« 2006年04月28日 | メイン | 2006年04月30日 »
2006年04月29日
PDFとフォント(20) マルチプルマスターType1フォント
マルチプルマスター・フォントというのは、Type1フォントの拡張で、ひとつのフォント・プログラムから様々な書体のフォントを作りだすことができるものです。
フォントのウエイト(ライトから極太)、幅(コンデンスからエクスパンド)などのフォントのデザインの次元を使うことで行います。
※参考
マルチプルマスターダイアログ
アドビとアップルはそれぞれ独自の技術を開発したようです。
マルチプルマスターType1フォントはアドビが開発した方法。アップルのはTrueType用ですので別のものです。
アドビの方法では、フォントのウエイト、幅、サイズなどのデザイン軸について、両極端の全てのフォントを用意しておき、その間に入るものを自動的に生成するもののようです。
中間のデザイン特性をもつフォントの生成は、ATMなどのフォントのラスタライザが行います。PDFにマルチプルマスター・フォントを埋め込む場合は、実際にラスタライザが補完して作り出したフォントを埋め込みます。マルチプルマスター・フォントそのものをPDFに埋め込むことはありません。
なお、CFF/Type2では、最初は用意されましたが削除されてしまい、これらの仕様ではマルチプルマスター・フォントは廃止された状態になっています。
PostScript fontsによりますと、アドビは、1999年にマルチプルマスター・フォントの開発を止めるとアナウンスしたようです。今までに制作されたマルチプルマスター・フォントは、約50種類と少ないようということを見ても、マルチプルマスター・フォントはあまり成功したフォント形式とは言えないようです。
2006/5/2 追記
"TrueType, PostScript Type 1, & OpenType: What’s the Difference?"Thomas W. Phinney
の最後の方にも、MMType1について成功していないと書いてあります。成功しなかった理由として、サポートする(MMType1を読んで、ラスタライズ、画面表示できる)アプリケーションが少なかったことを挙げています。
MMtype1を実現するには、各軸にそった極端なグリフセットを作らないといけないのですが、3軸だと8種類になります。それなら、最初から、8家族からなるフォント・ファミリーを制作するほうが手っ取りばやいという訳です。
私は、最初にMMtype1についての説明を読んで、なんてすごいアイデアだと思ったことを覚えています。しかし、どうやら現実の方が厳しかったようです。
投票をお願いいたします