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2006年02月28日
マーケティング手法としての無償ソフトを批判する
日経コンピュータの2月20日号のニュース&トレンドで、「オープンソース対抗で苦肉の策 IBM、マイクロソフト、オラクルが無償DBを投入」という記事を読んで、内心ぞっとしました。
記事は、IBM、マイクロソフト、オラクルがそれぞれ、有償製品の最新版と同じDBエンジンを備える無償のDBの配布を開始したということを紹介して、これがオープンソースの「PostgreSQL」、「MySQL」を初めとするオープンソース・ソフトウェアへの対抗上やむなく行った、という日本IBMのコメントを紹介しています。
1.Microsoftは、以前からSQLServerのExpress版を無償で配布しています。
SQL Server 2005 Express Edition 概要
2.IBMのDB2 Universal Databaseは、次のサイトから入手できます。
DB2 Express-C for Linux and Windows
ここを見ますと、完全にフリー(無償)と書いてあります。
3.Oracleのデータベース「Oracle Database 10g Express Edition」も無償で入手可能になっています。
Oracle Database 10g Express Edition, Free to develop, deploy, and distribute
これらのデータベースは、フル機能版と比べて機能の制限がついたものですが、オープン・ソース対抗と言いながら、Oracle、Microsoft、IBMという3社のシェア争いという面も見逃せません。
こういう状況が進めば、DBマーケット自体が侵食されていくことは間違いありません。そうなるとOracle、Microsoft、IBMの3社がどこまで赤字を我慢できるかという我慢比べになり、いずれは、この中のいづれかからDB事業を放棄する会社が出てくるでしょう。
これに類する、過去に起きた最悪の例は、ブラウザのシェア争いです。Webブラウザの分野では、Netscape NavigatorとMicrosoftのInternet Explorerです。この争いは、Netscapeが敗れて終わりました。しかし、Internet ExplorerがWebブラウザの標準になって、競争相手がいなくなったためにWebの進歩が、相当に遅れてしまったと思います。また、Internet Explorer独自仕様になっていて、Internet Explorerでしか使えないWebサイトがあることも事実です。これは、無償ソフトの配布によって、公正な競争がなくなったための負の側面が現れてしまったものです。
PDFでも同じように、無償ソフトを販促手段として配布している会社があります。販促手段として無償版を配布するのは、自己の利益を追求するために他社の利益を犠牲にするという恥ずべき行為です。
こういうことを行う会社が増えれば、ソフトウェアの市場は侵食されて縮小していきます。新しい製品を作るために投資をしても市場が縮小してしまえば投資を回収できないわけですので、無償ソフトのユーザが多い分野では、新しい製品を作るために投資をする人はいなくなってしまうでしょう。そうなったとき、誰が一番損をするか、といえば、それはユーザだろうと思います。
無償ソフトの配布というのは、企業活動において、公正な競争手段なのかどうか、きちんと考えてみなければならないと思います。「利を求むるに道あり」という言葉がありますが、手段を問わずに利益を追求するということをしてはならない、と考えます。
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