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UTR50(Unicode縦書きの文字の向き仕様)で注意を要する文字

これまで何度かUTR50(Unicode縦書きの文字の向き仕様)を話題にしてきましたが、2013年8月31日に正式版が出て、CSS3 Writing Modes仕様(現在最終草案)でも、このUTR50仕様が縦書きの文字の向きのデフォルトになることが確定しました。

今後はEPUBリーダーなどでの縦書きの文字の向きのデフォルトとして、これが標準になっていくものと思われますが、現在はそれぞれ独自であったりドラフト版のUTR50ベースであったりして、実装によって向きがまちまちです(それを解決しようとしたのがUTR50なのですが)。新しい標準に切り替わるまでのあいだ、電子書籍制作側ではいろいろ注意が必要です。

これについて、「電書魂」の次のブログ記事など参考になるかと思います:

また、UTR50とCSS3 Writing Modesが仕様どおりに実装されたとしても、なお注意が必要な文字もあります。以下は、それらについてまとめたメモです。


UTR50の縦書きの向きで注意を要する文字

UTR50 Unicode Vertical Text Layout
http://www.unicode.org/reports/tr50/

これによりEPUB3とCSS3 Writing Modesでの縦書きの文字の向きの仕様が決まりましたが、フォントによって実際に表示される文字の向きが変わり、注意を要する文字があります。

代表的なものは次の2文字です。
‎U+2016 ‖ DOUBLE VERTICAL LINE
‎U+3030 〰 WAVY DASH

U+2016は、VO=U(正立)ですが、多くの日本語フォントに90度回転した縦書き用字形が設定されています。CSS3 Writing Modes仕様では縦書きで正立で表示する文字に縦書き用字形(vert)を適用することになっているため、90度回転した縦書き用字形が表示されます。VO=Uなのに、見た目は横倒しになります。
フォントによらず正立に表示するには縦中横(-epub-text-combine:horizontal)の指定が必要です。
‘upright’の指定では正立で表示させることができず、縦中横の指定が必要な点は、矢印類(VO=R)と同様です。
横倒しに表示するはtext-orientation:sidewaysの指定が必要です(フォントによっては指定しなくても横倒しに表示されてしまうので、間違わないよう)。

U+3030は、VO=Tr(縦書き用字形を適用、なければ90度回転)ですが、多くの日本語フォントにこの文字の縦書き用字形は設定されていなくて、CSS3 Writing Modes実装により90度回転もしないで正立で表示されます。
フォントによらず横倒しに表示するはtext-orientation:sidewaysの指定が必要です。

以下、同様の問題がある文字をリストアップします。
フォントは次のものを調べました:
・MS明朝/MSゴシック
・メイリオ
・ヒラギノ明朝 ProN W3
・小塚明朝 Pr6N R

★VO=Uだが、フォントにより回転した縦書き用(vert)字形があるため、正立させるには縦中横の指定が必要:
‎U+2016 ‖ DOUBLE VERTICAL LINE
‎U+2702 ✂ BLACK SCISSORS
‎U+3013 〓 GETA MARK

※U+2016,2702はMS明朝/MSゴシック以外の日本語フォント(メイリオ、ヒラギノ、小塚など)に回転した縦書き用(vert)字形がある。
※U+3013はMS明朝/MSゴシックに回転した縦書き用(vert)字形がある。

★VO=Trだが、一部のフォントにしか縦書き用(vert)字形がないために、横倒しには’sideways’の指定が必要:
‎U+301A 〚 LEFT WHITE SQUARE BRACKET
‎U+301B 〛 RIGHT WHITE SQUARE BRACKET
‎U+301E 〞 DOUBLE PRIME QUOTATION MARK
‎U+3030 〰 WAVY DASH
‎U+FF1B ; FULLWIDTH SEMICOLON

※U+301A,U+301B,U+301EはMS明朝/MSゴシック/メイリオ以外の日本語フォント(ヒラギノ、小塚など)にグリフが存在しない
※U+301A,U+301Bはメイリオに縦書き用(vert)字形がない
※U+301EはMS明朝/MSゴシックに縦書き用(vert)字形がない
※U+3030はMS明朝/MSゴシック以外の日本語フォント(メイリオ、ヒラギノ、小塚など)に縦書き用(vert)字形がない
※U+FF1Bはどの日本語フォントにも縦書き用(vert)字形がない

★VO=Rだが、フォントにより縦書き用(vert)字形があるため、(横書き用と同じ形で)正立させるには縦中横の指定が必要:
●矢印類 ※以下がフォントにより縦書き用字形がある
‎U+2190 ← LEFTWARDS ARROW
‎U+2191 ↑ UPWARDS ARROW
‎U+2192 → RIGHTWARDS ARROW
‎U+2193 ↓ DOWNWARDS ARROW
‎U+21C4 ⇄ RIGHTWARDS ARROW OVER LEFTWARDS ARROW
‎U+21C5 ⇅ UPWARDS ARROW LEFTWARDS OF DOWNWARDS ARROW
‎U+21C6 ⇆ LEFTWARDS ARROW OVER RIGHTWARDS ARROW
‎U+21E6 ⇦ LEFTWARDS WHITE ARROW
‎U+21E7 ⇧ UPWARDS WHITE ARROW
‎U+21E8 ⇨ RIGHTWARDS WHITE ARROW
‎U+21E9 ⇩ DOWNWARDS WHITE ARROW
‎U+261C ☜ WHITE LEFT POINTING INDEX
‎U+261D ☝ WHITE UP POINTING INDEX
‎U+261E ☞ WHITE RIGHT POINTING INDEX
‎U+261F ☟ WHITE DOWN POINTING INDEX
‎U+27A1 ➡ BLACK RIGHTWARDS ARROW
‎U+2B05 ⬅ LEFTWARDS BLACK ARROW
‎U+2B06 ⬆ UPWARDS BLACK ARROW
‎U+2B07 ⬇ DOWNWARDS BLACK ARROW
●罫線素片 ※U+2500-254Bがフォントにより縦書き用字形がある
●ハイフンやダッシュ類 ※U+002D,U+2010-2015,U+FF0Dがフォントにより縦書き用字形がある
●括弧類 ※括弧素片U+239B-23B1がフォントにより縦書き用字形がある
●引用符類 ※U+2018,U+2019,U+201C,U+201Dがフォントにより縦書き用字形がある
●その他 ※以下がフォントにより縦書き用字形がある
‎U+00B0 ° DEGREE SIGN
‎U+02BB ʻ MODIFIER LETTER TURNED COMMA
‎U+2025 ‥ TWO DOT LEADER
‎U+2026 … HORIZONTAL ELLIPSIS
‎U+2032 ′ PRIME
‎U+2033 ″ DOUBLE PRIME
‎U+2225 ∥ PARALLEL TO
‎U+22EF ⋯ MIDLINE HORIZONTAL ELLIPSIS
‎U+FF1D = FULLWIDTH EQUALS SIGN

以上


HTMLBook仕様とCSS Books仕様標準化の動き、「CSS書籍組版」セミナー

【追記2013-10-19】プレゼン公開:「CSS組版の今とこれから」
【追記2013-12-10】関連記事:CSSによる本作りの未来を占う―HTMLBookとはどのようなものか? 果たして普及するだろうか?(電子書籍、電子出版のCAS-UBブログ)

10月18日、FormatterClub「CSS書籍組版」セミナーですでした

FormatterClub「CSS書籍組版」セミナーご案内(無料セミナー)

さて、「CSS書籍組版」の世界の動きがこのごろ活発です。そのことを紹介します。

HTMLBook (オライリー)

オライリー社は、書籍組版(PDF出力)にAH Formatter (CSS)を採用してますが、従来、DocBook XML形式から電子書籍用(X)HTMLとPDF用に変換していたのを、HTML5を入力(オーサリング)と出力の両方に利用する「HTMLBook」というフォーマット(HTML5で本のコンテンツをマークアップする方法を定義)に移行することを決めていて、そのドラフト仕様やサンプルが公開されてます。

HTMLBook (GitHub)
HTMLBook Specification (Working Draft)

このHTMLBook形式で本(電子と紙の両方)を作るという動きが広がれば(オライリー社はだれもが使えるようにオープンにしています)HTML+CSSでの本の組版がもっと普及することになると期待しています。

オライリーの人々は色々なところでCSSでの書籍組版やHTMLBookについてプレゼンや記事を発表していて、それらはとても勉強になります:

“Building Books with CSS3” by Nellie McKesson, June 12, 2012

☞Balisage: The Markup Conference 2013, August 2013
“The Case for Authoring and Producing Books in (X)HTML5” by Sanders Kleinfeld

“HTML5 is the Future of Book Authorship” by Sanders Kleinfeld, September 19, 2013

☞W3C Workshop: Publishing and the Open Web Platform, September 2013
“Using Web Standards in Print and Digital Book Workflows” by Adam Witwer

W3C Digital Publishing Activity

W3Cで、Web標準技術(HTMLやCSS)を電子書籍とともに紙の本も含む出版に活かすための取り組みとして、Digital Publishing Activityという活動が始まっていて、そのワークショップが今年2月にニューヨーク、6月に東京、9月にパリで行われました。

W3C Digital Publishing Activity

各ワークショップのプレゼンやレポートが公開されていて、Web標準技術で本を作るための課題は何か、現在の標準仕様で足りないものは何か、という議論が活発にされていることが分かります:

W3C Workshop: Great Expectations (New York, USA, February 2013)

W3C Workshop: eBooks & I18N (Tokyo, Japan, June 2013)

W3C Workshop: Publishing and the Open Web Platform (Paris, France, September 2013)

CSS Books, CSS Figures (W3C→WHATWG)

AH Formatterは、一般のWebブラウザと同様にHTMLとCSSを解釈してページ内容をレイアウトしますが、本のページに特に必要な機能(柱・ノンブル、脚注、図版の様々な配置など)を定義するCSS仕様(CSS3 Paged MediaCSS3 GCPM, Generated Contents for Paged Media)は、標準が未完成のため、ドラフト仕様をベースに独自拡張して実装しています。そのため、将来の標準仕様では変わるかもしれないし、実装が少ない(ブラウザに実装されていない)ということで入門的な情報が少なく、導入しにくいということがあると思います。だから、その標準化が早く進むことを期待してます。

その標準化でのごく最近の重要な動きは、WHATWG (Web Hypertext Application Technology Working Group)で、CSS BooksおよびCSS Figuresのドラフトが公開されたことです。これらのCSS仕様は、もともとはW3CドラフトのCSS3 GCPMだったもので、その仕様のエディタのHåkon Wium Lie氏(Opera CTO)が、仕様標準化をより早く進めるためにと、WHATWGでも標準化作業を行うことにしたというものです。

The WHATWG Blog: “CSS Books & CSS Figures”, October 14th, 2013 by Håkon Wium Lie

CSS Books

CSS Figures

この動きによって、書籍組版のためのCSS仕様の標準化が進むことを期待します。
また、AH Formatterも今後のバージョンアップで、新しい標準仕様を実装していかなくてはなりません。
(現在実装しているAH拡張プロパティは、将来ともサポートを続けますので、安心してお使いください)


「CSS書籍組版」セミナーのご案内

「CSS書籍組版」のセミナーを10月18日(金)に開催します。

で紹介しているように、AH FormatterのCSS組版によって本が作られてます。

WebやEPUB電子書籍と共通の(X)HTMLとCSSを使って、紙の書籍・PDFも作れるということのメリットがあります。

しかし、AH Formatterが先行実装しているCSS3 Paged Media系仕様のことや、どうやってページ体裁を指定するか、それで何ができるのか、あまり知られていないと思います。

そこで、このセミナーを開催します。

内容

  • CSSで書籍組版を:(有)イーエイド 藤島雅宏
  • CSSを利用した書籍組版の事例紹介:アンテナハウス(株)村上真雄

開催日時: 2013年10月18日(金)14:00~16:30(開場13:40)
会場: 浜町区民館(東京都中央区日本橋浜町三丁目37番1号)

詳しくは、案内ページへ:
FormatterClub「CSS書籍組版」セミナーご案内(無料セミナー)

アンテナハウスのブログの次の記事もどうぞ:
AH Formatter V6.1 MR2リリース~FormatterClubの案内


W3C eBooks Workshop、Test The Web Forward、W3C Developer Meetupに参加

この間、電子書籍とWeb標準関連のいくつかのイベントに参加しました。

W3C Workshop on eBooks & i18n

eBooks & i18n: Richer Internationalization for eBooks
Second W3C Workshop on Electronic Books and the Open Web Platform, 4 June 2013, Tokyo, Japan

私(アンテナハウス村上)のプレゼン:International Text and Page Layout for eBooks
現在のEPUBのページレイアウト(特に縦書きの場合)で問題になっていること(縦書きで扉ページを左右センタリングすることや、画像の配置の問題)は、CSSのPaged Media用のレイアウト仕様(CSS3 Paged Media, GCPMなど。AH Formatterはその拡張を実装してる)が利用可能になれば解決する。「日本語組版処理の要件」(JLREQ)「第4章 見出し・注・図版・表・段落の配置処理」もそのために有用。というような話をしました。

しかし、私のこの拙いプレゼンより前に、CSSWGのBert Bossから、CSSとPaged Mediaについてのより詳しい講演がありました。その内容が公開されています:CSS and Paged Media

ところで、IDPFでは EPUB Adaptive Layout という仕様が作られています。CSSの高度なページレイアウトの拡張仕様が -epubx- プレフィックス付きのプロパティで定義されています。これを使えばEPUBで高度なページレイアウトが可能になるが、しかしW3CのCSS標準仕様と別のものになってしまうのではないかと疑問に思っていました。これについて、IDPFのMarkus Gylling(この仕様のエディターのひとりでもある)に話を聞いたところ、EPUB Adaptive Layout仕様は結局使われることはなく撤回。将来W3Cで高度なページレイアウトの仕様が標準化されれば、それをEPUBに採用する方針であるとのこと。納得。

このWorkshopのProgramとPosition papersが公開されてます。各プレゼン資料も。

Test The Web Forward~W3C Developer Meetup

その週末には、Test The Web Forward Tokyoに参加。HTML5やCSSのテストを作るイベント。

私はCSS Text & Writing Modesについてのライトニングトークをすることに。EPUB3で縦書きなど日本語組版ができるようになったのはこの仕様のおかげだが、仕様はまだドラフトで、WebKitでの実装など問題が多くEPUB制作者は苦労している。だからこのテストが重要、というような話をしました。

このTest作りのイベントのあとのW3C Developer Meetup – Tokyoにも参加。いろいろとWeb標準関係の熱い人々と交流ができて貴重な機会でした。


Antenna House Formatter V6.1 の紹介

Antenna House Formatter V6.1 リリースしました! その発表セミナー(2013/05/22)でプレゼンした資料を公開します:

AH Formatter V6.1 の紹介 [PDF]

これは2011年7月「AH Formatter V6 の紹介」にV6.1の新機能を追加して改訂したものです。

内容

  • AH Formatter、XSL-FOとCSS組版について
    • AH Formatterとは
    • XSLとは:XSLTとXSL-FO
    • CSSとXSLを比較
    • XSL-FOのページマスター機能
    • CSS3でのページマスターに相当する機能
    • AH拡張プロパティ
  • フロート拡張
    • CSS2.1とXSL-FO標準のフロート機能
    • AH拡張floatプロパティ
    • ページのフロート
    • 段のフロート
    • 段組のフロート
    • 絶対配置フロートと相対配置フロート
    • フロートを次のページ(または段)に移動するかどうかを指定
    • フロートのさらなる位置指定
    • フロートとテキスト回り込みの調整
  • 日本語組版関連機能
    • ルビ
    • 圏点
    • 縦書きと縦中横~自動縦中横 [V6.1]
    • 約物の処理
    • 和欧文間の空き
  • フォント関連機能
    • font-variant拡張
    • IVS異体字対応
    • Webフォント、WOFFサポート [V6.1]
  • 多言語組版
    • 中東言語(アラビア語やヘブライ語など右から左に書くもの)
    • インド系諸言語 [V6.1]
    • 東南アジアの言語 [V6.1]
  • MathML数式組版
  • 多彩な表現
    • ブロック領域の変形 [V6.1]
    • グラデーション [V6.1]
  • マルチメディア埋込み [V6.1]

このPDFは、XHTML5+CSS(AH拡張入り)で書いたもの(→zipでまとめてダウンロード)を AH Formatter V6.1 で組版したものです。AH (CSS) Formatter V6.1の製品版または評価版で試してみることができます。

AH Formatter V6.1の評価版ダウンロードについて

また、Formatter Clubの会員(無料)には会員向け試用版の提供をしています。通常評価版では出力ページに「すかし」が入りますが、この会員向けはページの下部にAH FormatterのURLが表示されるだけになり、この表示を改変・削除しない限りにおいて、評価用に利用することのほか、個人的に文書作成に利用するなど、非営利目的に限って使用することが可能です。

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