« 2005年11月23日 | メイン | 2005年11月25日 »

2005年11月24日

消え去るType1フォント

Thomas PhinneyのTypblography, the Phinney-us Bloggによると、アドビシステムズはWindows Vistaが出荷される前にType1フォントのMacとWindows向けの小売ライセンスを終了する予定とのこと。最終決定ではないようですが、同社は、早めに情報を流して、ユーザに準備をしてもらおうと考えているようです。

Phasing out "PostScript" Type 1 fonts

このブログページはかなりの長文ですが、要約すると次の通りです。
①Type1フォントは、1980年代半ばにアドビシステムズが導入したアウトライン・フォントでPostScriptフォントとも呼ばれている。
②1996年にはAdobeとMicrosoftが共同開発したOpenTypeフォントを発表し、Type1フォントは技術的に古いものになった。
③アドビシステムズは、既に1999年に新しいType1フォントの開発を終了し、2000年からOpenTypeフォントを発売している。
④MicrosoftはWindowsの新しいグラフィックスとテキストシステムであるPresentation Foundation Engine(開発コード名Avaron)を開発した。このWinPFEではType1フォントをサポートしていない。
⑤Windows Vistaには、WinPFEと旧来のGDIの二つのグラフィックシステムが搭載される。GDIベースのアプリケーションでは、Type1フォントが引き続き使える。しかし、WinPFEベースのアプリケーションでは、Type1フォントはフォントのメニューにも表示されない。
⑥既にアドビシステムズのフォントの売上げは圧倒的にOpenTypeフォントになっており、Type1フォントの売上げはどんどん減っている。
⑦このようなことから、Type1フォントの販売を終了し、ユーザが早い時期にType1フォントからそれに対応するOpenTypeフォントに移行することを望んでいる。

VistaではGDIとWinPFEが両方使えても、10年、20年のスパンでみればWindowsからGDIがなくなる可能性があります。長期的に、同じ目的の二つのサブシステムを並行してサポートしていくのは、Microsoftといえども重荷でしょうからね。そうなるとType1フォントのラスタライザは、Windowsの機能としては提供されなくなります。

PDFファイルにフォントを埋め込めば、作成した環境と同じフォントが、表示したい環境になくても文字が見える、ということが売りです。しかし、肝心のType1フォントのラスタライザが存在しなければ、Type1フォントの文字を表示することができません。

この点、大丈夫なのでしょうか?このブログでは、
⑧アドビシステムズのアプリケーションはOSとは独立のフォント・エンジンをつかっているのでType1フォントはサポートできる。
⑨PDFに埋め込まれたType1フォントは、恐らく永久にサポートされるだろう。

とあります。どうやら、アドビシステムズのアプリケーションは、フォントのラスタライズをWindowsに依存しないで独自でやっているようです。そうしてAdobe Readerは、独自のフォント・ラスタライザを使っているので、WindowsからType1フォントのラスタライザがなくなっても大丈夫ということらしいですね。

しかし、やはり安全をみるためにもいくつかの代替手段が必要なように思います。そうでないと、ある時期から突然、膨大な量の(Type1フォントを埋め込んだ)PDFファイルを誰も読めなくなる日が来ないとも限りません。

ところで、この記事に匿名の人がかなり厳しく突っ込みを入れてます。そちらの議論も面白い。Thomas Phinneyは、Type1フォントのサポートを止める理由として、WinPFE用にType1フォントのラスタライザを開発する(新しく開発ではなく調整なんですが)のはとても大変。ラスタライザは上級の専門プログラマでないとできないので人手が足りなくて間に合わないんだ、という説明しているのです。

それに対して、匿名の人はそんなことはない、例えば、Type1からOpenType CFFに変換してサポートするのは既に行われているし、難しいことではないだろうと言っているのです。

既に蓄積されている膨大なType1フォント資産を考えると、簡単に切り捨てるのはどうなんでしょうね。私はこの匿名者の主張の方に一票を投じたいと思います。

投票をお願いいたします

投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック