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2008年06月02日
PDFによる情報保存の法的な有効性 (10) — 消費税が問題
先日は、契約書や請書などをPDFで電磁的に作成した場合、収入印紙が不要になる、というお話をしました。
PDFによる情報保存の法的な有効性 (7) — 電子取引と印紙税
PDFによる情報保存の法的な有効性 (8) — 首相の国会答弁
そうしますと、全ての取引書類をPDFで作成してしまえば良いのではないか?ということを思いつきます。しかし、電子帳簿保存法第11条2項を見ますと、「前条(10条)の規定により保存が行われている電磁的記録に対する他の国税に関する法律の規定の適用については、当該電磁的記録を国税関係書類以外の書類とみなす。」とあります。
つまり、PDF取引書類は国税の書類とは看做さない、ということになると思います。
法人税法や消費税法では、書類の保存義務を課しています。PDFで取引書類を作成すると、法人税法や消費税法の保存義務との関係はどうなるのでしょうか?
○法人税法上の青色申告法人には、取引関係の書類の保存義務があります。例えば法人税法施行規則第59条では、「取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し」を保存しなければならないとしています。
法人税法上は、あれば保存せよといっているようですが、電磁書類は「国税関係書類」としての存在すら認められていないので、法人税法の保存義務には抵触しないのではないかと思います。(そのため、電子帳簿保存法第10条があるのでしょう)。
○消費税法では、第30条で課税仕入れに関わる消費税を控除することができることを定めており、同条7項で、このためには、「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等の保存」が必要とされており、それが保存されていない場合は、課税仕入れの消費税を控除することができません。
PDFで請求書をもらった場合、その書類は、消費税法の課税仕入れ控除のために十分なものなのでしょうか?
これは、PDFによる取引書類は国税関係書類ではなく、消費税の控除のための有効な書類ではないと考えられます。つまり、取引先からPDFで送信された領収書や請求書をPDFのまま保存しておいても、消費税の課税仕入れ控除には使えないということになるでしょう。
そうなりますと、電子取引で仕入れたものの消費税を控除するには、PDFを始めとする電磁書類ではだめで、なにか書面(紙の請求書などの証拠書類)を入手するか、または、電子帳簿保存法第4条の2項に対応するしかないということになります。
現在、電子帳簿保存法第4条の承認企業数は、すべて合わせて66,125社(平成17年6月末)。
ということで、国内のほとんど企業は、電子取引だけで(書面の請求書なしで)仕入れたものについて消費税を控除したら消費税法違反ということになると思います。(タイヘンダ!)
いずれにしても、PDF取引書類の税法上の扱いはもっと詳細に調べてみる必要がありそうです。
投稿者 koba : 2008年06月02日 08:00
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