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2008年06月17日
HTML5への期待、懸念、夢
6月10日にHTML5の新しいドラフトが公開されました。
A vocabulary and associated APIs for HTML and XHTML
W3C Working Draft 10 June 2008
HTML5は、HTML4に続く大きなバージョンアップです。HTML4からHTML5への変更点については、ミツエリンクスの翻訳があります。
HTML 5 における HTML 4 からの変更点
2008 年 6 月 10 日付 W3C 草案 (Working Draft)
まだ詳しくは読んでいませんが、ざっと見ますと、HTML4からHTML5への変更はかなり大掛かりなものです。
このところ、何回かブログでも取り上げていますが、今後、ブラウザがWeb上のアプリケーションのプラットフォームになる可能性があります。これに対抗するのが、AdobeのAIRを始めとするRIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)ではないかと思います。
ブラウザとRIAのどちらを選択するか、を考えた時、気になりますのが、ブラウザ上の開発の生産性の低さです。ブラウザのAjaxによるアプリケーションの開発を見ていますと、あまり生産性が高くないように思います。その主な原因として、ブラウザのDOM実装の互換性の問題があるようです。Ajaxは様々なブラウザ対応を考えなくて済むイントラネット向きと述べている本もある位です。
HTML5は、その表題にHTMLとXHTMLのための語彙とAPIとあることでも分かりますように、Webのアプリケーションをブラウザ上で開発するためのAPIの提供を大きな目標としています。その基礎にはDOMを置くとされていますし、ドラッグ&ドロップやコピー&ペーストのためのアーキテクチャの提供などももくろんでいるようです。HTML5が完成し、ブラウザに完全に実装されると、現在のAjax開発の悩みの種であるブラウザ間の互換性の問題の解消、その使いにくさの解消などに大きな期待がもてそうです。
HTML5が完成した暁こそ、ブラウザがアプリケーションのプラットフォームになる時だ!と言えそうです。
一方で開発モデルとして「HTML5は少なくともふたつの完全な実装が登場するまでは完成とみなされません」という規定もあります。これは大変なハードルです。
HTML5仕様を完全に実装したブラウザを作るには、非常に大掛かりな開発プロジェクトが必要なことは明らかです。
一方、ブラウザは既に無償配布が常識となっており、開発プロジェクトを起こしても、ブラウザ単独で販売収入を得ることは期待できそうもありません。
マイクロソフトはどうかと言いますと、マイクロソフトにはHTML5対応ブラウザを開発する動機があるとは思えません。HTML5の編集者はグーグルとアップルから出ていますし、マイクロソフトの過去の行動パターンは、標準の世界に対抗して独自の世界を作る(例えば、SVGに対しVML、JAVAに対し.NET、PDFに対しXPS、XSL-FOに対しXAML、など)方向にあります。
そうすると、HTML5完全対応ブラウザを作る会社はどこもなく、もしかすると永久にW3C勧告にはならないかも知れません。
・・・そうしますと、このあたりで、我々も他力本願をやめて世界最高のHTML5ブラウザを作るプロジェクトというのはどうでしょうか。儲からないとは思いますが、尊敬される日本を目指して。
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