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2007年02月12日

日本語の文字についての用語について(11) — 字体と書体 再考

昨日(11日) 第5回もじもじカフェ「正字体の正体とは?!」で、大熊 肇さんの話を聞きました。お話の内容は、全体としても大変興味深いものでしたが、特に、「字体」と「書体」について、大熊さんのお話をお聞きしながら、いままで考えていた定義が偏っていたことに気が付きました。まったく、眼から鱗が落ちる思いとはこのことかと。

2007年01月11日 日本語の文字についての用語について(1)で、「表外漢字字体表」の字体と書体の定義を紹介しました。

この表外漢字字体表の考え方は一言で、字体は抽象的な文字の骨格であり、字体を統一的スタイルでデザインして具体化したものが書体である、というものです。これは、常用漢字表の考え方を踏襲しています。

また、JIS文字規格は字体をまず考え、包摂する異体字を含めて、コードポイントを与えるもの。いわば、字体中心と言えると思います。

つまりこうした考え方は、抽象的な概念である字体がまずある、という考えに基づくもののように思います。少なくとも私は、そう思っていました。

ところがそうじゃない、ということなんですね。漢字の生い立ちから遡って考えるとどうも違うのではないかということなのです。

現代の印刷書体は、明朝体、ゴシック体、教科書体というような書体に分類されます。

これに対して、もじもじカフェで大熊さんは、最初に、正書体、行書体、草書体について次のように説明されました。

正書体 — 石碑などに彫るかしこまったものにつかう書体。秦の篆書、漢の隷書、唐の楷書を指す。
行書体 — 日常の筆記体(通行体)
草書体 — 省略体。草書の字体は、前漢の時代に発生した。

そして、唐の時代に作成された楷書の字体が正字体というものだそうです。

このあたりで、どうも書体についての考え方がかなり違う、ということをなんとなく感じました。

大熊さんは書家ですので、お客さんから、字体を示されて特定の書体で書いてほしいという依頼を受けるそうですが、ところが要望に応えることのできない文字が偶にあるのだそうです。つまり、ある字体を隷書で書いて欲しい、という依頼があっても、その字体を隷書で書くと、まったくおかしなもの、つまり、そのような隷書の文字は存在していなかったもの、あるいはまったく格好悪いものになってしまう、というお話をされました。

その話を聞いていまして、「表外漢字字体表」の書体の定義は、どうもそういう現実から考えると、逆じゃないか?ということに気が付いたわけです。書家的には、あるいは、歴史的には、まず、書体があるのですね。つまり、格好よく文字を書く、あるいは、その時代の政治的な意図で、まず書体ができ上がり、その書体向きの字体が固定化した、という考え方になるのだろうということです。現実的にはこちらの方が妥当なように感じました。

【参考資料】
TONAN's Web
字体・字形・書体・字種

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投稿者 koba : 08:00 | コメント (3) | トラックバック