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2007年07月21日

PDFと長期署名(2) — 電子データを長期に保管するとは?

国立国会図書館の平成16年度の報告書には、同図書館が平成11年度までに受け入れた電子資料の利用可能性の調査結果として次の表が載っています。

20070721-1.PNG
出典:電子情報の長期的保存とアクセス手段の確保のための調査報告書 p.5

これをみますと、調査時点から10年前の平成6年の電子資料で15%位しか利用できないという、驚くべき数字になっています。その理由は次のとおりです。

・OS 等、PC の基本ソフトウェアとアプリケーション・ソフトウェアの不適合(69 点)
・アプリケーション・ソフトウェア入手不可(41 点)
・記録媒体の技術的旧式化および劣化(17 点)
・その他(11 点)

昨日もお話しましたが、電子データを可視化(表示、印刷)したり、利用するためには、一般に、そのデータを処理するアプリケーションソフトが必要であり、アプリケーション・ソフトが使えなくなれば、そのデータを完全に元の状態のままで可視化することはできません。

アプリケーションソフトは、ソフトウエアですので、ハードウエアと違って磨耗したり・消耗したり・劣化することはありません。その寿命は無限です。しかし、アプリケーションソフトは、ハードウエア、OSの上で稼動するものですから、ハードウエアが消耗してしまえば使えなくなりますし、OSが変われば動かすことができなくなります。従って、現実として、アプリケーションソフトが利用できる期間は、ハードウエアとOSの入手可能性によって制約を受けることになります。このことが先の調査結果にも明確に現れています。

そこで、電子データを長期的に保存しようとすれば、まずアプリケーションから独立な形式にすることが最も望ましいことになります。他の手段としては、アプリケーションをオープンソース化し、供給元から独立化させて、様々なハードウエア、OSに移植可能にしていくことで、アプリケーションそのものの延命を図るといった方法も考えられるでしょう。しかし、移植作業は大きな工数がかかるのが普通ですから、かりにソースがあっても実現性は低いと思います。

国会図書館で考えているような文化・歴史というレベルの時間単位で考えるのであれば、電子データをアプリケーションから完全に独立にして、それを標準仕様とし、電子データを取り扱いすることのできるアプリケーションを誰でも簡単に作成可能にしていくことが重要であるということになります。

この観点から見ますと、紙に印刷する形式の電子ドキュメントの形式としてはPDFが最も普及していますし、PDFは上に述べたアプリケーションからの独立性という観点からも最も適切な候補となります。こうした時代の要請を受けて策定された仕様がPDF/Archive(PDF/A)です。

投稿者 koba : 2007年07月21日 08:00

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