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2006年04月04日

オープンソースのビジネスモデル (8)

GPLライセンスが対象とするのは、GPLライセンスで配布されているプログラムを入手して、それを組み込んだり・改変して、それを第三者に頒布する行為です。

自分だけで使う分には無論、いくら改変しようが公開する必要はありません。

では、GPLライセンスのプログラムを、開発会社が入手して、受託開発で作成するシステムに組み込んで、客先に納品した時はどうなるのでしょうか?

GNUのQ&Aに次のような質問項目があります。
GPLは、私が機密保持契約の下で改変されたバージョンを開発することを許可していますか?

この質問への回答を読むと、客先のために機密保持契約を結んで、GPLライセンスのプログラムを組み込んだシステムを開発して納品しても、それを公開する必要はないように感じます。

但し、このあたりは、私の解釈にすぎませんので、もし、GPLを受託開発のシステムに使うならご自分で判断するか、専門の弁護士と相談してもらいたいと思います。

GPLは、Stallmanの、いわばプログラマ共産主義とでもいうべき思想を反映したもの。これを嫌う人も多いようです。しかし、著作権法に基づく私的契約としては、大変良く考えられた方式です。

GPLがこのように有名になったひとつの理由は、LinuxがGPLライセンスで頒布されていることにあります。では、Linuxの成功はGPLライセンスを採用したことが理由でしょうか?

Linuxの開発過程を研究して、「伽藍とバザール」(The Cathedral and the Bazaar)というオープンソース開発モデルについての有名な論文を発表したEric Raimondは、2005年6月の6th International Free Software Forum で、「もうGPLは必要としない」という基調講演を行ったとのことです。彼はインタビュー(ESR: "We Don't Need the GPL Anymore")に応えて次のように述べています。

GPLがLinux成功の主要な理由とは思わない。むしろ、それは1991年Linusがソフトウェアの分散開発の正しい仕組みを最初に見つけた人だったからだろう。それ以前は安価なインターネットがなかったのでできなかった。それ以後は、新しいOSのプロジェクトを起こそうという人の多くは、Linuxを改善するのが最小コストの方法だということを発見したのだ。

ところで、このインタビューにRedHatについても話題になっています。2006年03月29日 オープンソースのビジネスモデル (2)で、話題になりましたようにRedHat Linux の主要部分は、GPLで公開されています。

でも、RedHat LinuxをCDまたはDVDで入手し、それをそのままインタネットに公開すると訴訟されるそうです。また、コンピュータ雑誌がおまけにRedHatのCDをつけるにはRedHatの許可が必要です。しかし、雑誌社がRedHatに申し込んでも絶対に許可しないそうです。

要するにRedHat Enterprise Linux (RHEL)を入手するには、RedHatに代金を支払って、Subscribe(購読)するしかないということになります。

どうやら、RedHatはRHELを複製再頒布をさせないように商標権で守っているようです。しかし、RHELはGPLで公開されているのでGPL違反ではない、ということになります。

「商標権で保護するとは賢い!」とEric Raimondは感心しています。Ericってすなおな人だねえ。

GPLプログラムを複製されないように商標権で守るというのは確かにオープンソースの新しいビジネスモデルです

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投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック