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2006年09月20日

Office2007の新しい数式エディタ (4) 数学フォント

数式組版は、文字組版の中ではとても難しいもののひとつです。

昨日の話題にしましたように数学記号の種類が多いこともそのひとつですが、それ以外に、様々な難しさがあります。

1.数式の中でイタリック体や二重線文字の使い分け
20060920-1.PNG
数式では、変数は多くの場合イタリック体で表します。微分記号は、上の図のⅆ (U+2146 DOUBLE-STRUCK ITALLIC SMALL-D)のように二重線のイタリック体で特別の意味を持たせた文字を使うことがあります。Unicode4.0には、U+2145~U+2149に二重線イタリックの数学記号が定義されています。

2.下付き、上付きを多用します。しかも、多重の上付き、下付きを使うこともあります。
20060920-3.PNG

3.積分記号のような斜めの記号に対して、上限、下限をつける時は、単純に文字のベースラインを上、下に調整するのみでなく、左右の位置調整も行う必要があります。(1の例を参照)

4.括弧類などのフェンス類や積分記号などは内部の式の高さに応じて、高さを調整する必要があります。
20060920-2.PNG
アウトライン・フォントでは、計算によって高さを調整するのは簡単にできます。しかし、ただ括弧を大きくしたり小さくしたりするだけではあまり綺麗になりません。やはりサイズ毎に専用のグリフが必要でしょう。

5.空白の幅に様々な種類があり、その使い分けが必要です。
例えば、次の図をご覧ください。
20060920-4.PNG
数式の左辺a-cと、右辺-cでは、マイナス記号と文字cの間の幅が異なっています。このように同じ文字の組合せでも文脈によってその間の空白の幅を変えることがあります。

6.行列の入った式を綺麗に組むには、行列の軸の位置と本文の文字の軸の位置を合わせる必要があります。20060920-5.PNG
この場合、等号(=)は、行列の軸線と揃えることになります。

上のようなことを簡単に実現するためには数式組版専用フォントが必要でしょう。Office2007の数式エディタでは数式組版のための新しいフォントとしてCambria Mathフォントを開発したようです。Cambria Mathは、Cambria フォントのTrueTypeコレクション形式の一部ですが、数学の組版専用のOpenTypeフィーチャ・テーブルを持っているようです。残念ながら、この新しいOpenTypeフィーチャ・テーブルの仕様は文書化されていないとのことです。

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投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック