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2007年06月29日

PDFについてのQ&A — PDFのフォント埋め込みと著作権

先日、PDFのフォント埋め込みについてお話しましたところ、「フォント埋め込みは仮に部分埋め込みであっても著作権侵害にあたるのではないか」、というご質問をいただきました。そこで、この問題について考えて見ます。

まず、前提としてフォントに著作権があるのかということですが、これについて判例もあります。

海賊版フォントに対する判決
プログラムとしてのフォントデータの著作権を対象
平成16年5月13日 大阪地裁 平成15年(ワ)第2552号 著作権侵害に基づく差止等請求事件
モリサワ勝訴
出典:http://www.translan.com/jucc/precedent-2004-05-13b.html

私は法律の専門家ではありませんが、フォントのデザインに万一著作権がないと仮定しましても、アウトラインフォントはプログラムとデータから成り立っていますし、プログラムと同じように著作権で保護されてしかるべきと考えています。

ビットマップフォントについても、以前に「2006年10月17日 Google Docs/Spreadsheetsを初体験(4) — Kochi-Mincho」でもお話しましたように、ビットマップフォントを無断で複製したことにより、「東風明朝」の制作・配布活動が中止になった例もあります。

マイクロソフトは、Windowsに同梱しているフォントについて、次のページで著作権の取り扱いについて告知しています。
Copyright : マイクロソフトの著作物の使用について

マイクロソフトは、フォントには著作権があると判断していると見られますが、日本語フォントの取り扱いについては「フォントの再頒布や、お客様のソフトウェアでの使用等の権利処理については」フォントベンダーに相談して欲しいと述べています。また、英文フォントについては各フォントの著作権者に相談して欲しいと述べています。

このようなことからフォントについては著作権法が適用されると考えるのが妥当と思います。PDFへのフォント埋め込みは、明らかに、フォントのグリフデータ(アウトラインデータ)の複製と再頒布にあたります。従って、著作権者の許可なくフォントの埋め込みを行えば権利侵害と看做されることになるでしょう。

では、PDFのフォント埋め込みでは、この問題をどのように解決しているのでしょうか?

まず、日本タイプグラフィ協会は、「電子ドキュメントデータへのフォント埋込み機能に対するタイプフェイス/フォントの権利保護に関する声明書」を出しています。
出典: http://www.typo.or.jp/info/morals/moral4.html

これによりますと、概要は、次のような声明になります。
(1) ユーザの立場においては、フォントの埋め込みは非常に有効かつ利便性が高い技術革新と言えます。
(2) 配布されたPDFに埋め込まれたフォントセットのプロテクトを外して使用し、編集・校正することは、新たな文字組みを行うことになり、タイプフェイスの複製行為が行われることを意味します。
(3) 埋め込まれたフォントセットにより、タイプフェイスの複製・改変・二次的使用がより一層簡単となります。

従って、ユーザは、「埋め込んだフォントを用いて編集・校正などの新たな文字組を行う行為」、フォント埋め込みを不可としているタイプフェイス権利のフォントを埋め込まない、フォントが埋め込まれたPDFを配布するに際して、当該フォントの使用許諾契約書に従うこと、を求めています。

また、PDFへフォント埋め込み機能を有するプログラムの供給者に対しては、ユーザに対して禁止されている行為を助けるようなソフトウェアを開発しないことを求めています。

では、PDFへのフォント埋め込みの提唱元であるアドビはどうなっているのでしょうか?アドビは自社でも多数のフォントを制作して販売しています。

アドビのWebページには、フォントのライセンスについての情報が掲載されています。
アドビ製フォントライセンス契約に関するFAQ(よくあるご質問)
ここにフォント埋め込みに関する項目があります。
そこでは、「アドビからライセンスを受けたすべてのフォントは、電子ファイルに埋め込みが可能です。」という一文があります。その後ろに「しかし。。」として幾つか細かい条件が記述されていますが、原則として、埋め込みして配布するだけであれば問題ないようです。

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投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック