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2008年06月05日

電子証明書のVeriSign流マーケティング研究 (1)

お客様から、VerSign社の「ドキュメントサイニング用 Digital ID」を文書の署名用に使いたいが、「PDF電子署名モジュール」で使えるだろうか?というお問い合わせをいただきましたので、調査してみました。

結論から言いますと、VerSign社「ドキュメントサイニング用 Digital ID」は、標準的な電子証明書であって、アンテナハウスの「PDF電子署名モジュール」で使用することは問題ありません。

つまり、VerSign社「ドキュメントサイニング用 Digital ID」を使って、「PDF電子署名モジュール」で問題無く署名付与と検証が行えました。標準的なものですので、当然、Acrobatやその他のPDF電子署名ツールでも使えると思います。

そこで、VeriSign社に問い合わせましたところ、「ドキュメントサイニング用 Digital ID」は、「三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社の 三菱電子署名ソフトウェア Misty Guard をご使用いただいた上でPDFへの署名をいただく仕様、製品となります。その為、その他の署名ツールに対応した証明書の発行を承っておりません。」とのこと。

要するに標準的な電子証明書の発行に際して、署名ツールを限定して発行するのだそうです。これは、技術の問題ではなく、会社の営業姿勢またはマーケティングの問題ということと考えられます。

民間企業のビジネスなので、法律とモラルに反しなければある程度のことを自由にやっても、特にとがめられる事はないとは思いますけれども、こういう囲い込みマーケティングで得をする人、損をする人はだれなのでしょうか?

これを経済的もしくはマーケティング手法として考察してみたいと思います。

ア.電子証明書発行機関1(VeriSign)
イ.電子証明書発行機関2(他社)
ウ.電子署名ツールベンダ3(三菱)
エ.電子署名ツールベンダ4(アンテナハウスなど)

お客さんがVeriSignのドキュメントサイニング用 Digital IDを使ってPDFに電子署名をするには次のことが必要です。

1.VeriSign社から電子証明書を購入する。これは、1年間94,500円(税込み)です。
2.三菱電機から、 Misty Guard を購入する。
 これは、デスクトップ版とサーバ版があります。デスクトップ版は基本で102,900円(税込み)、サーバ版は、別途見積のようです。

お客さんが1,2で満足するときは問題ありませんが、他のベンダの電子署名ツールを使いたい時は、電子証明書も他の証明書発行機関がら調達しなければなりません。この場合、つまり、ア&ウの組み合わせを選ぶか、イ&オの組み合わせを選ぶかという選択になることになります。

技術的には電子証明書は標準規格になっていますので、電子証明書と電子署名ツールはそれぞれ独立のコンポーネントである(つまり、ア&エ、イ&ウでも何ら問題ない)にも関わらず、VeriSign社は三菱電機製と組み合わせて売るという垂直統合型ビジネスモデルをわざわざ取っていることになります。

コンポーネントを売ろうとしたら水平分業的なビジネスモデルを取る、つまり、各コンポーネント・ベンダは、自分の得意な分野に特化して、両コンポーネントを組み合わせ自由とし、それぞれが市場を広く開拓する、という方法の方が有利です。また、お客さんにとっても、最適解を最適な価格で調達できるというメリットがあるはずです。これが標準の存在意義です。

これに反して、垂直統合が必要になるのは、コンポーネントが技術的に標準化されていない場合が考えられます。しかし、既に説明しましたように、今のケースはそれには当てはまりません。

第2はコンポーネントを組み合わせて完全なソリューションとして提供する場合。しかし、電子証明書とPDF電子署名ツールを組み合わせても、多少、大きな部品になる程度。例えばPCで言いますと、せいぜいボード(基板)を組み立てた程度で、最終製品のPCにはなりません。

こうしたことを考えますと、VerSign社「ドキュメントサイニング用 Digital ID」のマーケティング手法は、顧客に最適解を最適コストで提供するビジネス行動としては正当化されないように思います。どうでしょうか。

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投稿者 koba : 08:00 | コメント (0) | トラックバック