定的な対策であり、将来EPUBやWebでの縦書きを本格的に使えるものにするためには、やはり論理プロパティの標準化が欠かせません。
論理プロパティ仕様は、新しいCSS3モジュールの Editor’s Draft としてスタートすることになると思います。できるだけ早期にこの論理プロパティ仕様を完成させ、Webでの縦書きで使えるものにし、EPUB3の改訂版(EPUB3.1か)で採用されるようにすることが目標です。

実装が進んでいるCSS縦書きと論理プロパティ

標準化がまだこれからの論理プロパティですが、ドラフト案のものはすでに幾つか実装が進んでいます。
Antenna House Formatter は、CSS縦書きと論理プロパティを実装しています。少し前のドラフト仕様で 「EPUB仕様の日本語組版拡張を目指して(Version 0.8)」 にある writing-mode と論理プロパティに対応してます。
また、株式会社GNN「ブログ出版局」のCopper PDFという製品でも、CSS縦書きと論理プロパティが実装されています。(新・ブログ出版局管理人ブログにその説明デモサイトの案内があります。)
ブラウザ Safari や Chrome のエンジンである WebKit での、縦書きと論理プロパティの実装も進んでいるようです(-webkit-writing-mode: vertical-rl や -webkit-margin-before、-webkit-logical-width などのプロパティが最新のWebKit Nightly Buildsで使えます)。

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