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2010年11月23日

「Wikiベースの書籍オーサリングとEPUB出力」のこと

11月22日にJEPA主催で開催された「EPUB日本語拡張仕様の現状と将来展開&サービス紹介」にて、現在、開発中のWikiベースの書籍オーサリングのサービスについて、少しお話させていただきました。
 
このセミナーが企画された当初は、EPUB関連サービスやアプリの紹介も何件か予定されていました。その後、「EPUB日本語拡張仕様策定」提案が総務省の「新ICT利活用サービス創出支援事業」のひとつに採択されたことから、一気に仕様策定関係者のプレゼンの場に傾斜してしまったものです。ということで、かなり肩身の狭い思いがありましたが、少しだけさわりを紹介させていただきました。
 
EPUB3.0に日本語のレイアウトに必要な機能を盛り込むことは、もちろん重大な課題です。一方で、EPUBを初めとする電子書籍を出版活動の中にどのように組み込んでいくかを真剣に考える必要があると考えているからです。
 
EPUBは主に配布形式として利用されますので、従来の制作工程で考えて見ますと印刷された本に匹敵します。従って、書籍制作の流れの中では下流に位置づけられます。しかし、電子書籍の制作はもっと上流から見直していく必要があるように思います。Wikiベースの書籍オーサリングは、書籍の制作をコンテンツを執筆するという上流から見直していこうというものです。
 
セミナー終了後、何人かの方から意見を頂戴しましたが、Wikiを採用した理由についての質問と意見が多くありました。このあたりは、また、時期をみて詳しく報告したいと考えています。とりあえずは、発表の後、IDPFから参加されたBill MaCoy氏から「Extreamly Interesting !」と声を掛けていただいたことを報告しておきます。
 
○プレゼン資料
「Wikiベースの書籍オーサリングとEPUB出力」
11月22日EPUBセミナーの資料とライブ映像

2010年11月24日

CSS3のグローバリゼーションの課題について (メモ)

CSS3で日本語のレイアウト機能を強化しようという動きが活発になっています。この大きなきっかけはEPUB3.0に縦書きを含む日本語レイアウト機能を追加しようということで、EPUB3.0のスケジュールの関係上、CSS3の日本語レイアウト機能追加を大車輪で行う必要が出ています。
 
CSS3の日本語レイアウト機能は、既に1990年代の終わり頃から提案されていますが、この10年近くほとんど進捗していなかったのが実情です。
 
これを半年程度の期間で、実装可能なレベルに固めていこうということですからかなり野心的な目標です。実現できればCSS3の利用者を増やすと言う点でも大きなインパクトがありますので、頑張って早く進めたいものです。
 
アンテナハウスでは、2006年からCSSによるレイアウト指定組版 「CSS Print」 を目標として、組版ソフトを開発してきました。具体的には、CSS3をXSL-FO組版機能(AH 独自拡張を含む)と同等のレベルまで拡張して実装しています。この成果として、2009年にAH CSS Formatter V5として発売しています。
 
そして、この間 CSSのWorking Groupにも参加して、ほそぼそとですが活動してきました。こうした関係でCSSのグローバリゼーションの難しさもある程度理解しているつもりです。そうした立場で、22日に行われたJEPAのEPUBセミナーについてのTwitterの議論を見ていると、この難しさがなかなか理解されていないように感じました。
 
ということで、現在、感じている問題点を以下にあげておきます。

1.CSSはもともとラテン文字を画面にレイアウトすることを想定して設計されています。右から左に書いたり、上から下に書くという、考えは設計時にビルドインされていません。CSS3の仕様設計者の大多数は欧米の技術者であり、彼らには、漢字や日本文字のテキスト・レイアウト自体が理解できないので、これは無理も無いことです。そこでCSSの仕様設計者に日本語の組版を理解してもらうところから始めなければなりません。
 
2.日本語レイアウトは欧米の技術者にはそれほど関心もなく、またメリットや学ぶ動機もあまり無いと思われます。従って、前項の活動は主に日本人が積極的に行わなければなりません。しかし、日本人の中でこれに取り組んでいる人は極めて少数です。
 
3.ブラウザも欧米のラテン文字を想定して開発されています。CSS3の作業グループに参加しているのはブラウザの開発団体の代表者が多いため、ブラウザの実装に影響を与えることになると、参加者の利害に直結してしまいます。こうした利害関係に基づく反対もあります。これは、理解云々の話ではないので対応が難しくなります。

4.作業プロセス上の問題もあります。現在のW3Cのプロセス方針は、「仕様作成は合意に基づいて進める」ということになっています。このため、強硬な反対者がいると先に進むことができません。
 
5.11月のTPACに提案された論理プロパティはXSL-FOの相対プロパティに相当するものです。当社は、既に10年間にわたってXSL-FOのスタイルシートを多数開発しています。XSL-FOは最初からグローバル化の考えが盛り込まれており、多言語対応のスタイルシートの開発において、相対プロパティはシンプルですし、有用です。しかし、CSSにとっては全く新しい概念であるため相対プロパティの有用性が理解できないようです。また、CSSにはカスケーディングという仕組みがあるため、相対プロパティを絶対プロパティに対応つけるのは最終段階にならざると得ないという技術的な難点もあります。

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