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2008年06月20日

電子証明書のVeriSign流マーケティング研究 (3)職責署名用証明書

VeriSign社の「ドキュメントサイニング用 Digital ID」は、文書に署名するための専用の証明書ですが、特徴としては、個人に対して発行する証明書ではなく組織に対して発行する証明書になっているということです。こうした、組織に対して発行される文書への署名用の証明書は比較的稀な存在で94,500円という価格に関わらず、人気があるのだそうです。

ところが、最近、日本認証サービスから類似の証明書がもっと安く発行されるようになりました。
■ニュース:電子署名用の職責証明書を発行します
http://www.jcsinc.co.jp/application/syokuseki.html

この職責証明書は、3年間有効で、12,600円(消費税込み)です。ずっとお安いですね。

日本認証サービスは、VeriSignほど有名ではないかもしれませんが、日本の認定認証局でもあり、お勧めです。これも一種の価格破壊でしょうか?

序に、なぜ、こうした組織の職責用の電子証明書が珍しいのかを考えて見ます。

日本の電子署名法では、「電磁的記録に記録された情報について本人による一定の電子署名がなされているときは、真正に成立したものと推定する旨の規定を設ける」ということを趣旨としています。前提として、自然人である個人が署名行為をすることを置いており、電子署名法に基づく認定認証局の電子証明書は個人に対して発行することになっているからです。

電子署名及び認証業務に関する法律の施行(電子署名法)

ところが、企業の活動に関連して行なう契約行為などは、ほとんど全て、法人を代表する・法人の代理人としての個人が、その法人から与えられた職責に基づいて行なうものです。個人は法人という組織の中での役割として、与えられた権限と責任において契約書などに記名・捺印しているのであって、個人としての権限と責任において記名・捺印するわけではありません。

ところが、現在の電子署名法ではこのことはあまり考慮されていません。このあたりに、電子署名法と現実の社会でのニーズとのずれがあるのです。これは現在の電子署名法の問題点の一つです。

例えば、「電子署名及び認証業務に関する法律の施行状況に係る検討会報告書」(平成20年3月)でも検討事項として、「自然人だけでなく、法人名や役職名等を対象とする電子証明書を発行する認証業務についても、電子署名法に基づく認定を受けられるようにできないか。」(p23)として取り上げられました。

上記の報告書では「当該契約の責任者・担当者等の氏名なしに会社印・役職印のみで契約等を行うことは一般的ではない。電子署名は、電子の世界において、手書き署名及び押印に相当する位置付けである。電子署名について、 手書き署名・押印と同等の法的取扱いを定める電子署名法においては、認定の対象は自然人を電子証明書の発行対象とする特定認証業務とするのが妥当である。」として退けられています。

「電子署名及び認証業務に関する法律の施行状況に係る検討会」報告書の公表及び意見募集の結果

私の意見では、上の論には、現実認識および論理的な誤りがあると思いますが、ここではとりあえずそのことだけ注意しておくに留めます。

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投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック