« PDFと文字(2) – 言語と文字 続き | メイン | PDFと文字(4) – 文字の取り扱い »
2005年12月14日
PDFと文字(3) – 言語と文字 その3
簡体字は中華人民共和国の漢字簡単化政策によって作り出されたもの、という話をしましたが、このように文字は政治や経済と密接な関係があります。
その際立った例をいくつか紹介してみましょう。
まず、イスラエルの国語である現代ヘブライ語があります。
ヘブライ語は、もともと古代パレスチナ人が使っていた言葉ですが、2000年以上前に誰も使わなくなってしまったものです。現代ヘブライ語は、いったん誰も使わなくなった言語をイスラエル建国の際に復活したものです。このヘブライ語を書き表すために使う文字がヘブライ文字です。
ヘブライ語
ベトナム語は、現在は、ラテンアルファベットに文字種を追加した文字で記述されています。この文字は19世紀にフランスの宣教師が考案したものらしいです。東南アジアの南方はインド文化の影響を受けているようですが、ベトナムとはもともと「越南」の読みなのだそうで、ベトナム語は漢字の偏旁を独自に組み合わせて作ったチュノムで表記されていたようです。
ベトナム語
ところで「三国志」では蜀の諸葛孔明が何度か南方遠征をしますが、ベトナムまで行ったのでしょうか?
フィリピンの公用語のひとつであるタガログ語も昔はインド起源の文字を用いていたようですが、現在は、ラテンアルファベット表記に変わっています。
タガログ語
政治的理由から比較的短い期間に、文字政策が変わった地域もあります。例えば、新疆ウイグル自治区は、1949年に人民政府に帰順して中華人民共和国の一部になりました。その当時は、ソ連と中国の蜜月時代ということもあり、ウイグル語をキリル文字で表記しようとしたそうです。ところが、中ソ緊張の時代になるとともにキリル文字はあっさり解消、次は、漢字のピンイン法案によりラテン文字表記をしようとしました。その後、1982年になって元のアラビア文字に基づく表記にもどったそうです。
中国・新疆ウイグル自治区における文字と印刷・出版文化の歴史と現状(菅原 純)
いままでお話しましたのは、ごく一部の言語の例です。世界には、数千種類(一説には6000種類)といわれる言語があります。
それぞれの言語は表記方法である文字がなければ記録として残すことができません。ですので表記の手段として文字をもつということは、その言語の文化を伝え、あるいは遠くの人と意思を伝えていくために大変重要なものです。
PDFは紙に表記された情報を電子的化するものですので、PDFでもこのような様々な文字を扱えなければなりません。
投稿者 koba : 2005年12月14日 08:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.antenna.co.jp/PDFTool/mt-tbng2.cgi/83