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2008年06月07日
電子証明書のVeriSign流マーケティング研究 (2)
VerSign社の電子証明書の販売ページを見ていますと、PDFで見積書を作ったり、PDFで請求書を作ったりしています。
http://www.verisign.co.jp/codesign/help/faq/200054/index.html
これは、技術的にはもう簡単にできる話で、PDFの使用例としては一般的なものだと思います。問題は税法です。これまで、このブログでも日本の税法とPDFについての問題は何回かお話していますが、VerSign社が提供しているPDF見積書、PDF請求書は典型的なので、これを題材に税法上の具体的な注意事項についてお話してみます。
※これはVerSign社に問題があるということよりも、むしろPDFと日本の税法上の問題を具体例として説明することを意図するものです。VerSign社には申し訳ありませんが、日本の税法の問題点を理解していただくためということでご容赦ください。
VeriSignのWebではPDFの請求書をWebから発行できるようになっています。
これは、便利なのですが、こうして入手した請求書が税法上どういう扱いになるかを調べてみますと、まず、受け手は、このPDFを保存することが義務付けられています。
さて、証明書価格94,500円の中には消費税4,500円が含まれていて、企業でこの証明書を購入した場合、税務署に納付すべき売上に関わる消費税から、この4,500円を差し引くことができるはずです。
その際、消費税法上では、該当の請求書を保存しておくことを求めています。ところが、PDF請求書のファイルは、消費税法での書類と認められません。従って、PDF請求書に基づいて4,500円を差し引くことができません(差し引くと消費税法違反となります)。
では、Webで受信したPDF請求書を自分でプリンタに印刷したらどうなのでしょうか?
これは、微妙です。Webで入手したPDFを自分で印刷して作成した請求書は、取引相手が発行した請求書と看做されるものなのでしょうか?
厳密に解釈しますと、
(1)日本の国税当局は、PDFを含む電磁的書類を認めていません。
(2)PDF請求書は請求書ではなく単なる電磁ファイルです。
(3)それを、受け手が印刷した場合、その行為はあくまで受け手の行為です。
(4)となると、それは取引相手が発行した請求書には該当しない。
ということになると思います。
このあたりは税務署に問い合わせしてみる必要がありそうですが、税務当局でも担当者によって解釈が変わってしまうかもしれないという危険があります。
このように、PDF請求書は税務上は請求書とは認められませんので、取り扱いに注意が必要です。
そんなことは、車を運転する人が制限速度50kmの道路を60kmで走っているのをとがめるようなものだと言ってしまえばそれまでではありますが。
【補足】(重要)
電子取引で受け取った請求書は、「消費税法基本通達第6節11-6-3(請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるときの範囲)の(5)に相当し、仕入れ控除を受けることができる」という解釈もあるそうです。詳細は後日に整理したいと思います。(2008/6/25追記)
【参考】
PDFによる情報保存の法的な有効性 (10) — 消費税が問題