« 2007年07月19日 | メイン | 2007年07月21日 »

2007年07月20日

PDFと長期署名(1) — 電子ドキュメントの長期保存とは

さて、次に最近、一部で話題になっている、PDFの長期署名について検討してみたいと思います。

長期署名については、ECOM(次世代電子商取引推進協議会)が熱心に取り組んでいます。

「長期署名フォーマットプロファイルの標準化に向けた活動を開始」
- ETSI/ESIと協調しJIS原案作成に着手 -

このニュースの通り、ECOMは長期署名フォーマットのJISの原案の作成を目指して活動を行ってきました。そして、その成果として、今年度にJIS原案が提出されました。

「長期署名に関するJIS原案」

この原案の付録には、参考資料としてPDF/Aへの長期署名の適用方法に関する仕様も掲載されています。(これは参考資料であって、規格の一部ではないとされています。)

さて、PDFへの長期署名を考える前に、電子ドキュメントの長期保管について少し考えて見ます。

電子ドキュメントの長期保存については、国立国会図書館が平成12年から研究しており、その報告が公開されています。

電子情報の長期的な保存と利用
国会図書館は、国の出版物を収集して、文化遺産として残していく役割を担っていますが、平成12年からCD・DVDやアプリケーションプログラムなどのパッケージ系電子出版物が新たに納本の対象となっています。

国会図書館で収集したこれらのデジタルデータをどうやって長期的に保存するかということは、現在、非常に大きな研究課題です。

デジタル・ドキュメントだけに限ってみても、過去20年の技術の推移たるや、ものすごい変化を遂げています。例えば、日本では、1980年代半ばから、文書はワープロ専用機で作成されてきましたが、1990年代後半からは、文書の編集手段はパソコンのワープロソフトが主流になっています。ワープロソフトのデータは、アプリケーションが違えば互換性はありませんから、アプリケーションを使う環境がなくなってしまえば、もうそのデジタルデータを完全に可視化(表示、印刷)することはできません。

1980年代半ばから1990年代にかけて作成されたワープロ専用機のデータは、仮に、保管されていたとしても、既に、その大半はそのままでは可視化することはできません。アンテナハウスのリッチテキスト・コンバータを使えば、文書データをMicrosoft Wordなどに移して再活用はできますが、元のままの形で可視化することは、現実的なコストでは不可能に近いでしょう。

こうした状況のもとでは、電子署名など考えることすら無意味となります。

投票をお願いいたします

投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック