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2007年10月16日

PDF/A-2についての情報源

アンテナハウスがWebで公開している次の資料の最終頁でPDF/A-2に関して説明しています。これについて、ISOで策定中の規格について公開するものとして問題視する向きがあるようです。

PDF/Aの概要 (スライドPDF版)

また聞きですので、発言した人の意図を明確に理解しているかどうかわかりません。多分、誤解なのでしょうが、とりあえず、降りかかった火の粉を払う(?!)ために、これらの情報がISOから秘密裏に入手したものではなく、公開された情報に基づいて作成したものであることをまとめてみました。

上記の資料で、PDF/A-2について次のことを述べています。

1.PDF/A-2は、当初、PDF 1.6をベースに策定作業が進んでいたこと。
2.PDF/A-2は、現在、PDF 1.7をベースとして策定されようとしている。
3.PDF/A-2は、ISO 32000をベースに策定されるであろう。
4.ISO 32000は、PDF 1.7の部分集合であること。

以上の4点についての根拠を次に示します。

1.PDF/A-2は、当初、PDF 1.6をベースに策定作業が進んでいたこと。
例えば、USのAIIMのPDF/Aに関するWebページには、米国のPDF/Aに関する会合の記録があります。その記録の2006年の議事録には、「 Work on ISO 19005-2, Part 2 – Application of PDF 1.6」というアイテムが頻繁に現れます。これは、2006年時点では、ISO19005-2(これが、PDF/A-2をさす事は、ISO19005-1を読めば自明です)を、PDF 1.6に基づいて作成する作業を行っていることを意味しています。これは1回だけではありません。なお、PDF 1.7は2006年秋に公開されました。

さらに、PDF標準に関するWikiのPDF/Aのページhttp://pdf.editme.com/PDFAには次のような項目があります。

The ISO committee consists of representatives from ISO TC 171 SC2, Document Management Applications, Application Issues; TC 130, Graphics Technology; TC 46, SC11 ; and TC42, Photography. The committee is currently working on ISO 19005-2 which will be based upon Adobe PDF Reference 1.6 as well as ISO 19005-3 which will address dyanmic electronic documents.

この文章を読むとISO19005-2が、PDF 1.6に基づいて作成されるとあります。このWikiを運営しているのはAIIM、AdobeなどのPDF標準関係者であり、信頼にたる情報と考えられます。

2.PDF/A-2は、現在、PDF 1.7をベースとして策定されようとしている。
AIIMが運営している下記のブログに次の記事がでています。
http://aiimstandardswatch.typepad.com/

August 21, 2007
PDF/Archive to meet in Berlin
Nine members of the US committee for PDF/Archive are on their way to an international working group meeting with colleagues from Japan, Germany, Switzerland, United Kingdom and others. The committee will be discussing the next version of PDF/Archive which brings this important standard current to the PDF Reference 1.7 adding many capabilities to the archive file.

このブログは、AIIMのBetsy Fanning(the director of Standards and Content for AIIM)が書いたものです。AIIMというのは米国で、PDFの標準を進める団体で、彼女の肩書きを見れば、ガセネタでないことは明白でしょう。

3.PDF/A-2は、ISO 32000をベースに策定されるであろう。
これは私の推測であり、推測であると明記しています。私は、ISOから推測に基づく発言を禁止される立場にはありません。私の推測を信じるか否かは、資料を閲覧した人の自由です。

4.ISO 32000は、PDF 1.7の部分集合であること。
ISO DIS 32000の作成については、次の資料が公開されています。
ISO Draft of the PDF 1.7 Reference

ここに、PDF 1.7とISO DIS 32000との相違点が記述されています。これと同じものはAdobeのWebページにも公開されています。

実際に、ISO DIS 32000とPDF1.7を比較しますと、例えば、電子署名関連では次のような箇所が削除されています。これらのことから、ISO 32000はPDF 1.7のサブセットであることが証明できます。この部分、Obsoleteだから削除したとされていますので、証明としてはやや弱いかもしれませんが。

■PDF Ref 1.7 TABLE 8.103 Entries in a signature reference dictionary
DigestValue
DigestLocation
上記の2つのキーは、ISO DIS 32000で削除されています。

■PDF Ref 1.7 8.7.1Transform Methods
Appendix I, “Computation of Object Digests,” describes in detail the algorithm for computing object digests.

Note: All transform methods exclude the signature dictionary from the object digest.

上記の2つの文章はISO DIS 32000で削除されています。

■PDF Ref 1.7 Validating MDP signatures
PDF 1.5 required the calculated value of the object digest at the time of signing to be stored in the DigestValue entry in the signature reference dictionary (see Table 8.103). Therefore, an application can compare this entry to its calculated object digest when validating. If the values are different, the signature is invalid.

上の段落はISO DIS 32000で削除されています。

■Ref 1.7 Appendix I Computation of Object Digests

付録Iを削除。PDF1.7で廃止となったため。

これらの削除理由はISO DIS 32000ではObject Digestを廃止、DigestValue を計算する仕様であるPDF Ref 1.7のAppendix Iが廃止されたためと見られます。PDF 1.7でObsolete(廃止)された仕様は、ISO 32000から削除されると説明されています。実際のところは、アドビの製品では、過去との互換性を維持するためにPDF1.7でObsoleteな機能もサポートされているようですので、アドビのPDF 1.7準拠製品とISO 32000準拠製品は、理論上、完全互換ではないということになります。但し、実際上は、問題視する必要はないと思います。

いづれにしましても、PDF/A-2は現在策定中であり、最終的にどうなるかは、予断を許さないということに注意しなければなりません。

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投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック