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2006年04月05日

オープンソースのビジネスモデル (9)

RedHat のLinuxビジネスは、サービスを売っていると言われます。確かに表面上はそう見えます。

占有ライセンスでは、顧客がプログラムをインストールした台数に応じて、使用料が多く課金されるというビジネスモデルになります。しかし、RedHat Enterprise Linux (RHEL)はGPLライセンスで提供されますから、顧客は、RHELを自由に複製してインストールできます。

顧客が自分でRHELを複製してインストールすれば、インストールしたRHELの台数が増えてもサービス収入の増加には繋がらないでしょう。要するに工夫無しにサービスを売っても儲からないだろうと思います。

収入を増やすには、RHELのインストール台数が増えれば、自然にサービス契約が増えて、サービス料金を多く課金できる仕組が必要です。

このあたり、RedHatは、一体どうやって実現しているのでしょうか?

そこで、同社のサービス購読契約(Subscription Agreement)を見てみました。

ざっとみた結果ですが、うーーん。さすがに、なかなかのものです。多分、優秀な弁護士をそろえて知恵をひねったんでしょう。GPLライセンスのプログラムを頒布して収益を上げるための契約の枠組みを見事に作りあげています。

大雑把に紹介しますと、
1.付録1-1 
RHELは、GPLライセンスで提供していますので、契約書では顧客がプログラムの部品を改変したり、コピーしたり、再配布する権利を制約していません。(制約したらGPL違反になりますから。)

2.付録1-2 
知的所有権という項目で、顧客がRedHatという商標を使ったソフトウエアを頒布することを禁止します。RHELを第三者に頒布するには、RedHatの各種の商標やマークを削除しなければなりません。但し、単に削除するとソフトウェアが壊れるかもしれないと脅す。(商標権で規制してRHELの頒布をさせません。)

3.本文I-A 定義
最初のインストール・システムとは、最初に顧客がお金を払って購入したRHELの枚数。(RHELは公開の場で無償入手できないように規制していますので、1枚目は購入しない限り入手できません。購入した段階で契約が成立して、顧客に契約を守る義務が発生。)

4.本文I-1 契約期間
サービス契約は1年契約で、自動更新。(これは曲者)。

5.本文I-2 価格、請求
RedHatは、契約時、契約更新時に定価の請求書を発行します。顧客は30日以内に支払わねばなりません。(自動更新なので知らないうちに請求が来ます。)

5.本文I-4 報告と監査
インストール・システムを増やすには、RedHatに1台毎に報告して、サービス契約を増やさねばなりません。
RedHatは、契約期間中、顧客企業のインストール・システム数がサービス契約の数と一致しているかどうか1年1回未満で監査する権利があります。
監査結果で不正が見つかったら、顧客企業は20%分のペナルティを払わねばなりません。

大まかなところは以上ですが、これを見ますと、サービス契約を一旦締結すると、インストールした台数が増えたらそれを申告しなければならず、しかも自動更新なので定期的にRedHatに定価で支払いをしなければなりません。これはもしかするとRHELの方がWindowsよりも運用コストが高くつくかもしれません。

この仕組みだと確かにRHELは儲かるでしょう。こんな殆ど悪知恵のような仕組みを良くも考えたものです。

この契約書は、Webページに公開されているものです。オープンソース・プロジェクトを考えている人は、ぜひご自分で研究することをお勧めします。私の理解が間違っているかもしれませんしね。

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投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック