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2008年02月23日
筋肉質の決算書を作る その4
土地・建物・設備機械などの有形固定資産も不良資産化する危険は常にあります。しかし、販売用ソフトウエアの開発に要した費用を、無形固定資産として計上した場合、それが不良資産化する危険は、土地・建物・設備などが不良資産化する可能性とは比較にならないほど大きいものです。
ソフトウエア会社の経営者は、もし健全な経営をしたいと考えるならば、「販売目的用のソフトウエアの開発費を、内容を問わず無形固定資産に計上することは、行ってはならない。」と思います。
これについては、企業経営審議会「研究開発費等に係る会計基準研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書」でも、次のようになっています。
--------ここから------
「市場販売目的のソフトウェア
ソフトウェアを市場で販売する場合には、製品マスター(複写可能な完成品)を制作し、これを複写したものを販売することとなる。
製品マスターの制作過程には、通常、研究開発に該当する部分と製品の製造に相当する部分とがあり、研究開発の終了時点の決定及びそれ以降のソフトウェア制作費の取扱いが問題となる。
イ.研究開発の終了時点
新しい知識を具体化するまでの過程が研究開発である。したがって、ソフトウェアの制作過程においては、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」が完成するまでの制作活動が研究開発と考えられる。
これは、製品マスターの完成は、工業製品の研究開発における量産品の設計完了に相当するものと考えられるためである。
ロ.研究開発終了後のソフトウェア制作費の取扱い
製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化を行う制作活動のための費用は、著しい改良と認められない限り、資産に計上しなければならない。
なお、バグ取り等、機能維持に要した費用は、機能の改良・強化を行う制作活動には該当せず、発生時に費用として処理することとなる。
製品マスターは、それ自体が販売の対象物ではなく、機械装置等と同様にこれを利用(複写)して製品を作成すること、製品マスターは法的権利(著作権)を有していること及び適正な原価計算により取得原価を明確化できることから、当該取得原価を無形固定資産として計上することとした。
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三 研究開発費に係る会計処理
研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければならない。 なお、ソフトウェア制作費のうち、研究開発に該当する部分も研究開発費として費用処理する。
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2 市場販売目的のソフトウェアに係る会計処理
市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの制作費は、研究開発費に該当する部分を除き、資産として計上しなければならない。ただし、製品マスターの機能維持に要した費用は、資産として計上してはならない。
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5 ソフトウェアの減価償却方法
無形固定資産として計上したソフトウェアの取得原価は、当該ソフトウェアの性格に応じて、見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法により償却しなければならない。
ただし、毎期の償却額は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはならない。
--------ここまで------
これを受けて、公認会計士協会も「販売目的用のソフトウエアの開発費を、内容を問わず無形固定資産に計上することは、行ってはならない。」としています。
・研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針について(日本公認会計士協会)
しかし、国税庁の通達があるため、税務上は無形固定資産扱いをせざるを得ない部分が出てしまいます。このため、会社法上の決算と税務上の申告書に乖離が生じ、ここに大きなリスクが入り込む危険があります。
一般に、会計事務所・税理士は、国税庁側の立場で決算書・申告書を作成する傾向があります。上場会社については、監査法人がつきますので、多少は中立的になると思いますが、非公開企業の場合、経営者自身が細心の注意を払わねばなりません。
国税庁は、多くの有識者が「販売目的用のソフトウエアの開発費を、内容を問わず無形固定資産に計上することは、行ってはならない。」と述べているにも係わらず、なぜ、これを無視して、手前勝手な通達を出すのでしょうか?
これによって、ソフトウエア会社の経営が、非常な危険をはらんだものになり、従業員、投資家、取引先に対しても大きな迷惑を及ぼす結果になる可能性を生み出すことを考えていないのでしょうか?
■参考資料
・「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針について」