« PDFと文字(21) – 大文字セット | メイン | 「書けまっせPDF」 vs 「やさしくPDFへ文字入力」比較 »
2006年01月13日
PDFと文字(22) – グリフとグリフセット
符号化文字集合とは別の観点から文字を集めた集合にグリフセットというものがあります。PDFReferenceには次のようなグリフセットの名前が参照されています。
・Adobe-Japan1
・Adobe-GB1
・Adobe-CNS1
・Adobe-Korea1
※PDFReference(5版 PDF1.6) pp.416-417
グリフセットの仕様書は、アドビシステムズのFont technical notesのページのCJK/CID-Keyedfontsとして公開されています。
グリフセットの検討に入る前に、グリフ(Glyph)とはなにかについて調べてみます。
PDF Referenceには次のような記述があります:
「文字は抽象的な記号なのに対して、グリフは文字を可視化した形状である。...歴史的に、コンピュータによる組版の世界では、この二つは交換可能な用語として使われてきた。しかし、この領域の進歩によりだんだん意味の違いが明確になってきた。」
※PDFReference p.358
文字とグリフについて使い分けるようになったのは比較的最近のことのようです。このため、PDF Referenceの中には混同した名前が使われている箇所がある、と書かれています。
コンピュータで文字を表示したり印刷するときはフォントを使いますが、グリフのデータはフォント・ファイルに収容されています。各文字のグリフは、ビットマップ・フォントで表現されている場合もありますが、アウトライン・フォントではグリフをプログラムまたはそのパラメータとして記述しています。
フォント関連の用語については、フォント情報処理用語も参照してください。
なお、Answers.comでGlyphを引いてみますと、次のような文章が見つかります。
In computing as well as typography, the term character refers to a grapheme or grapheme-like unit of text, as found in natural language writing systems (scripts). A character or grapheme is a unit of text, whereas a glyph is a graphical unit.
For example, the sequence ffi contains three characters, but will be represented by one glyph in TeX, since the three characters will be combined into a single ligature. Conversely, some typewriters require the use of multiple glyphs to depict a single character (for example, two hyphens in place of a dash, or an overstruck apostrophe and period in place of an exclamation mark).
---ここまで---
(訳)
コンピュータ処理では、組版と同じように、文字は、テキストの書記素または書記素のような単位。...文字または書記素はテキストの単位であるのに対し、グリフは図形の単位である。
例えば、ffiは3つの文字を含んでいるが、TeXでは一つのグリフで表されるだろう。...逆に、タイプライターによっては、一つの文字を複数のグリフを用いて表す。
---以上---
用語にこだわるようですが、グリフという用語を調べていてグリフを字体としている文書がいくつか見つかりました。
たとえば、
(1) CHISEプロジェクトの「グリフ・字形情報の統合と合成」ページには、次のような記述があります。
文字データベースに字形やグリフ(字体)に関する情報を収録し、 文字に関する知識とグリフ・字形を統一的に扱うシステムを実現します。
(2) 「文字コード標準体系専門委員会報告書」(情報処理学会の情報規格調査会、2002年3月)のレポートでは、字体と字形を次のように定義しています。
字体 (glyph)
文字の抽象的な形 (骨格) の概念で、文字の骨組みなどともいわれ、具体的に視覚化することは不可能である。(ISO/IEC TR15285、国語審議会資料などから。)
字形 (glyph image)
印字・表示などの手段によってグリフ表現を表示 (presentation) することによって得られる“glyph”の可視化表現で、必然的に何らかの書体によってしか表示できない、一般的な意味で文字出力と言われるもの、あるいは、印字・表示・転写・手書きなどによって可視化された結果の文字。
※同報告書 p.69
どちらが正しいと即断はできませんが、グリフという言葉の意味するところに専門家の間でもかなりの違いがあることは確かに思います。とりあえず、このブログでは、PDF Referenceの使い方を採用します。
投稿者 koba : 2006年01月13日 08:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.antenna.co.jp/PDFTool/mt-tbng2.cgi/120