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2007年01月13日

日本語の文字についての用語について(2) — 表外漢字字体表の論理構造

前回、表外漢字字体表の用語を検討しましたので、今日は、それに沿って、この表が字体の標準を定める論理構造を検討してみます。

まず、表外漢字漢字字体表では、印刷標準字体 1,022字を定めています。そして、その1,022字のうちの22字については簡易慣用字体を定めています。

印刷標準字体 — 「明治以来、活字字体として最も普通に用いられてきた、印刷文字字体であって、かつ、現在においても常用漢字の字体に準じた略字体以上に高い頻度で用いられている印刷文字字体」及び「明治以来、活字字体として、康煕字典における正字体と同程度か、それ以上に用いられてきた俗字体や略字体などで、現在も康煕字典の正字体以上に使用頻度が高いと判断される印刷文字字体」

簡易慣用字体 — 「印刷標準字体とされた少数の俗字体・略字体は除いて、現実の文字生活で用いられている俗字体・略字体の中から、印刷標準字体と入れ替えて使用しても基本的には問題ないと判断しうる印刷文字字体」

この関係を一つの字種「997」番で見ますと次のようになります。字種「997」に二つの字体を標準として定めており、簡易慣用字体の方には、デザイン差としてふたつの字形が掲載されています。

20070113-1.PNG

簡易慣用字体が基本的には問題ないとは、一体、なにを意味しているのでしょうか?標準ではないが、問題ないとはどういうことなのか、やや曖昧なように思います。

次に「3部首許容」を見てみます。3部首とは、しんにゅう、しめすへん、しょくへんです。「印刷標準字体としては、20070109-13-1.gifの字形を示すが、現に印刷文字として、20070109-13-3.gifの字形を用いている場合は、これを印刷標準字体の字形に変更することを求めるものではない。」とされています。

例えば次の図のような例があります。
20070113-2.PNG

3部首許容とされる上図右の「イ」の字形は、デザイン差でもなく、簡易慣用字体でもありません。では、印刷標準字体なのでしょうか?変更を求めるものではないとは?うーーん。分かりにくいですね。

さて、次のように3部首許容と簡易慣用字体の両方が重なる場合はどうなるのでしょうか?
20070113-3.PNG

簡易慣用字体と3部首許容を組み合わせた、上図右端のような字体があったとします。そうしますと、この右端の字体は、標準字体になるでしょうか?これは、現に印刷文字として、使用されているかどうか、で判断することになります。これは、極論すれば、表外漢字字体表では、標準字体かどうかを判断するよりどころを放棄していると考えられます。

どうも、国語審議会の表外漢字字体表は、「一般の文字生活の現実を混乱させない」として、ものわかりの良い親父のような答申になってはいますが、戦後の親父の地位低下と同じで、よりどころとしては少々頼りない、という印象ももってしまいますね。

投稿者 koba : 2007年01月13日 08:00

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