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2007年05月08日

PDFと署名(21) — 電子証明書ICカードはなぜVistaで使えない?

もういろいろなところで、問題として取り上げられていますが、電子入札・電子申請が軒並みWindows Vistaで使えません。また、電子証明書ICカードもWindows Vistaで使えないようです。

○電子入札コアシステムのクライアントはWindows Vistaは使えません。
コアシステムにおけるWindows Vistaへの対応について
「RC1版では、既存のICカードドライバが動作しないこと、およびJRE1.3.1では正常動作しないことが判明しており、現時点ではWindows Vistaのクライアント端末にてコアシステムを使用することはできません。このため、Windows Vistaにつきましては、2007年1月30日以降もコアシステムのクライアント推奨稼動環境には含まれませんのでご注意ください。」(2007年5月8日現在)

これを受けて、電子入札対応ICカードを発行している認証局でも、Vista非対応という表示をしているところがあります。

当然ですが、コアシステムを採用しているすべての団体の電子入札への応札者のクライアントPCは、Windows Vistaは使うことができません。

○公的個人認証サービス利用者クライアントソフト自体がVistaに対応していません。
公的個人認証サービスの利用に必要となるパソコン等の仕様について
「次のいずれかが必要です。

* Microsoft Windows XP (Service Pack 2適用)。
* Microsoft Windows XP (Service Pack 1適用)。
* Microsoft Windows 2000 (Service Pack 4適用)。
* Microsoft Windows 2000 (Service Pack 3適用)。
* Microsoft Windows 2000 (Service Pack 2適用)。
* Microsoft Windows NT (Service Pack 6a適用)。
* Microsoft Windows Millennium Edition (Me)。
* Microsoft Windows 98 Second Edition (SE)。」
(2007年5月8日現在)

当然(?)、公的個人認証サービスのICカードで、Vistaで動作保証されているものは見当たりません。

この結果、電子政府の窓口もほとんどWindows Vistaに対応していません。電子政府の申請は、かならずしも、電子証明書必須ではないですし、また、電子証明書を使うにしてもICカードとは限らないのですが。

これは一体どこに問題があるのでしょうか?
・ICカードリーダのデバイスドライバの問題?
・WindowsVistaとJAVA(JRE)の問題?

○ICカードリーダのデバイスドライバの問題なら、ICカードリーダをVista対応版にすれば解決できます。しかし、電子証明書用のICカードリーダを販売している会社でVista対応版を用意しているところは見当たりません。ICカードリーダのメーカの方は、上位のアプリケーションがVista対応でないのだから、別に、Vista対応を急ぐ必要はないと思っているようです。

例えば日立のICカードリーダ
「※公的個人認証サービスをご利用の方へ
現在、公的個人認証サービス利用者クライアントソフト自体がVistaに対応しておりません。今後、公的個人認証サービス利用者クライアントソフトのVista対応に合わせて検証試験を行います。 」
(2007年5月8日現在)

また、JDL電子申告システムのWindows Vistaの対応ページには次のように書いてあります。
「JDL電子申告システムは、弊社Windows Vista™対応ハードウェア製品およびソフトウェア製品でご利用いただくことができます。但し、電子署名に必要なICカード(ICカードマネージャ)とICカードリーダライタにつきましては、現在提供元およびメーカーの動作確認が報告されておらず、ご利用いただくことができません。したがって、電子署名のみ、動作確認済みの弊社Windows®XP搭載機種およびWindows®XP対応製品で行ってください。」 (2007年5月8日現在)
これをみると、原因はICカードのリーダライタ側にあるということなんですが。

しかし、ICカードリーダのベンダは沢山あるのだから、どこか1社ぐらいは、Vista対応版を出してもよさそうなものですが。なぜ、どこも出さないのでしょう?

○また、JAVAの実行環境にも問題があるようです。もともと、JAVAを使えば、アプリケーションをOSから独立にできるという触れ込みでしたが、Vistaの登場でそれが嘘であることがばれてしまいました。JAVAそのものが一つのアプリケーション実行環境(JRE)なので、アプリケーションがWindows環境依存からJAVA環境依存に変わっただけだったのです。だから、JREがVistaできちんと動かない限り、JAVAアプリケーションの作者は手も足もでません。Vistaの登場で、そのことがはっきり分かったともいえるんだよね。じゃあ、クライアントのJREを全部入れ替えろ!というのも面倒なことになります。要するにWindowsクライアントのジャバはジャマなんです。

※JAVAはアプリケーション開発の生産性が高いということでJAVAを選んだケースが多かったのかもしれない。しかし、生産性が高いというのは、反面ブラックボックスが増えるということでもあります。そういう意味では、Vista問題はソフトウエア開発環境の選択の事例研究として、専門家が検討すべきでしょうね。

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投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック