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2006年03月28日
オープンソースのビジネスモデル (1)
さて、過去3回にわたりPDFのオープンソース・プロジェクトについてチェックしてみました。
次に、これらの事例を参考にしながら、オープンソースのビジネスモデルについて検討してみたいと思います。
新しいプロジェクトを始めるにあたり、それが成功するための条件が分かれば良いのですけれども。しかし、PDF分野では期待したほど成功したオープンソースはありません。ですのでビジネスモデルを検討するには不十分かもしれません。随時、他の事例を参照しながら考えて見たいと思います。
予めお断りしますが、以下の議論では、オープンソースの成果を消費する立場ではなく、オープンソースで何かを作りだそうという立場でのものです。
どんなプロジェクトでも成功するには大義名分が必要です。
商用ソフトウエアのメーカは、私利私欲を追及していると見られがちです。ここで強調しておきたいと思いますが、当社の場合は、私利私欲を追及している訳ではありません。念のため。
この点、オープンソースのプロジェクトは、利己的な利益と離れて、公益を追求すると言う大義名分を付けやすいように思います。しかし、実際は、大義名分だけでは持ちこたえることができないのは、社会人であれば誰にでも分かると思います。
オープンソースのプロジェクトで、恐らく一番大きな問題は、開発者に資金が還流しないことです。
商用ソフトウェアの場合は、ソースコードの権利と、その生成物であるオブジェクトの権利を占有し、顧客に使用権を提供すると同時に見返りに対価を得るというビジネスモデルが成り立ちます。
しかし、オープンソースでは、ソースコードを誰でも入手できます。結果的にオブジェクトを誰でも入手できることになります。誰でも入手して使えることになれば、当然使用権を提供して対価を得ることは難しくなります。ありていに言えば、誰も使用料を払わなくなるということです。従ってプログラムの使用料を得るのは難しいことになります。
一方、どのようなものであれ、開発には必ずお金が掛かります。そのための資金を集めなければなりません。しかし、開発に使った資金がより大きな価値となって回収できる見込みがなければ、新しいプロジェクトに投資する人はいないでしょう。大きなプロジェクトを起こすには、ベンチャキャピタルという仕組みもありますが、ベンチャキャピタルは投資が回収できる見込みがなければ決して投資しないでしょう。
この点、米英でオープンソース方式で開発するソフトウエア会社にベンチャキャピタルが出資するケースが増えているのは注目されます。
政府のような公的機関の場合は、資金の回収ということはあまり考えないかもしれませんが、国民の汗と涙の結晶である税金を使う以上は、ベンチャキャピタルなどよりは遥かに厳しい投資判断基準が必要なはずです。
最近のオープンソース・プロジェクトは、コンピュータ・メーカやシステム・インテグレータに在籍する開発者がフルタイムで働くものが多いですが、その場合、プログラマが在籍する企業にとってオープンソース・プロジェクトが価値があるものでなければなりません。
草の根オープンソース・プロジェクトでは開発者が手弁当で働くことになります。この場合、苦労した開発者が報われないような仕組みでは、プロジェクトを長期にわたって活発に継続することはできないでしょう。
このようなことを考えると、オープンソース・プロジェクトを起こすにあたって、ビジネスモデルを十分に検討することが最も大事といえるでしょう。このためのひとつの手段は、成功したプロジェクトを研究することです。
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