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2007年05月02日
PDFと署名(16) — 電子証明書の使用者は法人?自然人?
通常の社会活動において、署名者の主体は、自然人または法人となります。例えば、個人的に物品を購入したり、個人で住宅や土地を購入する場合、その主体は自然人です。それに対して、会社として物品を購入したり、会社としてビルの賃貸契約したり、業務の請負契約をする場合は、その主体は法人となります。
従来の印鑑の場合であれば、自然人は地方自治体に実印を登記できます。そして、重要な契約は個人の実印を用いて押印し、その印鑑証明を添えることが求められます。
また、法人の代表者は、民間企業であれば、法務局に代表者印を登記しており、企業を代表して重要な契約をする場合は代表者印を使用して押印し、その印鑑証明を添えることが一般に行われます。
このあたりまでは、電子化されていない印鑑による商取引の常識だろうと思います。
ところが、電子署名法とその施行規則を調べますと、電子署名法に基づく認定認証局が発行する電子証明書の所有者は、どうも自然人に限られるようです。
「電子署名及び認証業務に関する法律」の第六条二では、認証業務を行うものは、利用者(電子証明書の発行相手)の特定方法を、「申請に係る業務における利用者の真偽の確認が主務省令で定める方法により行われるものであること。」と定めています。
そして、その主務省令にあたる「電子署名及び認証業務に関する法律施行規則」では、第5条(利用者の真偽の確認の方法)で、具体的な方法を定めています。この部分は長いですが、端的にいいますと、「住民票の写し、戸籍の謄本など」の提出を求め、そして、「パスポートまたは運転免許証など」で本人を確認する、こととなっています。従って、電子署名法に基づく認定認証局の発行する電子証明書では法人の代表者であることは証明されません。
ところが、官公庁などの電子入札の入札資格者は、ほとんどの場合、自然人ではなく法人のはずです。例えば、国土交通省の電子入札運用規則には次の項目があります。
「電子入札を利用することができるICカードは、競争参加資格認定通知書に記載されている者(以下「代表者」という。)又は代表者から入札・見積権限及び契約権限について年間委任状(様式2)により委任をうけた者(以下「受任者」という。)のICカードに限る。」
このため、法人の代表者と自然人を対応つける必要が発生します。つまり、前述の通り、ICカード(認定認証局の発行する電子証明書)は自然人のものになります。で、その自然人のICカードが、確かに、その法人を代表する人のものであることを証明しないといけないのですが、どうやって、これを電子的に証明するのでしょうか?例えば、A建設工業の代表者山田太郎が、電子証明書記載の山田太郎と同一人物であることを証明するのは、電子証明書のみではできないと思います。また、委任状を用意したとして、委任状の電子署名が代表者のものであることを、どのように証明するのでしょうか?
アナログの世界では、法人の代表者印は法人に紐付け付けられていて、代表者が別の人に交代しても、印鑑の所有者の登記を変更するだけでした。ところが、電子証明書の方は、自然人である代表者の方に紐付けられていることになります。どうも、180度違っているように感じます。
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